昨年10月の消費税率引き上げからまもなく4ヵ月が経過しようとしている。11月までの経済指標が大方出揃い、消費税率引き上げ後の経済状況も徐々に明らかになってきた。
そこで、総務省が発表する家計調査を用いて、消費税率引き上げ前後の実質消費支出がどのように推移しているかを、過去の消費税率引き上げ時と比較したのが図表1である。
図表1では、消費税率引き上げが実質消費支出に与えたインパクトを測る基準として、消費増税が実施された前年の平均の消費水準を用いている(これを100として指数化、今回については2018年7月から2019年6月までの1年間で計算)。
図表1をみると、2019年11月時点での消費税率引き上げのマイナスの影響は前回(2014年4月)ほどではなく、むしろ、初めて消費税が導入された1989年、及び、消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年のパターンに近い形で平均的な水準にキャッチアップしていることがわかる。
次に、一橋大学が計測・公表している「SRI一橋大学消費者購買指数」の「購買支出指数」をみると、年末から年始にかけて購買支出が大きく増加したことがうかがえる(図表2)。
毎週の変動を均してみれば、12月は11月対比で緩やかに下げ幅は縮小しており、消費税率引き上げ後の実質消費支出の動きとしては、予想以上に順調に引き上げ前の平均的な水準に回帰する動きが進んでいると考えられる。
すなわち、一部で懸念されていた消費増税後の「日本経済クラッシュ」は全く発生していないということになる(冷静に考えれば、クラッシュは金融危機のような「レアイベント」が起きないと発生しないが、消費増税はそのようなレアイベントを発生させるはずはない)。
そう考えると、今回の消費増税の影響はそれほど深刻ではない、ということなのだろうか。