4場所ぶりに幕内へ復帰した西前頭17枚目の徳勝龍(33)=木瀬=が、1敗同士の対戦で西前頭4枚目の正代(28)=時津風=を突き落として単独トップに立ち、初優勝に王手をかけた。優勝すれば幕尻力士では20年ぶり、奈良県出身力士では98年ぶり、木瀬部屋の力士では初の優勝となる。大関貴景勝(23)=千賀ノ浦=は関脇朝乃山に上手投げで敗れて3敗となり、優勝の可能性が消滅。千秋楽は徳勝龍が貴景勝に勝つか、負けた場合でも正代が西前頭2枚目の御嶽海に敗れれば徳勝龍の優勝。徳勝龍が負け、正代が勝つと平幕の2人による優勝決定戦となる。
悔やんでも悔やみきれない土俵際だった。正代は、立ち合いから徳勝龍得意の左四つでも構わず、圧力をかけて前へ前へ。寄って追い詰めて、わずかに前のめりになった瞬間、落とし穴が待っていた。相手が半身になって眼前から消え、警戒を重ねていた突き落とし。土俵上で正座のように固まる姿が、2敗後退のショックの大きさを物語っていた。
失意の支度部屋では、肩を落としてため息ばかり。ひと言で痛恨の黒星をかみしめると、次の質問を「すいません」と遮り、取組のVTRを無言で眺めるだけだった。
泣いても笑っても、残すは千秋楽だけ。逆転の目は残っており、落ち込んでいる暇はない。昨年は15日間の締めの一番を5勝1敗と得意にしたプラス材料もある。過去、幕内では7勝9敗と合口の良くない御嶽海に勝ち、優勝決定戦に望みをつなぎたいところだ。
帰り際、ファンからのサインや写真撮影の求めに応じ、エールに包まれると少しずつ元気を取り戻した。「難しいですね」と苦笑いで表現した優勝争いの終点へ「いつも通りやるだけです」ときっぱり。力みは厳禁。逆転Vで、この日の無念を晴らすだけだ。