Dr.イワケンの「感染症のリアル」
コラム
中国の新型コロナウイルス肺炎 見えてきた特徴は
日本含め中国以外でも感染者
武漢便などが到着する時間帯の検疫検査場でサーモグラフィーを受けるマスク姿の乗客ら(21日午後3時53分、関西空港で)∥里見研撮影
前回、「現段階では病気の特徴も感染経路も潜伏期間も治療法も予防法も判然としない武漢のコロナウイルス感染です。これからいろいろな調査結果が公表されて、感染症の特徴が明らかになっていくことでしょう」と申し上げました(2020年1月10日アップ。)
その後、2週間足らずの間にたくさんの情報が集まってきました。そこで、今回も前回に続いてこの新型コロナウイルス(2019-nCoV)について説明しようと思います。本稿を執筆しているのは1月22日午後なのですが、今後さらにいろいろな変化があるものと思います。その点ご了承ください。
この時点で判明した2019-nCoV感染者数は400人以上。当初は武漢で多く報告されていた感染症ですが、北京、上海、広東省などで新たな患者が発見されています。タイ、日本、米国、台湾など国外での感染者も次々と発見されています。死亡者はすでに9人報告されました。報道によると「ウイルスが変異する可能性( https://www.jiji.com/jc/article?k=2020012200215&g=int )」が指摘されています。
しかし、一般に新興感染症が発見されたときはウイルスの特徴がどんどん変化するというよりは、これまで分かっていなかった事実がだんだん明るみに出ることのほうが多いので、ぼくはこの見解にはやや懐疑的です。ただ、ウイルスの変異があろうとなかろうと、やるべき対応策は同じですので、判断にはそう変わりはありません。現場の医者的には、それほど気にしなくてもよいところです。
人から人へ感染の可能性 SARSよりは感染力低い?
感染源については海鮮市場の野生動物が起源である可能性が指摘されていますが、まだ確定はしていません。一方、これまでの疫学情報から、本感染症がヒトからヒトに感染する可能性が非常に高いと判断できます。よって、仮に海外から日本にウイルスが持ち込まれた場合、日本国内でさらなる感染の流行が起きる可能性はあります。
ただし、2002年から03年のSARSのときのようにひどい感染性はないんじゃないかと現時点では考えています。当時は同じマンションのトイレの流した水からとか、病院内などあちこちで感染が発生して大変でした。ああいうことは現段階では観察されていません。他方、すでに14人かそれ以上の医療従事者が2019-nCoVに感染したとも報じられているので、病院内感染も深刻な問題です。医療機関内では堅牢な感染対策が欠かせません。
睡眠、休養、栄養……基本の感染対策こそ重要
一方、一般の市民の皆さんは現時点で特別なことをする必要はないとぼくは思います。まあ、あえて言うならば、一般的な感染症防御方法をとるのがよいでしょう。それは、驚くほどシンプルなのですが、十分な睡眠や休養、過労や過度のストレスの回避、栄養バランスのとれた食事といった「当たり前」のことです。特別な薬やサプリメントは必要ありません。
あと、マスク着用は「予防」にはあまり役に立ちません。街を歩くときなど、ことさらにマスク着用にこだわる必要はないと思います。BBCワールドサービスのニュースをポッドキャストで聞いていたら、中国でもマスクの買い占めなどパニック的な行動が起きているようです。
1 / 2
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。