遠隔にいる人とコミュニケーションを取れる分身ロボットを開発するオリィ研究所(東京・港)が、その分身ロボットを使って接客するカフェを1月16~24日までの期間限定で東京・渋谷で開いた。難病や重度障害で外出が困難な人でも社会参加できる場を提供するのが目的だ。
飲食大手のカフェ・カンパニー(東京・渋谷)がJR渋谷駅前に持つカフェ「WIRED TOKYO 1999」内で実施した。店舗の一角を分身ロボットが働くゾーンとし、移動や旋回ができるヒト型ロボットが、テーブルまで飲み物や料理を運んだり、利用客と会話をしたりする。テーブル上にも小型のコミュニケーションロボットを置いてあり、利用客は会話を楽しめる。SNS(交流サイト)などで話題になったこともあり、事前予約で満席。整理券を配って対応した日もあった。
分身ロボットを操作したり、利用者とコミュニケーションを取ったりするのは、「パイロット」と呼ばれる人たちだ。そのほとんどは事故や神経難病などで療養生活を余儀なくされている。SNSなどを通じて参加を呼びかけ、応募があった人にアンケートを行い、より「情熱」を持った人をパイロットに選んだという。
パイロットは原則パソコンを使ってロボットを操縦する。障害の度合いに応じて視線入力のツールなども利用できるようにした。
オリィ研究所では2018年から分身ロボットカフェのテスト運用を何度か実施してきたが、今回は約30人のパイロットがシフトを組んで参加した。海外から参加したパイロットもいる。パイロットには時給1100円の報酬を支払うというが、パイロットの参加の動機はもちろん報酬ではない。「障害年金をもらっていても、何もしないのがつらい、社会参加して人の役に立ちたいと考えている人は思った以上にいる。そういう人たちに働く機会を提供できれば」とオリィ研究所の吉藤健太朗CEO(最高経営責任者)は言う。
オリィ研究所はコミュニケーション用の分身ロボットを事業化するスタートアップとして注目されてきた。自らも体調不良などで不登校を経験したという吉藤氏が、入院中の患者でも学校に行けるようになればと開発した高さ23cmのコミュニケーション用の小型ロボット「OriHime(オリヒメ)」を事業化するために、2012年に設立した。
OriHimeは遠隔コミュニケーションのツールだが、遠隔操作で肉体労働もできるツールとして高さ120cmのOriHime-Dを開発した。これらの分身ロボットが働く場として考えついたのが分身ロボットカフェだ。
コメント1件
谷守
自営
素晴らしい記事です。
明るい未来が見えます。
コメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
日経ビジネス電子版の会員登録