おっさんと住む元アイドルの揺れ動く「結婚観」

能町みね子×大木亜希子、「結婚」を語り合う

元SDN48の大木亜希子さん(写真左)と能町みね子さん(撮影:風間 仁一郎)
恋愛感情がいっさいないゲイの夫との「結婚」と言い張った同居生活をつづった新刊『結婚の奴』を上梓した能町みね子さん。人生に追い詰められた元アイドルによる実録私小説『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』の著者、大木亜希子さん。恋愛感情のない異性と住むという境遇の似た2人が昨年12月27日、東京・代官山の「代官山 蔦屋書店」でトークイベントを開いた。
人生を変えるような恋愛だの結婚だのは無理だが、ひとりは嫌だ――。互いにぶつけ合った人生・仕事観や恋愛・結婚観とは?

オジサンと住むことに抵抗感は?

能町 みね子(以下、能町):大木さんの新刊に登場する同居人の「ササポン」って何者なんですか?

大木 亜希子(以下、大木):58歳のサラリーマン男性で、眼鏡をかけた小日向文世さんのような人です。どこにでもいる、電車の中で目の前に座っているような50代男性です。ルームシェアがはやっていた1990年代後半ごろ、8歳上の姉がもう1人のルームメイトと3人でササポンと同居しており、姉からの紹介で住むことになりました。

能町:オジサンと住むことに、抵抗はなかったんですか?

大木:自分は誰かと住んで人間らしい生活をすることが必要であると感じたのです。それまで芸能界でしか生きてこなかったので、会社員として働けば、キラキラOLになれるのではないかと思っていました。3年間必死に働いたのですが、ある日突然コップの水があふれたかのように、地下鉄のホームで歩けなくなり、精神科に通うことになったのです。

能町:私はOL時代に過呼吸になったことがあります。自分の限界が来ていることに気がつかずに、ある日突然、来たんですよね。

大木:会社を辞めてお金がなくなり、今さら芸能界に戻ることもできないけど、生活していかなければならない中で、家賃が半分になるというササポンとの生活は、直感的に「もうこれしかない!」と思いました。

能町:よく飛び込みましたよね。でもお姉さんの紹介なら安心ではあるのかな。

大木:まさか自分がオジサンと暮らすことになるなんて思ってもみませんでしたが、そうせざるをえない状況だったんです。次に引っ越しするときは誰かと結婚するときだと思い込んでいました。

能町:確かに私も20代のとき、結婚願望はありましたね。でも、それは好きな人と結ばれたいというより、「結婚」という形式が欲しかったから。結婚していないと一人前じゃないという刷り込みがあって、意地でも結婚したいと思ってました。

大木:30代になるとその気持ちは消化されるものですか?

能町:30代前半では無理でしたね。とにかく法的な結婚がしたいと思って、法的に結婚してくれる人を探してました。

大木:「結婚」という手段を行使したかったんですね。

能町:でも結婚するには恋愛をしないといけないと思って、いろいろ試したんですが、結局私に恋愛は向いていないという結論に達して今に至ります。

大木さんは自分が恋愛に向いていると思いますか?

次ページ「まったく向いていないと思います」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • 就職四季報プラスワン
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
  • 最新の週刊東洋経済
  • 最強組織のつくり方
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
6

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • 589a4dabace4416ff8d98
    2点ほど感じた事。
    ・女性が結婚して専業主婦になることを「悪」とする価値観がそうとう刷り込まれているのだな、ということと、一方、女性は恋愛と結婚が幸せ、という価値観も相当に根強い。女性はどうしたらいいか分からず、この人たちのように迷走することになる。
    ・男性の幸せについて言及しているが、お二人ともわかっていない。男性は「幸せになる」のではなく「誰かを幸せにする」のが義務とされているのだ。幸せになるという概念自体、女性のためのものなんだ。男は、自分自身の幸せを追求してはいけない、誰かを幸せにするために生きろ、とそういう風に育てられているのだよ。
    up43
    down22
    2020/1/23 12:39
  • b31fc2e9370d
    まぁうちの結婚はイコール恋愛である部分もあるし、世間体という面もあるし、お互いにほっとけないヤバい人間同士の組み合わせでもあるから、それを補完する面もあるし、一概にこうだ、あれだととは言えないわな。
    up23
    down5
    2020/1/23 10:22
  • ぐらんぶるceb10c87bc8e
    この子も苦労したんだなあと思うけど「赤の他人のおっさんと住む」みたいなタイトルで目を引くやり方だとどうしても話題作りに見られないかな。

    とはいえ「限界アイドル」みたいな当たり障りのないタイトルで売れなきゃ元も子もないのか。
    up15
    down1
    2020/1/23 15:18
  • すべてのコメントを読む
トレンドウォッチAD
日系小売企業が本格進出<br>変貌するインドビジネス

日系企業は製造業が半分近くを占めるインド市場。ここへきて小売企業の進出表明が相次いでいます。サントリー、ココイチ、セブン-イレブン、ユニクロ、メルカリなど、人口増と若者の旺盛な消費意欲を取り込む各社の戦略に迫ります。