文部科学省などは11日、東京福祉大(東京・豊島)で学部研究生ら留学生約1600人が所在不明になっているとの調査結果を公表し、「大学の責任は重大」として研究生の受け入れを当面停止するよう指導した。私学助成金の減額や不交付も検討する。留学生の在籍管理の徹底を大学に求め、不法残留や不法就労の増加に歯止めをかける姿勢を強く打ち出す。
東京福祉大では3月、多数の留学生が所在不明になっていることが発覚し、文科省などが調査していた。調査結果によると、同大は近年になって留学生の受け入れを急拡大。2016~18年度に約1万2千人の留学生を受け入れたが、うち1610人が所在不明、700人が退学、178人が除籍になっていた。
同大の留学生は、社会福祉学部など正規課程のほか、日本語や日本文化を学ぶ留学生別科、正規課程の準備段階の学部研究生などに分かれる。
研究生は日本語能力が低い学生や学費支払いが難しい学生が多かった。しかし同大は規模に見合う職員をそろえず、授業に出ない学生への指導が不十分だったという。所在不明者の7割が研究生だったことから、文科省は研究生の新規受け入れを当面停止させた。
同様の問題の再発を防ぐため、留学生の在籍管理が不適切な大学には留学生の受け入れを認めない新制度を導入することも発表した。
新制度では、各大学が毎月、所在不明や退学、除籍になった留学生数を文科省に報告する。指導後も改善しない場合、文科省は「在籍管理非適正大学」として法務省に通告する。法務省は改善するまでの間、新規に入る学生への留学の在留資格の付与を停止する。
不法残留者が多い大学を「慎重審査対象校」として在留資格審査を厳しくする従来の制度も見直し、3年連続で対象校になると同様に資格付与を停止する。ほかに大学名を公表し、私学助成金の減額や不交付などの制裁も科す。制度の詳細を詰め、19年度中にも省令などを改正する。
文科省は新制度で、各大学が正規課程以外のコースなどで留学生を受け入れる場合、大学入学相当の日本語能力があるか確認する。留学生別科についても、教員数など質を確保する新基準を策定する。
政府は留学生30万人計画を掲げて積極的な受け入れを進めてきた。18年度時点の留学生総数は5年前に比べて約13万人多い約29万9千人。一方で不法残留する学生も19年1月時点で4708人と急増していた。
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