みんなの介護ニュース
ニッポンの介護学

第96回 高齢者の生きがいはボランティア?高齢者の孤立死・孤独死対策には社会参加による生きがいが必須!とデータも実証

高齢者の生きがいとなっているボランティア,孤独を避けるための高齢者の社会参加について

超高齢化社会を迎えた日本。平均寿命は男性が80.5歳、女性が86.3歳と過去最高を更新しました。平均寿命は年々右肩上がりで上昇しています。一般的な定年退職年齢と言われる60歳を超えても、約20年~30年間は「老後の生活」があるわけです。

「生涯現役」や「一億総活躍社会」と言われるなか、高齢者の活躍の場が増加。大企業では、定年年齢の引き上げや定年制度の廃止などを積極的に取り入れ、高齢社員の経験や技術を活用する動きがあります。

さて、この長い老後の期間をどう過ごすか。仕事をするも良し、地域活動に精を出すも良し。今回は、高齢者のライフスタイルを読み解きつつ、高齢者の生きがいについて考えてみたいと思います。

60歳以降増える自由時間。高齢者はどのように過ごしているのか

まず、高齢者はどのような生活をしているのでしょうか。生活実態を明らかにしていきましょう。

「1日の時間の使い方」や「1年間の余暇活動」の実態を調査した「平成23年社会生活基本調査」(内閣府統計局)によると、顕著に増加が見られるのは、自由時間と睡眠時間。男女とも60歳を超えてから徐々に上昇しています。

特に、70歳以上においては、1日の大半が自由時間。中学生や高校生(10歳~14歳や15歳~19歳)を上回っています。この調査で定義する自由時間とは「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「休養・くつろぎ」「学習・研究(学業以外)」「趣味・娯楽」「スポーツ」「ボランティア活動・社会参加活動」の合計時間のことです。

さらに細かく見ていくと、高齢者はテレビなどのメディアに多くの時間を費やしていることがわかります。現役時代に大きなウエイトを占めていた仕事の時間をメディアに振り分けているのでしょうか。

生きがいを感じている高齢者は徐々に減少傾向に…。生きがいをなくした先にまっているのが“孤独”

次に、高齢者の「生きがい」について見ていきましょう。内閣府発表の「平成25年高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によると、日常生活に生きがいを「感じている」(「十分感じている」と「多少感じている」の合計)と回答した人は、全体の約8割(79.2%)を占めています。

年齢層ごとに若干の差があるとはいえ、日本の高齢者は、概ね生きがいを感じていると言えるでしょう。しかし、1998年度以降、生きがいを「感じている」と回答した人は減少傾向にあります。

生きがいを感じるときは、「孫など家族との団らんの時」が48.8%と最も多くなっています。男女とも「孫との家族との団らんの時」を挙げるかと思いきや、男性は「趣味やスポーツに熱中している時」が49.0%でトップ。女性は「友人や知人と食事、雑談をしている時」が50.9%となっており、男性に比べて人との交流から生きがいを感じる割合が高いと言えるでしょう。

これまで見てきたように、高齢者に占める生きがいを感じている人の割合は高いもの。しかし、世帯別に見ると一人暮らしの男性では、「生きがいを感じていない」人の割合が34.9%と突出して高くなっています。

会話の頻度別では、「生きがいを感じていない」人の割合は、「毎日」で11.7%、「2日~3日に1回以下」で26.8%です。近所づきあいの程度別に見ると、つきあいが深まれば深まるほど「生きがいを感じていない」人の割合は低下しています。

また、困ったときに頼れる人の有無別では、「いない」とした高齢者のうち55.4%が「生きがいを感じていない」と回答しています。どうやら、生きがいには、会話や近所づきあいをはじめとした「人との交流」が深く関与していると言えそうです。

高齢者の5人に1人が「家族以外に頼れる人がいない」。世界的に見ても孤立が顕著な結果に

高齢者が生きがいを持って生活するには、「人との交流」を増やすことが近道と言えます。しかし、国際的に見ると、日本の高齢者は孤立しがちなことがわかります。

同居の家族以外に頼れる人(%)

日本 アメリカ 韓国 ドイツ スウェーデン
別居の家族・親族 60.9 63.6 53.7 73.7 58.6
友人 17.2 44.6 18.3 40.7 34.9
近所の人 18.5 23.7 23.1 38.2 26.5
その他 3.3 6.4 6.8 2.9 7.5
いない 20.3 10.5 20.0 5.4 9.7
無回答 - 1.8 - 0.4 -

内閣府発表の「平成22年度第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によると、「病気の時や、一人では出来ない日常生活に必要な作業が必要な時、同居の家族以外に頼れる人がいるか」という質問に対し、「いない」と回答した人の割合は、欧米諸国の約2倍。

さらに、「週に何回ぐらい、近所の人たちと話をするか」聞いてみると、「ほとんどない」と回答した人の割合は31.6%。実施国(日本、アメリカ、韓国、ドイツ、スウェーデン)の中で最も高く、近所の人たちとの交流の少なさがうかがえます。

「家族以外に相談あるいは世話をし合う親しい友人がいるか」という質問については、「(同性も異性も)いずれもいない」と26.2%が回答。韓国(31.3%)を若干下回ったものの、欧米諸国が10%代であることを見れば、かなり高い数値と言えそうです。

親しい友人の有無(%)

日本 アメリカ 韓国 ドイツ スウェーデン
友人がいる 同性の友人がいる 53.2 43.4 62.9 32.6 28.4
異性の友人がいる 1.0 3.6 0.8 2.4 34.9
同性と異性の友人がいる 18.5 23.7 23.1 38.2 26.5
いずれもいない 26.2 15.7 31.3 17.7 11.4
無回答 0.1 - - 2.3 -
出所:総務省

ボランティア活動に意欲的な高齢者。参加動機は「自分自身の生きがいのため」が67.7%

孤立しがちな日本の高齢者ですが、社会貢献意識はここ20年間で大きく高まっているようです。

具体的にどのような活動を通して社会貢献をしたいか聞いたところ、「町内会などの地域活動」や「社会福祉に関する活動」「自然・環境保護に関する活動」が挙げられています。ちなみに、「町内会などの地域活動」は、20代では14.5%としかおらず、高齢者は地域に根ざした活動を望んでいるようです。

参加動機として最も高い割合を占めているのが「自分自身の生きがいのため」で67.7%。次に「色々な人と交流できるため」「自分の知識や経験を生かす機会がほしかったため」が続きます。社会貢献活動を通じて、生きがいを得ようとする高齢者の姿が浮かび上がります。

しかし、社会貢献活動に参加したいと考える高齢者は多いものの、内閣府の「老後の生活に関する意識調査(2006年)によると、「参加している」高齢者は26.4%にとどまっています。

主な理由として、健康面や家庭面での障害が挙げられていますが、「どのような活動が行われているか知らないから」「気軽に参加できる活動が少ないから」「同好の友人・仲間がいないから」という理由も多く、工夫次第では社会貢献活動に関わる高齢者の数を増やすことができそうです。

高齢者の孤立化、無縁化を防ぐことで、生きがいを持つ高齢者数は増える!?

自由時間が多く、日々の生活に生きがいを感じている高齢者の割合は高い…。これが日本の一般的な高齢者の姿です。とはいえ、世帯構成や会話の頻度、近所づきあいの有無などで生きがいの感じ方が異なっていることもわかりました。

では、今後、生きがいを持って生活する高齢者を増やすにはどうしたらよいでしょうか。キーワードは「人との交流」です。これまで見てきた通り、高齢者は人と会話し、つきあいを深めることで、生きがいを感じるのです。

高齢者に社会貢献活動に参加するための条件を聞いたところ、「一緒に活動する仲間がいること」が40.3%を占めています。仲間さえいれば、社会貢献活動に参加しようとする高齢者が増えることは間違いありません。そのためには、高齢になってから動くのではなく、例えば定年前から地域社会や職場以外でのネットワークを構築することもひとつの手です。

今のところ、欧米諸国と比較すると、孤立しがちな日本の高齢者。高齢者の孤立化、無縁化が社会問題になり、これらがニュースにならない日はほとんどありません。

平均寿命が伸び、“余生”が長期化するなか、自由時間をボランティア活動をはじめとした社会貢献活動に振り分け、生きがいを感じる高齢者が増えることを願うばかりです。

みんなのコメント
GfcDpyST さん

いいね 108

いいね 返信する 2019年10月7日 違反報告
fGxu4e63 さん

馬鹿馬鹿しい 131

いいね 返信する 2019年3月12日 違反報告
wF6vLhjD さん

仕事を定年退職、何もすること、話し相手もなく、毎日家に綴じ込もってばかりで、何の楽しみも生き甲斐もなく、周りが羨ましく、つい早く楽になりたいとばかり思ってしまい、明日等来てほしくありません!! 302

いいね 返信する 2019年1月15日 違反報告
9nS9ZYoz さん

男性の独り暮らしは何か社会に出てサークルに入ったリ、ボランティアしたくても仕事をしていたから近所付き合いがなく、孤独の辛さがあってなかなか一歩がふめだせず、孤独に負け一人取り残されています。 307

いいね 返信する 2018年10月12日 違反報告
匿名 さん

労働雇用ではなく、ボランティアなんですね。
ボランティアできるほど経済的は余裕の無い高齢者も少なくない筈だけど? 381

いいね 返信する 2016年1月5日 違反報告

現在の「介護保険、障がい者保険、生活保護等・・・」を受給することで、この生きがいに対する思いやボランティアへの選択・参加の権利を奪われてはいないか? 気になるところです。 347

いいね 返信する 2015年12月24日 違反報告
陸奥雷 さん

生き永らえる為にタダ働きするぐらいなら、死を選ぶ。 266

いいね 返信する 2015年12月22日 違反報告
匿名 さん

ずっと違和感感じていたんだけど、社会保障の問題含めて何だか厚労省の行う事って社会主義にベクトル向いてない? 375

いいね 返信する 2015年12月21日 違反報告
匿名 さん

どうせなら、ボランティアの様なタダ働きでは無く、ちゃんと報酬がある様にすればよりもっと行う方々も出てくると思います。 191

いいね 返信する 2015年12月17日 違反報告
小林雅一 さん

私は本当の生きがいとは、自分の人生を充実できる「自分の大好きなこと、心からやりたいことを楽しんで仕事にすること」と思います。仕事といってもお金を稼ぐというのではなく、人や社会のお役にたつことが出来るという意味です。趣味・道楽では人のお役にはたてなく、仕事とは人のため社会のためにすることで「ありがとうございます」と感謝をされます。人から感謝されることはお役に立っているのです。社会との交流があるのです。ボランティアも立派な仕事で生きがいがあります。 555

いいね 返信する 2015年12月16日 違反報告