中国、湖北省武漢市で昨年(2019年)12月から発生し、中国国内だけでなく、国外でも感染患者数の発表が増えている肺炎(新型肺炎)患者。
WHOによると原因は、新型コロナウイルス(2019-nCoV)とされています。
いまのところ、新型コロナウイルスの感染予防には、季節性インフルエンザ対策と同じ対応で変わらず、マスクの着用や咳エチケット、手指の洗浄が重要です。消毒には、アルコールが効果があります。
ただ心配なのが、デパートやスーパー等々、接客業での従業員でのマスクNGについて。
昨年末には、イオングループが、接客時のマスク着用を原則禁止していたことが報道されました。
イオン、接客時のマスク着用「原則禁止」 風邪の予防もできないのか...現場から悲鳴 : J-CASTニュース (2019-12-24)
(注:武漢の新型肺炎の発生について公式発表は12月31日)
この記事の中に、次の部分があります。
決定を受けて、関東圏にあるイオンの一部店舗では、「自己防衛のために少し高いですが、クレベリンなどの着用をしてもらえると幸いです」と、除菌剤を自費で購入するよう要望する張り紙も掲示された。
(赤字強調は管理人による)
“クレベリン”とは、大幸薬品が製造販売している、低濃度の二酸化塩素ガスを使ってウイルスや菌を除菌すると宣伝している製品およびブランド名『クレベリン』で、他社からも似たような製品が発売されています。
二酸化塩素を利用した空間除菌グッズとも呼ばれます。
まず、二酸化塩素を利用した空間除菌グッズは「雑貨」です。これ重要。
「医薬品でも医薬部外品でもない「雑貨」として分類されるものなので、製造者や販売者の知識と判断力と、モラル次第でしょう。」
一般販売されている製品には主に、家庭やオフィスなどで置いて使う「据え置きタイプ」と、首からひもでぶら下げたりポケットにクリップで挟んで使う「身に付けるタイプ」の2種類があります。
(その他、扇風機など空調機器に組み込まれたタイプ、業務用で低濃度の二酸化塩素ガス発生装置がある)
この記事の、マスクの代わりに着用というのは「身に付けるタイプ」です。
では、低濃度の二酸化塩素ガスを発生させる「クレベリン(身に付けるタイプ)」を着用することで、マスクの代わりに、新型コロナウイルスを防ぐ効果が期待できるのでしょうか?🤔
当ブログ管理人は、以前、二酸化塩素ガスを発生させる装置についてそれなりに詳しく調べて、発表や報道を追いかけていました。😊(2009年から5~6年くらい、追いかけていた。)
事件として、似た名前で、二酸化塩素ガスでなく塩素ガスを発生する類似製品を売っていた会社があって、化学やけど被害がありました(販売中止と製品回収)。
消費者庁から過剰広告に対して措置命令がありました。いまもこのタイプ(二酸化塩素ガス)の製品は販売されています。
結論として、感染症対策として、「身に付けるタイプ」はマスクの代わりにはなり得ないし、製品説明の二酸化塩素ガスの効果は「身に付けるタイプ」では期待できない、と考えています。
大幸薬品のクレベリンの、ペンのように身に付けられるスティックタイプの製品情報ページにも、次のように書いてあります。
*閉鎖空間で二酸化塩素により特定の「浮遊ウイルス・浮遊菌」の除去を確認。(大幸薬品調べ)
あなたが働く場所は、「閉鎖空間」でしょうか?😕
低濃度の二酸化塩素ガスや二酸化塩素溶存液は、実験室での分析で、インフルエンザ・ウイルスやコロナウイルスの不活性化に一定効果があるという先行研究があります。それはあくまでも実験室での、ガス濃度を充分にコントロールした実験の結果です。
実証実験としては、大幸薬品から「クレベリン」製品発売前の最も初期に小学校での調査結果がありました。また2009年には、陸上自衛隊駐屯地で勤務する自衛官と事務官を対象として、インフルエンザ様疾患予防効果の評価が行われています
(注:この後、「低濃度の二酸化塩素ガスを発生させる製品」を分かりやすく示すため、大幸薬品の製品・ブランド名「クレベリン」を使って、「クレベリン等」と書くことがあります)
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クレベリンゲルのインフルエンザに対する、陸上自衛隊での検証結果(2009年) - pelicanmemo
大幸薬品では、実験室で、二酸化塩素ガスや二酸化塩素溶存液による、ウイルスや菌(インフルエンザのウイルスやコロナウイルスなど)に対する不活性化の実験を行って、一定の効果があったと発表しています。これは大幸薬品の「クレベリン」製品の説明で使われているものです。
(その一方で、そういった科学的な解説をいっさい書いていない製品、ホームページにも書いていない製品、ただ「二酸化塩素ガスは効果がある」という印象広告だけしかない製品を複数見かけます。ネット通販でも実店舗の店頭でも見かけます。(この記事では余談))
二酸化塩素実験データライブラリー|専門家の皆さまへ | 大幸薬品株式会社
(ココログ・ブログの設定が変わっていたため、PCで読みづらくなってしまった)
【クレベリン・ゲル】 二酸化塩素を利用した空間除菌グッズ 消費者庁からの措置命令で何が変わったのか? 【ウイルオフ】: メモノメモ (2014年12月 6日)
「二酸化塩素を使った、首から下げるタイプの除菌用品」3製品で「中等度の刺激性」、化学やけどなど。国民生活センター発表。: メモノメモ (2013年5月 1日)
「二酸化塩素による除菌をうたった商品(身につけるタイプ)」について調べてみた。安全性や使う時の注意など。: メモノメモ (2013年1月31日)
クレベリンゲルのインフルエンザに対する、陸上自衛隊での検証結果: メモノメモ (2011年11月29日)
クレベリン ゲルとその濃度(その2) 国民生活センター「二酸化塩素による除菌をうたった商品」: メモノメモ (2011年1月22日)
インフルエンザ対策。クレベリンとその濃度: メモノメモ (2009年11月 3日)
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当ブログ管理人は、実は、大幸薬品が話している「低濃度の二酸化塩素ガスによる「空間除菌」」というアイディアは、感染症リスクが一段と高まっている中、とても興味深いと思っているのですよ。
それでも、あくまでも二酸化塩素ガスの濃度のコントロールが充分に出来る環境で使うことと、適切に管理できるヒトが使うことが必要だと考えています。
クレベリン等の「据え置きタイプ」は、物置きやロッカー、締め切った部屋(大きさは製品(150gや60g)の能力と個数による)のような閉鎖空間など、実験室環境に近くなれば、より実験結果に近い効果が期待できるかもしれません。
クレベリン等の「身に付けるタイプ」では、相当に難しいでしょう。
大幸薬品の製品情報ページでも、次のように書いてあります。
*閉鎖空間で二酸化塩素により特定の「浮遊ウイルス・浮遊菌」の除去を確認。(大幸薬品調べ)
二酸化塩素ガスを発生させる製品を、胸元や胸のポケットなど、口・鼻からの距離が適切な部分に着用している事が大前提で、着用した人は、閉鎖空間や空気の流れがまったく無い場所に居る必要があります。
もしかすると、大きな閉鎖空間でも、たくさんの人が、クレベリン等の「身に付けるタイプ」を着用しているのなら、その空間の中なら、ある程度の濃度を維持出来るかもしれません。それなら、部屋の中に「据え置きタイプ」を設置したり、業務用製品を導入した方が効果的ですね。
屋外では、効果はほぼ期待できないと考えています。
二酸化塩素ガスが拡散しやすい。
同じように、大規模小売り店のような、フロアが広い空間では、二酸化塩素ガスは拡散しやすく、クレベリン等の「身に付けるタイプ」を着用している人が接客対応で動き回っていると、口・鼻の周辺に二酸化塩素ガスが効果ある濃度で滞留することはまず考えられません。
フロアでの接客業務はそうですし、レジでの会計やサッカー業務でも、動かずに仕事が出来るものではないでしょう。
新型コロナウイルス(2019-nCoV)は、いまのところ、飛沫感染や接触感染での、限定的なヒト−ヒト感染の可能性が指摘されています。
感染のしやすさは、いまのところ、MERSよりはかなり低いようです。
二酸化塩素ガスが、ミスト状の飛沫やモノの表面の水分に溶け込むことによって、二酸化塩素溶存液となることで、ウイルスが失活する効果があり、飛沫感染や接触感染のリスクを減らしているという可能性が考えられています。
これも、ガス濃度が充分にコントロールされている閉鎖空間の場合であり、しかも、リスクを減らすという程度の可能性でしかありません。
では、大規模小売り店では、接客業の従業員全員が、クレベリン等の「身に付けるタイプ」を身につけていれば良いのでしょうかか?
ぶっちゃけ、そんなコスパが悪い(あるいは、ほとんど無い)個人装備に過剰な期待をかけずに、むしろ空調装置に、病院や施設で使われているような業務用機器を付ければいいと思いますが、それは兎も角・・・🙄
小売り店には、不特定多数の来客があります。
乳幼児など小さい子供や高齢者、年齢に関わらず呼吸器系疾患を持っている人も来店する場合があるでしょう。
二酸化塩素ガスの安全性について、製品の説明では安全性が書かれていますが、あくまでも成人を基準としたものです。乳幼児など小さい子供や、高齢者、呼吸器疾患をもつヒトは想定されていないようです。
二酸化塩素の空気中の濃度基準は、日本では特に定められておらず、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が設定している基準がよく使われるよう。
・TLV-STEL(短時間被曝限度値)(成人が15分以下の短時間、断続的にでも暴露されてはならない濃度)は 0.3ppm 。
・TLV-TWA(時間荷重平均値被曝限度値)(成人が1日8時間または週40時間、繰り返し暴露しても健康上悪影響を受けないと考えられる濃度)は、 0.1ppm 。
ラットを使って、低濃度の二酸化塩素ガスの長期間の暴露試験を行っていて、安全性が高いことを発表していますが、人間の乳幼児や高齢者、呼吸器疾患をもつ人への影響の有無とどうリンクするのか、よく分からないところです。
日本二酸化塩素工業会の自主基準室内濃度指針値は0.01ppmととても低い濃度ですが、クレベリン等の二酸化塩素ガスを放出する製品を使って、塩素臭を感じたという実例も自衛隊基地での実証実験にあります。
この論文では、空気中のウイルスを含んだ飛沫や呼吸器粘膜表面の水分に二酸化塩素が溶け込むことによって,吸入するウイルスを失活させるのではないか、と推測しています。
マスクという物理的な予防手段は、身につけるタイプの二酸化塩素ガスを発生する製品という化学的な予防手段(あるいは予防している気分になれる手段)よりも、確実な効果があるでしょう
適切に装着するマスクは、世界保健機関(WHO)からも、米国疾病センター(CDC)からも、感染症予防のための使用を推奨されています。
なにより、コスト・パフォーマンスにすぐれている。
日本二酸化塩素工業会 | 二酸化塩素製品の正しい普及と品質の向上、さらには製品技術等の進歩と改善を目指す。