ラグビーのトップチャレンジリーグ(TCL)は最終節の19日、東京・秩父宮ラグビー場などで4試合を行い、首位・近鉄が74―0(前半31―0)で栗田工業を破り、7戦全勝で優勝を決めた。近鉄の日本代表FWトンプソン・ルーク(38)はこの試合が現役最後の試合。試合後には引退セレモニーが開かれ、2007年~昨年の4大会連続でW杯に出場した男はファンに別れを告げた。
「トモさんトライ!」「トモさん決めて!」―。2部の試合では異例の1万4599人で埋まった観客席から、トンプソンの愛称が次々に飛ぶ。試合は前半だけで31―0。早々に勝負は決していただけに、ファンの期待はW杯4大会で日本代表を支え続けた英雄に有終のトライを挙げてほしい、その一点に絞られていた。
迎えた後半ロスタイム、相手ゴール前でパスを受けたトンプソンはしかし、自分では走らずに味方にパス。FBマシレワにトライをプレゼントしまう。場内に悲鳴が響いた。「足が遅いからね。10年前なら走ったかもしれないけど。それより、今日はチームが優勝したことがうれしい。だから特別な日になりました」。トンプソンはそう言って笑った。
この日、応援に駆けつけた日本代表での盟友・大野均(41)=東芝=も同じ思いで試合を見守ったが「今日も骨惜しみしない、彼らしいプレーをしていた。最後に自分でトライを狙わなかったのも彼らしい。本当にお疲れさまと言いたいです」とねぎらった。
試合後も場内を一周する英雄に、居残った多くのファンから「ありがとうトモさん!」と声が飛ぶ。場内は温かい雰囲気に包まれ「信じられないくらいたくさんの応援をもらえた。幸せだったし、謙虚な気持ちになりました」とトンプソン。来月上旬に母国・ニュージーランドへ帰国。牧場経営で第二の人生を歩む。