アマゾンなどECの浸透で「時代遅れの企業」とみられていたウォルマートが復活している。ネット通販全盛では「負の遺産」とみられがちな店舗にITを組み合わせる戦略が奏功した。「冷蔵庫の中まで配達」などの先進的なサービスでアマゾン・エフェクトに立ち向かう。
年間売上高5144億ドル(約56兆円)、従業員数220万人超──。1962年に米南部アーカンソー州で創業した世界最大の小売企業、ウォルマートが快進撃を続けている。
「力強い四半期決算を発表することができた。世界中の従業員に感謝したい」。2019年11月中旬。ウォルマートのダグ・マクミロンCEO(最高経営責任者)は19年8~10月期の決算発表の場で、こう強調した。
発表した決算は、純利益が前年同期比92%増、売上高は同3.3%増。マクミロンCEOが「オムニチャネルの顧客体験を作り上げる努力を続けている」と言及した米国事業のEC(電子商取引)売上高は前年同期比41%増え、業績をけん引した。ECの成長率は、6四半期連続で4割前後を維持している。決算発表後、株価は上場来高値を付け、好調ぶりを見せつけた。
「ここ数年、時代遅れの企業とみられ、『昨日のニュース』のように扱われていたが、最前線に戻ってきた」。野村ホールディングス傘下の証券会社、米インスティネットで20年以上小売業界を担当するアナリスト、マイケル・ベーカー氏はウォルマートをこう評する。
ウォルマートをはじめとする従来型の小売企業は、米アマゾン・ドット・コムに代表されるECとの苛烈な競争にさらされている。その中で復調し、市場から評価されているのは「保有資産をオムニチャネルのツールとして利用できているから」というのがベーカー氏の分析だ。
オムニチャネルはあらゆる販路やツールを組み合わせ、顧客に最も合う形で商品を販売すること。何年も前から、実店舗を持つ小売業にとってEC対抗の切り札とみられてきた。では、ウォルマートはどのようにオムニチャネル化を進めているのか。現場をのぞいた。
「パーソナルショッパー」が活躍
ウォルマート本社からクルマで20分ほどの町、ピー・リッジにある同社の中型店業態「ネイバーフッドマーケット」。19年12月初旬午前10時すぎ、店内で買い物をする人はまばらだ。その店内で、ロゴ入りのベストを着た複数の従業員がかごを8つ載せたカートを押し、棚から商品を次々とかごに入れていた。
これは、ウォルマートのEC事業の成長をけん引している「オンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)」の作業だ。OGPはネットで食料品などを注文して店で受け取る、取り置きサービス。客はあらかじめ専用アプリ内で牛乳や野菜など商品を選んで会計し、取りに行く店と時間帯を選択する。指定した時間に合わせ来店し、ピックアップ専用の駐車スペースに止めると従業員がトランクまで持ってきてくれる仕組みだ。彼らは、ネットで入った注文の品を棚から集めているのだ。
コメント1件
石田修治
定年退職
CEOが「オムニチャネルの顧客体験を作り上げる努力を続けている」と言っていることは、その思いが十分に伝わってくる。口先だけで「DX対応」を叫ぶ経営者の会社にはウォルマートの真似は出来ないと思う。心から『勝てない!』と感じてしまう。日本にも強
烈なリーダーシップで会社と社員を引っ張って世界で活躍している経営者もいるが、その数が極端に少ないのは気になる。「失敗しない」事を第一に考えるようなタイプの経営者ばかりが多いのは、経営トップが後を託す人材を絞り込む時に「安定性」第一に考えているからではないか。『自分のようなタイプでは今後の競争には勝ち残れない!』という思いがあれば、後継者の選び方も変わってくると思うのだが。...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
日経ビジネス電子版の会員登録