チーム医療の3つの課題とその解決策


 チーム医療とは,一人の患者に対して,複数の医療専門職が連携して治療やケアに当たることです。医師や看護師のほかにも,医療ソーシャルワーカーや管理栄養士,理学療法士などの医療専門職が働き,それぞれの専門性を持って患者さんを支えています。この記事では,チーム医療が抱える問題点についてふれ,その解決方法について考えてみます。

 チーム医療は多くの場合,医師がリーダーとなり,カルテの共有やカンファレンスを重ねることで,互いが得た情報を共有して実施されます。そのさい,「摂食・嚥下」,「栄養」,「褥瘡」や「リハビリテーション」など,ある程度,介入する分野に焦点を当てたチームが組まれることが多いです。しかし,このチーム医療を実際に実施している病院はけして多くはありません。
 
 現在,チーム医療には以下の3つの課題があると考えられます。
  1. チーム医療に関わる医療専門職が充足している病院が少ない
  2. 各医療専門職で互いの専門性について理解が乏しい
  3. チーム医療が患者さんに利益をもたらすかどうか明らかではない

 まず,一つ目の課題についてですが,チーム医療に関わる専門職のなかには病院内で数名しか働いていない職種もあり,通常の業務をこなしながら全ての患者さんのチーム医療に参加することが困難です。

 また,二つ目の課題も深刻です。各医療専門職は,養成校で自分たちの仕事についてはしっかりと学んでくるのですが (当然,国家試験でその知識を認められた人だけが医療専門職の資格を得ます) ,他の医療専門職の仕事について知る機会が少ないのです。そのため,臨床現場において互いの仕事を理解したり,専門性を認め合ったりすることが難しくなります。

 最後の課題ですが,チーム医療が患者さんに利益をもたらすのか,またそれはどのような利益なのかについて,まだ客観的なデータが示されていません。EBMを考える上で,そのアプローチが効果があるのか,つまり,どのような患者さんに,どのくらい有益なのかを客観的に示すことが重要です。当然,国の医療費も効果的な治療に割かれるのですから,チーム医療が効果的か否かを客観的に示さない限り,チーム医療で得られる診療報酬 (医療機関が行った医療行為に支払われる報酬) も限られます。

課題の解決策

 一つ目の課題を突き詰めると,なぜ病院内で少数しかいない医療専門職があるのかという問題に行きつきます。これは,単純に医療専門職の需要に供給があっていないとも考えられますが,その医療専門職の専門性や技術が評価されていない,つまり医療における重要性が低いと考えられていることが一番の要因なのではないかと思います。社会的に評価されるためには当然,自らの医療行為の有用性を客観的に示さなければなりません。そのためには,臨床研究の積み重ねが必要でしょう。また職能団体として政治に訴えかける活動も重要です。

 二つ目の課題については,教育のレベルでの変革が必要です。まず,現場経験 (実際に他専門職と協調して臨床現場で働いたことのある期間) が乏しい養成校の教育者を作らないことが重要だと思います。また,チーム医療という概念を教えることをしっかりとカリキュラムとして組み込み,実際に他専門職 (あるいは学生) と交流の機会をもうけることも大切です。早期に (養成校での教育の時点で) ,他専門職への理解を定着させることが必要だと考えます。

 三つ目の課題は,どこかモデルケースの病院をつくり,地道にチーム医療の有効性を示していくほかありません。診療報酬が得られなければ,なかなか取り入れようという病院は増えません。時間はかかりますが,一つ目,二つ目の課題と平行してチーム医療の有効性について研究が進められることが期待されます。

まとめ

 チームを組んで医療を行えば,漠然と患者さんに有益なような気がします。実際,チーム医療は今後の医療になくてはならないものです(詳細は「チーム医療の必要性とその実際」を参照して下さい)。しかし,その実施には多くの課題が残されているのです。もはや医療は医師のみで行える規模ではなくなりました。医療専門職が医療現場で各々の専門性を発揮できるように,チーム医療の課題にも (個人あるいは団体として) 各々で対応していかなくてはなりません。