2020年、LINEはGAFAと被らないAIのニーズを取り切る

LINEは1月21日、メディア向けセミナーを開催し、同社のAIのBtoBの外販事業「LINE BRAIN」の目指すビジョン、今後の戦略について発表した。

また、同セミナーにおいて、LINE BRAINのSaaSプロダクトとして初のサービスインとなる「LINE BRAIN CHATBOT」、「LINE BRAIN OCR」の提供を1月22日から開始すると明かされた。

LINEの「スマートポータル」戦略

LINEの成長戦略の柱として「スマートポータル戦略」がある。これは、すでに大きく事業成長に貢献しているLINEアプリ上の広告・コンテンツ事業を柱に、今利益を生んでいるわけではないが重要な位置づけとなる「フィンテック」「コマース」「AI」といった分野で研究開発を行い、既存の事業にフィードバックしていく戦略だ。直近の収益性だけではなく、研究開発でもGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの総称)に対抗していく。

同社が研究開発で培ってきたAI技術を、外部企業等に向けて提供するサービスとしての位置づけが、AIソリューション事業「LINE BRAIN」だ。昨年行われた同社開催の「LINE CONFERENCE 2019」で発表された。

「AIカンパニーになる」とヤフーとの統合会見で宣言したLINE。AI事業を統括する砂金信一郎氏は、「AIの精度ですごいとアピールするつもりはない」と意気込んだ。

――砂金
「あくまで重要なのは技術そのものではなく、技術を使って生活上の課題を解決できているか。LINEは技術オリエンテッドではなく、課題解決型のアプローチを徹底していきます」

具体的にLINE BRAINのラインナップは、チャットボット、OCR(⽂字認識)、⾳声認識・合成といった技術だ。

たとえば、レストランの受付を音声対話のみで完結させる「LINE AiCall」の実証実験を昨年から「俺のGrill&Bakery 大手町」で開始したり、「LINE DEVELOPER DAY 2019」での顔認証受付を実施したりなど、上述の技術の実⽤化に向けた実験・開発を進めている。ちなみに、顔認証受付は今回のメディア向けセミナーでも一部導入されていた。

LINEが持つAI技術の特徴は、「コミュニケーション」の領域が大きい。砂金氏は、例としてキャラクターを召喚して会話を楽しめる装置「Gatebox」で召喚できるキャラクターである「逢妻ヒカリ」を挙げる。逢妻ヒカリの音声には、LINE BRAINで開発・保有する音声合成技術が採用されている。

――砂金
「ヒカリちゃんに搭載されている音声合成では、感情を共にしたい、結婚したいくらいの没入感を持たせるにはどうしたらいいのかという点に徹底的にこだわっています。Natural Experience with AI=優しいAIと呼んでいますが、人に寄り添うAIを提供していきたいと考えています」

▲LINEの持つ技術ポートフォリオは幅広い

昨年末のLedge.aiの取材では、「GAFAからこぼれ落ちたニーズを拾っていく」と砂金氏は語っていた。提供する技術は新しいものではないにしろ、GAFAが日本語に対応してくるのは時間がかかる。グローバルベンダーが狙おうとしても時間がかかる日本語という、ある種ローカルな言語での事例を増やし、マーケットを取り切る戦略だと言える。

研究開発で培った技術を活かした「LINE BRAIN CHATBOT」と「LINE BRAIN OCR」

セミナーでSaaSとしての提供が発表されたLINE BRAIN CHATBOTは、最新の機械学習アルゴリズムと⾃然⾔語処理技術に基づく強⼒な対話エンジンを活用したチャットボット。同社いわく、業界最⾼⽔準の正答率を誇るそうだ。

無料で使える「Trialプラン」、⽉5万円の基本利⽤料で利⽤できる「Commercial プラン」が用意されている。

LINE BRAIN OCRは、国際会議ICDARで世界 No.1の認識精度を獲得している。斜めになった⽂字、歪んだ⽂字でも⾼い認識精度を誇る⽂字認識技術を無料で利用できる「Free プラン」をはじめ、読取枚数に応じたプランが用意されている。

LINE BRAIN CHATBOT、LINE BRAIN OCRともに、LINE BRAINの公式ウェブページを通じて申し込みが可能だ。

チャットボットとOCRだけでなく、Speech to Textや音声認識、画像認識などの分野も現在研究開発中で、2020年秋までには何らかの技術的アップデートが見込まれるという。LINE BRAINのAIをデリバリーするパートナーも現在募集中だ。

2020年LINEが目指すのは「社会実装」と「LINEサービスとの融合」

LINEが2020年に目指すのは、「社会実装」だ。すでにPoC(Proof of Concept…概念実証)に取り組んでいて、ひととおり失敗まで経験している企業が多くなってきた今、AIをどう社会に浸透させていくかは大きな課題となる。

――砂金
「みんなPoCには飽き飽きしていると思うんです。LINE BRAINとしてこれから出すプレスリリースは、ほぼすべてが事例になると思います。AIを『世の中の当たり前のもの』として実装していきます」

加えて、「既存のLINEのサービス」とAIの深い融合もLINEは狙う。冒頭で紹介したLINEのスマートポータル戦略のキモの部分となる。クライアントや外部のパートナー企業と連携して“鍛え上げた”AIを、LINEのファミリーサービスに埋め込んでいくという。

AI OCRとは|RPA連携・活用事例・製品比較・導入のポイントを紹介

Optical Character Recognition

帳票などをスキャンすることで、文字をデジタルデータに変換する「OCR(Optical Character Recognition)」は、すでに多くの職場で利用されているのではないでしょうか。

近年注目されているのが、OCRにAIの技術を取り入れることで、より認識精度を高めた「AI OCR」です。この記事では、OCRとAI OCRの違いや導入事例、データ化後の工程まで全自動化することでさらに効果的に活用するためのRPA連携、AI OCR製品を選ぶ際のポイントなどについてご紹介します。

AI OCRとは?OCRとの違いと特徴

画像出典:pixabay

OCRとAI OCR、まずは両者の違いをみていきましょう。

OCRとは

OCRとは紙に印刷された文字をスキャナーで読み取ることで、文字をデジタルデータに変換する技術です。「Optical Character Recognition(もしくはReader)」の頭文字をとったもので、日本語では「光学的文字認識技術」と表記されます。

スキャナーアプリやPDF編集アプリなどにもOCR機能を搭載したものは多く、オフィスでの書類のデジタル化などで広く使われています。

ただし、現状のOCRは万能ではなく、いくつかの問題点を抱えています。

▪︎手書き文字の認識は難しい
手書き文字は活字に比べて文字の認識が難しく、精度は下がってしまいます。とくに日本語の場合、平仮名、カタカナ、漢字と3種類の文字が混在するため、誤認識が起こりやすくなります。

▪︎座標の設定が必要
正しく認識を行うためには、読み取り対象となる帳票などの書類のどこに文字が配置されているのかといったフォーマットを指定する必要があります。そのため、読み取り作業の開始までに時間がかかることも難点です。

▪︎定型フォーマットしか対応しない
OCRで読み取ることができるのは、あらかじめ指定したフォーマットに限られます。帳票のどこに文字が入っているかが指定されていない書類を正確に認識することは困難です。

AI OCRとは

AI OCRとはOCRにAI技術を取り入れることで、従来のOCRがもつ問題点を解消し、認識精度を向上させたものです。

AI OCRは、以下の3つの特徴を備えています。

▪︎学習により精度の向上や手書き文字への対応が可能
ディープラーニングによって、誤認識を学習することにより文字認識率を向上させることができる。また、手書き文字への対応も可能。

▪︎座標の設定は不要
文字の読み取り位置を自動抽出できるので、帳票の文字の位置や項目を事前に指定しなくても認識が可能。

▪︎フォーマットが異なる帳票に対応できる
座標の設定が不要になったことで、事前にフォーマットを指定する必要もなくなり、さまざまなフォーマットの帳票に対応できる。

AI OCRの導入事例


AI OCRの導入は、大幅な業務効率化につながることもあります。

オーダーメイドのスーツ・シャツを扱うスタートアップ「FABRIC TOKYO」では、店舗スタッフが採寸しながら手書きで記入したメモを、手書き文字認識AI「Tegaki」を使ってデータ化。

ほぼ100%の精度で読み取ることができ、データはクラウドにアップロードするので、顧客からもいつでもアクセス可能です。スタッフがメモをExcelに入力し直してデータを作成していた頃に比べ、付き180時間の労働時間削減につながったといいます。

AI OCRとRPAの連携で可能になること

画像出典:pixabay

現在紙の文書をデータ化するためにOCRとRPAを連携させるというニーズが高まってきています。OCRとRPAの連携についてご紹介します。

RPAとは

RPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型業務をソフトウェア型のロボットによって自動化するためのシステムです。このRPAをAI OCRと連携する動きも進んでいます。

RPAでは、作業手順を「シナリオ」としてソフトウェアに記憶させることで、定型業務を自動で行えるようにします。

AI OCRとRPAの連携でデスクワークの自動化が可能

AI OCRを使うことで、手書きの帳票などの文字や印刷された文字をスムーズにデジタル化できますが、そのデータをシステムに入力する作業は人の手で行わなければなりません。

そこで、RPAをAI OCRと連携させて使用すれば、入力作業も自動化することが可能になります。

手書き帳票のデジタル化→システムへの取り込みまでのプロセスをすべて自動化することで、さらなる効率化をはかることができるのです。


RPAソリューションサービス「BizRobo!」を提供するRPAテクノロジーズの執行役員の笠井 直人氏が述べるには、以下の機能は具体的に実現可能なのだそう。

▪︎OCRで入力した帳票を機械学習で分類

▪︎スキャンデータのノイズを除去

▪︎書いてある数字を足し算してエクセルに入力

▪︎そのエクセルファイルを特定のフォルダに格納

ただ、人間も文字の読み間違いをするように、OCRも100%の精度はありえないようです。そもそも100%は必要なのか?どの程度の精度であれば十分なのか?を考えつつ導入を考えるのが重要です。

AI OCRとRPAを連携させた活用事例

AI OCRとRPAを連携させることで、業務効率化を実現した事例をひとつご紹介します。

リコージャパン株式会社では、請求書処理作業の負荷を軽減するため、「RICOH Cloud OCR for 請求書」を導入。帳票解析技術と画像処理技術を搭載したAIが請求金額や請求日、請求元名などを自動認識して一括でデータ化。さらに、データ化した請求書情報をRPA連携することで、請求書業務の自動化を実現しました。

自動化により、請求情報の確認もれやミスがなくなったことに加え、紙の情報を扱う必要がなくなったことで、テレワークへの取り組みも検討可能になったそうです。

AI OCRの導入で注目すべきポイント

画像出典:pixabay
AI OCRを実際に導入する場合は、自社のニーズに沿ったものを見きわめることが重要となります。AI OCR製品を比較する際には、以下のポイントに注目するとよいでしょう。

▪︎精度
最も重要なポイントは、OCRの精度でしょう。多くのOCRソフトウェアでは、認識率がパーセンテージで提示されています。また、手書き文字専用や活字専用、どちらにも対応するタイプなどに分かれるため、認識対象となる文字の種別も確認が必要です。

▪︎価格
ソフトウェア自体を購入する買い切り型の場合、購入時の費用に加えて保守費用についても確認する必要があります。なお、最近は月額/年額費用を支払って使うサブスクリプション型の製品も増えており、こちらの場合は保守・バージョンアップなどの費用が利用料に含まれているケースが一般的です。

▪︎オンプレ/クラウド
オンプレミスは、カスタマイズしやすい点や強固なセキュリティを確保できる点がメリットですが、初期費用の負担は大きくなります。一方のクラウドは、導入が比較的容易な点がメリット。初期費用の負担も小さいため、試験的に導入してみたい場合にも適しています。

▪︎RPAとの連携
RPAとの連携を考えているなら、想定したフローでの連携が可能かどうか、既存の業務をしっかり代替できるものになるかについても確認が必要です。

AI OCR製品の比較

主要なAI OCR製品を比較すると、下記のとおりになります。

製品名 価格 オンプレ/
クラウド
対象文字 RPA連携 特徴
DX Suite 初期費用20万円〜/月額10万円〜 オンプレ/
クラウド
手書き/
活字
対応 取り込んだ書類は、自動で種類ごとに仕分けできる。
AI よみと〜る 月額10万円〜 クラウド 手書き 対応 直感的に使いやすいいブラウザベースの管理画面を採用。
スマートOCR 初期費用5万円〜/月額費用3万円〜 オンプレ/
クラウド
手書き/
活字
対応 オンプレミスおよび4タイプのクラウドが容易されている。
Flax Scanner 要問い合わせ オンプレ/
クラウド
手書き/
活字
対応 業務内容や帳票に応じた独自チューニングを実施。
Tegaki 要問い合わせ クラウド 手書き 対応 99.2%の高い認識精度をもつ。業界用語にも対応。
LINE BRAIN OCR サービスページ参照 クラウド 手書き/
活字
LINEアカウントトン連携。非定型フォーム対応。高水準の認識精度。多言語対応。

AI OCRを効果的に活用するには、実際に製品を使う社員への教育や、導入時のサポートといった、人に対するマネジメントも重要になります。

自社のニーズにあった製品を選び、現場の理解が得られるようにマネジメントすることで、業務効率化につながる導入ができるはずです。

AI OCRのこれから

AI活用を検討する際、そもそも社内のデータが紙でしか管理されておらず、データ活用が進まないという状況を目にします。その場合、全ての紙データをデジタル化しシステムに取り込んではじめて、デジタルデータを活用して意味のあるアウトプットが実現できます。

これからますますAI活用の流れが大きくなっていく中で、最初の一歩としてAI-OCRでデジタルデータを十分に溜め込むことへの需要が高まっていくはずです。最近では、一部本記事でもご紹介したように、サービス化されたOCRプロダクトもたくさん登場してきています。AI OCR技術は今、ビジネス広く普及していこうとしてます。

「PIXTA(ピクスタ)」と協業し、デジタル素材をAIコンサルティング案件の教師データとして活用します

レッジは、ピクスタ株式会社が運営する写真・イラスト・動画・音楽などのデジタル素材のマーケットプレイス「PIXTA(ピクスタ)」と協業しました。

レッジにおけるAIプロジェクトのコンサルティング案件で使用する教師データとして、PIXTAのデジタル素材を活用していきます。

「PIXTA(ピクスタ)」とは?

PIXTA公式サイトより

「PIXTA」は、2006年5月に開設された、プロ・アマチュア問わず誰もが自ら制作した写真・イラスト・動画・音楽をインターネット上で売買できるデジタル素材のマーケットプレイスです。

あらゆるジャンル、媒体のクリエイティブを支える豊富なイメージ画像・動画・音楽を取り揃え、日本を中心に、アジア各国の生活・文化にそった豊富なアジア素材が特徴です。現在は、英語、簡体字、繁体字、タイ語、韓国語に対応し、アジアのクリエイティブ制作分野の人々から高い支持を受けています。

PIXTAのデジタル素材を教師データとして活用

現在、ビジネスへの活用が進みつつある機械学習、とりわけディープラーニングでは、データの量と質が、AIモデル構築の際にもっとも重要な要素のひとつです。PIXTAが有する大量の写真・イラスト・動画・などのデジタル素材は、AIモデル構築の際に教師データとして有用だと考え、協業するに至りました。

今後、レッジのコンサルティング案件で写真・イラストデータが必要な際、PIXTAのデジタル素材を教師データとし、AIモデルの構築を行う予定です。また、PIXTAのデジタル素材を活用したハッカソンなども行う予定です。

姿勢のゆがみを診断するAIアプリ、肩こり・腰痛などの原因を分析

1月22日、株式会社お多福labは、AIが姿勢を診断してスコア化するシステム「Posen(ポーズン)」の開始を発表した。

高齢者向け施設、医療などがメインターゲット

ポーズンは、タブレットやスマートフォンのカメラで撮影するだけで使えるアプリ。全身(前面、側面)を撮影するだけなので所要時間はわずか1分というのもポイントだ。身体への専用器具装着などももちろん不要。

AIだからといって使い方は非常に簡単なのも魅力(画像は公式サイトより)

AIがユーザーの関節を読み取り、姿勢のゆがみと関節の可動域を数値化(スコア化)する。スコア化することで、現代人が抱える頭痛や肩こり、腰痛、不眠など身体の悩みの原因を、姿勢から分析できる。

アプリの主なターゲットは、高齢者向け施設や接骨院、マッサージ店など。そのほかでは、接客業をはじめとする多くのビジネスでの活用も期待できるという。要するに、姿勢施術を要する現場向きのアプリのようだ。

必要な機材も少なく、広いスペースもいらない(画像は公式サイトより)

ポーズンは管理システムを搭載しているため、問診記録で利用者の健康状態を確認可能。過去の結果と見比べることもでき、さらには管理画面からLINEやメール送信も可能だという。スコアを表示するため姿勢の分析結果を客観視でき、姿勢の修正はもちろん、リハビリや治療を継続するシーンにおいての意欲向上につながるとしている。

LINEなどで送れる診断結果自体も、わかりやすく示されるようになっている(画像は公式サイトより)

なお、本アプリの開発には、大阪大学数理・データ科学教育研究センター特任教授 高野渉先生が技術協力している。

>>プレスリリース

動きを数値化するAIの取り組みは進んでいる

ポーズンは先に書いたとおり高齢者向け施設、医療などでの活用を狙っているが、スポーツなどの現場でも動作や姿勢を数値化する取り組みが始まっている。

まず、1月21日にはエイベックスがダンス技術のスコア化するアプリを発表した。ダンス分野では、育成や評価システムにおいて個人の感覚や感性に左右されることが多かったのが背景にある。アプリには骨格検知、動画解析などの技術が使われている。

ダンスの数値化にあたって、人間の骨格を検知している

スマートフォン向けの専用アプリを使うだけで、ダンス技術をスコア化しスキルチェックが可能になる。すでに、エイベックスの「エイベックス・アーティストアカデミー」のダンスクラスで導入中。

また、2019年1月にはNTTPCコミュニケーションズが単眼カメラの映像から動作解析を可能にするAPIプラットフォームサービスをリリースしている。

Ledge.ai編集部で実施した際の管理画面の比較結果。部位別、時間別の一致度合いなども表示される

動画解析はプロスポーツではよく用いられている技術だが、特別な機材などが必要だった。そこでNTTPCコミュニケーションズはスマホひとつで、多くの人が利用できる動画分析サービスを確立しようとしている。

エイベックスがダンスのスコア化を実現、AIが骨格を検出して解析

エイベックス株式会社は1月21日、動画解析技術とデータサイエンスを活用しダンス技術のスコア化を実現したと発表。

人間の骨格を検出してダンス技術をスコア化

エイベックスは、2018年からダンス技術のスコア化を実現するプロジェクトを始動し、ダンスの定量評価に挑んできた。プロジェクトには、ダンス解析を担うアビームコンサルティング株式会社、人間の骨格を検出する独自開発の人工知能エンジン「VisionPose(ビジョンポーズ)」によりダンスの動きを捉える姿勢解析技術を提供する株式会社ネクストシステムが参画している。

人間の骨格を検出する仕組みを活用している

ダンス分野では、育成や評価システムにおいて個人の感覚や感性に左右されることが多く、データサイエンスなどの科学的アプローチの活用が議論されていた。さらに、2012年度からは中学校の体育でダンスが必修化されたものの、教育現場では指導者のダンス技術の理解習得や、評価・評点方法の不明瞭さなど、指導者の大きな負担も課題となっていた。

スマートフォンなどで動画を撮影するだけ

今回、エイベックスが発表したのはダンス技術のスコア化を活用したスキルチェックアプリ「Dance COMMUNE(ダンス コミューン)」だ。これまでエイベックスが培ってきたダンス育成ノウハウをもとに、動画解析技術と独自のデータ分析およびアルゴリズム開発など科学的アプローチを取り入れることで、ダンスの定量評価(=スコア化)を実現している。

エイベックスが発表したダンススコア化アプリ画面

同アプリは2019年10月から「エイベックス・アーティストアカデミー」のダンスクラスで導入中。新たなレッスンプログラムを展開いている。経験豊富なダンスインストラクターによる週1回のダンスレッスンに加え、アプリを活用した自主練習とスキルチェックを合わせることで、受講生の成長サイクルを加速させているという。

今後は、学校教育におけるダンス指導をはじめ、より多くのダンス育成の現場への導入拡大やダンス育成ノウハウの海外展開も見据えているそうだ。

>>プレスリリース(PR TIMES)

ディープラーニングで人のポーズを解析

さて。人の動きを解析するといえば、OpenPoseが非常に有名な技術のひとつ。

OpenPoseはカーネギーメロン大学(CMU)のZhe Caoらが「Realtime Multi-Person pose estimation」の論文で発表した、深層学習を用いて人物のポーズを可視化してくれる手法だ。

OpenPoseの解析画面

Ledge.aiで記事化した2018年当時から、静止画を入力するだけで人間の関節点を検出することが可能で、さらにGPUなどの高性能プロセッサを使えば動画像内に複数人の人物がいてもリアルタイムに検出できるということで注目を集めていた。

実際に、公開されていたプログラムを試したところ、身体だけでなく顔と手まで解析可能。激しい動きの動画でも検出でき、かなりの精度だった。

ゴルフのフォームの写真を解析させたがかなり正確

関節点情報の取得は、モーションキャプチャーという技術を使えば可能だった。しかし、人間の身体にセンサーを取り付けないと、間接点の情報を取得できないという課題もあった。OpenPoseの当時画期的だと言われていたのは、特殊なセンサーは不要なのに解析ができるという点にある。

ダンス以外の採点競技なども、いずれはすべてAIが判定する時代になりそうだ。エイベックスが発表したダンススコア化アプリのように、練習時からスコア化できる仕組みが広まれば、競技人口の拡大にもつながりそうだ。さらには、競技中の採点項目が可視化されれば、ふだんその種目に詳しくない人に対しても“わかりやすい”競技になるかもしれない。

保育園でAIやIoTを活用、保育士の事務作業などの負担を軽減へ

ユニファ株式会社は1月20日、AIやIoTなどを活用する「スマート保育園」の展開に向け、モデル園の募集を全国で開始すると発表した。

保育士と子どもが向き合える時間を増やす

スマート保育園とは、保育現場が抱えるさまざまな課題に対して、AIやIoTなどのテクノロジーを活用し、保育の質の向上を推進する“次世代型”の保育園だ。保育士の日常的な事務作業などを削減し、保育士と子どもが向き合える時間を増やすことが狙いにあるという。

「スマート保育園」イメージ画像(プレスリリースより)

ユニファが導入する主なサービスは以下だ。

  • ルクミー午睡チェック:乳幼児の午睡(お昼寝)を見守る医療機器サービス
  • ルクミー体温計:記録が数秒でできるスマート体温計サービス
  • ルクミーフォト:子どもの写真・動画をオンライン購入できるサービス(AIによる写真選定)
  • ルクミーシフト管理:保育士の複雑なシフトを自動調整・作成と勤怠管理を行うサービス
  • キッズリー:登降園管理、電子連絡帳や帳票管理を揃えたサービス

圧倒的な保育士不足が課題に

いま、子どもを乳児期から保育施設に預けて働く世帯が増えているため、保育施設の利用増加にともない多数の保育士が必要とされている。しかし、労働環境や責任の重さなどが主因で、圧倒的な保育士不足が課題になっている。

今回、ユニファがスマート保育園を提唱するのには理由があった。それは、やりがいを持って安心して働ける労働環境の整備と改善が必要だと考えたからだ。

画像出典:ぱくたそ

スマート保育園は、保育士にとって多くのメリットがあるだけでなく、保育を受ける子どもと家族の安心を高めるというメリットもあるという。もちろん、親側からしてみれば「AIやIoTで子どもを見守りきれるの?」と不安になるかもしれない。だが、ユニファはすでに全国の約6250施設、約35万人の乳幼児を対象にサービスを提供しているそうだ。

そこでユニファは、スマート保育園のさらなる実現に向け、各種取り組みをともに進めてくれる保育施設の募集を開始した。保育施設における課題のヒアリングや可視化、効果測定等に協力するなどが条件となっている。

また2月6日(木)には、東京都中央区京橋で「スマート保育園モデル園に関するセミナー」を開催予定とのこと。モデル園の募集開始にともなう、理事長や園長向けのセミナーだ。

募集要項やセミナーの詳細は下記リンクににあるプレスリリースを参照してほしい。

また2月6日(木)には、東京都中央区京橋で「スマート保育園モデル園に関するセミナー」を開催予定とのこと。モデル園の参加希望者向けに募集開始にともない、理事長や園長向けのセミナーだ。

詳細はプレスリリース(外部サイト)に記載されている。

>>プレスリリース(PR TIMES)

保育園にソニーのaiboが試験導入

画像出典:PR TIMES

2019年5月には、保育園に自律型エンタテインメントロボットaiboが導入されたニュースが報じられた。

自律型エンタテインメントロボットaiboは、ソニー株式会社が開発した最新の音声認識技術や人工知能を搭載していて人の顔を認識できる。会う回数、触れ合う回数を重ねるほど、よく可愛がってくれる人に懐くなど、行動が日々変わるとのこと。

画像出典:PR TIMES

aiboの餌やり、寝かしつけなどの世話をとおし、子ども同士が積極的にコミュニケーションをとれたという。また、導入した施設は新設した園だったため、通常だと新しい環境に緊張し、子ども同士が打ち解けるまでに時間がかかる。しかし、aiboをきっかけに会話が増え、子ども同士の距離が縮まったように思えるメリットも得られたそうだ。

ちなみに、導入した施設では、子どもたち同士で話し合い、aiboを「にじくん」と名付けたとのこと。

社内文書をBERT使用の技術でテキスト解析、欲しい資料を1枚単位でレコメンドするサービス発表

自然言語処理技術を用いて、企業のDXをサポートするストックマーク株式会社は、チームで共有されている提案書や企画書などの膨大な資料(パワーポイント、ワードなど)の中から、必要なページを1枚単位でレコメンドする機能「Asales Slide Finder」を1月20日リリースした。

社内文書を1枚単位でレコメンドする「Asales Slide Finder」

営業資料の作成は、

  • 参考にしたい資料がすぐに見つからない
  • まとめ方がわからない
  • 提案ストーリーや構成の検討に時間がかかる

など非効率で属人的な作業と困難がある。また、ホワイトワーカーが、情報収集や資料検索、文書作成にかける時間は、労働時間の約50%を占めると言われている一方、これらの生産性を上げるためのソリューションが提供されていない。

「Asales Slide Finder」は、営業の提案活動における提案書・企画書作成業務の負荷を軽減、ナレッジシェアを促進させることで、営業一人ひとりの生産性を向上させ、組織全体の提案力向上を目指すという。具体的な機能は以下。

  • スライド共有
    提案資料や企画書をアップロードすることで、スライドを1枚単位で共有できる。BoxやSalesforceとも連携が可能。チーム・社内のナレッジを共有し、営業活動における生産性を向上させる。

  • スライド検索
    自然言語処理と画像解析により、スライドに含まれる文字やデザインが似ているスライドを検索可能。1ファイル1ファイルを開いて必要な資料やスライドを探すオペレーションがなくなり、提案活動における業務負荷を大幅に削減し、勝てる資料をすぐに作成できる。

  • 自動タグ付け
    自然言語解析でスライド1枚1枚の内容を自動でタグ付け。提案・企画業務における重要情報に瞬時にアクセスできる。

  • スライドレコメンド
    商談・案件のニーズを元に、過去の受注に繋がったスライドをレコメンドする。組織全体の提案力を底上げし、全員が即戦力になるようサポートする。

Asales Slide Finderの諸機能は、営業業務プロセス支援プラットフォーム「Asales」に搭載される。Asalesは、社内外のテキストデータを自然言語処理で解析し、「営業の生産性向上による、売り上げ拡大」をコンセプトに営業活動全般をサポートする「Asales Basic」「Asales Insights」からなるサービス。

自然言語処理のブレイクするー「BERT」使用の技術で1枚ごとの意味理解

Asales Slide Finderは「今注目されている自然言語処理のブレイクスルーを起こした言語モデル『BERT』を使用した最先端技術と画像解析技術を用い、1枚ごとの意味理解をすることで可能となった新たなサービス(同社広報)」だという。BERTは2019年、Googleの検索サービスにも導入され話題を呼んだ。

Ledge.aiでは過去にストックマーク社にインタビューし、「BERTのすごさ」についても解説してもらった。ぜひ下記の記事にも目を通してほしい。

Source:PR TIMES

青森県庁にAI議事録が導入、人工知能が会議の議事録を自動で作成

1月9日、株式会社イグアスが販売するクラウド型AI議事録作成支援ソリューション「AI Minutes for Enterprise」が青森県庁で採用が決定したと発表された。

青森県公式サイトより

青森県庁ではAI Minutes for Enterpriseの2020年度本格導入を目指し、2019年11月19日~2020年3月31日までの期間、青森県総務部行政経営管理課を中心に全庁内で活用し、使い勝手や効果を検証している。

プレスリリースによれば、青森県庁では日常的に多くの会議が実施され、その議事録手作業で作成している現状では、職員は文字起こしという単純作業に多くの時間を費やさざるを得ず、そのために残業時間が多くなり、ほかの業務を圧迫しているそうだ。

青森県庁ではこの状況を打開するためにAI議事録を活用し、大幅な時間短縮を実現することを狙っている。

また、青森県としては今後、内部業務の議事録作成だけでなく、ろう学校、郷土館等の教育部門での学習・理解支援や観光客対応部門での外国語翻訳支援などの県民に対するサービスや福祉の向上にも活用し、音声や言語に関わる格差の解消という行政課題を解決することを目指しているという。

AI Minutesは同時翻訳も可能(プレスリリースより)

青森県博物館大会にて実証実験中(プレスリリースより)

ピンマイクでスピーチ中(プレスリリースより)

クラウド型AI議事録作成支援ソリューションAI Minutes for Enterpriseの機能は、IBM WatsonのSpeech to Textの機能により自然言語を処理し、マイクを通じて話者の言葉をリアルタイムにテキスト化。編集クライアントによって、複数人で編集可能となり、これまでの長時間の議事録作成時間を大幅に削減する。さらには、トランスレーター機能により、話し言葉を35ヵ国語に同時翻訳でき、外国人が参加する会議でも有効なツールだ。また、議事録のテキストデータはIBMクラウドサーバーにセキュアに保管される。

>>プレスリリース(PR TIMES)

AI議事録の導入は各地で進んでいる

AI議事録の導入は、青森県庁だけではなく全国各地の自治体などで進んでいる。

昨年12月には、茨城県つくば市で会議録などの文字起こし作業を自動化する実験を開始した。

導入までの経緯は青森県庁と同様で、議事録作成業務における業務負荷の軽減だ。従来の議事録作成フローは、職員がICレコーダーで録音データを何度も聞き返しながら作業していたという。

AI議事録作成における認識率の向上(つくば市のプレスリリースより)

文字起こしの作業は、実際の会議時間よりも大幅に時間を必要とする業務。もっとも、会議自体をなくすor減らせば議事録作成業務は必要なくなるのだが、自治体や官公庁となると難しいのだろう。

つくば市や青森県庁のように、徐々にAI議事録が広まれば、議事録作成にかけていた業務時間をほかのサービスに割くことができるはず。それこそ、市区町村をよりよくするための、人にしかできない仕事に時間を充ててもらえるのが一番うれしい限りだ。

AIがようやく「社会の一員」となる──電通が予想するAIの2020年

2019年における各種報道の通り、AI技術は「幻滅期」に入ったことが示された。幻滅期に入ったAIは、2020年、どのように社会に浸透していくのだろうか。電通のグループ横断プロジェクト「AI MIRAI」を統括する児玉拓也氏は、2020年「AIが人間の仕事を奪う」のではなく、「AIを使えない企業が、人間を奪われていく」と指摘する──。同氏による寄稿をお届けする。

みなさん、こんにちは。電通 AI MIRAIの児玉です。

電通のグループ横断プロジェクトである「AI MIRAI」を結成し、さまざまなソリューションの開発や提案に取り組んで早3年。この3年のあいだに、AIを取り巻く環境も大きく変化してきました。電通は「ユーザー企業」と「ソリューション提供企業」の両方の側面を持ちながら、AIを乗りこなすためにさまざまな情報発信をしてきました。

早いもので2020年もすでに3週間経っていますが、遅ればせながら今日は今年のAI業界のトレンドについて、できるだけ電通らしい視点から想像してみたいと思います。

ところで、年末の「紅白歌合戦」に出演(?)された、AIで復活を遂げた美空ひばりさん、ご覧になりましたか?

【AI美空ひばり】紅白出場!制作の舞台裏を描いたNHKスペシャルの拡大版を放送!(外部リンク)

感動した、勇気をもらったという意見から、少し怖いとか、本人が意図にかかわらず「復活」して歌唱することに対する倫理的な意見まで、賛否両論ありましたね。

私はこれを見て、「ああ、本当に2019年らしい、象徴的なプロジェクトだな」と感じました。2018年でもなければ2020年でもない、2019年という年を的確に表わす出来事だったと思います。

そのあたりをとっかかりに、2020年そしてこの先起こるトレンドの2つの大きな方向性について、示唆をしていきたいと思います。

①2020年。AIは、社会課題に立ち向かう。

Photo by Jason Blackeye on Unsplash

ところで、2019年に、AI以外にも大きなトレンドがありました。IoT?量子コンピュータ?それも大事なのですが、私がもっとも気になったのは、「SDGs」をはじめとする社会課題に対する向き合いです。

2019年は、日本におけるSDGs元年ともいえる年でした。かつてより、CSVの重要性やESG投資というキーワードは出ていましたが、2019年はさまざまな企業のあらゆる活動において、SDGsが重要視される年になったと感じています。9月23日の「国連気候アクション・サミット2019」で発せられたグレタさんの演説も大きな話題になりました。「持続可能な社会」「格差の解消」などの社会課題への取り組みは、企業価値を測る大きなテーマとして本年も話題になりつづけるでしょう。

電通の「本業」でもあるマーケティング領域では、「パーパス・ブランディング」がグローバルのトレンドになっています。単なる機能やユーザーメリットだけでなく、そのブランドが目指す「パーパス=社会に対する存在意義」を定義し、共感を通してブランドの資産につなげようというムーブメントです。これも一つの、社会課題に対する立ち向かい方と言えるでしょう。

さて、AI業界はどうでしょうか。

今までは、AI自体のもっていたキャッチ―さ・PR性もあいまって、自社の業務改善から新規事業、純粋なエンターテインメントまで、さまざまなレベルの企業活動が「AI活用」として、玉石混交に発信され続けてきました。AIは話題性の高い、いわば社会の「新参者」として、社会の潮流とは少し離れて、お客様気分で取り扱われてきました。要はちやほやされてきたわけです。

一方で、2019年における各種報道の通り、AI技術そのものは「幻滅期」に入っています。私の理解ですが、これは、決して「ブームが去り、進化にブレーキがかかる」という意味ではありません。「より地に足のついた、価値のある企業活動にフォーカスされていく地道な時期」だと考えています。

おそらく2020年、そしてこれ以降は、単に「AIを活用しました」だけでなく、また「何を何%改善しました」というだけでもなく、それによって「どんな社会課題を解決したか/しようとしているか」に大きく光があたると予測しています。逆に言うと、もはやAIは社会の新参者ではなく、「社会の一員」としてその責任を果たすべき、という風潮になってくるはずです。そういう意味で、さきほど触れたAI美空ひばりさんはあくまでエンターテインメントであり、それ自体は素晴らしい取り組みではあるものの、「2019年っぽいな」と強く感じるのです。

AI美空ひばりさんが議論を巻き起こしたことで、「AIを使えばポジティブな話題になる」という風潮はどんどん薄くなっていき、倫理の問題や、社会課題に対するスタンスにシビアな視線が向けられていくでしょう。この流れをきちんと読み切らないと、せっかく難易度の高いAI活用を行ったのに社会からマイナスに評価される、ということすら、ありえます。

一方でこの状況はチャンスでもあります。

日本においては、世界一の高齢化社会であること、介護や医療に加え、特に農業・漁業などの第一次産業の持続可能性など、世界でも類をみない、大きな課題を抱えています。AI業界も、もちろんこの領域に立ち向かい、新しいソリューションがつぎつぎと生まれています。

私たち電通も、新しい取り組みを進めています。2019年秋には、福井新聞社、そしてLedge.aiを運営する株式会社レッジと協業して、AI×地方創生のイベントを福井県で行いました。

AIで地方創生!福井で見つけたイノベーションの可能性(外部リンク)

地元企業の皆様の高い志に触れ、確かな手応えを感じるワークショップでした。

参加した各社、各チームが「AIプロジェクト」を発表したTHINK AI in Fukui ワークショップ(THINK AI公式サイトより)

大企業においても、スタートアップにおいても、大都市でも地方でも、AIでどのような課題に立ち向かうか、どのような社会を目指すかが問われてくる。そんな年になりそうです。

②2020年。AI活用は「結果」にコミットしはじめる。

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ここまでは比較的ビジョナリーなお話しでしたが、ここからは一気にビジネス寄りの話題になります。

2019年は、政府が大きくAIに舵を切った年でもありました。春には「AI戦略」が閣議決定され、年間25万人の人材育成方針という発表もありました。また、政府がいわゆるDX=デジタルトランスフォーメーションにも力を入れ、DX推進指標とそのガイダンスも発表されています。

経済産業省によるDX推進ウェブサイト(外部リンク)

DXという概念は、「AI」と同じくらい広いので一概に議論はできませんが、ざっくり言うと「自分たちのシゴトをテクノロジーでアップデートし続けろ、さもなくば大変なことになるぞ」という危機意識が表立って叫ばれてきた、そんな年になりました。

2020年は、このような危機感や、AI活用をはじめとする企業の取り組みが、少しずつ「結果」というかたちで表出化してくる年になると考えています。先ほどの一つ目の予測とも重複しますが、ビジネスにおいてもAIは既に「新人」ではなく、しかるべき結果を出しはじめるのです。

「結果」というのは、もちろん収益(売上高、経費)という側面もありますが、それだけを指すのではありません。競合他社との細かなシェア争い、人材獲得競争、従業員満足、そういったところに少しずつ差が出てくる、そんな年になるのではないかと思っています。

2019年にLedge.aiで記事化されたものだと、以下が好例かと思います。

これらのように、工数を削って費用を削減するだけでなく、空いた労働力をCS(お客様価値向上)や営業開拓など、攻めの業務につなげることで、業界内のシェアやトップライン向上にも好影響があるでしょう。大企業の決算報告資料に「AI活用により…」の文字が躍る日も近いかもしれません。

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ほかにもわかりやすく表出するのは、人材獲得競争です。

さまざまな大企業の方とお話しする機会が多いのですが、昨年初頭頃より、AI活用については「一巡した」という感覚を強く持っています。思いつく一通りの実証実験は済ませ、成功した企業は限定的ながら業務への適用をはじめている状況です。

そうすると、同業社の間でも、「AIを導入している企業」と「していない企業」という差が出ます。もちろん、すぐに収益に直結するものと、しないものがあるでしょう。しかし、働いている社員からすれば、「AIでもできる仕事を人間がしている職場」と「AIによってスムーズになった職場」のどちらが魅力的かは自明です。ますます人材の流動化が進む日本で、この差は大きいでしょう。

また、先ほど政府による年間25万人のAI人材育成という方針をご紹介しましたが、彼らの行く末も気になります。2020年、21年に企業に就職する大学生は、大学に入学したのが2016年~2017年になります。そのころには既にAlphaGoが人間を打ち負かし、第3次AIブームの真っただ中です。それを見越して大学での専攻を決めた人も多いでしょう。いわば「AIネイティブ」です。そんな若者にとって、AIを活用している企業とそうでない企業、はたしてどちらに就職したくなるでしょうか。

3月に発表された、政府によるAI戦略(外部リンク)

「ウチはAI人材はいらない」という企業もあるかもしれません。しかし、優秀な25万人がAI人材になるということは、AI人材以外の優秀な人材の競争率が上がるということも、視野に入れるべきでしょう。

まだあります。AIスタートアップは引き続き活況で、資金の流れも活発です。しかし、AI自体が幻滅期に入る、そして大きなスタートアップが資金を集め、規模の経済を活かした力の差が出てくると、スタートアップの間でも「生存競争」がますます激化するでしょう。これまた2019年を象徴する出来事であるWework問題に端を発し、スタートアップ自体への風向きも少し変わってくるかもしれません。

では、AIスタートアップを「卒業」する優秀なAI人材は、その後どこへ行くのか? 日本企業はそこで競争力を発揮できるのか?が強く問われます。

「AIが人間の仕事を奪う」という論調を、驚いたことに2020年になった今でも目にしますが、おそらく逆の状況が起こるのではないかと睨んでいます。つまり、「AIを使えない企業が、人間を奪われていく」のです。

私たち電通グループも、グループ全体としてAI活用を推進していくため、その本気度を伝える大規模な社内イベントを実施しました。

繰り返しになりますが、AI活用の成果は業績だけでは測れません。瞬間的な業績なら、それこそ人力でカバーできることもあるでしょう。オリンピックイヤーに、一時的に活況となる業界や企業もあるでしょう。しかし、さまざまな側面で、企業をとりまく競争は熾烈になっています。AIをはじめとするツールを使いこなし、自分たちの仕事を適切に破壊し、再構築できるかが問われています。

2020年は、その最初の成果が出始める年になるのは間違いないでしょう。

まとめ

私からは、2020年のトレンドとして以下の2つを予想しました。

  • ①2020年。AIは、社会課題に立ち向かう。
    「AIで●●した」のニュースバリューはほとんどなくなり、社会の一員として、厳しい視線で見られる。単なるAI活用ではなく、どのような社会課題に立ち向かうかが問われる年になる。

  • ②2020年。AIは、「結果」にコミットしはじめる。
    AI活用が単なる広告塔、PRではなく、社会の一員として、実際に成果を出し始める。収益だけでなく、人材獲得競争などさまざまな側面で「AIを活用できているか」が問われる年になる。

皆様のイメージと、近かったでしょうか? それとも真逆でしたか?

いずれにせよ、2020年も、AIやその他テクノロジー活用の好事例が出続け、社会と企業にとってポジティブな刺激を与え続ける年になれば、と祈っています。

もちろん、祈っているばかりではありません。AI MIRAIも、電通らしいAIの活用:それは社会課題への取り組みや、事業そのものの変革に、正面から立ち向かっていきたいと思っています。ぜひ、ここまで読んでいただいたみなさまとも、機会があれば新しい取り組みをご一緒できれば幸いです。

2020年が、「社会の一員」となったAIにとって、飛躍の年になりますように!

AIロボットが接客する居酒屋ついに登場!人工知能ニュースまとめ

日々、目まぐるしく進化、発展を遂げるAI(人工知能)業界。さまざまな企業が新しいサービスを開始したり、実験に取り組んだりしている。

そこで本稿ではLedge.aiで取り上げた、これだけは知っておくべきAIに関する最新ニュースをお届けする。AIの活用事例はもちろん、新たな実証実験にまつわる話など、本稿を読んでおけばAIの動向が見えてくるはずだ。

AI市場は2023年に640億円へ──ITRの市場予測

昨年12月、株式会社アイ・ティ・アールは、「ITR Market View:AI市場2019」として、AI主要6市場(画像認識、音声認識、音声合成、言語解析、検索・探索、翻訳)を対象に、国内33ベンダーへの調査に基づいた2017~2018年度売上げ実績、および2023年度までの売上げ予測を発表した。

AI主要6市場は今後も継続的な伸びが見込まれることから、2018~2023年度のCAGR(年平均成長率)は26.5%、2023年度には640億円に達すると予測している。

AIロボットがカウンターで働く「ゼロ軒めロボ酒場」

1月14日、養老乃瀧株式会社と株式会社QBIT Roboticsは、2020年1月23日(木)から約2ヵ月間、JR池袋駅南口にロボットがカウンターで働く「ゼロ軒めロボ酒場」を開店することを発表した。

ゼロ軒めロボ酒場では、ロボットがお客様の注文を受け、ビールやサワーなどのドリンクを作って提供する。さらには、お客様の表情などをくみ取り、話しかけたり、手を振ったりするなどの接客をするそうだ。

月額25万円で導入後の調整までサポートするチャットボット登場

1月15日、USEN-NEXT GROUPの株式会社 TACTは、AIエンジンによる自然言語処理を用いた新たな自動応答チャットボットサービス「AIコンシェルジュ for チャットボット(AICチャットボット)」の提供開始を発表した。

電話自動応答サービス「AIコンシェルジュ」の運用によって1000万件を超す会話データ分析の実績をもつTACTがクライアントに代わって構築する。さらに、導入後もエラーポイントの発見と改善策を提案し、継続的に精度向上をTACTがサポートしてくれる。

価格は初期費用は25万円~、月額費用は25万円。月額費用には学習データのアップデートやレポーティングも含んでいる。

AI構築プラットフォームを使った受託・内製化支援のコンサルサービス開始

株式会社MatrixFlowは1月16日、プログラミング不要のAI構築プラットフォーム「MatrixFlow)」を活用したAIの受託開発、および内製化支援コンサルティングサービスの受付を開始した。

企業がAIベンダーにAI開発を外注する一般的な受託開発の形式とは異なり、MatrixFlowを通してAI開発を受託・納品する。外注から内製へのシームレスな移行や、MatrixFlowの活用による開発期間の短縮、AI開発後のメンテナンスの容易化などの効果が見込めるという。

スポーツ選手の“便”を解析、どの競技の選手か判別するAI

1月16日、AuB(オーブ)株式会社は、アスリートの便(腸内環境)の解析データをAI(人工知能)に読み込むだけで、サッカー選手か否かを85%の確率で見分けられるようになったと発表した。そのほか、ラグビー選手なら80%、長距離陸上選手なら50%の割合で識別できるそうだ。

この研究結果によって、競技ごとに異なる運動習慣や食習慣が腸内環境に影響を与える可能性が示唆できる、としている。

AIを搭載した約24万円の「鏡」が発売、健康管理やテレビ視聴が可能

1月15日、ファミリーイナダ株式会社は、健康管理システムとAI技術を搭載した次世代型ミラー「AI.Inada.Mirror」を2020年3月上旬から発売すると発表した。

AI.Inada.Mirrorは、美容やファッションから運動やヘルスケア提案などによって、心と身体の健康を提供する次世代型ミラーだ。プレスリリースでは「生活の楽しさから心の健康を提供するとともに、お客様に最適なご提案をAIによって行います」とうたっている。