『おしん 一挙再放送▽第42週・再起編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド)
- 道子
- 百合
- 結婚
- 田倉
- 気持
- 希望
- 親父
- お前
- 自分
- 今日
- 初子
- 仙造
- 一緒
- 苦労
- 商売
- 銀行
- 心配
- お父さん
- セルフサービス
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『おしん 一挙再放送▽第42週・再起編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?
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おしん 一挙再放送▽第42週・再起編[字]
主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。
詳細情報
番組内容
息子の仁(山下真司)が百合の気持ちを踏みにじって、おしん(乙羽信子)の見も知らぬ女性と結婚しようとしているのが、おしんにはどうしても許せず、仁の非情さがやりきれなかった。仁が、おしんの期待を裏切るような生き方をしているのを知ったことは、おしんにとって大ショックであった。どこでどう育て方を間違えたのだろうか…。おしんは仁に「その女と一緒になりたいなら、この家を出て結婚しなさい」と言った。
出演者
【出演】乙羽信子,田中好子,山下真司,塩屋俊,丘山未央,家中宏,菊地浩二,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(おしん)仁と
その道子とかって娘さんと
どういう関係か知らないけど
母さんは
何の関わり合いもないからね。
百合を あんな ひどい目に
遭わせといて
ほかの女を このうちに
嫁に入れる事なんて
できる道理がないだろ!
どうしても お前が その人と
一緒になりたいんだったら
このうちを出てから
結婚するんだね。
(初子)母さん!
だって そうじゃないか。
そんな結婚 許したら
仁の母親として
百合に 義理が立たないよ。
(仁)じゃあ 今度の日曜日
道子の親父さん 来ても
母さん 会わないって言うのか?
会いたいって言うんなら
会ったっていいよ。
はっきり お断りする事は
しなきゃならないからね。
母さん!
お前が このうちを捨てて
向こうの言いなりになるって
言うんなら
まあ それもいいだろ。
お前だって もう
子どもじゃないんだから
好きにしたらいいよ。
母さんはね 俺の気持ちなんか
てんで分かってやしないんだよ!
ああ。 お前みたいな
人でなしの考えてる事なんか
分かりゃしないね!
何 言ったって 無駄だよ!
希望!
母さん 希望ちゃんは
仁ちゃんと百合ちゃんの事
知らなかったんですよ。
(希望)仁。 お前 百合ちゃんと…。
それで
百合ちゃん ここ 出たのか?
百合には 申し訳ない事したと
思ってるよ。
どうして 結婚しなかったんだ?
百合ちゃんだって
仁が好きだから
仁と そういう事になったんだろ?
お前だって 愛情もないのに
そんな事には ならんだろ。
母さんが
反対してるって訳でもない。
百合ちゃんと結婚できない
理由なんて ないじゃないか!
ほかに 好きな女ができたからか?
でも そんなのは 理由にも
何にもなりゃしないんだぞ!
今更 そんな事 言ったって
遅いんだよ!
百合は 俺に 愛想 尽かして
出ていったんだよ!
もう どうしようもないよ。
俺はな 百合を裏切って
ほかの女と
一緒になろうとしてる男だ。
百合には
人間のクズに見えるだろう。
でも それでいいんだよ。
俺を軽蔑して 忘れてくれたら
俺だって 少しは 気が楽だよ。
お前 そんな勝手な理屈があるか?
希望…。
俺はな 自分が
どんな ひどい事をしてるのか
よく分かってるつもりだよ。
ただ 誰に バカにされようと
俺には俺なりの夢ってものが
あって…。
その人と… 道子っていうんだが
その人と結婚すれば 俺の夢が
実現するかもしれないんだよ。
それにな 道子の親父さんが
田倉の店を再出発させる資金を
出してもいいと
言ってくれてるんだよ。
仁 お前 そんなものに引かれて…。
結婚を 何だと思ってるんだ!
引かれたよ。 結婚が 俺の夢を
実現してくれるんだったら
俺は 何度だって 結婚するよ!
どんなに冷たい男だ
人でなしだって言われても
俺は 平気なんだよ!
仁…。
俺は 百合を愛してた。
もし 道子という女に
出会わなかったら
俺は おふくろが
どんなに反対しようと
百合と結婚する覚悟でいたんだよ。
だから 道子と出会っても
最初は 結婚は もちろん
つきあう事さえ
考えてなかったんだよ。
しかし…。
相手が 金持ちの娘だからか?
ああ…。
田倉はな こんな商売してたら
ただの魚屋と八百屋で
終わってしまう。
早く なんとかしなきゃ…。
焦ってた時だったからな。
それにな 道子の親父さんは
俺に 新しい店の経営方法を
教えてくれたんだ。
それは 俺が 長い間 考えてた
理想の店と一致するんだよ。
しかも 設備資金を出してくれると
言ってる。
お前 このチャンスを逃してみろ。
田倉は
永久に飛躍できやしないんだよ!
俺は おふくろの苦労を
この目で見てきたんだよ。
おふくろは 50になって やっと
自分の店を持つ事ができたんだぞ。
その店に おふくろの全てを懸けて
働き続けてるの 見たら
少しでも 店を大きくして
おふくろの苦労に報いてやりたい。
そう思うのは
息子として 当然の事だろ?
お前にも
おふくろにも 初ちゃんにも
分かってもらえないだろう。
でもな 俺は
少しでも早く… 一日でも早く
おふくろを
安心させてやりたいんだよ。
楽してほしいんだよ!
そんな事で結婚したって
うまくいくはずがないだろ。
長い一生を 店のために
引き換えにするような事をして
母さんが喜ぶと思ったら
大間違いだぞ!
俺はな おふくろのために
田倉を背負ってかなきゃならない
人間なんだよ!
お前みたいに きれい事
言ってられねえんだよ!
百合の事では
迷惑かけてしまった。 すまん。
おふくろとも相談して
百合の将来の事については
考えるつもりだ。
だから しばらくの間
面倒 見てやってほしいんだよ。
なっ 頼む。 このとおりだ。
♬~
母さん
仁の結婚の事なんだけど…
仁だって いろいろ 悩んだり
迷ったりしたあげくに
何もかも 承知の上で
道子さんとの結婚を
選んでるんだよ。
じゃあ 百合は どうなるのよ?
百合の居所が分かったから
母さん 百合に会って
ここへ帰るように言うわ。
このまま 黙って
ほっとく訳には…。
母さん 百合ちゃんの事は
僕に任せてくれないかな。
もう一度 よく 百合ちゃんの
気持ちを聞いてみるから。
そうね。 母さんより
希望ちゃんの方が
百合ちゃんだって 正直な気持ちを
話せるかもしれないわ。
百合ちゃんの気持ち次第で
仁の結婚も
考え直すって事にして…。
母さん。
仁だって 自分の都合だけで
道子さんと結婚しようと
してるんじゃないんだよ。
そこんとこも よく…。
(百合)お帰りなさい。
随分 早かったんですね。
そう休む訳には いかないからね。
申し訳ありません 私のために…。
また ゆっくり 話すつもりだが
母さん とても心配してたよ
百合ちゃんの事。
百合ちゃんに
田倉へ帰ってきてほしいって。
聞いたよ 百合ちゃんと仁の事。
すみません 黙ってて…。
あの事は
もう済んでしまった事ですから
思い出したくもありません。
(希望)百合ちゃん…。
こちらで
働かせて頂けるようになって
ホントに ありがたいと
思ってるんです。
じゃあ 仁の事は?
あれだけの お人だったんです。
でも 恨んでも憎んでもいません。
仁坊ちゃまは 田倉商店をお継ぎに
ならなきゃならないんです。
坊ちゃまに ふさわしい方が
おいでになります。
もともと
私は 田倉の嫁になろうなんて
考えた事もありませんでしたし
とても なる自信もありません。
これで よかったんです。
今は こちらの皆さんに
大事にして頂いて 幸せです。
本当に? 百合ちゃん。
希望さんに 嘘は言いません。
広田さん キャベツ1個 タマネギ5個
卵10個。 それに サバ1本だぞ。
(征男)はいよ! はい サバです!
サバは 何にするの?
すいません 聞き忘れました。
料理で おろし方が違うって
言ってるでしょ いつも。 はい。
そんなの ハラだけ出しときゃ
いいんだよ! 中森さん サバ…。
また サバかよ。 お前な
サバなんて もうけの薄いもの
いちいち 配達してたら
商売にならないんだよ!
いい品物 注文して下さる時だって
あるんだから
文句 言ったら 罰 当たるよ!
マナガツオの かす漬け 5切れ。
マナガツオ まだ あったっけ?
あっ さっき みんな出ちゃったね。
アマダイなら あるけど…。
あの~
マナガツオって注文なんですけど…。
じゃあ アマダイじゃいけませんかって
電話かけてみたら? はい。
断ればいいんだよ。
そんな電話代 使うほど
もうかってないんだから。
ご都合ってものがあるんだからね。
何だい 電話代ぐらい!
母さん。 希望 何て書いてきたの?
うん?
母さん!
何だって? えっ?
百合はね もう お前の事
忘れてしまったって。
しっかりしてるよ あの娘は。
お前という人間を見抜いて
お前に 愛想 尽かしたんだよ。
お前が 誰と結婚しようと
一切 関わり合いがないってさ。
そうか。 よかった。
情けないね 愛想 尽かされて
喜んでるんだから。
だって 百合には
もう 何の気兼ねもない訳だろ?
道子を うちに入れても
もう 誰にも遠慮がない訳だ。
頼むよ 母さん。
道子と結婚させてほしいんだよ。
このとおり!
今度の日曜日にね
道子と親父さんが
母さんに会いに来るんだよ。
その時まで 俺たちで話し合って
なんとか この結婚を
許してほしいんだよ。
お願いします!
へえ。 仁ちゃん こんな事
話したんですか 希望ちゃんに…。
そんなにまでして
セルフサービスとかってお店に
したいんですかね。
仁の気持ちも
分からなくはないんだけど
なにも 女房の里
当てにしなくったってね。
それも 母さんに
早く 楽させたいからだって…。
仁ちゃん 母さんには そんな事
おくびにも出さないのに…。
やっぱり 母さんの苦労
見てきたから 仁ちゃん…。
いいとこ あるじゃありませんか。
結局 私が 仁を あんな子に
してしまったんだろうね。
「商売 商売」って
遮二無二 駆けてきて
今更 人間は 金もうけだけじゃ
ないって言ったって
仁には 通じない。
反対したら
死ぬまで恨まれるだろうしね。
でも 仁ちゃんの思うとおりの店に
するには
随分 かかるんでしょ?
今の田倉には とっても無理だね。
じゃあ やっぱり…。
昭和30年。
今から 30年近くも前の日本で
セルフサービス方式を採用する事は
大きな賭けであった。
…が 結婚にまで 夢を託して
思い詰めている仁の情熱が
哀れで
おしんも 仁に
押し切られる事になるのである。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(初子)あっ お帰りなさい。
(おしん)ただいま。
母さん
そろそろ 支度なさらないと
お昼には お見えになるんですよ
お客様。
今年はね
野菜の出来が いいんだって。
農家は いいよね
地主も小作も いなくなって。
母さんが 子どもの頃には
考えられないほど
裕福なんだもんね。
母さん!
分かってるよ。 忘れないうちに
野菜の仕入れ 書いとかないと
もう このごろ すぐ忘れっぽくて。
やっぱり 年かね。
今日は 休めばよかったんですよ。
こんな大事な日に なにも…。
待ってて下すってる お客様が
いるんだから
私事で休んだりしたら
申し訳ないよ。
なにもね 特別な事しなくって
いいんだよ。 ふだんのままで。
(仁)母さん 何 グズグズしてんだよ!
もう 来ちゃうよ!
あ~
いつ おいでになってもいいよ。
ちゃんと 時間までに 母さん
八百物の仕入れ 済ませて
帰ってきたんだからね。
まだ 着替えてないじゃないか!
何 着るって言うのよ?
母さん 魚屋のお内儀さんだよ。
わざわざ めかし込む事なんか
ないだろ。
母さん!
ありのままを見て頂けばいいの。
それで 気に入らなかったら
そんな人 うち 嫁に来たって
うまくいきっこないよ。
ねっ 昼飯 どうしようか?
どこか連れてった方がいいかな?
うちは 魚屋なの。 お刺身と
焼き魚があれば 十分だよ。
名古屋から来るんだよ。
どこか 地元の料理屋で
うまいもんでも。 ねっ。
仁。 母さんね
お客扱いするつもりないよ。
もしかしたら うちの嫁に
なる人かもしれないんだから
初めから チヤホヤして
大きな顔されたら たまんないよ。
はい。
あっ ありがとう。
店の忙しいのも
よ~く見といてもらわないとね。
甘い考えで 嫁に来られたら
いい迷惑だよ。
母さん…。
あんたが どうしてもって
言うから
道子さんと お父さんに
お会いする事にしたけど
嫌な人だったら 母さん はっきり
断るわよ。 それでいいわね?
また そんな! 母さんは
セルフサービスの店にするって事に
賛成してくれたんだろ?
だったら…。
それと道子さんとの話は 別だろ。
母さんはね
嫁の実家の世話になってまで
店を直すなんて 嫌なの!
設備資金ぐらい
銀行で借りられるわよ。
そうは いかないんだって!
銀行で借りるだけじゃ
間に合わないかもしれない。
第一 利息が…。
それにね
いろんな商品 扱うとなると
どうしても
道子の親父さんみたいに
この業界に 顔の利く人が
後ろ盾になってくれないと
俺たち素人じゃ
どうしようもないんだよ。
分かったね? 母さん。 頼むよ!
初ちゃん じゃあ 昼飯の方
よろしく お願いします。 はい。
あ~ 今から あれじゃ
先が思いやられるよ。
女房や 女房の実家に
足元 見られて
振り回されるのが オチだよ。
母さん そんな気持ちじゃ
仁ちゃん かわいそうですよ。
仁ちゃんは なんとか 店が
うまくいくように必死なんです。
少しは 仁ちゃんの気持ちも
察してあげなきゃ。
おなかを痛めて
大きくした息子でも
母親の思うとおりに
ならないんだから…。
仁ちゃんは まだ いいじゃ
ありませんか。 母さんのそばで
田倉商店やっていこうっていう
気持ちになってくれたんですよ。
そうだね。 苦労させられる
子どものあるうちが
華かもしれないね。
そうとでも思わなきゃ!
(次郎)お内儀さん!
お客様が お見えになりました!
はいはい。
あっ 私は
後で ご挨拶しますから。
うん。
♬~
わざわざ 遠い所を
御足労頂きまして。
私 仁の母でございます。
(仙造)川部でございます。
母さん 道子さんだ。
あっ あの~
娘が 仁君に いろいろと
お世話になっております。
いいえ。 仁こそ いろいろ
ご迷惑をおかけしてるようで…。
(道子)初めて お目にかかります。
道子でございます。
今日は お忙しいところ
お邪魔致しまして…。
いつも お噂は 仁から…。
本来ならば こちらから ご挨拶に
伺わなければいけませんのに…。
いやいや 今日は あくまでも
お顔つなぎという事で
正式なお話は
改めて また伺います。
どうも 若い者同士に
任せておりますと
一向に らちが明かんもんですから
しびれを切らせましてね。
娘の親が
しゃしゃり出てくるってのは
どうも こら 筋が違うという事を
重々 承知の上でございまして
どうぞ
親バカと お笑い下さいませ。
とんでもございません。
私どもが至りませんで
いろいろ
ご心配をおかけ致しまして…。
さあ どうぞ 奥へ。
いやいや。
お構いなく どうぞ。
店を開けていらっしゃるのに
女主人が 奥に入られてしまっては
商売になりませんから。
でも こんなとこでは…。
いやいや。
お話し合いは どこでも
できますから 奥さん。 はい。
あ~ いや しかしなんですね
奥さん
いい場所に 店を
お持ちでございますね。 ねえ。
いや あのね ここら辺りは
工業地帯や商業地区の
ベッドタウンとしてね
ますます
人口が増えるでしょうな。
あの~ あの駅の乗降客なんか
増える一方だと思いますよ。
いや そういう一等地でですね
魚屋や八百屋を
やってらっしゃるというのは
これは 失礼ですが
「宝の持ち腐れ」というやつじゃ
ないですかね。
いやいや 今 仁君とも
話してたんですがね
こういう立地条件の所こそですね
売り場面積を
最大限に利用できるセルフサービスの店に
私は するべきだと思うんですね。
ちょっと拝見しますと まだまだ
土地が遊んでおりますですね。
この敷地を 有効に 目いっぱい
使うとですね そうですね
この建物の約3倍の建物が
建つ訳でございますよ。
それだけの売り場面積が
あればですね
相当の商品を陳列する事が
できるんです。
生鮮食料品だけじゃないですよ。
缶詰 調味料ね
それと あらゆる食料品。
それに
日用雑貨から衣類に至るまで
扱えるだけの売り場面積が
そこに 確保できるんですよ。
これは 羨ましいですな!
お宅の方でですね セルフサービスの店に
するつもりがないんでしたら…
これは 失礼ですが
どれだけ お金を積んでもいい。
是非 譲って頂きたいと
私は 思いますよ。
実は 私ども
既製服のメーカーでございましてね
今 婦人服と子ども服に
ターゲットを絞ってる訳ですよ。
そしてですね 是非とも
この大衆的な店をもって
販売したいと かねがね思っとる。
それにはね
ピッタリなんですね この場所が。
こういうふうに
客が気安く入れる場所がですね
いや 全く 喉から手が出るぐらい
欲しいですな!
申し訳ありませんが 母も やっと
私の気持ちをくんでくれて
セルフサービスの店にする事を
承知してくれましたから。
はい。 あっ そうなの?
はい。 あっ そうなんですか。
いや~ そうですか。
それは 残念ですな。 そうですか。
いや しかし まあ 仁君がやると
言うんならね うちの製品を
そこへ置いてもらったりなんか
する事もできるからね。
(仁)はい。
いらっしゃいませ。 奥に お茶の
ご用意ができておりますが…。
姉の初子です。
どうも どうも 川部でございます。
(初子)初めまして。
仁 お姉さん いらしたの?
ごきょうだいは
大学 行っていらっしゃる
妹さんだけかと思った。
姉といってもね
血は つながっていないんだけど。
この家の事を手伝っております。
よろしく お願い致します。
さあ どうぞ!
そんな大事な事 黙ってるなんて
ひどいじゃない!
おいくつ? お姉さん。
う~ん… 29か。
結婚は?
まだだよ。
嫌だ…。 29じゃ もう無理ね。
一生 このうちにいらっしゃるかも
しれないじゃない。
いい人だよ。 店の事も家の事も
よく やってくれるし。
仁 何にも分かってないんだから。
何だよ。
仁ちゃん 奥へ!
はい。 どうぞ!
こんな所で ホントに失礼致しました。
どこか ほかに 場所を設けてと
思いましたが
ふだんの ありのままを
見て頂いた方がいいと思いまして。
そうですよ。 私たちは
もう 客じゃないんですから。
いずれ こちらの家族になる
人間なんでございますからね。
いや~
しかし さすが ご商売ですな!
おいしい刺身を頂戴致しました!
今朝 揚がったばっかりで。
新しいだけが取り柄でございます。
そうですか。
いや~ しかし 驚きましたな。
奥さんがね セルフサービス方式のセミナーを
受けていらっしゃったとはね。
仁君 さっきの私の話なんてのは
「釈迦に説法」じゃないか おい!
(仁)いや 我々に黙って
京都 行って
既に セルフサービスを採用した店を
見学してきたみたいで…。
そう。
まあ それなら 何もかも 心得て
いらっしゃると思うんですが
どうせ この店を お建て替えに
なるんでしたらですね
やっぱり 敷地を
目いっぱい 使ってですね
できるだけ 大きい建物を
建てておおきになるんですな。
いや 商品が
1種類でも多ければ多いほど
利益も多いという事に
なりますからね。
まあ 理屈は そうなんですけども
そう簡単には まいりませんので。
いや あの… 仁君から
お聞き及びの事と思いますが
資金面の方は 私どもの方で
何とでも致します!
もちろん 一時的に融資して頂いて
支払いは 長期の分割って事に。
いや そんな心配しなくて
いいんだよ!
娘は こちらにね
もらって頂いたら
田倉さんは 娘の家なんだから
投資させて頂く!
とんでもございません。
川部さんに
そんな ご心配をおかけしては…。
資金ぐらいは 私どもで。
いやいや そのかわり
ちゃんと 見返りは頂きますよ。
うちの製品の売り場を
提供して頂きましょう。
売れますよ!
売れるよ ここならね!
いや 食料品目当ての客というのは
女性客が多いですからね。
仁君 この店が成功したらね
また どこかに
次の店を建てようじゃないか。
そうやって どんどん どんどん
店が増えていけば
うちの製品も売れる。
うちだって 方々に チェーン店を
持ってるようなもんだから!
そういうふうに考えればね
設備資金を出すぐらいの事は
当たり前の話じゃないか! ねえ!
ハハハハ!
いや まあ
気の長い話かもしれませんがね
10年先 20年先の事を
考えましょう。
精いっぱい 頑張ります!
(仙造)うん。
まあね そうと決まったら
早速 その設計士に頼んでですな
いろいろ 見積もりを
出させたいんだが…
どうだろうね そういう事は全て
うちの方に任せてもらえるかな。
悪いようにしないから。
(仁)お任せします。
(仙造)そう。 いや~ よかった!
やっぱり 伺ってよかったです。
何もかも うまくいきました。
どうか 今後とも 娘ともども
よろしく お願い申し上げます。
こちらこそ よろしく…。
はあ…。
あっ すいません。
すぐ お店 手伝います。
いいの いいの。 配達する物
みんな 包んじゃったから。
今日は 悪かったね
忙しい思いさせて。
仁ちゃんは?
うん。 送っていって
まだ 帰ってこないわ。
でも 無事に済んで 何よりでした。
道子さんっていう人も
しっかりしてるようだし…。
仁ちゃんには
お似合いかもしれませんよ。
仁ちゃん あれで 案外
気の弱いところがあるから。
商売やっていくには
あれくらいの人が
そばについてなきゃ。
しっかりしてるだけじゃね。
母親の しつけは
どうなってんのかね。
自分が食べた汚れ物ぐらい
運んでくるぐらいの気持ちが
あったっていいじゃないの。
お客じゃないんだから。
このうち 嫁に来るつもりならね。
母さん。
初ちゃんが せっせと運んでるのに
知らんぷりして!
あんたが このうちの人間だって
分かってて…。
お手伝いだと思ってるんでしょ。
まさか! 無神経なのよ!
母さん
最初から そんな目で見てたら
道子さん かわいそうですよ。
一人娘だっていうから
甘やかされて育ったんでしょ。
無理ですよ
大目に見てあげなきゃ。
どういう気持ちなんだろうね
仁は あんな女を…。
母さん! そんな気持ちじゃ
うまくいくのも いかないでしょ。
だって 言いたくもなるだろ。
娘が娘なら 父親も父親よ。
いくら 自分が
設備資金 出すからって
まるで 自分の店みたいに
「設計は任せろ」
「自分の会社の製品を置くコーナーを
作れ」なんて
あんな男に 指図される覚えは
ないもん! 大きなお世話だよ!
仁は仁で お金を出してもらうのが
ありがたくて
まあ あの男に ベッタリ!
「いいわ いいわ」で 資金を
当てにして ペコペコしてたら
今に この店 乗っ取りかねないよ
あの男!
母さん!
仁も仁だよ! いくらだって
ほかに 娘がいるっていうのに
よりによって あんな女と!
しかたがないでしょ。
仁ちゃんが好きなんだから。
あ~あ 親の意見も通らない
時代なんだから 諦めてますよ。
だけどね
あんな娘に乗り込まれて
おまけに あんな父親に
勝手なまねされたんじゃ
泣くにも 泣けやしないわよ。
たとえね
今に 店を模様替えするような事に
なっても
あんな男には びた一文
金の世話には ならないからね!
母さん…。
母さんだってね
設備資金ぐらい
なんとかなりますよ!
本当に もう!
今まで 自分の腕一本で生きてきた
おしんにとって
道子の父親の態度は
おしんの城へ
土足で踏み込まれるような気が
したのである。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
仁の結婚相手 川部道子が
父親の仙造と共に 田倉家を訪れ
おしんは 初めて 嫁になる娘と
その父親に会った。
…が 初対面から
おしんは 道子にも仙造にも
なじめなかった。
(仁)ただいま!
(初子)お帰りなさい!
ごめんね。 道子の親父さんがさ
どうしても コーヒー つきあえって
うるさいもんだから。
道子さんたち お帰りになったの?
ああ。 初ちゃん
今日は どうも いろいろと
ありがとうございました。 料理
おいしかったって 喜んでたよ。
簡単なものしか できなくって…。
そんな事ないよ。
ねえ 母さん
なかなか 腹の大きい男だろ?
事業の勘は さえてるし
商才にも たけてる。
だから
1台のミシンから始めた仕立屋が
あれだけの婦人子ども服メーカーにも
なれたんだよ。
あの親父さんがついてたら
もう 「鬼に金棒」だ!
(おしん)お前は どこまで
お人よしに できてんだろうね。
あの親父さんはね
このうちに 金をつぎ込んで
この店を 自分の
思うとおりにしようという
魂胆なんだよ。
あんな男の世話になったら
身ぐるみ 剥がされるような事に
なりかねないからね。 母さん…。
女親だと思って
バカにしてんだよ!
そんな見え透いた手に
誰が乗るもんか!
そりゃ 偏見だよ 母さんの。
何が 偏見だよ?
「新しい店の設計をさせろ」って
誰の店だと思ってんだい!
あんな男の勝手にされちゃ!
そんな言い方はないだろ。
道子の親父さんはね 今までに
随分と セルフサービス方式を
研究してきたんだよ。
俺たちは ずぶの素人だろ。
だから いろいろと…
親切なんじゃないか。
それを恨むような事 言っちゃって
どうかしてるよ 母さん。
母さんはね いざとなったら
誰に教わらなくたって
セルフサービスの店ぐらい
ちゃんと出してみせるよ。
そうは いかないんだって。
今度は 普通の店じゃないんだよ。
日本では まだ 経験のない
新しい試みなんだよ。
誰かに ついてもらわなきゃ。
人に かき回されるようなら
新しい店なんか出さない方が
いいんだよ。
母さん 今になって
また そんな…。
私はね あんたと道子さんの結婚
反対するつもりないよ。
あんたの女房なんだからね。
親が口出しをしちゃいけない
時代だそうですからね。
だけどね
この田倉商店は 母さんの店だよ。
誰にだって 余計な口出しなんか
させやしない!
あんただって
そのつもりでいるんだね!
仁ちゃん…。
少しは 母さんの気持ちも
察してあげなさい。
長い間 母さんと仁ちゃんとで
やってきた田倉へ
いよいよ
他人が入る事になるのよ。
どんなに すばらしい娘さんでも
母さんにしてみれば
面白くない事なの。
それが 人情ってもんなのよ。
しかも その父親までが 田倉に
入り込もうとしてるの見てたら
母さんじゃなくったって
カ~ッとするわよ。
母さんっていう人は
自分が苦労してきたから
他人には 人一倍
思いやりがあると思ってたけど
やっぱり 自分の息子の事になると
普通の母親になってしまうのね。
俺もね 母さんは
俺が どんな嫁さん もらっても
ちゃんと うまくやってくれる
人だとばっかり 思ってたんだよ。
今日 初めて お会いしたからね。
これから
おつきあいしているうちに
道子さんの事も
分かるようになるんだろうけど。
嫁さん もらうのも
楽じゃないな…。
そりゃ そうよ。 お嫁に来る
道子さんだって 大変。
道子さんと母さんの中に入って
うまくやるのは
仁ちゃんの役目なんですからね。
やっぱり…
母さんが 気に入った嫁さん
もらった方がよかったかな?
じゃあ 道子さんの事 諦める?
初ちゃん…。
そうでしょ。 だったら 仁ちゃんが
努力するほかにないじゃない。
お店の方は
母さんの思うとおりに…。 ねっ。
(征男)はい よいしょ!
お~!
よいしょ!
はいよ! はい!
あっ 母さん?
今日は ちょっと お暇
もらうからね。 どこ行くんだよ。
魚と野菜の仕入れ値は
ちゃんと書いてあるから
それを見て 今日の値を
つけとくれ。 (初子)母さん…。
夕方までには帰るつもりだけど
何かで遅くなっても
心配しないでね。
じゃあ 行ってきます。
えっ?
何だよ 行き先も言わないで…。
初ちゃん 聞いてるの?
ううん。 心当たりは?
♬~
ごめんくださいませ。
(香子)まあ おしんさん…。
御無沙汰しております。
よく いらして下さいました。
主人とも
時々 お噂してたんですよ。
さあ どうぞ。
主人も喜びますでしょう。
♬~
(香子)あなた おしんさんですよ。
(浩太)お元気そうで 何よりです。
浩太さんも…。
ちょうど 今 お薄にでもって
話してたところだったんですよ。
一緒に どうぞ。
♬~
おいしく頂戴致しました。
こんな静かな お住まいを
拝見しておりますと
私なんか 何のために
毎日 あくせく働いてるのかと…。
いや~ 私は 店の方は
もう 番頭に任せてありますから。
浩太さんは 若い時
地獄を見ていらしたんです。
せめて これからは 少しでも
ゆっくりさせて さしあげたいと
思って…。
地獄を見たのは
おしんさんも同じだ。
お互い つらい時代を
乗り越えてきた訳だから。
私は やっと
店からも解放されました。
私は まだまだ 修羅場です。
これは あの~
今朝 取れたばっかりの
伊勢エビと アワビです。
浩太さんが
お好きなものですから。
ありがとうございます。
おひさおばさんが
お元気な時分は
よく遊びに伺っては
頂戴しましたが
おひさおばさんが
亡くなってからは
もう あの浜へ
行く事もなくなって…。
懐かしいものを頂戴しました。
今夜は おしんさんと 久しぶりに
お酒でも召し上がって。
ああ。
では ごゆっくり。
お幸せなんですね 浩太さん。
まあ 何を幸せと言うのか
分かりませんが…。
あくせくするのは
もう ごめんです。
羨ましいです。
私なんか いつになったら
そんな身分になれますか…。
いや~ おしんさんは
苦労する事があるうちが
幸せな人じゃないかな。
実は 今日も
ご相談やら お願いやらで
勝手な時ばっかり
こうして お伺いして
申し訳ないんですけど
いざとなりますと
浩太さんしか
親身になって頂ける方が
ないもんですから
つい ずうずうしく…。
何でしょう?
浩太さんは
セルフサービス方式っていうの
ご存じでしょうか?
ええ 知ってます。
金銭登録機なんて
便利な物が出来たから。
おしんさん まさか…。
はい。
息子が ひどく熱心なものでして。
ただ かなり
資本が かかるもんですから
それだけ かけて
値打ちのあるものかどうか
まだ 何となく決めかねて…。
う~ん…。
私が もうちょっと若ければ
やってたかもしれないな。
おしんさんの店は
立地条件も申し分ないし。
ホントに そう お思いでしょうか?
私も 興味があって
一応 研究してみました。
理論的に言って
成功する条件は そろってる。
そう考えていいんじゃないですか。
しかし 驚いたな。
おしんさんに
まだ そんな意欲があるなんて…。
私も ホント 言うと 怖いんです。
今のままで やってれば
なんとか 食べていけますし
なにも 今更とも思ったり…。
でも 決めました。 やってみます。
今まで 何度も 丸裸になっても
ここまで やってきたんです。
もし 今度 失敗しても また一から
やり直せばいいんですから。
相変わらずだな おしんさんは。
ただ 今日も
銀行へ行ってきたんですが…
まあ 土地を担保に
融資は してくれるんですが
保証人の事が問題で…。
かなりの資本なもんですから
しっかりした保証人でないと…。
それを 浩太さんに
お願いしたいと思いまして…。
いや~ もう
私で お役に立つ事があれば。
ありがとうございます。
もう 何かって言うと
浩太さんを頼りにしてしまって…。
しかし それじゃ
いつまで たっても
おしんさん 楽にならないな。
しかたがありません。
これが 私の最後の意地です。
まあ 忙しいでしょうが
体に 気を付けて。
ねっ おしんさん。
(初子)母さん。
うん?
お茶漬けでも召し上がりますか?
いいの いいの。 今日は もう
十分 御馳走になってきたから。
どこで?
あんた かす漬け
ちゃんと漬けたかい?
そのつもりで 今日
アマダイ 仕入れてきたんだからね。
何 のんきな事 言ってんだよ!
こんな夜中まで
どこ ほっつき歩いてたのか
知らないけど
後に残された者は いい迷惑だよ
忙しい思いさせられて。
仁。 設備資金の事だけどね
やっと 銀行から
借りられる事になったの。
だからさ 川部さんのお父さんに
よく お話ししといてね。
あっ それからね
設計も それから 建築の方も
うちで やれる事になったから
はっきり お断りしとくんだよ。
どういう事だよ?
だって うちで工面できるものを
なにも 川部さんのお世話に
なる事はないだろ。
そんなバカな! 川部の親父さんは
そのつもりで…。
母さんだって任せたんじゃないか。
それを 今になって断るなんて…。
じゃあ どうして 最初から
断らないんだよ! もう遅いよ!
だって あの時は まだ
銀行で貸してもらえるかどうか
分からなかったんだもん。
母さん!
この店は 母さんの店だからね
誰の世話にも なりたくないの。
♬~
あ~ おいしい!
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(小坂)いいですね。
(次郎)いらっしゃいませ!
(仙造)あの~
奥さんは いらっしゃいますか?
あっ ちょっと お待ち下さいませ。
ええ。
(おしん)あ~ そうね。
(次郎)お内儀さん!
うん?
川部さんが お見えになりました。
こちらへ お連れしてちょうだい。
(仁)いいよ 俺が店の方 行くから。
仁 こちら お連れしたら?
だって まずいじゃないか
こんな打ち合わせしてるとこへ。
俺が喫茶店かなんか連れてくから。
ちょうどいいじゃないの。
お父さんにも プラン 見て頂いたら。
そういう訳にいかないんだよ。
どうして? だって 親父さんに
まだ 話してないんだよ
こっちで準備してる事。
あきれた。 あんなに はっきり
お断りしなさいと言っといたのに。
だって 俺だって
今日 連絡しようと思ったんだけど
まさか来ると思わないじゃないか。
じゃあ なおの事 お父さんに
ちゃんと お話ししとかなきゃ。
初ちゃん お連れしてちょうだい。
(初子)はい。
(仁)初ちゃん 初ちゃん!
仁 慌てて みっともないわよ!
お待たせ致しました。
あ~ いやいや この間は
どうも 御馳走になりまして…。
あの刺身の味は
まだ忘れられませんよ。
ろくな おもてなしも
できませんで…。 いやいや。
さあ どうぞ 奥の方へ。 はいはい。
どうぞ。 はい。
失礼します。
あれから 帰りましてね 早速
設計士に依頼したんですがね
いや 一時も早く 現場を見たいと
言うもんですから。
これ うちに古くから出入りしてる
小坂設計士でございます。
こちら 設計士の平田さん。
(平田)平田です。
そちらが 金銭登録機のメーカーの
高林さん。 (高林)高林です。
高林さんには
これまでの経験を生かして
いろいろ ご指導して頂いて
また 設計士さんにも
アドバイスをして頂いて
参考にさせて頂いております。
奥さんね そういう事は
全て うちの方でというお約束じゃ
なかったですか? はい。
ご好意は ホントに ありがたいんで
ございますけども
そんな事まで
お世話になりましては…。
いやいやいや 遠慮は ご無用だと
申し上げたはずですよ。
今度の店は
普通の店じゃないんですからね
十分 研究した上でないとね。
その点 小坂君っていうのは
よ~く勉強しとる。
ええ。 私の方でお願いした
平田さんも
アメリカの方で スーパーとかっていう店を
いくつも ご覧になりまして
その方面の事では よく…。
それから 高林さんも
最後まで ご協力下さるという事で
ございますから
専門の方 お二人に お任せすれば
もう 大丈夫だと思います。
奥さん。
申し訳ありません!
もっと早く お知らせしなければ
ならないと思ったんですが
何やかやと取り紛れまして
ご報告が…。
断れば済むという問題じゃ
ないだろ!
このセルフサービスの店っていうのはね
日本でも 新しい試みだから
私だって 一生懸命になってんだ!
それをね 何にも知らん素人に
勝手なまねされちゃ 困るんだよ!
大丈夫でございます。
その道にかけましては お二人とも
ベテランでございますから。
奥さん それじゃ 私たちの方は
一体 どうなるんでしょうな。
いや そりゃ 田倉商店はね
あなたのお店ですから
そりゃ あなたの好きなように
なすったらいいでしょう。
しかし 今度の店というのはね
失礼だが
設備資金は 私どもの方で
出させて頂く事になっとる。
つまり 私どもの方で
設計士や建築会社を
決めるというのが
常識じゃないですか?
まあ 私もね セルフサービスの店には
いろいろ 期待もしとるし
夢もあるんですよ!
それだけに 注文もある!
まあ そちらで
いろいろ 準備なすったのに
申し訳ないと思うんですがね。
いいえ。 申し訳ないのは
こちらの方でございます。
いろいろ ご心配頂きましたが
設備資金の方も 私の方で
どうやら 銀行から借りる事が
できるようになりました。
川部さんには もう ご迷惑を
おかけしないで済む事ができます。
いろいろ お心遣い頂きました
お気持ちだけは
ありがたく 頂戴しております。
奥さん あなたね 一体 これが
どれぐらい かかるものか
ご存じなんでしょうかね。
そりゃ もちろん この土地を
担保にして 借金なすったと
思うんですけれども
この程度のものでね
銀行が出すような金で
間に合うような…。
ええ 分かっております。
ですから
その範囲で なんとかできるように
今 いろいろとね。
ご心配は要らないと思うんです。
この建物を壊して
新しく建て直すとなると
大変な費用ですが
この建物を そのまま使って
建て増す事を考えれば…。
この ぼろ家…。
この家に継ぎ足すって言うのかね
君!
マーケットを造るんじゃないんだよ
君!
セルフサービスの店というのはね
明るくて 清潔で 庶民的で
しかも 入ってくるお客さんに
ハイクラスの満足感を与える雰囲気を
持っていなきゃいけないんだ
それは!
いや… 君たちにね
私の考えるイメージは 分からんよ!
今年の暮れには 開店したいと
思っております。
まだまだ これから お力添え
頂かなければなりませんので
何分 今後とも
よろしく お願い致します。
(波江)人を バカにして!
わざわざ
設計士さんまで連れてったのに
いい恥かかされたじゃ
ありませんか!
(道子)
それならそうと 仁も ひと言
断ってくれればよかったのに。
じゃあ 田倉のお母さんは
うちの方の指図は 一切
受けたくないという事なんですね。
そうとしか思えないでしょ!
なかなか したたかな ばあさんだ。
ありゃ どうも一筋縄ではいかんぞ
こりゃ。
仁さんも仁さんね! お母さんに
何にも言えないんですか?
道子。 仁君との結婚の事は
諦めた方がいいかもしれんな。
あんな母親に 首根っこを
押さえつけられてるような
男の所に行ったって
しょうがねえだろうが。
まだ 今なら 間に合うんだ。
お父さん…。
(波江)そうね。
仁さんは なぜ うちで 設備資金を
出そうって言ってるのか
十分 承知してるはずでしょ。
だのに それさえ お母さんに
押し切られるようじゃ
先が思いやられるもんね。
大丈夫! 私がついてる!
お父さんが
田倉商店を足掛かりに
うちの製品の販路を広げようって
言うんだったら 私が仁に
そうさせればいい事でしょ。
お金 使わないで
それが できるんだったら
こんな結構な事ないじゃない。
そんな甘い事が通じる
おふくろさんじゃないよ。
今度の事で それが よく分かった。
お前みたいな小娘が
太刀打ちできる相手じゃないんだ。
泣かされるのが オチだ。
姑に泣かされるなんて時代は
終わったの。
仁さえ 私の味方に
しっかりしとけば
田倉のお店なんて
どうにだってなるんだから。
お前は まだまだ
あの ばあさんの事が
よう分かっとらんらしいな。
私 そんなに弱虫じゃないもん。
それに 同居なんてするつもり
全然ないし…。
ねえ 父さん お店の近くに
うち1軒 買ってよ。
私と仁は そこで暮らすから。
道子な… 田倉の出方によっては
父さん お前たちの結婚
認める訳にいかんからね。
お父さん!
大事な娘 やるんだ。
踏みつけにされて たまるか!
母さん。 でも これだけのものが
ホントに 銀行から借りる金だけで
できるのかな?
銀行で融資してもらえる範囲で
どれだけのものが建てられるか
設計プランを
立ててもらったんだから…。
ふ~ん。
でも 設備は どうするんだよ?
冷蔵庫とか陳列ケースとか
肝心の金銭登録機は?
高林さんが ちゃんと見積もって
みんな 予算の中 入ってんだよ。
へえ! 新しいうちの方に
2階がついてるだろ。
うん。
それ あんたたちの部屋だよ。
へえ 驚いたな! ねえ
でも よく 銀行が オーケーしたね。
土地のおかげだよ。 評価額が
随分 上がってたんだから。
それに うちの業績も
認めてもらえたんだろうね。
保証人も
立派な方がなって下すったし…。
また 並木さんっていう人か?
せいぜい 頑張って
できるだけ ご迷惑を
かけないようにしないとね。
ねえ 母さんと並木さんって
どういう知り合いなんだよ?
お友達。
(仁)だから どういう?
あんたには 関係ないよ。
また いつも それだよ。
母さんが
ここまで やってこれたのも
並木さんの お力添えが
あったからこそなんだよ。
それだけは
忘れないでちょうだい。
ねえ 何してる人なの?
あ~ いい気持ち! ありがとう。
さあ 寝ようか。
母さん。 おやすみ。
(百合)お茶 入ってますよ!
(弟子たち)はい!
お茶 冷めないうち どうぞ!
(弟子たち)はい!
どうぞ!
どうも。
初子さんから お手紙が来てます。
(希望)店を建て増して
広くするそうだ。
とうとう セルフサービス方式とかの店に
する事になったらしい。
へえ。
起工式のようなものをやるから
その時 暇をもらって
帰ってこないかって…。
工事が始まったら 帰ってきても
落ち着かなくなるからだってさ。
帰っていらっしゃいまし。
奥様も お待ちになって
おいででしょう。
そうだな。 百合ちゃんの事も
心配してるだろうし…。
この手紙にも
百合ちゃんの様子を聞いている。
元気だって…。 先生や奥様に
かわいがって頂いて
幸せに
ご奉公させて頂いてますって…。
本当か?
こういう静かな暮らしができて
本当に幸せだと思ってます。
それに 皆さん
それぞれに 黙々と お仕事に
打ち込んでいらっしゃいます。
そういう方たちの中にいると
何だか とっても安らいだ気持ちに
なれるんです。
そういえば
奥さんが おっしゃってた。
この辺じゃ
若い娘は 勤まらないんだって。
寂しいし
楽しい事なんてないからね。
百合ちゃんは
不思議な娘だってさ。
え~!?
私 土の匂いも好きです。
作業場で 皆さんが ろくろを
回していらっしゃる時の
ピ~ンと張ったような空気も
好きです。
かまどに 火を入れてる時の
あの炎の色も大好きです。
ここに置いて頂いて 今までの事
何もかも忘れられました。
できたら 一生 ここにいたい!
じゃあ 母さんと初ちゃんには
そう伝えとこう。
きっと 安心するよ。
はい。
♬~
おっ 希望!
お前 明日の起工式のために
帰ってきてくれたのか?
田倉家の祝い事だ。 僕も
田倉の家族の端くれだからね。
母さん 奥にいるよ。
(希望)おう!
ただいま!
あ~ やっぱり 帰ってきてくれた。
手紙 ありがとう いつも。
百合ちゃんは?
ああ。 大丈夫だよ!
百合ちゃんは ああいう世界が
性に合ってるのかもしれない。
黙って よく働いてる。
先生や奥さんにも 喜ばれてるよ。
よかった!
希望 お帰り!
ただいま!
母さん。
うん?
母さんも とうとう
仁に押し切られたんだね。
初めはね
仁に押し切られてたんだけど
いざ やりだしたら
これが 母さん最後の
正念場だって気がしだしてさ。
誰の世話にもならず
母さん一人でやってみようって
気になったんだよ。
田倉しん
もう一花 咲かせてみせるからね。
はい。
これは 僕からのお土産です。
うまそうでしょ?
おしんを駆り立てたものは
嫁になる道子の父親への
意地であった。
…が それが 55歳のおしんに
また 新しい人生を歩ませる事に
なったのである。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
(おしん)悪いけど
じゃあ 30人分 お願いします。
うん。 余るのは いいけど
足りなくなるの
みっともないからね。 うん。
えっ? うん。 あっ 11時ね。
結構よ。 じゃ よろしく。 どうも。
(希望)起工式っていったって
建て増すだけなんでしょ?
30人も 客が来るの?
やっぱり 大変なんだな。
ホントはね うちで お料理を作って
振る舞わなきゃ
いけないんだけど
そんな事したら
女どもが大変だから
まあ 仕出し屋のお弁当で
済ます事にしたのよ。
驚いたな。 母さんは 新しい店には
反対だとばっかり思ってたんだ。
そこまで
乗り気になってるなんて…。
結局
仁が 嫁さん もらうとなると
母さんも そうしなきゃ
ならなくなっちまったのか。
(仁)いや 俺の結婚とは
関係ないんだよ。
けど 嫁さんの親父さんが
しつこく
勧めてたんじゃなかったのか?
金まで出すって言うんだろ?
びた一文 出してもらってないよ。
全部 母さんが工面したんだから。
どうして?
仁は
そのつもりだったらしいけどね。
新しい店を出すのに 嫁の実家の
世話には なりたくないからね。
だからって 母さんが…。
母さんの意地かもしれない。
誰の世話にも なりたくないの。
いくら 意地だって
そんな無理してまで
わざわざ 危ない橋 渡る事は…。
母さんもね
初め そう思ってたのよ。
でもね 融資のために 何回か
銀行に通ってるうちに…
おかしなもんだね
だんだん やる気になってきてさ。
それも 自分が やりくりした
お金だと思うと
何だか 急に 欲も出てきて…。
慌てて 新しい店のシステムなんか
勉強しだしてさ。
そしたら 新しい店やるの
面白くなっちゃった。
(希望)母さん…。
ハハハ!
55にもなって 冒険するというのは
おっくうだし
まあ 不安でもあったんだけど…。
だけど 考えてみたらさ
たとえ 失敗したって
自分が築き上げた財産だもの
裸になったって 誰に文句言われる
筋合いもないと思ったら
何だか
急に 気が軽くなっちゃったのよ。
これも 母さんの生まれ持った
因縁かもしれないね。
まっ 母さんが好きでやるんなら
何も言う事はないよ。
おめでとう 母さん。
さあ 母さんも飲んで!
ありがとう!
はい。
はい。 お~!
ああ…。 でもさ もし 失敗したら
こうして 希望と一緒に
お酒 飲むのも
最後になるかもしれないよ。
母さん…。
心配するなよ 母さん。
いざとなったら
道子の親父さんが ついてるよ。
あんたがね 誰と一緒になろうと
母さん 何にも言わないよ。
でも 嫁の実家とは
一切 関係ないんだからね。
この店には
指一本 触れてほしくないね!
母さんの鼻っ柱の強いのにも
参るよ。
仁。 お前は 新しい店を出す事が
夢だったんだろ?
うん。
それが 母さんも賛成してくれて
母さんの力で実現するんだ。
もう 道子さんと一緒になる理由は
無くなったんじゃないのか?
それでも 道子さんと
結婚するって言うのか?
田倉商店にはな 田倉商店に
ふさわしい女房ってものが
必要なんだよ。
道子さんには その資格があると
思ってるのか?
ああ。 しっかりしてるし 明るいし
おふくろや俺が 何かあっても
ちゃんと 店を任せられる女だ。
実家だって 頼りになるしな。
おふくろがな
いくら 意地 張っても
商売ってのは いつ 何があるか
分かりゃしないんだよ。
この店 やっていくにしても
おふくろ一人の力じゃ
どうにもなりゃしない。
いろんな人の協力が必要なんだよ。
道子の親父さんなら
力になってくれるぞ。
何かあってもな
娘が かわいかったら
絶対に うちの店
潰すような事はしないさ。
滑り止めって訳か?
お前はな 自分に責任がないから
そういう事が言えるんだよ。
田倉商店は 母さんが
血の汗を流すような苦労して
ここまでに してきたんだよ。
新しい店をするにしても
失敗は 許されないんだよ。
俺が店を継ぐ以上 俺には
責任ってものがあるんだよ。
お前が何と言おうとな 俺には
何よりも それを優先するんだよ。
仁…。
お前は いいよ。 自分の事さえ
考えたらいいんだもんな。
気楽な身分だよ。
お前には
俺の気持ちなんか 分からないさ。
初ちゃん もう 休んだ方が
いいんじゃないのか。
明日 大変だぞ。
じゃあな。 おやすみ!
(初子)いいの いいの。
たまに 帰ってきたんじゃないの。
ゆっくり 飲みなさい。
母さんは?
明日の着物の支度じゃないかしら。
「やっぱり 紋付きだろうか」なんて
言ってたから。
あっ 初ちゃんだって
明日の支度 あるんじゃないの?
僕なら いいよ。
私なんか ふだん着でいいの。
どうせ 下働きなんだから。
初ちゃんだって うちの家族じゃ
ないか。 起工式にも出て…。
私が そんなものに
顔出ししてたら
お客様の接待の支度が
できなくなるでしょ。
いつまでたったって 初ちゃんは
重宝に使われるだけなんだね。
そろそろ 考えないと…。
仁にも 嫁さんが来るんだよ。
また そんな心配!
だって…。
新しい店になったら なったで
今より もっと
忙しくなるだろうし
仁ちゃんに お嫁さんが来たら
奥の事は お嫁さんに任せて
私は お店へ出るわ。
その方が 気が楽だし…。
けど 一生 そんな事してちゃ…。
あっ 半襟ですか?
私が つけときます。
いいんだよ
あんただって 疲れてんだから。
母さん。
悪いわね。
母さん。
うん?
初ちゃんの結婚だって
考えてあげないと。
(初子)希望ちゃん!
そうなんだよ。
時々 いいお話だってあるのに
肝心な初ちゃんが
その気にならないんだから。
あんたからも よく言っといて。
私は もう…。
29にもなったら
後妻の口しかないし
今更 そんな苦労は たくさんです。
母さんのそばに
置いて頂けるんだったら
一生 それで…。
けど 仁に 嫁さんが来たら
気兼ねするだろ? やっぱり。
バカな事 言うんじゃないよ。
初ちゃん うちの娘だよ。
仁の嫁に 大きな顔なんか
させやしないよ。
母さんが ついてんだから。
母さん。
♬~
早くしないと
もうすぐ終わるわよ。
乾杯の時は あなたたちが
お酒を ついでさしあげてね。
(2人)はい。
(仙造)いや~ 本日は どうも
おめでとうございました。
ありがとうございます。
(初子)さあ どうぞ。
あ~ どうも!
お天気もよくて 無事に済んで
何よりでございましたね。
わざわざ 御足労頂きまして…。
何にもございませんけど
どうぞ ごゆっくり。
私ども すぐ失礼致しますから。
あの~ 最終的な設計図
出来上がったかな?
それ 拝見しまして…。
平田さん。
(平田)はい。
え~っと 古い建物は
柱だけを残して 壁をぶち抜き
増築部分を連結します。
(仙造)いや~ これは
この間 見せてもらったものと
変更は ないようだね。
私の言ってるのは
売り場の配置図なんだけど。
売り場の配置は まだ最終決定じゃ
ないんですが…。 どうぞ。
高林さんのご指導を得まして
まあ 最初は その程度から
始めてみようと思いまして。
(高林)普通
生鮮三品と言いますが
奥様のご意向で 食肉類は外して
魚と八百物に 重点を置く事に。
あとは 一般食料品 調味料
菓子 日用雑貨…。
ちょっと待ってくれ。
衣料品コーナーは どこにある?
(高林)今回は 見送ろう
という事に…。
(仁)えっ?
何?
最低限の商品を置いても
もう いっぱいで…。
やっぱり 狭いんですね。
それは
話が違うんじゃないですか?
うちの製品を置くという
約束だったでしょ?
それはないよ 母さん。
俺にも黙って そんな事。
だって 自信がないんだよ。
洋服なんて扱った事ないからね。
売り子は
専門の知識の持ってる者を
うちの方から送り込むと
言ってあるんだ!
衣料品は スペースを取る割に
そう売れる物ではありませんし
効率が悪いもんですから…。
それを売るのが
商売というもんじゃないか!
うちから 直接 卸すんだ!
問屋を通さない分だけ
安く売れるんだよ!
売れないはずはない!
第一 私に相談もしないで 効率が
悪いもクソもないじゃないか!
もう一度
よく検討するって事にして…。
相当 安く卸して頂けるんでしたら
まあ 考えてもいいけどね。
じゃあ その事は また後で…。
本当に 申し訳ありませんでした。
何しろ おふくろは
何にも分からないもんで
金銭登録機から来た男の
言いなりなんですよ。
申し訳ございませんでした。
そもそもね 今度の話は
私が勧めた事なんだよ!
その私を無視するなんて
お母さん あんまりじゃないか!
こんな事ならね
道子を嫁にやる事も
考えなきゃいかんかもしれんな。
いや お父さん…。
(道子)大丈夫よ。
私が 仁のそばにいたら
二度と こんな事させないから。
ねっ 仁。
今度の事も 私が
知らなかったもんですから…。
とにかく おふくろには
よく言っときます。
ねえ 売り場のスペースが
ないんだったら
私たちの部屋を
売り場にすればいいじゃない。
増築する分の2階に
造るんでしょ?
日用雑貨なんて 2階で十分よ。
そうだ。 そうだな。
日用雑貨なんてのは
毎日 買う物じゃないし
本当に欲しい客だけを
相手にするんだから
どこに置いたっていい訳だよ。
でもね 衣料品は
そうはいかないんだよ。 いいか?
パッと目について初めて
買おうかなって気を
起こさせる物なんだから あれは。
でも 僕たちは どこに住むんだ?
父がね 店の近くに
1軒 うち 買ってくれるって。
そこから 通えばいいの。 今日もね
1軒 出物があるって言うから
ついでに見とこうと思って。
仁も一緒に行ってね。
いや しかし…。
近頃は
親と子が 別々に暮らすなんて
常識だそうじゃないか。
いいもんだぞ
夫婦水入らずってのも!
ハハハハハハハハ! ハハハハハ!
希望ちゃんのセーター2枚と
下着も 買っといたの
入れてあるから。
それから 百合ちゃんにも セーター。
体に気を付けるように言ってね。
はい! いつも すいません!
先生のお土産も
中 入れといたから
よろしく お伝えしてちょうだい。
母さん。
うん?
今の話だけど 仁は 道子さんと
結婚する事に決めてるんだ。
母さんが 道子さんの親父さん
怒らせるような事したら
つらいのは 仁なんだからね。
分かってるよ。
だけど 魂胆が
見え透いてるんだもの。
それに 嫁の父親が 中へ
入ってこられたら 面倒だしね。
売り場を提供するぐらい
いいじゃないの。
最後にはね
そうしなきゃならない事ぐらい
母さんだって分かってますよ。
でも なめられちゃ
たまんないわよ。
初めから 言う事 聞くよりも
あのくらい高飛車に出て
ちょうどいいんだから。
(希望)まあ
うまくやって下さいよ。
母さんが 道子さんや 道子さんの
実家と トラブル起こしたら
つらいのは 仁なんだからね。
しかも 仁と道子さんは
この家に同居するんでしょ?
それとも 別居?
同居に決まってますよ。
店の者が 別の所に暮らしてたら
何の役にも
立ちゃしないじゃないの。
それに 新しい店になったら
従業員だって増えるんだから。
仁の嫁だって
立派な労働力なんだから
しっかり やってもらわなきゃ。
だったら なおの事
仲良く やっていかなきゃ。
やれやれ 近頃は 嫁にもらう方が
嫁の実家に 気を遣って
ペコペコしなきゃならないんだから
時代も変わったんだよね。
(希望)母さん…。
母さんの若い頃は
嫁の顔色を見る姑なんて
いなかったわよ。
僕は 田倉の家や母さんの事を
心配して
余計な事も
言わせてもらってるんです。
波風が立ったら 母さんだって
嫌な思いをする事になるでしょ。
母さんが 姑で苦労してたのが
つい 昨日のように思えるのに
もう 自分が
姑になっちゃったんだもんね。
ありがとう。
新しい店が完成すると同時に
仁と道子は
結婚する事になっていた。
そして 新しい店の苦労と一緒に
嫁と姑の苦労が
おしんに
始まろうとしていたのである。
♬~
(テーマ音楽)
♬~
起工式も終わり 田倉商店の
増築工事が始められた。
セルフサービス方式に踏み切った
おしんは
今までどおり 古い店で
魚と八百物の商いを続けながら
新しい商売の勉強に
夢中であった。
(おしん)征男ちゃん
あんた 御用聞きは?
(征男)もう 御用聞きには
回らなくていいって 若旦那が。
新しい店になったら
どうせ やめるからって…。
(仁)お帰り!
どうだった? 東京のセミナー。
あんた 何で 御用聞き やめろって
言ったの?
新しい店を開けるまでは
今までどおりの商売するって
言ってたでしょ!
人手が足りないんだよ。
大した もうけにもならない事で
忙しい思いする事ないだろ。
かい性なしばっかり そろって!
母さん…。
母さんが ちょっと うち空けると
すぐ これなんだから!
もう 御用聞きは いいだろ。
母さん 帰ってきたらね
今まで回ってた所には
ちゃんと挨拶して
事情 話すつもりでいたんだよ。
新しい店の宣伝もしてね。
(初子)母さん。 仁ちゃんだって
もう 子どもじゃないんですよ。
仁ちゃんは 仁ちゃんなりに考えて
いろいろ やってるんです。
少しは 仁ちゃんの意見も
聞いてあげなきゃ。
いつまでも 母さんみたいに
文句ばっかり言ってたら…。
だって 文句 言わなきゃ
ならないような事ばっかり
するんだもの!
母さんのお留守の間は
魚も野菜も
ちゃんと 仕入れに行って
お店だって
立派にやってるんですよ。
いい後継ぎですよ。
結婚の事にしたって
これからの田倉商店に
ふさわしい人じゃなきゃって
決めたんですって。
仁ちゃん
お父さんがいないでしょ。
やっぱり しっかりした父親が
欲しいんですね。
道子さんの お父さんなら
強い後ろ盾に
なってくれるからって。
後ろ盾が聞いて あきれるよ。
そんなふうに言っちゃ
身も蓋もないじゃありませんか。
お互い 助け合うってつもりで。
じゃなきゃ 仁ちゃん
かわいそうですよ 間に挟まって。
うちの方だって いつ 何があって
道子さんのお里に
お世話にならなきゃならない時が
あるかも分からないんですよ。
分かったわよ。
川部の製品を売るコーナーを
作りゃいいんだろ?
仁のやつ 私の留守の間に
すっかり 初ちゃん
味方に引き入れちゃって!
希望ちゃんだって
母さんが 意地 張ってるの
心配してたじゃありませんか。
それから 結婚式の事ですけども
開店してからだと
きっと忙しくて
「お式だ 披露宴だ」って言ってる
暇がないでしょ。 だから
その前に済ませてしまった方が
いいんじゃないですか?
初ちゃん それも
仁から頼まれて言ってるの?
私も その方がいいと思って…。
あ~ とうとう
あんな娘と結婚するのかね。
ほかに女がいない訳じゃないのに。
母さん! まだ そんな!
もう 結婚するんだったら
いつだって いいわよ。
母さん…。
うん?
道子さん
かわいがってあげて下さいね。
大事にされてた親元 離れて
たった一人で知らない所に
お嫁に来るんです。
どんなに 心細いか…。
そりゃ そうだね。
≪(平田)お邪魔します!
(初子)どうぞ!
あっ お邪魔します。
お帰りになったと聞きましたんで。
いかがでしたか? 東京は。
ええ。 自分で 店 始めるってのも
ホントに大変だって事を しみじみ!
金銭登録機 扱うんだって
大ごとですものね。
そうなんでしょうね。
あっ 早速ですが あの~
2階売り場について
ご相談したい事が…。
2階に 売り場なんてないわよ。
あの~ 若坊ちゃんご夫妻の部屋を
売り場に変更なさったでしょ?
あそこです。
何の話かしら?
設計変更は してませんよ。
おかしいな…。
あれ? 奥さんが留守中に
若旦那から お話があって…。
私は
奥さんのご意向だとばっかり…。
(仁)そうですか。
あっ 母さん。 こちらね
外国の食料品や雑貨を輸入してる
商社の方なんだ。
道子の親父さんの紹介で
来られたんだが
こちらから仕入れればね
ほかの問屋から
奥様でいらっしゃいますか?
私 こういう者で…。
川部社長とは
昵懇に願っております。
そりゃ どうも。 ご覧のように
今 建築中でございますので
また 落ち着いたら
ご連絡させて頂きます。
どうも御苦労さまでございました。
母さん!
ちょっと 話があるんだよ!
それでは いずれ改めまして また。
すいません。 親父さんに よろしく
お伝え下さい。 失礼します。
母さん あれはないだろ。 せっかく
親父さんがよこしてくれたのに
ろくに 話 聞かないで
悪いじゃないか!
あんた 新しい店の2階
売り場にするんだって?
ああ。 だって 少しでも
広い方がいいだろ? 売り場は。
だって あれは あんたたちの
住まいのはずでしょ!
俺たちは
別に 住むとこ 見つけたんだよ。
ちょっと遠いけどさ
通えない距離でもないし…。
もうちょっと近くにないかなと
思って 探したんだけどさ
結局 適当な所がなくて…。
道子さんの希望かい?
いや 俺だって
その方がいいと思ってんだよ。
だって 同居するとさ
いろいろ やっかいな事 多いだろ。
母さんに 迷惑かけないよ。
家だって 親父さん
買ってくれるんだから。 ねっ。
道子さんに
明日 うちへ来てもらっておくれ。
いいね?
どうして?
道子さん
うちの嫁になる人間だよ。
ゆっくり話し合っておかなきゃ
ならない事だって あるんだし
母さんの気持ちだって
よく聞いといてもらわないとね!
(仁)おう!
(道子)何? 急用って。
悪いな 突然 呼び出して。
たまには 仁の方から
名古屋へ来てくれたらいいでしょ。
ここじゃ ゆっくり会う事なんか
できないじゃない。
うん。 でも 今 そんな暇
ないんだよ 新しい店の準備で。
じゃあ 今日は いいのね。
話なら どこか行って ゆっくり…。
ああ…。
おふくろが待ってるんだよ。
お母さんが?
うん。
お母さんに会わせるために
呼んだの?
しかたないだろ。
おふくろと君は
まだ よく知り合ってないんだよ。
結婚前に おふくろが君に会って
いろいろ 話しときたいって気持ち
無理ないじゃないか。
何よ。 それならそうと 電話で
言ってくれたらいいじゃない。
今頃 言うなんて だまし討ちだわ。
何 言われても 黙って
聞いてりゃいいんだよ。 なっ。
それで おふくろの気持ちは
済むんだから。 頼むよ。
よく来て下すったわね。
道子だって 忙しいんだよ。
でも 母さんが どうしても
話したい事があるって言うから。
そりゃ 悪かったね。
いえね あんたたちが
別居するって聞いたもんだから
今のうちに
はっきり 私の気持ちを
聞いといてもらおうと思って…。
道子さん 最初に言っときます。
私は 別居は反対。
というよりも
別居は 認めませんよ。
そりゃね 今 別居するのは
当たり前の時代かも
しれないけど…。
もし 仁が サラリーマンだったら
それも いいでしょう。
だけど あなたは
商人のお内儀さんになるんですよ。
店と別の所へ住んでたんじゃ
とっても 商人の女房なんて
務まりゃしないわ。
うちの事をやりながら
店が忙しかったら
店の事も手伝わなきゃならない。
ここへ住んでなきゃ
とっても できる事じゃないの。
そうでしょ?
母さん…。
いや そりゃね
何人でも 従業員が雇えるような
ゆとりのある商売だったら
私だって
道子さん 当てにしないわ。
でもね 何てったって
借金だらけで始める
店ですからね
家族の労働力がなくちゃ
とっても やっていけやしない。
今まで うちの事は ほとんど
初ちゃんが
やっててくれたんですけど
道子さんが いらして下すったら
道子さんに やって頂くのが
筋でしょ?
あなたは
田倉家の主婦ですからね。
今更 そんな事 言ったって
遅いんだよ。
俺たちは もう 住む家の手付金
払ってしまったんだから。
あんたたちが
何を考えてるか知らないけど
道子さんが
田倉の人間になるつもりなら
同居してもらいます。
誰の店でもない。
あんたたちの店なのよ。
それが嫌だったら
田倉の嫁になる資格は ないわね。
(仁)母さん!
同居できないって言うんなら
無理に うちの嫁に
なって下さらなくても 結構よ。
♬~
(道子)失礼します。
(仁)道子!
母さん!
道子!
道子!
♬~
あんな事 言って
もし 道子さんと
こじれるような事にでも
なったら…。
こっちの気持ちは はっきり
言っといた方がいいんだよ。
「いいわ いいわ」で ズルズル 結婚して
後で あれこれ言ったって
もう 遅いんだからね。
でも…。
それで この話が壊れるようなら
それだけの女なんだよ。
でも 仁ちゃんが…。
あんな女の言いなりになって
うちを出るって言うなら
出ていきゃいいんだよ。
そんな情けない男
田倉を しょっていく力なんて
ありゃしない。 未練は ないね。
母さん!
結婚前にね あのくらい はっきり
言っといて ちょうどいいの!
いい加減な気持ちで 嫁に
来られちゃ こっちが迷惑するよ。
まあ それでも来るって
言うんなら
それ相当の覚悟は
してくるだろうからね。
(波江)全く 人の娘を
何だと思ってんだろう?
やっぱり 諦めた方がいいよ。
そんな きつい姑さんと一緒に
暮らせるはずないだろう!
いびり殺されちゃうよ!
(仙造)ハハハハハハ!
(波江)あなた
笑い事じゃありませんよ!
(仙造)いやいや
しかし よく考えてみるとね
田倉のおふくろさんの
言ってる事も 一応
筋は 通ってるんだよね。
店やってるうちへ
嫁に行くんならだよ
そこの亭主や家族と
一緒に暮らして 一緒に働くって
当たり前の事なんだもん。
(波江)あなた!
(仙造)それが嫌だったら 仁君と
きっぱり別れりゃいいじゃないか。
そんな無責任な!
お前が決めたんだぞ。
お前が嫁に行くと言ったんだよ。
姑の苦労するのは 誰でもないんだ
お前なんだからな。
お父さんから
田倉のお母さんに話してよ!
こっちは あくまでも
別居が条件だって!
何を言ってるんだよ!
同居が嫌だったら
仁君と別れりゃいいんだ。
私は 仁と結婚したいの!
(仙造)じゃあ 同居するしか
ねえんだよ!
お父さん!
田倉のうちはな 今 新しい店で
一か八かの大勝負を
しようとしているんだ。
田倉の家族になりたかったら
みんなと一緒になって
その新しい店を盛り上げようと
努力するのが 嫁の務めなんだ。
もしも お父さんが
田倉のおふくろさんだったら
やっぱり そういう嫁が欲しいね。
うん。
そういう気持ちのない女だったら
断られたって 当たり前なんだ。
お父さん。
一体 どっちの味方なの?
(仙造)お前のためを思って
言ってるんだぞ。
田倉のおふくろさんの
意地っ張りにも
ちょっと参ったがね
やっぱり 性根が据わってるな。
近頃はな 年寄りが
若い者に遠慮して
言いたい事も言えずにいるのに
道子を呼びつけて ピシャッと
引導 渡すなんて 大したもんだ!
お前なんか 嫁に行ったって
とても務まる相手じゃねえんだ。
やめちまえ やめちまえ。
やめろ! うん? ハハハハハハハハハ!
♬~
≪(初子)仁ちゃん お夕飯よ!
仁ちゃん!
ほっときゃいいよ。
♬~
難しいんですね 結婚って…。
雄が生きててくれたら
こんな思いしなくて済むのにね。
母さん…。
仁は うちを出ていくだろうと
おしんは 覚悟していた。
親や家を捨てても
道子の方を取るというのなら
それも 男としての
一つの生き方なのであろう。
それはそれで立派だと
おしんは 思っていた。
…が 一人で
背負っていかなければならない
新しい店の事を思うと
さすがの おしんも寂しかった。