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【社会】

<東京2020>有償スタッフ募集 ボランティア複雑 時給1600円、ほぼ同じ仕事なのに…

昨年11月発行の求人誌「タウンワーク」に掲載された東京五輪・パラリンピックの有償スタッフ募集=原田遼撮影

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 東京五輪の開幕まで24日であと半年となり、準備が加速する中、大会組織委員会が有償スタッフ約2000人を募集し、波紋を広げている。「時給1600円」の業務内容が、無償の8万人のボランティアと酷似しているため。ボランティアからは「一緒に働きたくない」という声もある。 (原田遼)

 求人誌の募集内容によると、有償スタッフの仕事内容は会場運営、トランスポート(輸送)、メディカル(医療)など八分野。期間は一~八カ月と幅広い。資格については「社会人経験があればOK(アルバイトの場合はリーダー経験ある方)」とし、専門性を求めていない。

 大会スポンサーのパソナが、組織委の委託を受け昨年十月から募集する。

 組織委は有償スタッフ募集の理由について「ボランティアは途中でやめられても引き留められない。運営の最低人数を確保するため、雇用関係のあるスタッフが必要。一カ月程度の短期の場合、業務はボランティアと似てくる。ユニホームも共通にする」と説明。「ボランティアには丁寧に説明する」とした。

 大会ボランティアは、二十万人の応募者から八万人が選ばれた。活動内容は競技、移動サポート、ヘルスケアなどで、名称は異なるが中身は有償スタッフとほぼ同じ。「一日八時間、十日以上の活動」「滞在費は自己負担」などの条件から「やりがい搾取」との批判が出ていた。

 ボランティア研修中の十人に対し、有償スタッフについて尋ねると、七人が「納得できない」と答えた。

 都内の男子学生(19)は「ボランティア応募前に求人があれば、有償スタッフを選んでいた。わなにはまった感じ」と憤慨。

 埼玉県上尾市の女子学生(19)は「問題ない。無償だからこそ楽しんでできる」と話すが、同県狭山市のパート女性(56)は「ユニホームが同じだと意欲が落ちる。お金をもらっている人と一緒に見られたくない」と嘆いた。

 国際基督教大の有元健准教授(スポーツ社会学)は「ボランティアに選ばれたのは語学などスキルの高い応募者で、本来は報酬をもらえる人材。組織委は、無償で活動してもらうための価値を示さないといけない。せめて、ユニホームなどで有償スタッフとの差を示してほしい」と求めた。

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