新垣里沙(後編) 黄金期と比較された苦しい時期に生まれた決意
後輩との不仲説、同期との変化……停滞に落ちる影
前回でも述べたが、モーニング娘。はメンバーの卒業と加入が繰り返されることで新陳代謝が図られ、ファンと世間の注目を集め、人気を集め続けてきた。
しかし2007年からの約4年弱は、新規メンバーの加入はなく、変動は2009年末の7期 久住小春卒業のみ。「真のパフォーマンスを追求し、世界に通用するクオリティを目指す」という方針を貫いたこの4年間は、後でこそ「プラチナ期」と称されて半ば伝説化するが、当時の実情はメディア露出度やセールス面で苦戦が続いており、周囲からは停滞と見られていた。当然、サブリーダーの新垣里沙にも厳しい目が注がれた。
「やっぱりかつての先輩方と比べられましたし、“前はこうだったから”とか“先輩たちは個性が強くてすごかったから”とか、マネージャーさんに怒られることもありました」
停滞は内部にも影を落とす。1期後輩ながら抜群の存在感で、加入当初より人気を博した田中れいなとは不仲説が取り沙汰された。
「いまだにネットなどで“新垣 田中”で検索すると“不仲”と(笑)。でも、実際は仲が悪かったわけではなくて、話さない時期があっただけ。私は性格がはっきりしているし、(田中)れいなもクールな印象があるから、お互いに勘違いされやすいのかなって。……まあ、実際多くを語る間柄ではなかったですけどね(笑)。
でもメンバー同士は案外そんなものですよ。会社などでも同じだと思うのですが、積極的には話さない人っていますよね。不仲ではないけど、相性が良いわけでもない。私の場合はカメ(亀井絵里)やさゆみん(道重さゆみ)と合ったから、たまたまよく一緒にいただけで」
後に新垣の卒業公演にて、田中が「ギクシャクした時期もありました」と告白して笑いを誘うなど、いまやファンの間でも有名なエピソード。さらにサブリーダーという“役職”が、同期の高橋愛との関係にも影響してしまう。
「加入した当初は本当に毎日のように愛ちゃんと一緒にいたし、プライベートで仲良く出かけたりすることも多かった。楽しくやっていきたいと思っていたのですが、愛ちゃんがリーダー、私がサブリーダーになってからは関係性が変わってしまって、プライベートで遊ぶことも一切しなくなりました」
リーダーの負担をどう減らせるかを常に考えていました
12歳で加入した時にはファンから誤解され、時にブーイングなどを受けながらも、新垣はそれらに負けることなく戦い続けてきた。青春の全てを捧げてきた20歳前後の新垣に待っていた現実としてはあまりに厳しいが、それを分かち合えたのは、やはり盟友の高橋愛だったという。
「愛ちゃんはやっぱりいちばん近い存在でしたし、とても頼りになった。だから……、あの時期は不思議な関係でしたね。直接話し合わなくても、“愛ちゃんは今こう思っているだろうから、私はこう動こう”みたいに、予測して先回りすることができました。
本当は私も意見を言ったり叱ったりするのは苦手なタイプですが、愛ちゃんはとにかく優しいからすぐに1人で抱え込んでしまう。だったら私が後輩たちに厳しいことを言って、愛ちゃんにフォローしてもらえばいい。何よりもリーダーの負担をどう減らせるかを常に考えていましたね」
そんな高橋愛は2011年9月、同期の新垣にリーダーのバトンを託してグループを卒業する。この年は1月に9期メンバーが4名加入、高橋卒業の直前にも10期4名が加入と、それまでの4年とはうって変わってメンバーの入れ替わりで慌ただしくなっていた。言うまでもなく、当時は東日本大震災の大きな被害に日本全土が揺れていた時期だ。
「(高橋愛の卒業は)とても大きな存在を失ってしまう感覚でした。10年間一緒に頑張ってきたので、やっぱり一緒に卒業したかった。グループは後輩に託した方が良いと思って、事務所のスタッフさんにもお願いしたけど断られてしまって……。でも、それには理由があって、当時は10期が入ったばかりだったので、『少しだけでも、しっかり後輩たちを見てあげてから卒業してほしい』と。それが、たとえ短くてもリーダーを引き受けようと決意した理由ですね」
自信を持ってやっているので、先輩にも見てほしい
約8カ月間リーダーとして後輩たちを見守った新垣も、翌年5月にグループを卒業した。礎の時代を支え、高みを目指し続けた彼女の有終を飾るシングルには、プラチナ期の目指した“格好いいモーニング娘。”を体現した「恋愛ハンター」が選ばれた。
「『恋愛ハンター』は本当に大好きで、愛ちゃんも『私もその曲、やりたかった!すごく格好良い!』と言ってくれました。この曲で卒業できたことは本当にうれしかったです」
心ない噂にはじまり、長い停滞に苦しみ、同期のリーダーや後輩との関係性に悩みながら、それでも貫き通した苦労人、新垣里沙が目指したモーニング娘。とは何だったのか。
「先輩たちがいた頃の楽曲は“しっかり受け継いで大切にしたい”という想いでしたし、(プラチナ期)当時の楽曲は私たちにしかできないと思っていました。受け継ぎながら今しかできないことをやっていくのが、モーニング娘。のスタイルなんです」
「今のモーニング娘。は『LOVEマシーン』や『恋愛レボリューション21』などを、当時とはダンスを変えてパフォーマンスしていますよね? 他のグループではあまりないと思いますが、以前ふくちゃん(譜久村聖)から『自信を持ってやっているので、先輩にも見てほしい』という力強い言葉を聞いたことがあって、しっかり受け継いだ上で一生懸命に今を生きてるんだなって。カッコイイと思います。あのフォーメーションダンスは、絶対に今のモーニング娘。にしかできませんから」
残すべきことは残し、変えるべきことは変える。言葉にするとシンプルな、プラチナ期を象徴する“伝統の継承と組織の改革”の精神はこうして誕生したのだ。
「……最近、よく“今のモーニング娘。に言いたいことは?”と質問されるんですけど、“ありがとう”しかないんですよね。新しいことに挑戦し続けているみんなは本当にカッコイイ。楽しみが尽きないですよね」
次回、第5回からはプラチナ期の象徴である高橋愛が登場し、新垣が支えてきた約4年4カ月の実像に迫っていく。
(インタビュー・文:平賀哲雄、撮影:Jumpei Yamada)
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<新垣里沙さん出演情報>
【Hello! Project 20th Anniversary!! Hello! Project 2018 SUMMER】
http://www.helloproject.com/news/8741
【鈴木砂羽プロデュースユニット 港.ロッ区.vol.1「ロックの女」】
https://minatoxxx69.tumblr.com/
・日程 2018年8月31日(金)~9月9日(日)
・会場 赤坂RED THEATER
・作、演出 福田転球
・出演 椿鬼奴、新垣里沙、平田敦子、佐藤真弓、関谷春子、鈴木砂羽 他
・チケット料金 前売5,000円/当日5,500円
・チケット取扱い
■チケットぴあ
http://w.pia.jp/t/minatoxxx69/
0570-02-9999〈Pコード:486-517〉
チケットぴあ店舗、セブン-イレブン、サークルK・サンクスでも直接販売
■イープラス
http://eplus.jp/minatoxxx69/
ファミリーマート店舗(店内Famiポート)でも直接販売
■ローソンチケット
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0570-084-003〈Lコード:38869〉ローソン・ミニストップ店舗(店内Loppi)でも直接販売
■カンフェティ
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0120-240-540 (平日10:00~18:00※通話料無料)
■企画・製作・主催 港.ロッ区.
■公演に関するお問い合わせ 港.ロッ区. minatoxxx69@gmail.com