このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
スイスの3DプリンタメーカーであるExaddon AGとチューリッヒ工科大学の研究チームが2019年11月に発表した「Additive Manufacturing of Sub-Micron to Sub-mm Metal Structures with Hollow AFM Cantilevers」は、マイクロメートルのオブジェクトを3Dプリンティングするシステムだ。ミケランジェロのダビデ像を全高1ミリで精密に3Dプリンタ出力する。
このダビデ像出力に使ったのは、Exaddon AGが独自開発しているマイクロメートルスケールで印刷可能な3Dプリンタ「CERES」だ。
CERESは、ナノメートルの解像度で、サイズが1~1000マイクロメートルの複雑な微小金属オブジェクトを室温で、後処理を必要とせずに印刷できる。これによって、2台の高解像度カメラによるナノメートルの正確な位置決め、空気圧駆動の液体分注システム、電気化学堆積法、および光学力フィードバックの組み合わせを実現する。
印刷プロセスにおけるコアコンポーネントは、カンチレバーに結合されたマイクロピペットにある。これにより、マイクロピペットの先端が接触する力をリアルタイムに監視でき、溶解した金属を高精度で堆積させ、非常に小さな金属構造を層ごとに構築できる。
今回は銅が採用されたが、プラチナ、金、ニッケル、銀などの他の金属でも出力可能だ。
ユースケースとして、マイクロチップ、半導体、高周波アンテナ、マイクロコイルなどが挙げられる。
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