時は少々遡る。オーマジオウとの二回目の邂逅を終えた遼太は、地面に横たわった状態で目を覚ました。
「俺、は……」
遼太は頭を押さえながら上体を起こし、自分の体を見下ろした。すぐに自分の傷が癒えていることに気付き、眉を顰める。
「なんで、傷が治ってるんだ……?」
(俺らの他に、誰かいたのか?)
いぶかしみながら立ち上がり、周囲を見渡す遼太。辺りには未だオレンジ色の光が舞っている。そんな中、ノイズたちがある一点を目指して一斉に移動していた。
「こいつは……。ベイバロンか!?俺も行かないと……」
遼太がそう言った瞬間、オレンジ色の光が彼の体に染み込んでいく。
「!何だ!?」
そして彼の中からゆっくりと虹色の光が現れ、ある物を形どった。
「ムゲンゴーストアイコン……。使えってことか……」
悟った遼太は腰に手をかざしてゴーストドライバーを呼び出し、アイコンを起動して装填した。
<ゴーストドライバー!>
<ムゲンシンカ!>
そしてレバーを引き、荘厳な待機音が鳴る中、僧のイメージの変身ポーズを取った。
<アーイ!バッチリミナー!バッチリミナー!>
(タケルさん、力をお借りします……!)
「変身ッ!」
<チョーカイガン!ムゲン!KEEP・ON・GOING!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴースト!>
「……さあ、命、燃やすぜッ!」
仮面ライダーゴースト・ムゲン魂はパーカーのフードを脱いでその背中から∞の形の虹色の翼を広げ、戦場に向けて飛翔した。
そして、現在に至る。
(悪い、遅れた)
(ほんとだぜ、全く。寝坊助にも程があんだろ!)
(奏の言う通りです。お待ちしていました!)
(良かった~!目が覚めなかったらどうしようかと思ってましたよ~!)
(そりゃ流石にねえだろ。……あ、伝言預かってたんだっけか)
翼をはためかせ、ゴーストの下に集結したシンフォギア装者たち。その中でクリスが耳の辺りに顔を寄せ、耳打ちした。
(「いつかまた会おう、Mr.平成ライダー」だってさ)
(「!?そっか……。やっぱいたんだな……」)
密かに噛みしめるような表情をした遼太。そしてゴーストは顔を正面に上げ、ガンガンセイバーをフィーネに突きつけた。
「さあて、決着を着けようか。―アンタの望みに、人類全体を巻き込ませる訳にはいかない」
「……なんかあったのか?」
遼太の啖呵に付き合いの長い奏が何かを察したのか、声をかけた。遼太はマスクの下で笑みを浮かべ、言葉を返した。
「後で話そう。今はフィーネだ」
(やはり来たか、神屋遼太……。貴様らは私の逆さ鱗に触れたのだ……。相応の覚悟は出来ておろうな?)
フィーネの姿を覆い隠し、今度は遼太たちに向けて砲撃を放つベイバロン。それを確認した瞬間、遼太が叫ぶ。
「皆、距離を取れ!」
「「「「了解ッ!」」」」
何かを察した四人は、遼太と共に一旦加速して後退した。
「皆、念話を解いてくれ。フィーネに悟られる」
「何か策があるのですか?」
輪になった五人。その真ん中に位置した遼太は、念話の解除を指示した。その言葉に含まれたものを感じた翼が、遼太に尋ねる。
「ああ。あのバカみたいな威力の砲撃は、多分カ・ディンギルと一緒だ」
「……デュランダルか!?」
遼太はクリスに頷き返し、説明を続けた。
「そうだ。デュランダルを奪還し、お返しにその力を叩きつけるのさ」
「でも、どうやって……」
不安がる響に、察しの良い他の三人が視線を向けた。
「ふえ?」
「お前さんが鍵だよ。な、遼太さん?」
「そうだ、奏。デュランダルを起動させたのは君だ、響ちゃん。君なら必ず、きっと成し遂げる」
遼太は奏に頷き返し、響に思いを込めて告げる遼太。それを聞いて、響は不安を顔に浮かべた。
「でも私、この前持った時……」
「大丈夫だ、立花」
「え?」
響が翼と目を合わせると、頷かれた。他の面々も同様に頷いた。
「お前に何かあれば、我々がフォローする」
「そーゆうこった。お前はただ、馬鹿正直に真っ直ぐ突っ走りゃあいいんだよ」
「ああ。俺と奏でフィーネを抑え込む。翼、クリスちゃん。君たちにはデュランダルを響ちゃんに届けてほしい」
「あいよ!派手に行くぜッ!」
「承知ッ!」
「おうよ!」
「皆……」
響は感慨深げに四人の顔を見渡し、表情を引き締めて頷き返した。
「行くぞッ!」
「おうさ!」
まず飛び出したのはゴーストと奏。ベイバロンの側面から放たれる複数のレーザーを躱し、弾きながら接近する二人。ゴーストはドライバーのレバーを引いて戻し、すれ違い様に一閃。奏もレバーを一度回し、同様に一閃した。
<イノチダイカイガン!>
<カナシミブレイク!>
<ブルー!> <Ready go!>
<スタッグスラッシュ!シュパーン!>
「命を奪われた皆の悲しみ、食らいやがれッ!」
「はあッ!」
ベイバロンの表皮が派手に引き裂かれ、再生が即座に始まるがそれは彼らの想定内。
「ぜああああああッ!」
「おりゃあああああッ!」
<蒼ノ一閃・滅破>
<MEGA DEATH PARTY>
翼とクリスが裂帛の気勢と共に大技を放ち、レーザーが閉じられたベイバロン頭部の聖堂を穴だらけにし、中央に切れ込みを入れた。
それを旋回しながら確認した二人は次の一撃を放とうとし、吐血した。
「ぐうッ!」
⦅やべえッ!今の俺唯の人間だから、強化状態が体に尋常じゃなく負荷を掛けてやがるッ!⦆
「がはッ!」
⦅くそ、限界が……!けど……⦆
「遼太さん!?」
「奏!?」
「おい、大丈夫かよ!?」
「「まだだッ!」」
心配そうに響たちが声を上げるが、二人は彼らは気合で持ち直す。
「行くぞ、奏ッ!」
「ああッ!」
<チョーダイカイガン!ムゲン!>
<ブルー!イエロー!レッド!ゴールド!> <Ready go!>
二人はドライバーを操作してエネルギーをチャージすると、ライダーキックの構えを取って突撃してゆく。
「俺たちの魂は……」
「不滅なんだよッ!」
<ゴッドオメガドライブ!>
<パーフェクトキングダムフィニッシュ!ゴガゴガゴガーン!>
「ごはあッ!」
ダブルライダーキックがダメージを負ったベイバロン頭部の聖堂を完全に打ち砕き、フィーネにぶち当ててデュランダルを吹き飛ばし、壁を貫通して後ろに抜けた。
「ちょせえ!」
錐揉みしながら飛んで行くデュランダルを、飛びながらハンドガンを放ったクリスが軌道修正し、響に届ける。
「勝機を零すな!掴み取れ、立花!」
響は懸命に手を伸ばし、デュランダルをその手に掴む。
(大切な皆が届けてくれた希望……無駄にするもんかッ!)
その瞬間、響の体が再び闇に包まれる。獣のような唸り声が、彼女の口から洩れる。
「ぐうううううッ!」
その様子を、一室で見守っていた皆も確認した。
「このままでは、また!」
「未来さん、どちらへ!?」
出口へ向かおうとした未来を、緒川が呼び止めた。
「地上に出ます!」
「無茶よ!危ないわ!」
「響は、響のままで居てくれるって、変わらずに居てくれるって。だから私は、響が闇に飲まれないよう、応援したいんです!」
その言葉に驚く一同。
「助けられるだけじゃなく、響の力になるって誓ったんです!」
「へっ……だったら俺らも付き合ってやるよ!」
「僕たちも応援した―い!」
「ここで行かにゃ、男が廃るで!」
「だねえ。カッコいいままでいるためにも、僕らも行こうか」
力強い未来の言葉に賛同したのは、電王に変身したモモタロスたちイマジン四人だ。その言葉に背を押され、他の皆も立ち上がる。
正気を取り戻そうと、懸命に足掻く響。その時、シェルターの扉が破壊され、響の大切な人々が飛び出してきた。
「正念場だ!踏ん張りどころだろうがッ!」
「強く自分を意識して下さい!」
「昨日までの自分を!」
「これからなりたい自分を!」
二課の頼もしい大人たちが、響に声援を送る。
「みん、な……」
「屈するな立花!お前の胸の中の覚悟、私たちに見せてくれッ!」
「お前を信じ、お前に賭けてんだ!お前が自分自身を信じねえでどうすんだよ!」
響の下に翼とクリスが飛んで駆け付け、響の両肩に手を置いて呼びかける。
「あなたのお節介を!」
「あんたの人助けを!」
「今度は、私たちが!」
今度は大切な友達が、背中を押した。
「ぶれんなよ!」
「心を強く持つんだ!」
「しっかり気張りや!」
「おねーちゃん、頑張って!」
モモタロスたちも、力強いエールを送った。
「姦しい!黙らせてくれるッ!」
フィーネはベイバロンの羽を再生させると、触手を伸ばして阻止しようとした。が……
「させるかッ!」
<イカリスラッシュ!>
「どこ見てやがんだよッ!」
<スタッグスラッシュ!シュパーン!>
その羽を、力を振り絞った二人の一撃で切り落とされてしまう。
「ちぃッ!」
そんな中、破壊衝動に抗っていた響の顔を闇が覆うとし……
「響ィィィィィィッ!」
未来の思いが籠った叫びが、響に届いた。
(そうだ……。今の私は、私だけの力じゃない……)
「ビッキー!」
「響!」
「立花さん!」
「響さん!」
「「響ちゃん!」」
(皆が、居てくれる……。背中を押してくれるッ!)
響は徐々に落ち着きを取り戻し、衝動を制御し始める。
(そうだ……。この衝動に、塗りつぶされてなるものかッ!)
響の闇が剥がれ落ち、鎧が純白の輝きを取り戻した。闇が消える瞬間、胸の傷が一筋の光を放った。響は真っ直ぐデュランダルを構え、翼とクリスは柄に手を添えた。デュランダルが黄金の輝きを放ち、極光が天まで立ち上る。それを確認したゴーストと奏は、大急ぎで離れる。
「その力……何を束ねた!?」
「響き合う皆の歌声がくれた……シンフォギアでェェェッ!」
<Synchrogazer>
放たれた絶対の一撃が、滅びの聖母にして赤き竜、ベイバロンを上から真っ二つに引き裂いた。
「完全聖遺物の対消滅……!?どうしたネフシュタン、再生だ!」
崩壊してゆくベイバロン内部でフィーネが叫ぶが、状況が変わることはない。
「この身、砕かれてなるものかァァァッ!」
そうしてベイバロンは爆発・消滅し、フィーネの夢に今度こそ終止符が打たれた。
爆発が収まった後。いつの間にか夕焼けが辺りを照らし、一日の終わりを告げていた。モモタロスたちは既にデンライナーで立ち去っていた。そんな中、響はボロボロになったフィーネに肩を貸し、集結した仲間の下に歩いていた。
「お前、何を馬鹿なことを……」
そう。ベイバロンが崩壊する中、響は壊れて消えるデュランダルを手放し、爆発の中に飛び込んでフィーネを救出したのだ。
「このスクリューボールが……」
呆れてため息を吐き、苦笑するクリス。
「皆にもよく言われます。親友からも、『変わった子』、だって」
響は瓦礫に座るフィーネに手を貸した後、その前に立った。
「もう終わりにしましょう、了子さん」
「私は『フィーネ』だ……」
「でも了子さんは了子さんですから」
「……」
フィーネは顔を上げ、響の顔を見つめた。
「きっと私たち、分かり合えます」
「……ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間。統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも相手を殺すことを求めた」
フィーネは腰を下ろしていた瓦礫から立ち上がり、装者たちを拒絶するように背を向け、夕日に向かって歩き出した。
「そんな人間が、分かり合えるものか」
「人が、ノイズを……」
「だから私は、この道しか選べなかったのだ……」
どこか悔し気に、残った鞭を握りしめるフィーネ。
「―本当にそうか?」
「何?」
だが、その言葉を否定する者が居た。―奏だ。
「確かにアンタはフィーネだったんだろうさ。けれど了子さんに長い間世話になって、全てが嘘だとは思えないんだよ。……あんたはきっと、優しいが故に人に絶望してこんなことをしたんじゃないのか?そうじゃないと納得できない」
「……」
奏の指摘に、フィーネは夕日を見つめて黙り込んだままだった。
「人が言葉よりも深く繋がれること、理解できない私たちじゃありません。……だから了子さんも、もう一度だけ信じてみませんか?」
そう言って、フィーネの下に歩み寄ろうとする響。―その時だった。
「ふう。でやあぁぁぁッ!」
フィーネは振り向きざまに残っていた鞭を勢いよく伸ばし、その射線上に居た響は難なく躱して拳をフィーネの胸の前で寸止めした。
「私の勝ちだァ!」
「あッ!?」
フィーネの言葉に鞭の伸びた方向を見ると……月の欠片に突き刺さっていた。
「でえああああああッ!」
フィーネは地面のアスファルトをひび割れるほど強く踏みしめ、残った鎧を砕きながら月の欠片を引き寄せ、軌道を地球に向けた。
「野郎、月を!?」
「月の欠片を落とす!私の悲願を邪魔する禍根は、ここでまとめて砕いて叩く!ここでこの身絶えようとも、魂までは絶えやしないのだからな!聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に蘇る!どこかの場所、いつかの時代!私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだ!ふふ……」
皆が月を見て呆然とする中、響はフィーネの胸に拳をそっと当てた。一陣の風が、そっと吹いた。
「―うん、そうですよね。何処かの場所、いつかの時代。蘇る時に何度でも、私の代わりに伝えて下さい」
響はそっと当てていた拳を下ろし、彼女らしく真っ直ぐに告げた。
「世界を一つにするのに、力なんて必要ないってこと。言葉を越えて、私たちは一つになれるってこと。私たちは、未来にきっと手を繋げられるということ。……私には、出来ないから。了子さんにしか、出来ないから!」
「お前、まさか……」
微笑んだ響の言葉の意図を察し、目を見開いたフィーネ。
「了子さんに未来を託すためにも、私が今を守ってみせますね!」
響のその言葉に表情を和らげたフィーネは、若干呆れた雰囲気を滲ませながら、優しい声音で告げた。
「―ふう。あなたは本当に、放っておけない子たちなんだから。―胸の歌を信じなさい」
そう言ってフィーネは目を閉じ、死を受け入れようとした。―だが。
「……すみませんが、その『いつか』は当分先ですよ。了子さん」
「え……?」
フィーネ―了子が己の体を見下ろすと、彼女の体は灰になるのではなく……
「忘れちまったのかよ、了子さん。ブラックパラドがあんたに打ち込んだもんをさ」
「……?あ!?」
「上手くやったんだな、奏。……申し訳ないのですが、今はまだ貴女の力が必要なんです。貴女には、ドレミファビートのバグスターウイルスを打ち込ませてもらいました」
「バグスターウイルス……?!?まさか……」
遼太の言いたいことを察した了子は、目を見開いた。
「奏を救った方法で、貴女を救います。……貴女の大切な人が守りたかったものを、守るために力を貸して下さい」
「……貴方って本当に食えない子ね。いいでしょう。その代わり、貴方の知る全てを教えてくれるかしら?」
「―勿論ですよ」
その言葉に笑みを浮かべたフィーネは、粒子と化しながら響に向き直った。
「ごめんなさい。まだしばらくは、貴女たちと一緒に居ることになりそう」
「……いいですよ、勿論。了子さん、これからもよろしくお願いしますね」
「ええ。また直ぐに、会いましょう」
その言葉を最後に、フィーネは消滅し、粒子は奏の持つバグヴァイザーに収納された。
「これで、任務完了っと。ほいっと!」
<ガシャット!>
奏がすぐさまバグヴァイザーにドレミファビートのプロトガシャットを差し込むと、バグヴァイザーから二人の人影が現れた。一人は勿論、元の黒髪に戻った櫻井了子。そしてもう一人は……ピンク髪の明るめのファッションをした少女だった。
「あら。私、もう戻ってきたの?」
「ふえ?ここって……」
落ち着いている了子とは対照的に、若干パニックになっているポッピーピポパポ。そんな彼女に、ゴーストが歩み寄った。
「初めまして、ポッピーピポパポ」
「貴方は……ゴースト?」
「ええ。でも、天空寺タケルさんじゃありませんよ」
遼太はゴーストドライバーからムゲンゴーストアイコンを抜き取り、変身を解除した。
<オヤスミー>
「俺の名前は、神屋遼太。異世界で、全ての平成ライダーの力を受け継いだ者です」
「全ての平成ライダー……って、異世界!?」
「はい。ここはエグゼイドの世界ではありません。エグゼイドなど全ての平成ライダーの世界と、ある世界が融合した世界、だと思われます」
「ふええ~!ピプペポパニックだよ~!」
「落ち着けって、ポッピー」
「パラド!?」
宥めるように言ったのは、まだその場に残っていたパラドだ。
「この世界は俺たちバグスターが、平和に暮らせる世界だ。……後で他の皆にも会わせるから、今はおとなしくしてろよ」
「ちょ、ちょっとパラド~!」
空気を読んだパラドは、ポッピーを連れて少し離れた場所に粒子化して移動していった。それを見送った遼太たちは、了子に向き直った。
「……おかえり、了子君」
真っ先に言葉をかけたのは、弦十郎だった。それに続くように、皆が声を上げた。
『おかえりなさい!』
「……ただいま」
そう言って了子は、目尻に涙を浮かべながら微笑んだ。
「軌道計算、終了しました。……直撃は、避けられません」
了子の帰還の喜びは、長くは続かない。月の欠片が、地球に迫っていた。
「……ごめんなさい、私のせいで」
罪悪感のために俯いてしまう了子。そんな彼女の肩を、弦十郎がそっと抱いた。
響は空を見上げると、一歩ずつ歩き出した。
「響……」
「なんとかする」
「あ……」
振り返った響の笑顔には決意が満ちており、未来は何も言えなかった。
「私たちも共に行くぞ」
「ここで仲間外れってのは性に合わねえかんな」
翼とクリスも、一歩前に踏み出した。だが……。
「……悪い。あたしは行けない」
その瞬間奏のシンフォギアが解除され、口元から血を流しながらふらついて倒れこみそうになり、遼太が咄嗟に肩の下に腕を入れて支えた。
「か、奏さん!?」
「すまねえ、ギアのバックファイアだ……。強力な分負荷がデカかったからな……」
「無茶したな、お互いに。……すまん。俺も行けそうにない」
よく見ると遼太の口元にも血がにじんでおり、若干ふらついていた。
「後は任せた。お前ら三人なら、きっとやれるさ」
「迎えに行く。必ず帰ってきてくれ」
奏、遼太からのエールを受け取った三人は頷きあうと翼を広げ、大空へ飛び立っていった。
皆で三人を送り出す中、遼太が奏に尋ねた。
「けりはついたか?」
「勿論。あたしが許さなきゃ、誰が許すんだって話だしな」
「……そうか」
少し離れた所では、ブラッドスタークとレイアもまた、空を見上げていた。密かに拳を握りしめるセレナ。
⦅次は、わたしの番だ⦆
そして、月の破片は三人の絶唱によって砕かれ、細かい破片が流れ星の如く大気圏で次々と燃え尽きてゆく。皆が涙を流す中、遼太はオーロラカーテンを出現させた。
「二人共……」
「ちょっくら迎えに行ってくるわ」
「大丈夫。直ぐに戻ります」
二人は弦十郎にそう言い残すと、ゆっくりとオーロラカーテンをくぐっていった。皆が固唾を飲んで見守る中、オーロラカーテンを
「響……!」
「只今、皆」
「うわああああーん!」
未来が涙を流しながら駆け寄り、それを皮切りに皆が五人の下に駆け寄った。全員で生還を喜び合っていると、眩い光が辺りを包み込んだ。全員が咄嗟に目を塞ぎ、数舜の後、光が収まると、そこには
「なッ……」
「これは……」
皆が戸惑う中、遼太は校舎の屋上に目を向けた。
「オーマジオウ……」
「何!?」
オーマジオウは無言で彼らを見下ろした後、踵を返して去ってゆく。その正体に気付いたのは、遼太、奏、そして、クリス。
「真優さんか……」
三週間後。響と翼が未来に秘密を明かした場所で、女性がノイズに襲われていた。
「きゃああああああッ!」
そこに一目散に向かう、二つの人影。
「響ちゃん!」
「行きます!」
山吹色の鎧を纏った少女が女性をお姫様抱っこで救出し、すぐさま白い宇宙服のようなスーツを着た人物が飛び込んだ。
<LIMIT BREAK!>
「ライダーロケットドリルキーック!」
ノイズを全て吹き飛ばし、着地したのは『仮面ライダーフォーゼ ベースステイツ』。彼はドライバーを外して変身解除し、女性を下ろした少女も鎧から制服姿に戻る。息も絶え絶えの女性が、少女に尋ねた。
「貴方方は……?」
その少女、立花響はにかっと笑って答えた。
「―ただの通りすがりです!」
戦姫絶唱シンフォギアMR 第二章 月、欠けるまで 完
ルナアタック編、完結ッ!
どうも皆さん、一週間ぶりの更新です。約三か月かかってしまいましたが、これにてルナアタック編は終了となります。ここまで来れて、感無量です。
劇中で何故遼太が吐血しているかというと、本来ならば幽霊の状態で発動したムゲン魂の強化状態を生身で使用した反動です。
ここで一つあらかじめ言っておきたいのですが、次の長編、つまりフロンティア事変ではマリアたちF.I.Sへの当たりが若干きついものになります。実は私、あの頃のマリアたちの行動や言動には理解を示していますが、決して正しいものが全てではなかったと思っております。それに全てを知っている遼太や奏、セレナは知っているが故にきつい言動をすることがあります。予めご了承ください。
さて、次回から三話は事前にお知らせしたコラボ章!章タイトルは「仮面ライダーのわたしと錬金術師の私」です。よろしくお願いします!
『ウロボロス』との戦いにどのようにMRの装者たちが参戦したらいいと思いますか?
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世界蛇撃退戦
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『太陽の惨劇槍』イベ後半に途中参戦
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全部盛りで、対ウロボロス戦に途中参戦