米国のMMTは金利の調節は不安定なため、財政政策でインフレを抑えこめと言っている...
ベストアンサーに選ばれた回答
2020/1/1818:14:10
まあこういう言い方は何ですけれど、
日本に限らず、かなり多くの国で
政府と中央銀行は親子関係みたいなもんで、
だから政府は金をいくらでも刷れるのだから、
財政破綻することはないので、
国債をいくらでも発行して財政支出で景気を
よくすればいい、
という考え方はあるんですけれど、
日本でも前からそう言っていた人たちが
「アメリカやオーストラリアでMMTというのが話題になった、
この人たちも財政破綻は起こらない、
と主張している」
ということを小耳にはさんで、
自分たちが言っていることがMMTによって証明された、
といい気になっているだけであって、
実際には内容を読みもしないで、自分たちの
言いたいことを言っているだけだ、
という感じじゃないでしょうか。
だからMMTの肝になる部分(なぜ中央政府と
中央銀行を連結することが適切と考えられるのか)
といった、理解するのがやや面倒なところは
ほとんどスルーしているんじゃないでしょうか。
ひどい人になると、この「なぜ(中央銀行の独立にも
かかわらず)政府と中央銀行を連結することが
適切なのか」を説明していることを
「細かいオペレーションの話にこだわっている些末な話」
なんて言っているんですよね。当然こうした人たちは
なぜMMTが量的緩和には意味がないと言っているのかなんか
理解できない。でも、そこを抜いちゃうと
そもそもなぜ政府と中央銀行を連結することが
適切といえるのか、その部分がなくなっちゃうんですよね。
そうなると、主流派経済学でよくやるように
「政府と中央銀行を一体と『仮定』する」だけになったり、
「親会社と子会社のようなもの」というような
比喩で説明するしかなくなる。
なぜ政府と中央銀行を連結することが適切であり、
そして連結してもしなくても、結果は変わらないのだ、
ということをきちんと、日常業務のプロセスから
(つまり、「事実を記述」している部分で)
説明できる人であれば、まあMMTを理解できている、
といっていいと思うんですけれど(それに賛成するか
反対するかは全く別問題です)、そうでないと
MMTといいながら、量的緩和に経済刺激上の意味がある
というようなおかしなことを言いだすことになるわけです。
ただ、よく、スペンディングファーストとか、
ストックフローコンシステントアプローチとかを
「事実の記述」という人いるんだけれど、
実際には、スペンディングファーストなんてのは
中央政府と中央銀行の連結を適切といえるのでなければ
(そして連結することによっても結論が変わらない、
といえるのでなければ)ただの解釈に過ぎないし、
ストックフローコンシステントアプローチだって
それがなければただ主流派と同じ、「政府と
中央銀行の連結を仮定した」モデルに
過ぎなくなっちゃうんですよね。
(実際、ストック・フロー・コンシステントアプローチを
開発したゴドリー&ラヴォワの教科書では
政府と中央銀行の連結も
数あるモデルの一つとして扱われています。)
なお、金利の上げ下げによる景気の引き締めについては
MMTは否定的ですが、これはそもそも
過去に金利を引き上げたことによってインフレを
抑えることができた、というはっきりした記録が
ないし、理論的にも、様々な要素がありうる中で
ただ金利引き上げの景気引き締め効果だけを
針小棒大に評価して構築されたモデルなど
あてにできない、ということのほかに、
裁量的財政政策による景気の
刺激・引き締め同様、このような裁量的政策には
かえって景気を不安定化させる要因があるから、というのが
大きいと思います。
現代の資本制経済の下では
金融商品が複雑に展開されており、
金利を引き下げればそれで利益が出せるような商品(金利
スワップ・キャップなど)も
たくさんあるんですよ。投資家は
当然、日銀や政府の先の政策を予想して
投機行動を行っているのですから、
金利政策にしろ、裁量的財政政策にしろ
政府の裁量的政策が民間の、特に投機家がどのような
反応を引き起こすかは事前に知りがたく、
経済を不安定化させる大きな要因になりうる、
ということを問題にしている面があると思うんですよね。
国債については、もともとMMTは
「国債には政府の資金調達という意味はなく、
インターバンク市場でオーバーナイト物の
金利をコントロールするためのものでしかないのだから、
その趣旨を明確にするために
国債を廃止して、中央銀行が有利子負債を発行すればよい
(コリドーシステム)」という主張でした。
あくまでも、国債をなくそうとどうしようと
実体経済には影響を与えない、という考えです。
ただリーマンショックの後、「恒常的ゼロ金利政策」と
いう考え方が出てきました。現在の国債廃止論は
むしろこちらと結びついていることも多いみたいです。
MMTでは上記の通り、金利を上げ下げすることで
景気を操作する、という考え方には
もともと否定的だったわけですから、
インターバンク市場でオーバーナイト物の金利を
正に維持するため、政府や中央銀行が民間銀行に金利を
支払うことの意味は何か、という話になってきたわけです。
これは銀行にしてみれば不労所得であり、
しかも、国債残高(中央銀行の有利子負債でも
同じ事ですが)が増えれば、
いくら金利を下げても金額が莫大なものになり、
とくに過剰の準備・国債が積み上がりその多くの部分が
実質的に複利となると
銀行・金利生活者の金利所得が爆発的に膨らむことに
なりかねません。これは所得格差を急激に
広げることにつながりかねません。
もともとはインターバンク市場の
決済機能を守るために金利を維持することが必要だ、
とされていたのですけれど、実際には
準備預金が銀行に過剰にある中で、
市場に供給される準備の不足のせいで
クレジット・クランチが起こるということは
考えられなくなった。クレジットクランチが起こるとすれば
それは流動性危機ではなく、insolvency crisis、つまり
銀行が保有している資産の質が悪いことによって
発生するのだ、というわけです。リーマンショックの際には
多くの金融機関が政府・中央銀行によって
「流動性危機」として救済されたわけですが、
MMTによれば、これは流動性危機などではなく
最初から資産として価値のないものに値段をつけて
資産と称して架空の利益を膨らませていただけなのですから
流動性危機などではなくinsolvency crisis だったのであり、
"too big to fail" などといって、救済すべきではなかった、
これを救済してしまったことによって、将来の危機が
準備されることになった、というのがMMTの立場です。
恒常的ゼロ金利政策も、こうした文脈で
考えることが必要になります。
ただ、国債あるいは有利子負債を廃止するなら、
現在民間で行われている生命・医療・学資保険や
民間の年金制度に代わる、確実な公的な
保険制度・年金制度が必要になります。(生命保険などは
多くの資産を国債に依存しています。これは
リスクフリーの有利子資産が、国債しかないためです。
国債を廃止するなら、こうした機関は民間が
発行する資産の運用によって決済をするより
ありませんが、リーマンショックで明らかになった通り、
実際には民間が生み出す金融商品というのは
一見するとどれほど安全に見えても、
極めて不安定なものです。)
したがって、今、例えば日本で国債制度を
廃止するとなると、
単に政府・日銀のアレンジメントを変更すればいいだけでなく、
民間の様々な機関にも影響が出てきます。
その辺まで含めた青写真というようなものが出てくるまでは
ちょっとまだ、簡単に
廃止すべき・残すべき、と結論付けることは
できないように思います。ちなみに
恒常的ゼロ金利政策を支持している人は
基本的には、教育や年金制度や医療保険については
ベーシックな部分は、すべて政府が丸抱えし、
そのうえで、追加が欲しい人がそうした保険に
加入することは自由だけれど
それを政府や中央銀行が保護する必要は
ない、という立場ですね。
-
質問者
ID非公開さん
2020/1/1819:23:04
①ぶっちゃけ藤井、三橋の推進するエセMMTは、単なる元々積極財政論者だった奴がいいツール見つけた!とMMTに乗っかっただけで、根本を捻じ曲げて伝えている。
②国債は不労所得として、外資に対し、金利は固定だが、中銀による高額買いオペにより無償で利ざや提供し、格差拡大に繋がりかねないトンデモ貨幣になってるから、にゅんさんなども言うように理想としては国債は廃止して、法改正は必要であるものの、中銀による直接供給が望ましい。
③しかしながら日本のありとあらゆるシステムが国債依存となっているため、今すぐやることは混乱をきたす可能性が高い。よって当面は国債発行により賄うのは致し方ない。
このような理解でよろしいですか?
質問した人からのコメント
2020/1/20 18:55:23
最後まで丁寧にお答えいただきありがとうございました。さすが四天王と言われるだけのことはありますね。大変参考になりました
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