新宿ゴールデン街の片隅に『中村酒店』という店がある。
「酒店」と言っても酒屋ではない。8人ほどがカウンターに座れば満席になるような、ゴールデン街によくあるスタイルのバーである。
ふとカウンターの奥を見ると見覚えのある油絵が飾られている。昇天した表情のカエルの絵。「MJ」のサインが。漫画家・イラストレーターのみうらじゅん氏の作品だ。
「みうらさんもよく来てくれますよ」
カウンターの向こう側から笑顔でそう話すのは、この店のママ、京子さん(58)である。ハスキーな声で話すと、たわわな胸が揺れた。今なお巨乳は健在であった。
ママの名前は「中村京子」――聞き覚えのある人もいるかもしれない。
彼女こそ、アダルトビデオ黎明期から活動し、AV業界に初めて「巨乳」というジャンルを産み出した先駆者である。
1986年に公開された彼女主演の日活映画『巨大バスト99 Dカップの女』は、大ヒット作となり、「中村京子」の名前は一躍有名になった。
さらに数多くのAVにも出演、またグラビアモデル、「Dカップ京子」のペンネームで雑誌のコラムなども執筆していた。