こんにちは!今回やっと「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読むことができたので、紹介していきたいと思います。
本書は反骨精神いっぱいの母ちゃんとエスカレーターに乗って平穏なエリート中学に進むのを拒み、中学に入学したクールな息子の日々の闘いと成長を描いた落涙必至の等身大ノンフィクションとなっております!
ノンフィクション好きで著者の名前を知らない人はいないくらい有名な方です。
ブレイディみかこさんは地元福岡の進学校を卒業後、音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。
2017年に『子どもたちの階級闘争−ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞されました。ここ数年、注目を集める人物です。
本書は彼女がこれまで書いたものの中で、もっともプライベートな色合いの濃い一冊です。
彼女は英国南部のブライトンという街で、アイルランド出身で大型ダンプの運転手をしている配偶者とともに20年以上前から暮らしています。
ふたりの間には中学生の息子がいまして、彼が本書の主人公です。
子どもの世界は、大人の世界を鏡のように映ります。英国在住のブレイディみかこ氏が綴る息子の中学校生活には、大人社会の複雑さがそのまま存在しています。
たとえば、ダニエルはハンガリー移民の両親を持つが、自らも移民に人種差別的発言をして生徒たちと衝突します。ティムは貧しさから食べ物に困り、学食で万引きを働く。
著者の息子は、名門カトリックの小学校から、「ホワイト・トラッシュ(白い屑)」と差別語で呼ばれる白人労働者階級が通う中学校に進学しました。息子は英国で育っているが、東洋人の顔をしていて、そして体も小さい。
いじめられないか、変化についていけるか、と両親は心配したが、彼はじつにたくましくさわやかにスクールライフを楽しみ、学級委員まで務めました。
ジョークまじりで読みやすい語り口ながら、著者の言葉には生活の確かな気配と、鋭い考察が共存しています。たまに笑ちゃう場面もあるので人が多いところで読むと変人に思われてしまうので注意を……笑笑
本書の構成
はじめに
1.元底辺中学校への道
2.「glee/グリー」みたいな新学期
3.バッドでラップなクリスマス
4.スクール・ポリティクス
5.誰かの靴を履いてみること
6.プールサイドのあちら側とこちら側
7.ユニフォーム・ブギ
8.クールなのかジャパン
9.地雷だらけの多様性ワールド
10.母ちゃんの国にて
11.未来は君らの手の中
12.フォスター・チルドレンズ・ストーリー
13.いじめと皆勤賞のはざま
14.アイデンティティ熱のゆくえ
15.存在の耐えられない格差
16.ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン
ストーリー
息子と友人たちの熱い青春の日々を追ううちに、英国のブレグジットという選択の背景や、英国社会の分断が手に取るように伝わってきます。さらに英国に限らない、日本が、世界が抱える現代の社会問題が立ち現れてストーリーが進んでいくわけです。
息子くんは市の学校ランキングで常にトップを走っているようなカトリックの公立小学校に通い、生徒会長まで務めたが、中学校は自宅から近い学校を選びます。
そこは上品なミドルクラスの優等生が集まる学校ではなかったんです…。
いじめもレイシズムも喧嘩もある、人種や格差もごちゃ混ぜの、英国社会のリアルを反映したような「元底辺中学校」でした。本書はそんな学校に通い始めた息子くんの1年半の記録です。
これがもう、読み始めたら止まらなくてとにかく面白いんです笑。
読者は間違いなく変わった主人公のファンになってしまいます。
英国では、公立でも保護者が子どもを通わせる小中学校を選ぶことができます。当然のことながら人気校には応募が殺到するのだが、定員を超えた場合は、校門から児童の自宅までの距離を測定し、近い順番に受け入れるというルールになっているそうです。
このため、わざわざ学校の近所に引っ越す人が出てくるらしい。するとそうした地区ほど住宅価格は高騰し、そうでない地域との格差が進んじゃいます。
著者が暮らすのは「荒れている地域」と呼ばれる元公営住宅地にあります。
「元」がつくのは、サッチャー政権時代に公営住宅のほとんどが払い下げになったためで、この結果、不動産屋から購入できた人もいれば、相変わらず地方自治体に家賃を払いながら住んでいる人もいるという「まだら現象」が進んだそう。
中には民間に払い下げようにも評判が悪すぎて売れなかったと噂される公営団地もあり、まだら地区に住む住人たちからも「ヤバい」と言われていたりする。同じ「荒れた地域」でも複雑に入り組んだ構造になってきます。
息子くんの通う中学校にはこうした地区の子どもが集まっていて、大人の想像を超えた出来事が次々に起きる。
たとえば同級生がレイシスト発言を繰り返して問題になるのだが、発言の主は移民の子だったりする。移民といえば差別される側と考えがちだがそうではない。
一口に移民といっても人種も出身国もさまざまです。社会が多様化するとレイシズムにもさまざまなレイヤーが生まれてしまう。移民が移民を差別することだってあるし、中立のつもりでいても、誰かを気づかずに差別してしまうこともあります。
リアルな貧困の問題も見過ごせません。息子くんが休み時間に「どんな夏休みだった?」と聞いたら「ずっとお腹が空いていた」と答えた友人がいたという話には胸を衝かれました。
2010年に政権を握った保守党による緊縮財政政策によって、毎日を青息吐息で暮らしていた人たちがつかまっていた細い糸が断ち切られてしまいました。満足に食事もとれない子どもも多く、そんな生徒を見かねた先生がこっそりランチ代を渡すことも珍しくないらしいです。
本書に登場するある教員は、公営住宅地の中学校の先生たちは、週に10ポンドはそういうことにお金を使っていると話します。緊縮政策で教育への財政支出が毎年のようにカットされる中、現場は心ある人々の努力でなんとかもっているのです。
思春期の子どもが向き合うには、あまりに過酷な現実かもしれません。でも本書の主人公は、そんな黒く立ち込めた暗雲を吹き飛ばすかのようなキャラクターです。
冷静に事を見極め、自分の頭で考えてから行動を起こします。レイシスト発言を繰り返す同級生には、辛抱強く注意し続けふるまいを改めさせるし、「ヤバい」団地に住む貧しい同級生には、プライドを傷つけないようさりげなく物資を渡し手助けしたりする。本当に頼もしい男です。
英国社会の置かれた状況もなかなかハードで、それでもまだ辛うじて社会の紐帯が保たれているように思えるのは、いざ事故や災害が起こった時に、貧しい者どうし助け合うからだ。そうした地べたの団結力は、市民社会の強さを示していると思います。
ましてや主人公のように現実とまっすぐに向き合っている子どもたちがいるのです。いたずらに悲観することもないのかもしれません。
本書を読みながら、なんども自分の中学生の頃を思い出した。
そこそこに荒れた田舎の中学だったが、不思議と授業の光景は思い出せない。鮮明におぼえているのは、遊びに行った友人の家がとても狭かったことや、遠足の日に弁当を隠しながら食べている女の子がいたことです。
あの時生まれて初めてぼくは、社会の現実に触れたのかもしれません。中学生というのはきっとそういう年代なのだろう。
著者はオスカー・ワイルドの言葉をもじって「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。若者はすべてを知っている。子どもはすべてにぶち当たる」と書いているが、ほんとうにそうだ。子どもたちはこれからさまざまな社会の理不尽にぶち当たっていく。
ある朝、早めに家を出たら、登校途中の息子が友人たちと前を歩いています。全員ブカブカの制服を着ているのには笑ったが、跳ねるように歩いていく彼らの背中を見ながら、
ふいに「ああ、もう追いつけないのだな」と思った。
彼らは大人たちが死んだ後も生きていきます。そしてぼくらが決して見ることのできない未来を見ることができるのです。未来は間違いなく彼らのものです。
不甲斐ない大人たちが変えることのできなかった社会の因習や不合理は、彼らが軽々と変えてしまうに違いありません。一抹の寂しさも感じるが、それ以上になんだか晴れやかな気持ちになったそう。
子どもたちよ、人種や性別、若さなんて関係ない全力で駆けて行け!大人たちのことなんて気にするな!!読み終えた後、あなたも体の底から沸々と行動したい感覚に襲われます!
感想
私も中学生の頃の自分と主人公の人物像を掛け合わせてみると、若干類似点がありました。よく色んな事にぶち当たっては解決して、またぶち当たっての繰り返しの日々でした。凄く本書は懐かしさを与えてくれたりもします。このブログでは良さを伝えきれないので、一度読んでみては如何でしょうか?