1人でも「寂しくない」未婚者が増える背景

はたして孤独は全員に共通する悪なのか

孤独は本当に悪なのでしょうか(写真:syolacan/iStock)

「常に部外者だった。どこにも属したことがない」――。

宇多田ヒカルさんの言葉です。今年6月に放送されたNHK『SONGSスペシャル』において、彼女の抱える「所属感のない孤独」が自身の口から語られていました。

藤圭子さんを母親に持つという特殊な家庭環境、両親の離婚、米国移住や度重なる転校など、少女だった彼女にとって、家庭も学校も「所属の安心を得られる居場所」ではなかった。それは、デビュー後多くのスタッフに囲まれた中においても同様だったようで、結局彼女は「所属感のない孤独」と常に向き合い続けてきたのかもしれません。

所属を失うことで孤独を感じる

こうした「所属感のない孤独」を感じている若者も多いのではないでしょうか? いや、若者だけではありません。定年を迎えた高齢者も、フリーランスで働く人も、離婚や死別などでソロに戻った人も、今後多くの人たちが「所属を失うことでの孤独」を感じるようになるでしょう。それは、個々人の問題ではなく、もはやコミュニティというものが所属によって成立しえなくなるからです。

この連載の一覧はこちら

かつて、地域・家族・職場といったコミュニティは、「人々の居場所」でした。そこに所属している人々は、「自分はこのコミュニティの一員だ」という安心感が得られます。

だからこそかつてのコミュニティは「ウチとソト」の境界線を明確化して、ウチの安心を強固なものにしていたわけです。

しかし、こうした安心できるコミュニティは、社会学者のジグムント・バウマン氏やウルリッヒ・ベック氏らの予言どおり融解し、不安定で流動的な「個人化する社会」に移行していきます。

事実、地域のコミュニティは都市部ではほぼ消滅していますし、職場のコミュニティもかつてのような安心は提供してくれません。昭和的な大家族形態も少なくなり、そもそも非婚化で家族コミュニティを持たない人も増えています。所属の安心が失われていくわけです。だからといって、未来は「暗黒の孤独社会」になるのでしょうか?

次ページイギリスでは孤独担当大臣を新設
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • この新車、買うならどのグレード?
  • 日本人が知らない古典の読み方
  • 今さら聞けない競馬のキホン
  • 森口将之の自動車デザイン考
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
262

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • NO NAMEb9e295ba6ab6
    心底愛せるパートナー、家族を持てた人は素晴らしい。
    私にはそんな相手見つかるとは思えないし、妥協するくらいなら一人が快適。
    up997
    down168
    2018/11/6 06:56
  • NO NAMEb5516da4a0fe
    何が嫌って、本当に好きで一人でいるのに「孤独」とか勝手なレッテルをはるところ。そのうえ、上から目線で理解してやろうとか救ってやろうという姿勢が心底気に入らない。あんたらと一緒に居るのが気分悪いから一人でいるんだよ。特に子供については本当は欲しいんだろうとか、誰でも子供好きと思わないで欲しい。
    分かったような顔していても大勢で一人を指差して嗤っているだけなんだよね。
    up781
    down133
    2018/11/6 08:43
  • NO NAME6fd3e74627b5
    一人でいると孤独感
    二人でいると劣等感
    三人以上なら疎外感
    それなら孤独を選ぶなんて20年前からネットでは言われてましたね
    up742
    down123
    2018/11/6 08:08
  • すべてのコメントを読む
トレンドウォッチAD
米国・イランのチキンゲーム<br>本質を知るための5大論点

ソレイマニ少将の殺害、報復攻撃と、米国とイランの対立が先鋭化し、年頭から世界を震撼させました。中東情勢が激動する中で、注視すべき事態の本質とは。国際政治からイラン経済まで、日本屈指のプロ5人に見立てを聞きました。