憧れの人が目の前にいた。「待ちわびたというか、こんな日が来るとは思ってなかった」。炎鵬が小3のとき中1の遠藤が金沢へ相撲留学。そのとき初めて遠藤の存在を知り、炎鵬も後を追うように西南部中、金沢学院東高へ進学した。「雲の上のような存在」とずっと炎鵬のヒーローだ。
角界を代表する人気力士に「エンドー!」「エンホー!」と観客は国技館が揺れんばかりの大声援が浴びせる。そんな極限状態の中で、炎鵬はここ一番の集中力を見せつけた。
「(声援は)聞こえなかった。集中し切れてたんだと思います」。まわしを取りにくる遠藤の動きを、肩透かしや腕を手繰って封じた。「次の動きというか、攻めがポンポンと出た。動きが見えてました」。番付上位の戦いは、小さな体に大きな負担を強いた。2日目に痛めた首は、アイシングしながら顔をしかめる日々が続くが、遠藤が不思議な力を与えてくれたのだろうか。
「とにかく何も考えず無心で。無我夢中というか…、あんまり覚えてないです。信じられなかった。夢みたいです」
遠藤には巡業で一度だけ胸を借りたことがあった。「(感触を)感じる間もなく…。稽古でも緊張して。うまくて柔らかい」。高3のときも大学4年の遠藤と一緒に国際大会に参加した。「遠藤関の突っ張り台(体をてっぽう柱に見立てる)というか、そのときの威力は今まで感じたことがない感覚でした。ねじ込まれるというか、普通の人と違う感覚」。対戦を終えてそのときと印象は変わったか? 「いや、すごかったです」。まだ夢の続きをみているようだった。