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静岡

鷹匠・篠田さん 文化芸大で講義

講義の後、「颯雅」と記念撮影に納まる篠田朔弥さん=浜松市中区で

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 タカを操って獲物を捕らえる放鷹(ほうよう)術の名門諏訪流の鷹匠(たかじょう)、篠田朔弥(さくや)さん(19)=山梨県=が二十一日、浜松市中区の静岡文化芸術大で初めて講義をした。中学で入門してから頭角を現し、一年前には念願の鷹匠の認定試験に合格した。「タカ愛」に芽生えたきっかけは、幼い頃に通った掛川花鳥園だった。

 保育園に入る前から、母まこみさん(44)の御前崎市の実家に行くたび、掛川市の掛川花鳥園に行った。特に猛禽(もうきん)類のショーが好きで、人間に従って獲物を捕らえる鳥たちの姿に「かっこ良い」と魅了された。

 鷹匠の存在を知り、十三歳の誕生日の前、親に「プレゼントはいらないから鷹匠になりたい」と頼み込んだ。中学に入学して間もなく諏訪流の門をたたいた。

 修業はタカを「据える」準備から始まった。タカの代わりに九百ミリリットルの水を入れたペットボトルをこぶしに乗せ、落とさないように歩いた。道具も一から教わり、自作した。一年後、見習いの「鷹匠補」に合格。相棒にして「彼氏」のオオタカと出会い、「颯雅(そうが)」と名付けた。

 よく鳴き、何度も傷を付けられ、泣いたこともあった。だが「あこがれの鷹匠になりたい」という一心で登校前、日の出前から毎日二時間、こぶしに乗せたり飛ばせたりして訓練を積んだ。昨年一月、放鷹術の知識や技術を問う試験を受け、「鷹匠」になった。

 鷹狩りに詳しい同大の二本松康宏教授(伝承文学)は「この若さで鷹匠になるのは素晴らしい」とたたえる。諏訪流は諏訪大社の神事に由来するとされ、織田信長や徳川家康に仕えた小林家に受け継がれてきたという。「日本の伝統を受け継ぐ期待の星」と評する。

 この日、鷹匠の装束を身にまとい、六十人を前に颯雅と登壇した。「人前で話すのは初めてで緊張した」。どのくらいで懐くのか、利き手は関係あるのかなどの質問に丁寧に答え、記念撮影にも笑顔で応じた。

 今は山梨県内の旅館に勤めながら技術を磨き、国内外で技を見せたり、鷹匠について説明したりしている。「日本が誇る伝統文化を知ってもらうために、颯雅と頑張ります」。夢に向かい、「相棒」と羽ばたく。

(鈴木凜平)

 

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