大統領選挙前年は株価が上がりやすいアノマリー|株価と支持率の法則
今回は、トランプ大統領の支持率と米株価の関係について解説する。利用するレポートは、ソニーフィナンシャルホールディングスのレポート「トランプ・プットの結末」だ。このレポートでは、トランプ大統領が次期アメリカ大統領選挙で再選を果たすために、株価を高騰させる政策を展開していくという予想を立て、具体的にどのような政策を行いうるかをシミュレーションした。
米政権の支持率と株価の相関性から考えられること
トランププットの結末というレポートでは株価が上がると、1か月後にトランプ大統領の支持率が上がってくるという相関性が紹介されている。当然、大統領就任当初から株価を上昇させる政策をとってきたトランプ大統領は、現在のアメリカの株式市場の株価と大統領支持率の関係を知っているものと推定される。だからこそ、2020年11月に実施予定となっている次期アメリカ大統領選挙までに、株価を上げる政策を引き続き実施していくことが今後予想される。具体的な相関性としては、NYダウ平均株価が1000ドル上昇する毎に1ポイントの支持率の上昇がみられる。このことから単純計算すると、今後支持率を50%にアップさせるためには、次期大統領選挙までに、NYダウ平均株価を32000ドルまで急上昇させなければならないことになる。
引用先:https://www.sonyfh.co.jp/ja/financial_info/market_report/pdf/sfh_edw_190516_01.pdf
トランプ大統領再選のために必要な株価目標と、株価の吊り上げ政策(トランプ・プット)で予想される政策とは
NYダウ平均株価32000ドルというと、どのくらい難しいかというと、あと1年半で25%(年率16%)も株価を上げなければならない。
NYダウ平均株価の株価上昇率(年率)は、9%程度だ。すると、あと一年半で年率平均である9%の倍以上である25%の株価上昇を行わなければならないことになる。
この株価上昇目標は、かなり厳しい数字だといってよい。実現が可能であるかどうかはさておき、このような株価の急上昇が残り1年半で現実化するようであれば、トランプ大統領は再選される可能性があると経済レポートでは予想した。
上に述べたような株価の吊り上げ政策(トランプ・プット)が採用される場合、予想される政策は、インフラ投資、低所得者への減税政策、拡張財政による景気や企業業績の上昇といった政策だ。また、それ以外に予想される政策としては、FRBに金利利下げを強要することや、産油国に石油の増産圧力をかけるといったことがありうる。
ただし、このような政策目標を達成するために、いくつかの政策を組み合わせて同時期に実施するポリシーミックスは危険でしか無い。
拡張財政と金融緩和を組み合わせれば過度に楽観な成長期待(ユーフォリア)を作り出してしまう。それは後のバブル経済に繋がり将来的な財政危機や金融危機などを引き起こすきっかけになることを留意しておく必要があるだろう。
アメリカ大統領就任3年目システムで勝率アップを目指す
大統領選挙が実施されるのは11月で政権発足は翌年からになる。
この翌年を1年目としたときに3年目の値動きの特徴を分析した結果がある。
それを「アメリカ大統領就任3年目システム」という。
3年目の1月1日に買い12月31日で売った時の過去17回の総損益は268%、平均15.8%になる。
勝率は88%と高く総利益が総損失の何倍かを示すデータであるプロフィットファクター(PF)は369.2%となる。
しかも、最大ドローダウンは1%で下落した回数は1年だけという圧倒的な投資成績を示している。
アメリカ大統領3年目システムの年は2019年、2022年、2025年etc…と続く
このことから、アメリカ大統領前年の年(アメリカ大統領3年目)時は千載一遇のチャンスが来たと考えることも出来る。
必ずしも、上がるわけではないが、優勢のある投資時期である事を覚えておくと良いだろう。
もし、大統領選挙3年目システムの年に急落があった場合もあまり悲観せず慎重に物事を見通せるようになれば、絶好のタイミングで投資が出来るかもしれない。
株価の上昇は永遠には続かない
以上のように、トランプ大統領が株価上昇のための政策を実施することが予想されるため、投資家は、しばらくの間、株式市場で株価上昇の恩恵を享受することができる可能性がある。
しかし、トランプ大統領の再選後に、同様の政策がとり続けられることは考えづらい。
データでもアメリカ大統領1年目は騰落率が他と比べて低いので注意が必要だ。
騰落率(%) | 下落した回数/全回数 | |
---|---|---|
①大統領選挙1年目 | 4.90% | 18年間で5年 |
②大統領選挙2年目 | 6.80% | 18年間で8年 |
③大統領選挙3年目 | 10.00% | 18年間で8年 |
④大統領選挙4年目 | 15.10% | 18年間で1年 |
具体的には、現在進行中の米中通商摩擦が再燃するといったこともあり得る。
米中通商摩擦の再燃は、企業の業績悪化と投資家の不安を煽り、投資意欲を減衰させる。
このため、米中での貿易交渉がうまくまとめられることで、両国ともが利益を受けるほうが両国にとって望ましいとレポートでは指摘した。
また、拡張的な財政政策をトランプ大統領が実施した場合、同政策打ち切り後に、アメリカのGDP成長率が急落することが予想される(財政の壁)。
さらに、もしトランプ・プットによって株価が急上昇した場合、資産バブル対策としてFRBの急ピッチな利上げが予想される。
こういった事情も、景気・株価にとっては、逆風となる。
以上のことから、トランプ大統領が株価の上昇政策を実施することで、しばらくの間、アメリカの株価が上昇し、投資家は、その利益を享受することができる可能性はあるが、しかし、大統領選挙1年目には株価上昇政策が終了することが予想されるため、将来的な株価下落局面を見越しておくことが今から必要である。
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