おっさんと住む元アイドルの揺れ動く「結婚観」
能町みね子×大木亜希子、「結婚」を語り合う
オジサンと住むことに抵抗感は?
能町 みね子(以下、能町):大木さんの新刊に登場する同居人の「ササポン」って何者なんですか?
大木 亜希子(以下、大木):58歳のサラリーマン男性で、眼鏡をかけた小日向文世さんのような人です。どこにでもいる、電車の中で目の前に座っているような50代男性です。ルームシェアがはやっていた1990年代後半ごろ、8歳上の姉がもう1人のルームメイトと3人でササポンと同居しており、姉からの紹介で住むことになりました。
能町:オジサンと住むことに、抵抗はなかったんですか?
大木:自分は誰かと住んで人間らしい生活をすることが必要であると感じたのです。それまで芸能界でしか生きてこなかったので、会社員として働けば、キラキラOLになれるのではないかと思っていました。3年間必死に働いたのですが、ある日突然コップの水があふれたかのように、地下鉄のホームで歩けなくなり、精神科に通うことになったのです。
能町:私はOL時代に過呼吸になったことがあります。自分の限界が来ていることに気がつかずに、ある日突然、来たんですよね。
大木:会社を辞めてお金がなくなり、今さら芸能界に戻ることもできないけど、生活していかなければならない中で、家賃が半分になるというササポンとの生活は、直感的に「もうこれしかない!」と思いました。
能町:よく飛び込みましたよね。でもお姉さんの紹介なら安心ではあるのかな。
大木:まさか自分がオジサンと暮らすことになるなんて思ってもみませんでしたが、そうせざるをえない状況だったんです。次に引っ越しするときは誰かと結婚するときだと思い込んでいました。
能町:確かに私も20代のとき、結婚願望はありましたね。でも、それは好きな人と結ばれたいというより、「結婚」という形式が欲しかったから。結婚していないと一人前じゃないという刷り込みがあって、意地でも結婚したいと思ってました。
大木:30代になるとその気持ちは消化されるものですか?
能町:30代前半では無理でしたね。とにかく法的な結婚がしたいと思って、法的に結婚してくれる人を探してました。
大木:「結婚」という手段を行使したかったんですね。
能町:でも結婚するには恋愛をしないといけないと思って、いろいろ試したんですが、結局私に恋愛は向いていないという結論に達して今に至ります。
大木さんは自分が恋愛に向いていると思いますか?