新型肺炎、拡散速度に警戒 ベトナムなどにも拡大

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2020/1/23 18:30 (2020/1/24 0:22更新)

中国湖北省武漢市から到着した乗客らの体温をチェックする成田空港検疫所のモニター(23日)

中国湖北省武漢市から到着した乗客らの体温をチェックする成田空港検疫所のモニター(23日)

【北京=多部田俊輔】中国政府は23日、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡散を防ぐため、同市や周辺地域の交通を遮断する事実上の封鎖措置に踏み切った。世界保健機関(WHO)が海外への感染拡大を警告する「緊急事態」宣言の是非を協議するなか、異例の手段で封じ込めを急ぐ。全国の春節(旧正月)商戦にも悪影響を与え始めており、減速する中国経済に新たな重荷になりそうだ。

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新型肺炎の致死率は約3%と、同じコロナウイルスが原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)の10%弱、中東呼吸器症候群(MERS)の30%以上を下回る。ただ1人の発症者が多人数に感染を広げる「スーパースプレッダー(超感染拡大者)」が出た疑いもあり、年初からの感染者数は600人を超えた。拡大のスピードは発生3カ月後に中国・広東省で300人の感染者が発表された2003年のSARSを上回る可能性がある。

23日にはベトナムやシンガポールでも中国人旅行者の感染が初めて確認された。24日からの春節休暇入りに伴い、海外での感染拡大が強く懸念される。専門家からは32の国・地域で8000人以上が感染し、終息まで約7カ月半かかったSARSと同レベルの流行を警戒する声も出ている。

中国メディアによると日本時間24日午前0時時点で中国本土の感染者は合計634人に膨らみ、死者数は17人に達した。中国政府は23日、武漢を出発する航空機や高速鉄道のほか、武漢市内の地下鉄やバス、客船の運行を中止した。隣接する黄岡市や鄂州市でも公共交通機関を停止した。

ただ人口約1100万人の武漢で春節休暇を待たずに出発した市民も300万人を超えたとの観測もあり、封鎖で感染拡大をどこまで抑止できるか不透明な面もある。

武漢は習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げるハイテク産業育成策「中国製造2025」の中核拠点だ。国産初の量産にこぎつけた3次元NAND型フラッシュメモリーの工場があるほか、スマートフォン製造など世界のサプライチェーン(供給網)にも組み込まれており、物流の遮断が続けば海外企業への影響も避けられない。

新型肺炎によるマクロ経済への打撃も懸念される。春節は中国の小売業や観光業のかき入れ時だが、新型肺炎の感染を恐れて外出を控える人が増えるのは確実で、旅行会社や観光地ではキャンセル対応に追われ始めているという。03年春にSARSが流行した際、同年4~6月の実質経済成長率は9.1%と1~3月比2ポイント減速した。

23日の上海総合指数は一時2960を割り込み、終値の下落率も前日比3%に迫った。「新型肺炎のまん延は中国のみならず世界経済にもマイナス」(UBSの劉鳴鏑ストラテジスト)との見方が広がった。航空機燃料などの需要が落ち込むとの観測から、ニューヨーク原油先物価格は一時1バレル55ドル台と約2カ月ぶりの安値を付けた。

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