「日本ではARB阻害薬がよく飲まれていますが、より効果が高く薬価が安いACE阻害薬は、アメリカやヨーロッパでは人気があります」というのは、製薬メーカーの元営業マンのA氏だ。A氏自身が高血圧でACE阻害薬を服用しているという。
糖尿病で怖いのは、高血糖の状態が続くと、血管が傷つき合併症を引き起こしやすくなること。脳や心臓の血管で動脈硬化が進むと脳梗塞や心筋梗塞が起きやすくなる。糖尿病も高血圧も、治療はまず食事療法と運動療法を行い、効果がない場合は薬物療法を行う。
福岡徳洲会病院人工関節・リウマチ外科センター医長の陳維嘉氏は「糖尿病の治療でよく使われているSU薬やグリニド薬などは、食事療法や運動療法がきちんとできないと低血糖になるリスクがあり、生活が不規則な自分が患者なら飲みたくないクスリです」ときっぱりという。
コレステロールは体の細胞膜の主要な材料であり、副腎皮質ホルモンや性ホルモンなどの原料だが、増えすぎると血管壁にたまって動脈硬化が起きやすくなる。ナビタスクリニック川崎(神奈川)の内科医、谷本哲也氏は「血糖値やコレステロール値が少し高いぐらいであれば、クスリに頼る前にまず生活習慣を見直すべきです。治療にかかる費用をトレーニングジムに回すなどして、できるだけ運動を」と勧める。
A氏は「病気は自覚症状が強いほどクスリに頼りたくなります。生活習慣病の多くは自覚症状が乏しく、その結果心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしやすくなります」と話す。クスリに頼らず、文字通り「生活習慣」を変えることを第一に考えるべきだろう。
▼抗がん剤・白血病
治るクスリの登場で、治療がガラッと変わった
近年、抗がん剤の開発は目覚ましい。最近では、免疫の反応を強化してがん細胞を攻撃する免疫療法の実用化が進んでいる。その代表が免疫チェックポイント阻害薬だ。オプジーボは現在、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、腎細胞がんなど、7種類のがんで保険が適用され、さらに適応が広がっている。
A氏は「オプジーボやキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬が開発されて、以前なら余命数カ月の患者でも、生存期間が3~5年延長する時代になりました。がん克服にさらに一歩近づいた画期的なクスリだと思います」と評価する。
不治の病と恐れられていた白血病の治療も分子標的治療薬のグリベックやイレッサによって大きく変わり、治癒が望める病気になってきた。谷本氏も「もし私が白血病にかかったら、グリベックを飲むと思います」という。
