わずかだが増える。公的年金の二〇二〇年度の受給額が決まった。物価と賃金が上がったため増額改定となる。だが、給付額の目減りは進む。額の底上げをどう実現するのか、知恵を絞りたい。
毎年の年金額は物価と賃金の増減に合わせて増減される。二〇年度は双方とも基準の指標が上昇し、0・2%の引き上げとなる。
ただ、上昇幅は物価・賃金の上昇分より抑えられる仕組みが働く。一九年度に続き二年連続だ。だから、引き上げられても実質的には額の目減りとなる。
年金財政を百年先まで維持するために、この仕組みが導入されている。将来世代の年金財源に回すため、今の受給世代に少し我慢してもらう。給付の抑制は生活に直結するから国民の理解が欠かせない。政府にはその意義を粘り強く説明する責任がある。
年金額は今後、目減りが続く。給付の底上げへ、まだやるべき制度の見直しがある。
職場の厚生年金に加入できない非正規雇用の増加は年金制度が想定していなかった。こうした人を年金の傘に入れる適用拡大は重要な課題である。これまでも少しずつだが拡大されてきた。
政府の全世代型社会保障検討会議が昨年十二月にまとめた中間報告では、現在適用対象としている従業員五百人超の企業規模を五十人超へ拡大する方向を決めたが、規模撤廃までは盛り込めなかった。対象者は六十五万人増だが、規模撤廃の場合の半数程度である。
正社員となる機会が少なく非正規雇用が多い就職氷河期世代を中心に将来、老後資金もためられない上に無年金や低年金の人が増えると懸念されている。職場の規模で加入の可否が決まる実態は公平性に欠ける。より多くの人の加入を実現すべきだ。
自営業者や非正規雇用者が入る国民年金は、厚生年金に比べ給付額が少ない上に目減り幅は大きい。低所得対策は喫緊の課題だ。
消費税財源を使い低年金者に月最大五千円を給付する新制度が始まったが、十分とは言い難い。
働く高齢者が増える時代、国民年金の加入期間も今の四十年から延ばす案がある。その分払う保険料は増えるが、年金額も増える。検討に値する。
年金額が減る保険料未納をなくすため納付への理解も広げたい。
年金制度に限らず、高齢者の就労環境の整備や、安価な住宅供給など超高齢社会を支える視点で、あらゆる制度を見直したい。
この記事を印刷する