OECD景気先行指数の景気循環サイクルで日経平均株価の見通しを知る方法
OECD景気先行指数で株価の方向性を探る方法ついて解説する。OECD景気先行指数とは、主要国の経済指標に基づいてOECDが作成・発表している指標のことだ。この指標の目的は、指標の変化によって世界景気の転換点を探ることにある。OECD景気先行指数による株式市場の将来予想は、いつも当たるものではないので、参考程度に活用してもらいたい。
別記事ではOECD景気先行指数の前月比と日経平均株価の関連性を示すデータを掲載したページを作りました。もし良かったらそちらも読んでみてください。
レポート「OECD景気先行指数(過去平均)による景気・株価想定」でわかること
みずほ証券投資情報部のレポート「OECD景気先行指数(過去平均)による景気・株価想定」では、OECD景気先行指数が底打ちしたタイミングで、ちょうど株価(MSCI世界株指数)が上がりやすいことについて紹介している。ぴったりとはいかないが、割と当てはまりやすいデータになる。当てはまりやすいと言われる理由は、OECD景気先行指数が急上昇しているときに株価(MSCI世界株指数)が上昇しているタイミングが相当数あることが確認できるからだ。しかし、OECD景気先行指数が下がっているタイミングで、株価(MSCI世界株指数)が上がっていくことがよくある。そのため、当たらない場合もある。指標としては、参考程度にしてもらいたい。
「景気と株価」の関係
では、詳細な内容を確認していこう。まず、レポートに掲載されている「景気と株価」の景気循環サイクルを確認する。この景気循環サイクルを見ると、現在の景気サイクルが底打ち前後のタイミングであることがわかる。さらに、「OECD景気先行指数とMSCI世界株指数」を見ると、ゼロラインを下回ってから平均9か月程度で景気循環サイクルの底に到達することが多いことがわかる。つまり、最大で14か月、平均は9か月で株価が底打ちするということだ。また、前年回復期には最大15か月、平均8か月で前年の景気を回復している。この景気循環を検討したとき、2019年2月の段階で、OECD景気先行指数は底打ちしているのではないかと考えることが可能だとレポートでは提言されている。
ポイント1:OECD景気先行指数は底打ち期~前年回復期(ゼロライン越え)には最大15ヶ月(リーマンショック時)、平均8ヶ月程度要する傾向にある。
ポイント2:OECD景気先行指数が前年割れ(ゼロライン割れ)の時は最大で14か月(リーマンショック時)、平均9か月で底打ちする。
「各平均所要時間と株価騰落率(まとめ)」でわかる4つの局面の平均期間
そして、「各平均所要時間と株価騰落率(まとめ)」は、MSCI世界株指数が前年水準を下回る局面から、平均してどの程度の期間で前年水準に回復し、どの程度の期間で頭打ちになるのかといった平均期間を説明している。まとめると、各4つの局面は、
①前年割れ後から底打ちまでの期間の平均が9か月(株価の平均騰落率は-13.5%)
②底打ち後から前年水準までの期間の平均が8か月(株価の平均騰落率は+12.1%)
③前年水準回復後から頭打ちまでの期間の平均が8か月(株価の平均騰落率は+9.7%)
④頭打ち後から前年割(株価の平均騰落率は+6.4%)
となっている。これら①~④の期間を合わせた全局面(1景気のサイクル)で35か月程度かかることがわかる。
ポイント1:OECD景気先行指数が前年水準割れ(ゼロライン割れ)を起こすと株価は大暴落をする
ポイント2:OECD景気先行指数が底打ち期~前年水準超え(ゼロライン越え)をする時期が最も株価が上がりやすい
ポイント3:OECD景気先行指数は前年水準超え(ゼロライン越え)をすると株価の上昇力は落ちてくる
4つの局面での各市場の株価変動率とその他の要因
次に、この①~④の各局面で各市場の株価がどの程度変動するのかを示した一覧表が、レポートのP.6に掲載されている。
前年割れから底打ちまでの期間の暴落率(A→B)と底打ち後から前年水準までの期間の急騰率(B→C)が具体的な数値で示されている。頭打ち後から前年割れまでの期間の騰落率は、表のC→Dの箇所だ。この表で全ての期間の数値を比べると、底打ち後から前年水準までの期間の急騰率が最も高いことがわかる。新興国の株式市場では、特にその傾向が顕著だ。
こういった景気サイクルの騰落率以外の要素として、景気循環性や季節要因性というものも存在する。例えば、月に応じた騰落率として、6月~10月は平均すると毎年株価が上がりにくいというのがこれまでの経験則になる。
「米国株の指数別(業種別)景気感応度および景気局面別騰落率平均」の利用方法
次に、「米国株の指数別景気感応度および景気局面別騰落率平均」によれば、前年割れから底打ちまでの期間は、情報産業や金融の株価が一番下落しやすいことがわかる。また、底打ち後から前年水準回復までの期間は、半導体関連株と金融株が急騰しやすいことも見てとれる。半導体関連株が急騰する背景として、シリコンサイクルと景気局面別騰落率が相互に関連していることが予想されるため、データとして非常に興味深い。さらに、前年水準回復後から頭打ちまでの期間では、全体的に価格上昇の影響を受けやすい銘柄は素材産業であることが一目瞭然だ。そして、頭打ち後から前年割れまでの期間では、エネルギー産業関連株や情報技術関連株の株価が上がりやすい。現在は、市場が底打ちを覗っているタイミングだと考えれば、注視すべきは半導体関連株だと考えることも可能だ。
このように、各景気局面別に騰落率平均のデータを比較することによって、どの景気局面でどの株に投資すべきか、どの株式を取引すべきかを知ることができる。言い換えると、景気局面別騰落率平均は、投資の指針を決定するためのデータベースとなる。米国株の情報を知るために、キーワードを入力してネットでどんな銘柄があるのか、検索して調べてみるのもよいだろう。
日本における指数別(業種別)景気局面別騰落率
同様に「日本株の指数別景気感応度および景気局面別騰落率平均」の一覧表を見てみよう。日本では、底底打ち後から前年水準回復までの期間は、機械関連株や輸送用機器関連株の株価が回復しやすいことがわかる。そのため、景気が底打ちしたということであれば、一覧表の数字で株価が急騰している分野の関連株を購入しておくことだ。前年水準回復後から頭打ちまでの期間では、各分野とも株価が伸びやすい。さらに、頭打ち後から前年割れまでの期間では、米国株と違って日本株は、ほとんどの分野の株価がマイナスになることも理解できる。この期間で株価がマイナスにならない分野は、日本株では医薬品関連株や化学関連株くらいしかない。
このように、各国別の「指数別景気感応度および景気局面別騰落率平均」を確認することによって、ある国の株式市場において、どのタイミングでどの分野の株に投資したらよいかを知ることができる。
OECD景気先行指数をリアルタイムで調べる方法
OECD景気先行指数は「BETTER POLCIES FOR BETTER LIVES」というサイトで確認することが出来ます。
データもこちらで確認できます。
引用先:http://www.oecd.org/economy/composite-leading-indicators-cli-oecd-april-2019.htm
OECD景気先行指数の見方と日経平均株価の動向、買うべき業種を判断する
分かりづらいと感じる方は動画も作ったので、そちらを見てもらえると分かるかもしれません。
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