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【大相撲】

[北の富士コラム]正代に何かついているとしか思えない。まるで別人、恐ろしや…あわや2敗目と観念しかけたが奇跡的に残して逆転勝ち

2020年1月22日 22時2分

大栄翔(左)に攻め込まれる正代

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◇大相撲初場所11日目(22日・両国国技館)

 11日目はテレビもラジオも休みなので映画にでも行こうかと思ったのだが、やめにした。というのも最近小便が近くなり、映画の最中でも2度はトイレに行くことが多い。もっと悪いことに眠ってしまうこともある。

 九州場所では三谷幸喜監督の「記憶にございません!」を見に行き、不覚にも眠ってしまった。内容など分かろうはずもなく、まさしく「記憶にございません」でした。これ、本当の話です。

 昨夜は遅くまで本を読んでいて、また寝てしまいそうなので映画はやめました。場所前に周防正行監督の「カツベン!」を見たときは、何とか持ちこたえましたが、小便は2度行きました。

 きょう見たかったのは韓国映画の「パラサイト」。まず主演のソン・ガンホがいい。何年か前に「殺人の追憶」を見ている。実際の殺人事件を扱った映画だが、ソン・ガンホが素晴らしい。名優である。日本の俳優に例えたらどなたになるだろうか。若いときの三国連太郎さんかな? とにかく強烈な個性である。

 久しぶりに映画の話になったが、昨年の大阪場所で見たのがイーストウッドの「運び屋」。90歳の精力絶倫じいさんが活躍するお話。今ごろBSで再放映されているが、今見ても痛快だ。

 映画と言えば宍戸錠さんが亡くなった。面識はないが、日活映画はよく見ていたので「エースのジョー」は印象にある。それと体格が良く、タレントの相撲大会では抜群の強さを見せていたのも記憶している。

 息子さんの宍戸開さんがドラマ「千代の富士物語」で千代の富士の新弟子時代を演じていたのも何かの縁だろうか。ちなみに私、九重を演じたのが先日亡くなった梅宮辰夫さん。どんどん昭和は遠くなりにけりであります。

 以上番外。では、本業の相撲でも見るとしましょう。優勝圏内の1人、輝の一番。鋭い立ち合いから突き放し、一気に栃煌山を押し出した。無心で師匠の教えを忠実に守り、一心不乱に前に出る。何の迷いもなく2敗を守った。彼の頭には優勝の2文字は一切ない。そんな力士である。

 そのうち負けるだろうと思われた徳勝龍も驚異の粘りを見せ、1敗を死守した。物言いがついたが、軍配通りで事なきを得た。徳勝龍は秘(ひそ)かに意識はしているように感じる。何故?と言われても別に理由はない。私の勘である。

 豊山も激しい押しと突きで終始攻めまくって、くせ者松鳳山を見事に一蹴した。豊山は多分に正代の活躍に刺激を受けて好結果が出ているようだ。互いに切磋琢磨(せっさたくま)。これが大事である。2敗で兄弟子正代に続く豊山にもチャンスあり。

 貴景勝は1差つけられてはいるが、慌てず、騒がず、淡々と自分の相撲を取り切った。若いが見上げた根性である。新旧交代の時期に来ているが、さすが若手の旗頭にふさわしい大関である。

 待てよ。肝心の正代の相撲を忘れるところだった。正代は大栄翔の激しい攻めに防戦一方に回って苦戦を強いられた。体は伸び、ほとんど棒立ち。あわや2敗目と観念しかけたが、奇跡的に残して逆転勝ちした。先場所までの正代ではとても残せなかったであろう。何か憑(つ)いているとしか思えない。まるで別人である。恐ろしやであります。

 元気の良い力士は書いていても楽しいが、高安と豪栄道の一番はどうも辛い。豪栄道が勝って一命は取り留めた。あと4番は辛くて長い戦いである。高安はせめて勝ち越したいところだが、今の状態ではそれも無理だろう。体をこれ以上悪くしないことだ。

 それではお待ちかね、炎鵬です。とうとう次期大関と言われた朝乃山に勝ちました。今場所猛威を見せている妙技「引っかけ」から崩し、押し出し。見事な奇襲戦法であった。「秘伝引っかけ」。この手はこれからも大きな武器となるだろう。これで6勝目。勝ち越しも夢ではない。もう一息である。

 きょうは映画の話で終わろうと思ったが、相撲が面白く、いつも以上に長くなってしまった。大失敗。(元横綱)

 

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