コンテンツにスキップする

ゴーン逃亡劇は司法制度の「黒船」か、政界に法改正の動き

  • 保釈中のGPS装着、逃走防止策は早急な検討必要-自民・柴山氏
  • 弁護士の取り調べ同席、「代用監獄」見直しも課題-立民・山尾氏
カルロス・ゴーン被告

カルロス・ゴーン被告

Photographer: Hasan Shaaban/Bloomberg

日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告のレバノン逃亡劇によって、日本の司法制度の問題点が浮き彫りになった。法曹界だけでなく、政界でも保釈中の被告らの逃走を防止する方策などを検討するよう求める声が上がっており、20日召集の通常国会では司法制度の在り方についても議論されそうだ。

Key Speakers at Milken Institute Japan Symposium

自民党の柴山昌彦政調会長代理.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  弁護士出身の柴山昌彦自民党政調会長代理は今月のインタビューで、逃亡事件を「司法界の黒船」と捉え、「当局にはしっかりとした対応をぜひ、要求したい」と述べた。日本の司法制度にはまだ改善の余地があるとし、保釈中の被告の逃走防止や衛星利用測位システム(GPS)装置着用で所在を把握できる制度の導入に取り組むよう求めた。 

  元検事で立憲民主党の山尾志桜里法務部会長は、保釈中に逃走した被告を罰するための法改正については、「積極的に検討すべき段階に来ている」と指摘する。GPS装着は「全く新しい手段で、それなりの重大な人権制約を伴う」ことから、「拘留の代替的手段の一つとして、議論は速やかに始めたほうがいい」ものの、選択肢をあまり固定化せずに多様なやり方を議論したらいいと語った。

House of Representatives Shiori Yamao

立憲民主党の山尾志桜里法務部会長

Source: Office of Shiori Yamao

  森雅子法相は保釈制度の見直しなどについて近く法制審議会に諮問する意向。ゴーン被告は8日、ベイルートで開いた記者会見で、「私は最も基本的な人道の原則に反する司法制度を暴くために、ここにいる」と発言。弁護士の立ち会いを認められず、長時間の取り調べが行われたなどとして日本の司法制度を批判した。

犯罪人引き渡し条約

  国際刑事警察機構(ICPO)は日本政府の要請でゴーン被告の身柄拘束を求める「赤手配書」を発行したが、日本とレバノンの間には犯罪人引き渡し条約がない。日本が同条約を締結している国は米韓2カ国のみで、自民党の柴山氏はこうした状況を「改めて行く必要がある」と締結国拡大へ向けて政府に外交努力を促した。

  立憲民主党の山尾氏も締結国拡大は必要との考えだが、同時に「日本の刑事司法制度の足らざる点についてはこれ以上先送りせずに1つ1つ改善していくべきだ」と指摘する。

  山尾氏は具体的な課題として、取り調べへの弁護士同席、裁判員裁判対象事件や検察の独自捜査事件などに限られている取り調べ録音・録画義務化の拡大、拘置所に移送されるべき被告らを警察の留置場に収容することから人権上問題とされる「代用監獄」の存在などを挙げた。

  

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE