消費税についての元財務省・松田学氏よりの解説 ― 栗原茂男
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○ 消費税についての元財務省・松田学氏よりの解説
純日本人会の前回のメルマガ及びブログ ≪ 純日本人会2186 / 消費税は財務省は全額福祉だと言っているが安倍総理の説明だと違う ≫ に対して松田学氏から内容の誤解の指摘と解説の投稿がありましたのでそのまま掲載します。松田氏と電話で話したのですが、件の記事は記者が良く解らいのだろうと言う事でした。
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<首相発言>波紋広がる 「リーマン級なら消費増税見送り」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170927-00000106-mai-bus_all
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先ずは元が付きますが財務省高官だった松田学氏の解説なので大いに参考になるかと思います。
多分、経済の難しい政策については多くの人が誤解している場合が多く、マスコミも見当はずれの理解で記事を書いていると思われる場合も多い。
しかしそれが適切な政策であるならば財務省であれ、政府であれ何度でも根気よく説明をして国民の理解を広げる必要があり、松田氏は質問も受け付けてくれるそうなので、質問のある方はメルマガはそのまま返信し、ブログは「CONTACT US 」からメールをください。
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今回の解散総選挙で、消費増税分の使途が重要な争点として浮上していますが、どうも、説明の仕方が不十分なのか、一部に誤解が蔓延しているようです。それは、「消費増税分の8割は財政再建に充てられ、残り2割が社会保障に充てられているが、その2割の部分を拡大し、財政再建に回す部分を、社会保障や教育無償化などの財源に回す」という趣旨の表現がもたらしている誤解です。
これですと、消費税の税収は全額、社会保障に回っているという従来の財務省・政府の説明は嘘だったのではないかと誤解されかねません。
少しわかりにくいので、以下、整理してみます。
まず、消費税収が全額、社会保障の財源になっていて、消費増税分の使途も、その全額が社会保障に充てられることが予定されてきたということは、間違いのない事実です。
社会保障は一種の保険システムのようなもので、その財源は、基本的に、主として現役世代が負担する保険料収入です。年金も医療も介護もそうです。もちろん、保険料収入で積み上がった積立金の運用益も年金などの財源になります。
しかし、近年、少子化と高齢化で人口ピラミッドが変化し、社会保険料収入では必要な社会保障給付が賄えず、国や地方自治体が「公費」という形で、社会保障という保険システムの財源を賄わねば社会保障の運営が困難になっています。超高齢社会の急速な進行で、この「公費」の部分が急拡大しています。
「公費」とは、国や自治体の財政支出ですから、当然、そのための財政収入が必要です。
その財政収入として、消費税の税収の全額が充てられています。
しかし、必要な公費に比べ、消費税率が相当低いため、公費のうち、消費税収で賄われている割合は、税率8%の現在でも、半分程度に過ぎません。
ざっくりいえば、残りの半分は借金、つまり、赤字国債(次の世代の税負担)で賄っています。
さて、消費税を増税した時に社会保障支出はどうなるのか、ですが、これまでの「社会保障と税の一体改革」の枠組みでは、従来同様、税収増の全額を社会保障に充てることになっています。具体的には、年金、医療、介護、少子化対策の「社会保障4経費」の「公費」の財源に充当されます。
その際に、5%から10%へと引き上げることで増える税収が約14兆円ですが、うち、約2割の2.8兆円程度は、これまでよりも医療や介護や少子化対策への社会保障支出を増やすことに充てられることになっています。
では、残りはどうかというと、これは、従来どおりの社会保障支出分の財源になります。
ここが重要なのですが、従来通りの社会保障の財源は消費税収の全額を充てても半分しかなかったわけで、残り半分は赤字国債だったわですから、消費増税の8割が従来どおりの社会保障に充てられることによって、その分、赤字国債の発行額が減ることになります。
つまり、従来と同じ社会保障支出をしていても、その財源が、赤字国債から消費税収に置き換わることになる結果として、新規の赤字国債発行額が減る、それが結果として財政再建に資するということなのです。
消費税収のうち財政再建に回る部分という表現だと、あたかも、消費税収で国債を償還するかのようなことになってしまいますが、そうではありません。
財政再建とは、あくまで、消費税収を全額、社会保障に充てている現在の仕組みのもとでは、増税の結果として、新規の国債発行額が減るという間接的な効果として、財政再建効果があるというのが、正しい説明です。
ただ、このメカニズムをわかりやすく表現するのが難しいため、財政再建に回るという表現になっているのでしょう。それは大きな誤解をもたらします。
今回、争点になったのは、2%の引上げで増える消費税収5兆円あまりについては、うち2割の1兆円程度だけではなく、社会保障支出の増加額をさらに増やして、2兆円以上を財政支出の増加に充てるかどうかということです。
結果として、従来どおりの社会保障支出の財源に回る部分が少なくなるため、新規国債発行の減少分が減少するということで、その減少分だけ、財政再建効果が小さくなるということです。
もう一つは、消費税の全額を社会保障ではなく、その一部を教育無償化の財源にするということも、従来からの変更点です。
選挙はもう、民進党との対立ではなくなりましたが、民進党は、2%、つまり5兆円あまりの全額を、こうした財政支出の新規増額に充てようとする点で、財政再建効果が自民案よりも多少とも小さくなるという違いがあるわけです。
でも、この程度の変更が、何も解散までして国民の信を問うような事柄なのか、従来であれば、毎年度の予算編成や国会審議の中で対応してきた範囲内のことなのではないかという印象は拭えません。
松田学
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