プロのプログラマーとなったかつての読者たち
続いて、第2部のテーマは“スタープログラマー VS. ○○プログラマー”。スタープログラマーとは、投稿プログラムが何度も採用されていた常連読者のことで、森巧尚氏(ベーシックマスターユーザー)、“Bug太郎”こと谷裕紀彦氏(PC-8001ユーザー)、ファミベのよっしん氏(ファミリーベーシックユーザー)の3名がステージへ上がり、当時のプログラムを実演した。現在は3名とも仕事でプログラミングに関わっており、このうち森氏と谷氏はこの日のために新作プログラムを用意。進化した技術力で客席を沸かせた。
一方、○○プログラマーとは“裏方”プログラマーを指し、ファミベのよっしん氏も愛読していたという『ファミコン・マシン語講座』をはじめ多くの技術記事を執筆した断空我氏や、前出のくりひろし氏が該当するとのこと。ふたりは裏方として、発売直後でまだ投稿が来ていない機種や、投稿は来たものの掲載が難しい場合などに、読者に代わってプログラムを書いていたのだとか。マイナー機種のユーザーでもがっかりしないようにと、販売されているホビーパソコンはすべて網羅するという方針を立てていた、ベーマガならではの愛が垣間見える裏話だ。
ゲーム音楽の第一人者・古代祐三氏もベーマガ出身
第3部の“DEMPAサウンドチーム クロストーク”には、アーケードなどのゲーム音楽をパソコンで鳴らす“ミュージックプログラムコーナー”で活躍したり、電波新聞社から発売されたゲームソフトでサウンドを担当していた、5名のスタッフが出演。“YK-2”名義で活動していたゲーム音楽の第一人者・古代祐三氏も登壇し、掲載当時「ゲーセンで曲を覚えてきて作ったんだったかな」という『グラディウス』のプログラムや、自身が創作した『イース』、『ソーサリアン』の楽曲について振り返った。日本ファルコム時代の曲について、公的な場で語るのはこれが初めてだそうで、「自分の作品のなかでどのゲームの曲がいちばん好きかと聞かれたら、たぶん『ソーサリアン』だと答える」と古代氏。
また、著書であるベーマガ別冊『X1 FM音源活用マニュアル』のエピソードを語ったのは、“GORRY”こと後藤浩昭氏だ。さらに、パソコンミュージック関連のレクチャー記事やQ&Aも手掛けていた“はちみつ川野”こと川野俊充氏、粟田英樹氏、荒木潤氏の3名からは、同じ学校の同窓生で、中学時代からライター活動していたことが打ち明けられ、客席からどよめきが起きた。
ゲーム専門誌がなかった時代に道を切り拓いたパイオニアたち
さて、ベーマガは投稿プログラムとゲーム記事とを二枚看板としていたが、後者にフォーカスしたのが“スーパーソフトコーナー プレイバック”と題した第4部だ。まだゲーム専門誌がなかった時代に道を切り拓いた“ゲームライター第一世代”の面々が登場し、担当企画を振り返った。
同誌で本格的にゲーム記事が掲載されるようになったのは、1983年11月号の別冊付録『スーパーソフトマガジン』からだが、その目玉となったアーケードゲームの特集記事“マッピー大解析”、“ゼビウス大解析”を手掛けてゲームライターの先駆けとなったのが、“うる星あんず”こと大堀康祐氏だ。同人誌『ゼビウス1000万点への解法』ですでにその名を知られていた大堀氏は、「当時高校生だったのですが、学校の帰りに大橋編集長に待ち伏せされ、五反田(の電波新聞社)に拉致されて(笑)」と、ライターになったきっかけをユーモアを交えて語った。
その後も長きにわたり、アーケードゲーム関連記事の豊富さが特色となっていたベーマガ。“響あきら”こと池田雅行氏は、取材で仲よくなったカプコンの岡本吉起氏(現・株式会社オカキチ代表取締役兼ゲームプロデューサー)に「ふたり同時プレイできるシューティングゲームを作ったらどうか」と提案したことで、『エグゼドエグゼス』が生まれたという逸話を紹介した。
また、日本でゲームブックがまだ知られていなかったころ、紙で遊べるアドベンチャーゲームというコンセプトで手塚一郎氏が始めた“ペーパー・アドベンチャー・コーナー”や、“見城こうじ”こと鈴木宏治氏が“セガ体感第10弾予想”、“詰めペンゴ”など続々とユニークなコーナーを増やしていった読者参加型企画“ビデオゲーム・グラフィティ”、山下氏と“TOMMY”ことベニー松山氏が担当した、ゲーム(業界)をネタにボケる異色の読者コーナー“読者の闘技場”など、名物連載の思い出がつぎつぎと共有された。
山下章氏の未完の連載が25年の時を経て完結・書籍化!
最後に、山下氏からとっておきのサプライズが。1991年、ベーマガ編集部内では対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターII』の大会が行われ、その模様は山下氏により『バトル・オブ・ストリートファイターII』という連載小説の形で綴られたが、未完のまま終わっていた。それがこのたびついに完結し、全編を収録した書籍『バトル・オブ・ベーマガライターズ』が発売になると告知されたのだ。閉演後にロビーで限定版が販売された同書だが、今後はBEEP秋葉原店とBEEP公式サイトで販売されるとのこと。
そして、6時間を超過したイベントは、出演者と来場者全員での記念撮影で締めくくられた。休刊からおよそ14年を経て、ベーマガの歴史に新たな1ページが加えられた。