
携帯ショップに欠かせない存在が「モックアップ」(以下、モック)。
モックとは実物大の模型のことで、ガラケーやスマホのモックが店頭に並べられているのを見たことがあるかと思います。カタログだけではわからないフィット感やデザインなどを確かめられるので、みなさんも一度は触ったことがあるのではないでしょうか?
実は、このモックをネット通販している専門店、その名も「モックセンター」の運営会社が山梨にあります。
いったいモックの販売だけで経営が成り立つのか? どんな人に、どんなモックが売れるのか? 頭の中がハテナマークだらけになりながら、筆者は東京から「特急かいじ」に揺られて山梨に降り立ちました。
モック専門店「モックセンター」店主の末田さん
お話を聞くのは、平間通信の代表取締役・末田卓(すえだ・すぐる)さん。携帯電話業界で働きはじめて20年、2004年にはTVチャンピオン(テレビ東京)の「ケータイ王選手権」の決勝大会にも出場したことがあるそう。
1990年代から最近のものまで、幅広い品揃えのお店を構える末田さんに、「モック専門店の謎」について伺います。
自分の携帯ショップがつぶれて、余ったモックが売れた!
モックの販売って、なかなかニッチな商売ですよね。なぜモック専門店をはじめたんですか?
2008年に携帯ショップをはじめたんですけど、「1円携帯電話」規制【※1】とリーマンショックのあおりを受けて、さっぱり売れずにつぶれてしまったんです。
※1 端末を1円など破格の安さで売った分、高い通信料金で回収する、当時の携帯キャリア各社のビジネスモデルの見直しを図った総務省の要請
そうすると携帯電話のモックがたくさん余るわけですが、自社の責任で処分する必要がありまして。
ええ。捨てるにも産業廃棄物でお金がかかるので、ヤフオクに出してみたところ、こんなに売れるんだっていうぐらい、売れたんですよ。
購入者からも「もっと入手できるなら欲しい」とありがたいご要望をたくさんいただきまして、そこから続けています。
1998年発売、デジタルツーカー「CA3(DP-212)」のモック。
全面タッチパネルで、手書きメモやスケジュール管理などのスマホ的要素を持っていた
実は法人のお客さんが大半
法人が多いです。まず携帯電話のアクセサリーを作っているメーカーさんですね。スマホケースやストラップを作る業者さんが買って、型取りなんかに使うんですよ。
モックが多いと売り上げが伸びますから。ちなみに某通信大手の20周年CMで使われたり、PHS終了のアナウンス映像に使われたり、ケータイデザインの変遷を研究する目的で、工業大学がごっそり買っていってくれたこともありますよ。
1998年発売、NTTパーソナル「パルディオ316S(ドラえホン)」の実機
モック好きが「聖地巡礼」に来た
携帯電話オタクの方で、若いお客さんが特に多いですね。彼らは自力でそんなにスマホを買いそろえられないので、モックで所有欲を満たすんですよ。
あとは漫画で描くための見本として買っていただけたり、「アニメのキャラが10~20年前の世界で持っていたガラケーと同じものが欲しい」って、コスプレイヤーさんに買っていただけたり。
それは楽しいですね。ちなみにモックコレクターっているんですか?
います。横浜で営業していた時は、わざわざ大分や愛知からマニアの方が聖地巡礼的に来てくれましたし、ネットで「コレクションしています」と連絡もいただきます。
かつて営業していた横浜市保土ケ谷区の路面店。現在は山梨に移転しネット通販専業に
携帯電話の販売店はいろいろあるんですけど、ドコモショップなどの大手キャリアのショップではなく、いろんなキャリアの製品を扱っているお店・併売店さんにアプローチをかけます。それで取りに行ったり、送ってもらったりしています。
廃棄処分したらお金がかかるので。いまモックを1.5トン(150gのスマホ1万台分)処分したら、30~40万円はかかります。
新しいモックと、うんと古いモックが人気
新しいものは高く売れます。スマホケースを作っている業者さんが、どうしても新商品のケースを作らなければいけなくて、少々高い金額を払ってでもモックを手に入れたいからです。
2019年発売、「Google Pixel 3a XL」のモック。2019年11月現在の売れ筋のひとつ
他の商品に比べて格段に値が上がりますね(※取材した2019年11月現在で、税別5,980円)。
手に入れるのに他のモックよりも少しコストがかかるので、そういう値段になっています。
もう一つはすごく古い機種のモックですね。20年前のものは滅多に手に入らなくて、コレクターの方が虎視眈々と狙っています。
auのINFOBARというシリーズがありまして。これは海外のeBay(世界最大級のオークションサイト)でも売れるんですよ。数年おきに続いている伝統的なシリーズなので、集める方はいらっしゃいますね。
2003年発売、au「INFOBAR(A5307ST)」のモック
あとこのキティちゃんケータイなんですけど、まだドコモに比べてauやJ-PHONE(現ソフトバンク)が二流三流扱いされて人気がなかった時期にも関わらず、キティラーの方が大挙して「ドコモをやめてこれにします」って言うぐらい、すごく牽引力のある製品だったんですよ。
2001年発売、au「C401SA(ハローキティモデル)」のモック
いま見ると楽しくてちょっと欲しくなりますね。スマホにはない所有感があるし、手のひらにおさまってかわいい。
このあたりのキャラものモックは高くても売れます(※2019年11月現在で、税別8,800円)。
2002年発売、au 「A3014S(ハローキティモデル)」のモック
さっきのはエンブレムとかをちゃんと作っているんですが、こちらは塗装だけでごまかしているんですよ。それ以外はふつうの既製品と同じなので、キティ好きの人は心が揺さぶられないそうです。
2001年発売、ツーカー「TK11」のモック
これは、ツーカーがいちばんがんばっていた頃のモデルで、世界初の64和音着メロの機種です。もう本当に大々的にCMもたくさん打って。京セラが社運を賭けたモデルなんですけど、売れなかったんです。モックも売れていません。
社運を賭けたのに。ちょっとオモチャ感はありますけど、いまのスマホにはない感じでかわいいですね。
ちなみにCMで使う用に、画面を真っ黒にしたモックが売れるんですよ。黒い部分に画像をハメ込んで使えるから便利なんです。やたら売れていた時期は、スマホゲームのテレビCMがよく出ていました。
1カ月に100個ぐらいは売れますね。ちょっと旬を過ぎてしまっているようなモックでも、画面を黒くすれば売れるので助かっています。
幻のモック、やたらとデカイD2101V
ドコモのFOMAのモックの中でひとつだけ入手できていないものがあって。三菱のD2101Vです。500個ぐらいしか売れていないとされる機種なんですが、めちゃくちゃ大きくて、持っていると変な人だと思われます(笑)
2002年発売、NTTドコモ「D2101V」。長さは約15cm
(Photo by Rebirth10 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:D2101V_1.jpg)
そのモックが一度も入ったことがなくて、このままだと死んでも死にきれないです。
記事で呼びかけておきますね。
※「D2101V」のモックをお持ちの方がいましたらぜひこちらまで連絡をください!
iPhoneのモックを売っていないワケ
iPhoneやiPadに関しては法律的な問題で。「商標権の侵害です」と向こうの顧問弁護士に言われまして、あっさり白旗を上げました。
ちなみに商標権の問題をクリアするために、アップルのロゴが乗らないものを中国のメーカーに作ってもらったことがあるんですけど、売るときに「iPhone」って言えなくて。「話題のスマホ」って載せてもなかなか売れませんでした。
以前販売していた“話題のスマホ”のモック
名前を「iPhone」にしていた頃は1カ月に100~200個売れていたんですが、「話題のスマホ」に変えたら200個が1年かかってやっと売れたぐらいで。
日本のケータイよ、奮起せよ
私、ガラケーが好きでして。ガラケーって、まっすぐのものや折り畳みタイプ、スライド式……いろんな形があるじゃないですか。流行してから、日進月歩で新しい機能がボンボン追加されていって、あのワクワク感もよかったですね。
当時は楽しかったですね。昔、ラジデンってラジオが聴ける機種がありましたけれども、私はラジオを聴くのが好きだったので、すごく欲しいなって思いました。
2005年発売、NTTドコモ「SO213iWR」のモック
……おお、これですか! 当時憧れだったんですよ。ラジデン、3バンド搭載【※2】でテンションが上がりますね。
※2 AMラジオ、FMラジオ、TVの周波数帯に対応するラジオチューナーが内蔵されていた
めちゃくちゃラジオに特化していて、振り切っていますよね。
さきほどのモックの裏面。「一発選局7つボタン」で、1〜7のボタンにあらかじめ設定されている周波数に切り替えが可能
けっこう在庫があるんで、おみやげでお持ちください。
そうですね、あとmova【※3】の最後のほうの機種なので、知られていないんですよ。もう世の中の注目がFOMA【※4】に移っている時期でしたから。
※3 NTTドコモが提供していた、第1世代(1G)および第2世代(2G)における通信サービスの総称
※4 movaの次世代として展開された、第3世代(3G)における通信サービスの総称
ちなみにモック販売を通して、携帯電話業界が変わったなと思うことは、何がありますか?
そうですね、日本メーカーが失敗を恐れるようになったなって。このラジデンなんかは、おそらく失敗を恐れずに作っているじゃないですか。最近はチャレンジングな製品がなくなりましたね。
はい。たとえば韓国のサムスンは何度失敗しても、折り畳めるスマホをずっと作り続けていますよね。中国のメーカーも1億画素のカメラのスマホを出しています。そんなチャレンジングな製品を、日本でもまた作ってほしいですね。
2008年発売、UTstarcom「SideKick」のモック。アメリカで普及した
生き残りをかけて
将来はモックも売るし、白ロム【※5】も売るし、格安SIMも売る複合的な形で生き残りを模索しています。ひとつひとつの売り上げが小さくとも、束ねれば何とかなるだろうって。
※5 解約済またはSIMカードが入っていない携帯電話のこと
そうそう。たとえば格安SIMを買うお客さんに、新古品のスマホがありまして、「auショップで買うと6万ですけど、ウチで買うと4万です」みたいな売り方ができますから。
実はモック販売だけでは厳しいこともありまして、畑でクリスマスツリー用のもみの木を育てています。
末田さんの畑に植えられたもみの木
大きさで違うんですよ。高さがだいたい3mぐらいの木は1~2万円ぐらいで安いです。それが4~5mぐらいになると、急に1本あたりの値段が30万ぐらいになるんです。
へええ! 4~5mまで育てるのに何年ぐらいかかるんですか?
1mぐらいの苗木だと、3年もあればそれぐらいになるそうです。
ただ僕が畑をなめていたと言いますか。いちばん最初に植えた木は7割方枯れてしまったんですよ。1年以上かけて土壌改良をして、ようやく最近は枯れてしまう木が3割ぐらいになりました。肉体的には疲れますけど、けっこう楽しいです。
モックは「人生の救世主」
NTTドコモ「N502i」のモック。シックなデザインで当時人気だった
僕がモック屋をはじめた頃は、病気をしていろいろなものを失った時期でもあるんですよ。心身ともにボロボロで、携帯ショップも廃業して、「これからどうやって生きていけばいいだろう」って考えていた頃にモックを売り始めて、意外と売れて。何とか自分を保っている状況のときに、生きる光明が降り注いだのが、モックが売れたことなんですね。
もう本当に、蜘蛛の糸が落ちてきたみたいな気分で。あのとき本当にそう思っていて。
2003年発売、NTTドコモ「N505iS」のモック
僕が携帯電話の仕事をやるようになるまで仕事を転々として、正直パッとしない人間だったんですけど、はじめてハマった仕事が携帯ショップだったんですよ。そのときからモックは付き物で、自分の人生が好転するときにもあったのがモックなので。やっぱり特別なものです。
10年以上これを仕事にして生きてきていますので、粗末に扱えないですよね。去年の一時期、やめようと考えていたこともあったんですけど。
赤字が続いたからです。新しいモックも以前ほど高い値段では売れなくなってきていたので。かつては新機種のモックが1万円近い値段でガンガン売れていたんですよ。Xperiaの初代が出たときはモックもすごく売れましたね。でも厳しくなってきて、やめどきを考えていたんですが、横浜から山梨に移転してコストを抑えればなんとかなるかなと思いまして。
NTTパーソナル「パルディオ101H」のモック。末田さんの原点のひとつ
本物の携帯電話ほど身構えず、もうちょっとフランクに集められます。値段も安いですし、ケアもカンタンですからね。
はい。モックはひとつの文化なので、コレクターズアイテムのひとつのカテゴリになってもいいと思うんですよね。野球カードやプラモデルみたいに。
(編集:ノオト )
長い・・・。
でも、モックも必要と購入欲求を満たしたりコレクターズアイテムになったりとこれからも人気がでそう。
どうせなら、ガチャガチャ(カプセルトイ)のミニチュアガラゲーの話も入れてほしかった。
正直モックには興味ありませんでしたが、最後まで読んでしまいました。
うちに眠ってるガラケー売れないかなぁと欲深くも…。
今だにお気に入りのガラケー保管してる
充電器なくしてしまったけど( ¯▽¯ )
楽しそう😆✨
行ってみたいです😊🍀
初代INFOBARを使ってたんで、モックでエエから欲しいなぁ〜・・・(^。^)
2代目は実機があるんで。。。(*´-`)
モックは携帯ショップへ行けば必ずありますが、CM用としても活用されているのですね。
...ということは、葵わかな国王がCMで持っていた(推定)arrowsも、ここで販売されていたもの?かもしれませんね。
とても面白かったです。
一時はイオンのモバイルコーナーでモックが100円で売ってたこともありました。
ガラケー時代の方が個性豊かな端末が豊富だったので、あの頃はモックでもワクワクしていましたね。
ドラえホンやRADIDEN、funstyle…懐かしい!
あの頃の感じ、今のスマホ社会じゃ全く起きなくなってしまったな…
モック屋さんならモミの木じゃなく樫の木を育てて欲しかった(50代以上限定ネタ)
mineoの中の人(例のあの人)が自作してスタッフブログに製作過程を
公開しそうなしなさそうな・・・
実は数年前、こちらでモックが販売されているのを発見して購入しました。
確か300円位だったかな・・?
当時使っていたガラケーのボタンが外れてそのまま紛失したのですが
そのガラケーの修理自体も既に受付終了していたのですよ。
愛着あったけど変えるか悩んでいた時に、
モックからボタンを取り出してガラケーの外れた所にはめてみると
サイズは同じなので使うことが出来ました。
まあ実機と違って使用されている素材が違いましたので
ボタンのバックライトが光りませんでしたが・・・
素晴らしい こんな世界があるなんて知りませんでした
昔よく店頭で手に取って品定めしてたなぁ
. 👑
. ✳️✳️✳️✳️
. ✳️
. ✳️✳️✳️✳️
. ✳️
. ✳️✳️✳️✳️ th
#マイネ王5周年おめでとう!
記事読んでたらW-Zero3シリーズのモックを揃えたくなりました。
ジャンクなら今でも全種手に入りそうな気もするけど。
楽しそうですね。
行ってみたい。
モックなら端末の自由化(買取)が導入された頃のIDOやセルラー、関西デジタル
ホン時代のNECのがまるで「折りたたみ無線機」でした(笑)
セルラーのはストレートのアナログ京セラ製がインパクト強いです。
当時はアンテナを引き出してました。
1.5GHz帯の新規参入組の電波は建物内で切れまくりでしたねぇ・・・
800MHzのプラチナバンドを既得権で持ってたドコモとセルラー系が圧倒的に
有利でした。
アナログ方式時代の方がPDCより多少ノイズが入りましたが音声遅延が無かった
印象です。
デジタル方式で遅延がほぼ無いのがPHSですがそれもまもなく終わりを迎え
ます。
「音質」そのものはMNOの「VoLTE HD」でかなり上がった感じですが音声遅延は
何とも・・
携帯通信費に10万円近くかかってた時代に比べたら今はカケホ制度があるから
音声遅延解消は贅沢な悩みですかね・・・
ガラケーやスマホのモックって、携帯会社が取り扱ってるものだと思ってました。
専門店があったんですね(ºㅁº)!!
ガラケーやスマホの歴史が知れそうで、興味あります。