イギリスでかつてGolden Ballsというバラエティ番組があったそうです.
その中で「Split or Steal?」というゲームがあり,2人の参加者が数百万円とかそれくらいのお金を奪い合います.
ゲームの概要はこうです.
例えば,交渉が始まったら,真っ先に「僕はSplit(山分け)を選ぶ.だから君もSplit(山分け)を選んで.僕のことを信じて!」と言う戦略が考えられます.
これ,一見,うまくいきそうです.相手が自分の言ったことを信じてSplit(山分け)を選んでくれたら,もうけものです.
あなたはSplit(山分け)を選ぼうが,Steal(独り占め)を選ぼうがどちらにしろお金を獲得することができます.
しかし,この状態ではSteal(独り占め)を選ぶ方がSplit(山分け)よりも,あなたにとって,より良い選択です.なぜならお金を倍もらうことができますから.
しかし,この戦略は欠陥があります.
まず相手が自分を信じてSplitを選んでくれる,というのが前提なのです.
目の前にいるのはお互い見ず知らずの赤の他人です.相手はそういうあなたをそうやすやすと信じてくれるでしょうか?
さらに,この戦略にはもう1つ重要な欠陥があります.
あなたは「Splitする」と相手に宣言しているわけですから,相手の人は,その場合,よりお金がもらえるStealを選ぶかもしれません.
このようにこの戦略では,相手にとって「Stealを選んだ方がよいかな」という誘惑が常に働いてしまいます.
ここで,このゲームに参加したNickは次の驚くべき戦略を使いました.
私が名付けてみると「裏切りを宣言して,相手に強制的に協力させる」戦略です.
以下の動画をご覧ください.
Nickとその対戦相手のIbrahimのゲームは次のようになりました.
なぜなら,NickはStealを選ぶと言っていますから,自分もStealを選んでしまうと1円ももらえなくなってしまうわけです.
だから,IbrahimはSplitを選ばざるを得ません.
IbrahimはSplitを選べば,NickがもしかしたらSplitを選んでくれて賞金を半分もらえるか,あるいはNickがStealを選んだとしてもゲームが終わった後で半分もらえるかもしれないわけです.
逆に,何回も言いますが,IbrahimはStealを選んでしまうとお金がもらえるチャンスはゼロです.
よってNickは「裏切りを宣言して相手の協力を強制的に引き出す」戦略を使った(自分が確実にお金がもらえるようにした)わけです.天才,Nick!
で,Nickとしては相手がSplit一手な以上,自分としてはStealを選ぶ方が良い(独り占めするか,本当にゲームが終わった後に山分けするかはNickの勝手です)のですが,結局,そうではなくNickはSplitを選択しました.最後にNickの「人間らしさ」が出たのでしょうか.
いずれにしろ面白いですね.
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