こんにちは。三島友紀FP事務所の三島です。離婚をするにあたって公正証書を作っておくと良い。という事は離婚を考えた人なら一度は聞いたことはあるでしょう。しかし、一口に公正証書と言っても普段馴染みの薄い手続きですので実際のところどの様な手続きなのか。どのように作るのか。注意点はあるのか。そのあたりまで知っていらっしゃる人は少ないように感じます。
今日は公正証書についてなるべく法律用語を使わずわかりやすく解説したいと思います
公正証書。正式には…?
覚えなくてよいですが、離婚における公正証書とは正式には【離婚給付契約公正証書】(以下単なる公正証書と呼ぶ)と呼ばれています。
ざっくりいえば約束を破った時には強制執行によって給料や財産を差押えられても文句は言いません。という合意書になります。
離婚の際には養育費や慰謝料、財産分与などの金銭的条件や親権、面会交流権などの子どもに関する条件など諸条件を決めていきます。公正証書の場合はこれらの条件を書面にて記載していき、その最後に『債務者は本契約上の債務を履行しなかったときには、直ちに強制執行を受ける事を認諾する』というような文面が明記されます。この一文がある事によって強制執行を行う事が可能になり、公正証書が公正証書たる役割を果たせる事になるのです。
現在の日本で離婚時に約束していた額の養育費をもらえているシングルマザーは約20%と言われています。公正証書は公文書に当たりますので契約した証拠として非常に強いものがあり、万が一契約が約束通り履行されなかった時には裁判等を経ずに強制執行で財産を差押えすることができます。離婚後のトラブルを離婚前に未然に防ぐことができます。
公正証書はどうやって作る?
まず公正証書は全国にある公証人役場で作成します。
作成時は夫婦2人で公証人役場に行きます。公証人の前で離婚の状況や条件、金銭の支払いの額や期限など詳しい内容を伝えていきます。口頭で大丈夫ですが、伝え忘れや伝えミスがないように自作した離婚協議書などを持参するのがオススメといえます。
また公証人が認めた場合、代理人をたてて手続きを行う事ができます。この場合は夫婦それぞれから委任を受けていないとダメなのでそれぞれから委任状や印鑑証明等を預かってこないといけません。
公正証書の作成には所定の費用がかかります。慰謝料や養育費など公正証書によって定める財産の合計によってその額は変わり、おおよそ5,000円〜43,000円までとなっております。(資産額が1億円を超える場合43,000円よりも高額となります)公正証書が完成した時に支払います。
なお、公正証書の作成には多少の時間がかかります。申込をしてから1〜3週間くらいと言われています(公証役場によっても期間は異なります)
申込も公証人に別の予定があるとすぐに行えない為、訪問する際には事前に電話でアポを取っておく事がオススメです(地方だと1つの役場に公証人が1人だけというケースもあります)
『公正証書が出来あがりました』と公証人から連絡が来たら再び夫婦揃って役場に向かいます。出来上がった公正証書の内容に間違いがないかを確認し、夫婦双方が署名押印して手続きは完了です。その後実際に離婚届を提出すると公正証書の効力がスタートします。
また離婚をした後に公正証書を作る事もできます。ただ、離婚後だと養育費や慰謝料を支払う側から公正証書の作成を拒否される可能性もあるのでやや面倒です。出来る事なら離婚届を提出する前に公正証書を作っておく方が確実です。
公正証書の落とし穴
1人で作成しにいけるの…?
よくある誤解なのですが、公正証書は夫婦どちらかが単独で作成できる。と思っている人がいらっしゃいます。しかし先ほどもお伝えしたように公正証書の作成には夫婦2人の署名捺印が必要です。ですから特に養育費、慰謝料を支払う側の協力が必要なのです。
なんとなく誰しも約束破ったら強制執行してもいいよ。という文書にサインをするのは抵抗ありますよね?おそらく殆どの人が抵抗があるはずです。なので公正証書にする事を嫌がる人も当然います。
そんな時は優しく、でも養育費や慰謝料を最初から払わないつもりなの?と聞いてみましょう。離婚の条件に対しきちんと合意ができていれば『そんな事はない』という返事が返ってくるのではないでしょうか。その上で公正証書とは言ってもリストラや、怪我病気で経済状況が変わったら内容を変更できる事を伝えてあげましょう。
なんとなく不安。というレベルの人であれば公正証書の内容の変更が後からでも出来る事を教えてあげると不安が減り作成に前向きになってくれる人は多いです。
さらに公正証書を作ってもらえない場合は調停する。という話もしておくと『そこまでするくらいなら…』と同意してくれるケースも多いです。
どんな条件でも公正証書にできるの…?
公正証書に書いても効果のない事項というものも存在します。それは違法な事項です。主に子供の権利に関する事項が多いです。例えば…
・(親権者となる側が)養育費をもらえる権利を手放す
・(親権者とならない側の)面会交流権の剥奪
・離婚後の姓の変更を認めない 等
これは養育費や面会交流といった事項は親の権利ではなく、子供の権利だからです。離婚にあたって子供の権利を勝手に奪うような約束は違法となり、仮に双方が同意していたとしても効果は発生しないと言われています。ですから、よくあるケースですが「養育費はもういらないわ!でも二度と子供の前に現れないで!」という意見は違法であり、効力がないと言えます(あくまで原則は。です。DVなどで会うと子供に危害が及ぶ恐れがあるなどの場合はこの限りではありません)
まとめ
公正証書は夫婦2人で行う手続きです。夫婦として最後に行う共同作業ともいえます。
顔も見たくない。一緒に居たくない。そんな夫婦もいらっしゃるかもしれませんが、最後の大事な手続きになりますので感情は押し殺して淡々と進めていただきたいと思います。
また話の進め方によっては養育費を支払う側が公正証書の作成に難色を示す事がありますので、その様な時は条件を途中で変えることができる事や、公正証書を作ってくれないなら調停をする。と言った事を伝えていただき、少しでも作成に協力してもらう様に進めていっていただければと思います。