七大悪魔が現れた!!   作:みなみZ

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3話

「お久しぶりですね、皆さん」

 

 

敵地である魔界の最高幹部たる七大悪魔の三人が待っている中、その男は堂々とやってきた。

 

肩口まで伸ばした金色の髪。

男としては細い体つきに、白い肌に青い瞳をもった典型的な王子様ルックスを持った優男である。

彼の名前はラファエル。

天界において最高幹部たる七大天使の一人にして、神の癒しの異名を持つ、天使である。

そしてベルゼブブが個人的に最も苦手としている天使だ。

 

「皆さんが元気そうで私は嬉しく思いますよ」

 

にっこり微笑みながら、ラファエルは言葉をつむぎだす。

 

 

「ふん、貴様も元気そうで残念だ」

 

「ラファエル、ちーすwww」

 

「久しぶりだね、ラファエル。天界から来たのだから、疲れただろう?今秘伝の紅茶を淹れてあげるから、座って待っているといい」

 

「ええ、ありがとうございます。では失礼しますね」

 

七つの玉座の他に用意していた、客用の椅子にラファエルは腰掛ける。

その動作は優雅と気品に溢れている。

容姿と言動が見事に一致している男であった。

 

「さて、私はお前と長々と話をする気はない。用件はなんだ?お前自身が魔界に来るなど、いったい何があった?」

 

ベルゼブブが早速用件を切り出す。

七大悪魔筆頭であり、マモン・アスモデウス・モロクという七大悪魔の三人が死んだ穴埋めをしなければいけないベルゼブブには時間があまりなかった。だから早くラファエルとの会合を終えたかったのである。

決してラファエルと長く会話をしたくないという理由ではないはずだ。

きっと。

 

 

「私が来た用件は二つあります」

 

ベルゼブブの言葉に、ラファエルは微笑を浮かべ、しなやかな指を二本伸ばしながら言葉を返す。

 

「二つ…すか?」

 

いぶしかむベリアル。

それに対してラファエルは微笑むを崩すことなく、言葉を続けた。

 

「ええ、貴方方悪魔にとっては、良い用件と悪い用件の両方ですね。どちらから聞きたいですか?」

 

「………では、良い用件から頼む」

 

普通こういったシチュエーションでは悪い方から聞くのが筋かもしれないが、今のベルゼブブは度重なる心労でいっぱいいっぱいの状況であった。

この状況で更に悪い話を聞かされたら心が持たないかもしれない。

ならば先に良い用件とやらを聞いて、心を落ち着かせてから、悪い要件とやらを聞こうではないか。

問題の先送りかもしれないが、今のベルゼブブには必要なことだった。

 

「ええ、では良い用件から話しましょうか」

 

ベルゼブブは心落ち着かせようと、従魔が淹れた100均の昆布茶を飲む。

うん、微妙。

アラストルは絶賛していたが、やはり微妙だ。

それでも心を落ち着かせるには一役立っているのは確かだ。

もう一度昆布茶を口に含む。

 

「モロクとアスモデウスが死んだようですね」

 

「ぶふーーーーーーぅっぅぅぅぅぅ!!?」

 

そして昆布茶を噴出した。

昆布茶は見事な放物線を描き、円卓の真ん中まで到達した。

幸いにして大きな円卓なので、周りの三人には特には被害はなかった。

そのまま咳き込みながら円卓に突っ伏すベルゼブブ。

 

「うわ、汚ねぇっす!」

 

「優雅に欠けるな」

 

そんなベルゼブブを同僚たる二人の悪魔は労わる気は皆無であった。

ベルゼブブ、何たる不憫。

その間もラファエルはニコニコと微笑むを崩す事はなかった。

この男…できる!

 

「うぇ、ごほ、うぇごほほぉごほぶぇ!」

 

「ベルゼブブ…咳き込む音が最早ヒロインじゃないっす。まあ、吐かないだけましっすか。うん、ギリギリヒロイン合格っす。よかったっすね、ベルゼブブ」

 

咳き込み続けるベルゼブブに対してよくわからない合格を告げるベリアル。

しかしベルゼブブにそれに応える余裕はなかった。

 

「ぐえほぉ、ごぼぉ!!なななななな、何故それを!?」

 

ようやく咳き込みが収まったベルゼブブがラファエルに詰問する。

 

そう、ラファエルがモロクとアスモデウスの死を知っているはずがない。

流石に自分が殺したマモンの事は知っていないようだが、それでも可笑しい。

モロクとアスモデウスの死を知っているのはここに居ないアスタロトを含めた七大悪魔の四人と、その従魔達だけなはずだ。

魔界の最高幹部たる七大悪魔の二人が死んでいるという最高機密の情報を何故この男は知っているのだ。

もしや…スパイか?

天界から送られたスパイが魔界に潜んでいるのだろうか?

しかし、もしスパイだとしたら魔界の情報部の奥底まで潜んでいる恐ろしい存在だ。

我ら七大悪魔の身の回りの身辺捜査を徹底しなければ。

 

自分達の気付かぬ内に、身近に潜んでいたまだ見ぬ脅威に、ぞくりとする。

もし、そのスパイが自分の日常を探っていたとしたら最悪だ。

身長を伸ばしたいがゆえに毎日2リットル牛乳を飲んでいるとか、朝昼晩欠かさず豊胸マッサージをしていたとかばれたら、自分の魔界的地位はもはや地の底へと堕ちてしまう。

 

必ず…狩る!!

 

静かな殺意を芽生えさすベルゼブブであった。

 

「簡単な事です。アスタロトがmwitterで呟いてましたよ」

 

そしてその殺意は一瞬で霧散した。

 

「……………………何だと?」

 

「ですから、アスタロトがmwitterで呟いていたんですよ、二人の死を」

 

思わず聞き返したベルゼブブにラファエルはいつでも崩さない微笑を浮かべながら返答する。

 

 

mwitter。

 

それは魔界で大流行しているコミュニケーションツールである。

自分の身近な近況や出来事を、気軽に報告できる便利なツールである。

しかし、深く考えもしないで投稿すると、それが犯罪自慢や、仁義的に反した行いであった場合、炎上するというある意味恐怖のツールである。

 

 

「どれどれ…うわ、本当っす!『モロクが食中毒で死亡、まじプゲラwww』って投稿してるっす!」

 

「ほほう、ん?『アスモデウスが腹上死!ザマァwwwでも何だ。この男としての凄まじい敗北感は…』というのも投稿してるな」

 

「…………」

 

「本当っす。アスモデウス関連のスレがお祭りになってるっすね」

 

「ふむ、しかし魔界最高機密である七大悪魔の死亡をmwitterで投稿しているアスタロトに誹謗や中傷といった炎上しないのは何故だろう?」

 

「…………………………」

 

「そりゃあれっすよ。アスタロトは魔界最強の悪魔。うかつに発言したら、誰も止められなくなる。もしかしたら殺されるって思ったら誰も言えないっすよ」

 

「ふむ、なるほどな。その論理でいけば、攻撃力という意味ならば最強の概念武具 終焉〈ティルフィング〉を持つ私も該当するかもしれんな。どれ、私も何か呟いてみるか」

 

「……………………………………」

 

「そりゃいいっすねwwwんじゃアラストル、我らが筆頭のベルゼブブに関して何か呟こうっすよwwwいい情報出したらロリコン達の神になれるっすよwww」

 

「ふむ、何だかんだでベルゼブブとも長い付き合いだからな。ではあのとっておきのネタを…」

 

「だらっしゃーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

ここでようやくベルゼブブが大爆発。

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁ!貴様らぁぁぁぁ!そんな事をしてみろ!?どうなるかわかっているのか!?」

 

荒ぶるベルゼブブに対して、ベリアルは唇をとがせて抗議する。

 

「えー、ベルゼブブはファンサービスが足りてないっすー。大きい大人のベルゼブブファンを喜ばせようとしているだけなのにー」

 

「マジでふざけんな!というか、何をやっているんだ!?アスタロトの馬鹿は!!世界の最高機密をmwitterでばらすなど、人界の人間達だってやっていないぞ!?あのクソ馬鹿はぁ!!」

 

「まあ、あれっすよwwwネットで注目を集めたくて、ついついやっちまったとかっすよwww」

 

「ついついではないわ!!決めたぞ!!今度の七大悪魔会議の議題は、mwitterの禁止についてだ!!」

 

「………10年に一度の魔界の行く先を決める七大悪魔会議の議題がそれでいいのかね?」

 

荒ぶりまくるベルゼブブに対して、冷静なツッコミをいれるアラストル。

しかし荒ぶるベルゼブブには通用しなかった。

 

「うるさーい!それとアラストル!私に関して何か呟いたら、その瞬間に私の栄光〈カドュケウス〉が火を噴き、マモンと同じように私が直々に殺してやるからな!!」

 

「マモンも死んでいたのですか?」

 

ベルゼブブの言葉に反応したのはこの場で空気になりかけていた、一人の天使だった。

 

その言葉にピタリと時が止まる三人の悪魔達。

 

 

やべぇ。ラファエルの存在を忘れていた。

三人は同じ事を思った。

 

そして三人は目を合わす。

いつもはベルゼブブがいじられているだけだが、これでもこの三人は付き合いは長い。伊達に100年近く連れ添っていない。

三人は同じ思いを抱いた。

 

すなわち、誤魔化すと。

 

 

「な、何を言っている。マモンは元気だとも。ああ、今日も元気に七大悪魔の恥部として振舞っているだろうさHAHAHAHAHAHA!!」

 

「そ、そうっすよwwwあのくそ生意気な餓鬼がくたばるはずないっすwww今日も華麗に醜態を晒してるはずっすよHAHAHAHAHA!!」

 

「う、うむ。その通りだ。あの馬鹿が死ぬなんてありえないさ。ほら言うだろ?馬鹿は死んでも死なないとHAHAHAHAHA!!」

 

HAHAHAHAHA!!と怪しげな笑いを浮かべながら、三人は誤魔化そうとする。

胡散臭さ極まりないものだ。

そして三人が普段マモンの事をどう思っているかがわかる発言内容だった。

哀れ、マモン。やすらかに成仏するがいい。

 

「そう…ですか」

 

「ああ!!そうだとも!!HAHAHAHAHA!!」

 

微笑を浮かべながらもこちらへと探る視線を寄こすラファエルの視線にベルゼブブの額には汗が滲んでいた。

その汗を拭こうと、懐からハンカチを取る。

だが、その際懐に入れていた別の物が零れ落ちた。

かつんかつんと甲高い音を立てながら、それはラファエルの方へと転がっていったのだ。

自らの足元に転がってきたそれを拾い上げるラファエル。

 

「これ…天魔核ですね」

 

終わった。

アラストルとベリアルはもう誤魔化すのは無理だと悟った。

 

「そ、それは、そう!アスモデウスの天魔核だ!!て、天魔核に何かあったら大変だから私が持っていたのだ!!」

 

しかしベルゼブブは諦めない。

マモンの死を誤魔化そうと、最後の最後まで諦めない。

諦めたらそこで試合終了だ。

そう、地獄の宰相にして七大悪魔筆頭たる自分は諦めるわけにはいかないのだ!!

 

「でもこの天魔核、『まもん』って書いてますよ?」

 

うん、諦めよう。

 

普通、天魔核には名前など書いていない。

人によって、色や魔力の胎動が違く感じるだけである。

断じて天魔核に名前など書いていないのだ。

あの馬鹿餓鬼はどこまで規格外なのであろうか?

ベルゼブブはマモンの天魔核を砕きたい心で満たされていった。

 

「まさか、マモンも亡くなっているとは…。これはびっくりですね」

 

微笑を崩すことなく、とうてい驚愕している雰囲気がしないラファエル。

それに対してベルゼブブの胸中は涅槃の彼方にいた。

ど、どうすればいいのだ。

これで天界に七大悪魔の三人が死んでいるというのがばれてしまった。

残った七大悪魔の四人は、七大悪魔の中での戦闘能力は低いわけではない。

 

万能の概念武具 栄光〈カドゥケウス〉を持ち、どんな相手だろうと万能に有利に戦えるベルゼブブ。

 

最強の概念武具 終焉〈ティルフィング〉を持ち、魔界最強の攻撃力を誇るアラストル。

 

最硬の概念武具 領域〈アイギス〉を持ち、魔界最高の防御力を誇るベリアル。

 

超越の概念武具 前世〈エペタム〉を持ち、問答無用、最強の悪魔アスタロト。

 

むしろ、上位陣だ。最強の悪魔たるアスタロトを中心として戦えば、生半可な相手には負けることはないであろう。

だが、目の前で微笑んでいる天使、そして彼が所属する七大天使は生半可な相手ではないのだ。

 

七大天使筆頭たるミカエルを頂点とする、化け物天使軍団。戦争天使達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神の如き者 ミカエル。

 

神の光炎 ウリエル。

 

神の英雄 ガブリエル。

 

神の癒し ラファエル。

 

神の使命 サリエル。

 

神の知恵 ラジエル。

 

神の信者 メタトロン。

 

 

 

 

 

 

 

 

天界が誇り称える七大天使達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近接戦闘において無双の強さを誇る世紀末天使ウリエル。

 

暴れたら周囲をペンペン草も生えない地獄の荒野とする滅殺天使ガブリエル。

 

天使達の傷を癒し、果てには死すら覆す変態チート医者天使ラファエル。

 

原初の魔眼(本物)を持つ、厨二痛天使サリエル。

 

戦闘指揮官としての役割を持つエロむっつりーに天才天使ラジエル。

 

最強にして最弱と呼ばれる豆腐メンタル天使メタトロン。

 

んで、ミカエル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天界の恥部だと嘆かれる七大天使達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一対一では負けるとまでは言わない。

だが、全員で攻めてこられたら、今の状態では勝つのは不可能とも言えるかもしれない。

せめて、モロクが死んでいなければ…!!いや、アスモデウスはいらないから、奴の愛人達がいれば…!!………マモンはいらんな。

 

「復活してさしあげましょうか?」

 

悩めるベルゼブブに、ラファエルは声をかける。

それはあたかも悩める子羊に神託を告げる神のような声だった。

悪魔なのに思わず天使に揺らいでしまった。

不覚。

 

「な…何だと?」

 

「良い知らせと言ったでしょう?復活してさしあげましょうかと言っているんです。死んだ三人を」

 

その言葉に目を見開き、驚く三人の悪魔。

 

 

 

天魔核となった天使や悪魔は基本的に最低でも10年は復活することができない。

しかし、その基本を覆す例外が一つだけあるのだ。

それが今目の前で微笑んでいる七大天使である。

 

「神の癒しであるこの私が持つ、許しの形成武具 聖人〈メメント・モリ〉を使えば彼らを復活できるでしょう」

 

その言葉と同時に、ラファエルの右手に一つの杖が突如出現した。

その杖は白銀色に輝く杖だ。

とくに宝飾はほとんどない、シンプルな杖。

だが、その杖からは神聖な何かを感じさせるオーラーのような物をばんばん放っていた。

 

これが神の癒したるラファエルのみが振るう事を許される、許しの形成武具 聖人〈メメント・モリ〉

そして彼が聖人〈メメント・モリ〉を使うとき、最低でも10年は復活しない天魔核からの復活を可能とするのだ。

 

これが悪魔達にとって、ラファエルがある意味最も恐ろしいと呼ばれる所以だった。

ラファエルの戦闘能力はそれほど高くない。

七大天使達の中でも下位の戦闘能力であろう。

しかし、考えて欲しい。

 

こっちが必死こいて、やったー!ミカエルを殺ったぞーーー!!

なんてミカエルをやっとの思いで殺したというのに。

 

おお ミカエル! 死んでしまうとは なさけない…

そなたに もういちど きかいを与えよう。

ふたたび このようなことが ないようにな。 では ゆけ! ミカエルよ!

 

何て急に現れたラファエルに、せっかく殺したミカエルを蘇られてしまうのだ。

もはやちゃぶ台をひっくり返したいレベルである。

私は今、ドラクエのモンスターの気分だ。

 

と、上記の理由ゆえに、天界と戦争になったら、ラファエルは第一位抹殺対象となっている。

サーチアンドデストロイラファエル。

 

「まじっすか!?ブラックジャック先生!!」

 

「ええ、まじですよ」

 

ブラックジャックもびっくりのチート医者、ラファエルの提案に色めき立つ悪魔達。

まさかの、人物の助け舟に戸惑いはある。

だが正直、助かる。

魔界の最高幹部たる七大悪魔の三人が死んでいるなど、本来あってはならないことだ。

しかも死因が天使達との戦いや戦争で死んだというならまだ格好はつくというのに、実際の死因は食中毒や腹上死や同僚に撲殺されたなどだ。

魔界の支配者サタンに知られたら、それこそ切腹ものである。

これで何とか定性は保てる。

ほっと、無い胸を撫で下ろすベルゼブブ。

 

「ただし」

 

そんなベルゼブブにラファエルの無情の声が聞こえる。

 

「こちらからの条件がありますがね」

 

世の中とはそうそう、うまくいかないものである。

 

「条件……だと?」

 

「ええ、条件です」

 

 

ベルゼブブの言葉に頷き返すラファエル。

常に微笑を絶やさないラファエル。

だが、その目は笑っていなかった。

 

「知っての通り、我々が持つ、形成武具・概念武具は所有者の魔力を喰らい、その奇跡を起こします。そして私の持つ聖人〈メメント・モリ〉は正直燃費が最悪といっていい形成武具です」

 

七大天使や七大悪魔が持つことを許される武具。

実物をもった形成武具に、実物を持たない概念武具の二種類がある。

主に、天使達は形成武具を扱い、悪魔達は概念武具を扱うのが一般的である。

そして両者に共通するのは、所有者の魔力を喰らい、この世に奇跡を発揮するということだ。

発現する奇跡が大きければ大きいほど、代償として所有者の魔力は大きく喰われる。

そしてそれは当然、天魔核から強制的に復活させるありえない奇跡を発現する許しの形成武具 聖人〈メメント・モリ〉にも言える事だった。

 

「まして、三人分ともなれば、消費する魔力は限りなく大きくなります。しばらく聖人〈メメント・モリ〉は使えなくなるでしょう」

 

「そしてお前が求める条件とは聖人〈メメント・モリ〉三回分の代償としてか」

 

「ええ、話が早く助かります」

 

にこりと微笑を浮かべながら頷くラファエル。

それに対してベルゼブブは考える。

聖人〈メメント・モリ〉三回分を使うに当たっての条件。

正直、聖人〈メメント・モリ〉を使ってもらえるだけありがたいのは確かだ。

どんな条件を突きつけられてもこれは受けるべきだろう。

それだけの価値が聖人〈メメント・モリ〉にはある。

だが、それでも受け入れられない条件がある。

 

(こいつ…もしやリヴァイアサンに気付いているのか!?)

 

魔界の主サタンと代々の七大悪魔筆頭にのみ伝えられる魔界最大の秘密。

その秘密にこの男は気付いているのではないだろうか?

 

リヴァイアサン。

それは魔界においての最大にして最終にして最悪の切り札。

口に出すのも憚れる存在だ。

天界最強の天使メタトロンや、魔界最強の悪魔たるアスタロトとて、リヴァイアサンの前には勝機はないだろう。

だが、リヴァイアサンは決して動かしてはいけない。

どんな事があろうと動かしてはいけないのだ。

 

もし、ラファエルが求める代価がリヴァイアサン関連だとしたら、その時は断るしかない。

例え、それが七大悪魔の三人を復活させる為だとしてもだ。

だが、それ以外ならば、どんな事でも受け入れよう。

それが例えどんな不利な事でも、屈辱的な事でも。

それが七大悪魔筆頭たるベルゼブブが受け持つ責任なのだから。

 

「条件とは…何だ?」

 

決意を固めたベルゼブブ。

その顔には何事にも揺るぐことは無い覚悟と決意がうかがえる。

それに対してラファエルは常に浮かべていた微笑を消した。

ベルゼブブと同じように揺るぐことは無い覚悟と決意が見えた。

 

「私から出す条件…それは」

 

ごくりと七大悪魔たる三人が唾を飲み込む。

 

天地魔界において、唯一天魔核からの復活を成し遂げるという奇跡をおこす許しの形成武具 聖人〈メメント・モリ〉を使う条件。

それは、一体何だろうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルゼブブ…貴女とお医者さんごっこをすることです!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

固めた覚悟と決意が崩れる音をベルゼブブは聞いた。

 


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