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文芸スレ
怪文書SS雑談総合スレ
… | 1無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:17:21No.12612113+8000字ほど投下させていだたこうと思います |
… | 2無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:18:34No.12612120+畜生界という弱肉強食の世界において、人間たちは最弱の存在だった。爪も牙も持たぬ彼らは、現世とは違い畜生たちの支配下に置かれた。獰猛で凶暴な畜生たちの為に作られた娯楽施設――霊長園。ここで人間霊たちはエサとして家畜として奴隷として、ちょうど自分たちが現世で動物にしてきたのと、全く同じ扱いを受けることとなった。 |
… | 3無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:19:10No.12612126+しかしながら人間たちにはまだ武器が残されていた。それは人間の持ちうる最も根源的で普遍的で、そして人工的な武器である。すなわち、信仰。その威力は凄まじかった。人間たちの信仰により召喚されたのは、よりにもよって天津神である埴安神袿姫。彼女と、彼女の忠実な配下である無尽兵団たちは、瞬く間に霊長園から畜生たちを駆逐してしまった。 |
… | 4無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:19:34No.12612129+袿姫による絶対的な支配の下、遂に霊長園には平穏が訪れた。肉体を持たぬ動物霊では、無尽兵団や袿姫の造形術には太刀打ちできない。畜生界一の頭脳にして鬼傑組組長、吉弔八千慧はこの状況に業を煮やし、他の組織と連携して地上の人間たちを送り込んだが、これもまた失敗に終わった。一度は袿姫に打撃を与えたものの、それは致命打となりえず、しかも地上の人間たちからの、これ以上の協力は望めそうにもない。畜生界のかつての覇者たちも、こうなってしまえば完全に手詰まりである。人間たちは袿姫への信仰と引き換えに与えられる、便利で快適な生活にすっかり馴染んでおり、畜生たちの脅威のことなどすっかり忘れてしまっていた。曲がりなりにも人間霊たちは、平和な日々を手に入れることが出来たのだ。 |
… | 5無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:20:34No.12612134+霊長園の深奥部には、袿姫と、彼女と特別近しいものしか立ち入ることを許されていない「神域」という空間がある。そして今一人の、兵士の姿をした埴輪が、自動で移動する通路に乗って「神域」へと向かっていた。 |
… | 6無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:21:03No.12612139+「ご苦労様、磨弓」 |
… | 7無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:21:21No.12612141+「袿姫様、以前から何度も申し上げていますが、あなたはこの霊長園のトップなのですよ。あまり軽率な振る舞いをされては、威厳が崩れてしまいます」 |
… | 8無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:21:45No.12612143+袿姫は顔を綻ばせると、磨弓の頭を撫で始めた。それを磨弓は表情を変えることもなくじっと受け入れている。別に、嬉しくない訳ではない。本当は彼女は、主君からの寵愛を受ける喜びに心震えているのだ。ただ、彼女は結局埴輪であり、しかも戦闘に特化している。ゆえに感情を表情によって表すことがとても苦手なのだ。 |
… | 9無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:22:02No.12612144+「それはそうかもしれませんが……」 |
… | 10無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:22:33No.12612150+「ふう、私の忠実な部下といっても、仲間を減らせという命令は流石に受け入れがたいのね。まああの子は、少し優しすぎるところがあるからねえ。そんな風に性格を設定したわけでもないのに……」 |
… | 11無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:22:53No.12612153+その光の真下に、黒光りする巨大な、漆黒の肉塊があった。肉塊はギラギラと金属質の光沢を帯びており、その表面には無数の赤黒い筋が浮かんでいる。肉塊ははち切れんほどに膨張していた。まるで、肥満を患った男の腹のように。 |
… | 12無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:23:11No.12612158+袿姫の顔からは、既に磨弓へと見せた朗らかな微笑は消え失せていた。口元は生一文字に結ばれ、双眸は限界まで見開かれ、眼球の白目には赤黒い筋が浮かんでいる。その表情は真剣そのものであり、激しい気魄が宿っている。それは見る者に対し、畏怖すべき神性を感じさせるのに十分足るものだった。 |
… | 13無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:23:37No.12612161+霊長園の周縁部には、いくつもの防衛施設が配置されている。普段無尽兵団の団員たちはここに詰め、いつ来るか分からない敵襲に備えているのだ。それから、霊長園のパトロールなども彼ら無尽兵団が行っていた。彼らの多くは袿姫に対し、絶対的な忠誠心を抱いており、その忠誠心を糧に、強固に団結していた。 |
… | 14無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:24:24No.12612168+「そうです。これからは私たちの兵数を減らし、防御機構の方を充実させていくと……」 |
… | 15無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:25:01No.12612171+磨弓にそう諭された埴輪は、一瞬口をつぐみ、苦し気な表情を浮かべた。しかしすぐに、磨弓を真っ直ぐ見つめ、低く鈍い声色で述べ始めた。 |
… | 16無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:25:16No.12612174+「私だって、思うところがないわけじゃありません。でも、袿姫様のからの命令なんです。別に解雇された兵士だって、死んでしまうわけじゃない。また別の役割を与えられるだけです。だから、どうか受け入れてください!」 |
… | 17無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:25:36No.12612176+半数に減った無尽兵団は、それでもなお霊長園の為に甲斐甲斐しく働き続けた。毎日のように熱心なパトロールを続け、一分の隙もなく防備を固め……けれども少しずつ、兵士たちの中には、そういった毎日の任務に疑問を持つ者が出始めた。理由は単純なものだった。主である袿姫が、もう自分たちを頼りとしていないことが目に見えて分かってきたからだ。毎日のように増設される、機械化された防御機構。それは無尽兵団より更に一段階洗練された、強力無比なシステムである。これが各所に配備されれば、もう誰も霊長園に踏み入ることは出来ないだろう。しかしそれは同時に、無尽兵団が存在意義を失うことをも意味する。故に無尽兵団の中には、いずれ自分たちがきれいさっぱり解体されてしまうだろうと予測し、先んじて仕事を辞するものもいた。 |
… | 18無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:25:56No.12612182+そしてそのことに磨弓は心を痛めていた。もう団員は随分と減ってしまい、かつての三分の一ほどしかいないのだ。無尽兵団はすっかり、かつての威容を失ってしまった。けれども、そんな状況になっても磨弓は袿姫への忠誠を尽くすべく、日々の責務を真面目にこなし続けていた。 |
… | 19無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:26:57No.12612189+早速磨弓が尋ねると、兵士は相変わらず蒼白のままの表情で語り始めた。 |
… | 20無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:40:56No.12612260+「信じがたいこととは思いますが、本当なんです。超巨大な、絶大な破壊力を持つ破滅爆弾。本格的に調べることは出来なかったのですが、おそらく本物です。しかもそれは、9割がた完成してしまっている……」 |
… | 21無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:41:19No.12612261+「そうおっしゃるなら、『神域』へと向かってみてください。私が『神域』で、たまたまそれを見かけたのは三十分ほど前のことです。まだ兵器は『神域』に放置されているでしょう」 |
… | 22無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:41:43No.12612263+その頃磨弓は「神域」へと到達していた。門は閉ざされたままだったが、彼女の権限を使えば開くことが出来る。磨弓は一瞬気後れを覚えながらも、システムに命令を下し門を開かさせた。 |
… | 23無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:41:58No.12612264+心臓が凍るような戦慄を覚え振り向くと、そこには美しい顔に微笑をたたえた袿姫がいた。しかし口元は笑っていても、その双眸はちっとも笑っていない。氷のように冷たい光が爛々と迸っている。 |
… | 24無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:42:21No.12612268+「そ、それより袿姫様……」 |
… | 25無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:42:50No.12612272+「磨弓、残念ながらね、全然十分じゃないのよ。ねえ、磨弓。今地上が平和を得るために、どういった方策を使っているか知ってる?世界を滅ぼしかねない兵器を皆で保有することで、戦争が出来ないような状況を作り出してるの。私も、それに倣ったのよ。どれだけ世界が発展しようと、結局のところ暴力の有益性は変わることがないの。だから私も、最強の暴力を手にしたいと思った。その結果がこの破壊兵器なのよ」 |
… | 26無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:43:23No.12612274+磨弓の心に、凄まじい葛藤が生じる。うすうす、危ないとは気づいている。この兵器が利益ばかりをもたらすのではないと、分かってはいるのだ。しかし彼女は袿姫の創造物である。袿姫に逆らうことなど、決して出来ないのだ。 |
… | 27無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:43:46No.12612277+「ごめんねえ、磨弓ちゃん。まだ言ってなかったわねえ。実は破壊兵器を完成させる為の最後のパーツは、『あなた自身』の肉体なのよ。だから、安心してちょうだい。あなたは私の、第二の最高傑作の為の礎となれるのよ」 |
… | 28無題Nameとしあき 20/01/25(土)20:44:03No.12612279そうだねx3これで終わりです |
… | 29無題Nameとしあき 20/01/25(土)21:34:45No.12612504そうだねx2面白かった |
… | 30無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:28:33No.12613441+第5回幻想郷コミックマーケットが今年の夏に開催されることになった。 |
… | 31無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:29:33No.12613443+「うぅっ……。じゃあ、どうするの?」 |
… | 32無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:30:16No.12613448+一方、稗田屋敷では、阿求は自室で不敵な笑みを浮かべていた。 |
… | 33無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:31:36No.12613452+かくして、阿求と小鈴のエロ漫画大戦がはじまった。 |
… | 34無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:32:02No.12613453+紙に怨念めいた怒りをぶつける日が続いた。二人は互いの事だけを考えつづけ、暑くなる気温も相まって頭が沸騰しはじめた。 |
… | 35無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:32:30No.12613454+そして、幻想郷コミックマーケット当日。 |
… | 36無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:33:03No.12613455+「小鈴、あの後何も作らなかったの?」 |
… | 37無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:34:10No.12613460+「せっかくだから交換しましょう。自分のエロ漫画とはいえ、小鈴の描いた漫画を見てみたいし」 |
… | 38無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:36:17No.12613461+「なんで知ってるのよ!」 |
… | 39無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:37:00No.12613463+「まさか、二人してエロ漫画描いてるなんて」 |
… | 40無題Nameとしあき 20/01/26(日)01:37:21No.12613464そうだねx2終わり |
… | 41無題Nameとしあき 20/01/26(日)02:10:35No.12613515+微笑ましさと狂気が同居してやがる |