中国での新型コロナウイルスによる肺炎で死者が十七人となり、同国の専門家チームはヒトからヒトへ感染すると明らかにした。海外でも感染例が増えており、国境を越えた防疫対策が重要である。
中国衛生当局の二十二日の発表によると、新型コロナウイルスによる感染者は発生地の武漢市以外に、北京市、上海市、深セン市などに拡大。中国国内での感染者は四百四十人になった。
感染は、タイ、日本、韓国、米国など海外にも拡大している。世界保健機関(WHO)は二十三日にも、今回の新型肺炎が国際的に懸念される公衆衛生上の「緊急事態」と認定する見通し。
中国国家衛生健康委員会の専門家チーム長は二十日、テレビ出演し、武漢の夫婦間感染など三例の感染について「ウイルスの遺伝子検査でヒトからヒトへの感染が確認された」と述べたほか、医療関係者十五人への感染が確認されたことも明らかにした。
中国政府はこれまで、ヒトからヒトへの感染について「可能性は排除できない」と言うにとどめてきた。大規模な感染拡大もあり得る局面に突入したとの認識から、習近平国家主席は「新型ウイルスは徹底的に封じ込めないといけない」と、初めて対策を厳命した。
中国政府は法定伝染病に指定し厳戒態勢に入った。検査強化や情報公開に全力を挙げてほしい。
春節(旧正月)を前に二十四日から長期休暇に入る中国では、帰省や旅行などで、延べ三十億人が国内を移動するという。海外旅行先では日本が最多と見込まれ、感染予防の強化が急務である。
いたずらに不安をあおる行為を慎むべきだが、中国政府は移動にはリスクがあることを周知し、マスク着用や手洗いなど感染症対策の励行を呼び掛けてほしい。
二〇〇三年の重症急性呼吸器症候群(SARS)発生の際には、中国の情報隠しが批判された。今回は早い段階で報告するなど、苦い教訓が生かされたといえる。
だが、感染者の情報や公表時期などが地域によってまちまちであり、国民の間には情報の透明性に疑問の声も出始めた。習氏の指示にもかかわらず、地方政府幹部が保身に走り、情報隠しをすることなど万が一にもあってはならない。
現時点では感染力は強くないとされるが、突然変異による感染力強化の可能性も指摘される。中国と国際社会は、早急な封じ込めに向け、協力を強めるべきである。
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