今回はLIFE SHIFTについて紹介していきます。これからを生きる私たちは、長寿化の進行により、100年以上生きる時代、人生100年時代です。
私たちの人生には節目が存在し終わりと始まりがあります。始まりを通して安定し引退という人生から、マルチステージの人生へと変化していきます。
それに伴い、引退後の資金問題にとどまらず、スキル、健康、人間関係といった「見えない資産」をどう育んでいくかという問題に直面するというのを著者は言っています。
現在ロールモデルなどほとんど存在しない中で、新しい生き方の実験が活発になることは間違いありません。また、生涯を通じて変化を続けることが重要になってきます。
今後どんな時代が訪れ、どんな生き方を模索すればいいのか?その際、どのような有形、無形の資産が重要性を増すのか、どんな人間関係を築いていけばいいのか?今後、企業や政府が取り組むべき課題は何なのか?
本書は、こういったテーマと向き合うための手がかりを、示してくれます。読み進めるにつれ、自分は何を大切に生きているのか?など考えさせられます。
これまでの周囲との比べるだけの成長至上主義から脱却し、自分らしい人生の道筋を描くための地図帳として何度も読みたいと思うのが本書です。
本の構成
序章 100年ライフ
1章 長い生涯
2章 過去の資金計画
3章 雇用の未来
4章 見えない「資産」
5章 新しいシナリオ
6章 新しいステージ
7章 新しいお金の考え方
8章 新しい時間の使い方
9章 未来の人間関係
10章 変革への課題
本題
本書のテーマは、どうすれば個人や家族、企業、社会全体が長寿化の恩恵に最大限浴せるか、というものであると考えられます。
現在、長寿化が進んでいる国では、高齢者医療や年金の問題ばかりが取り沙汰されています。
しかし、今後は健康的に、若々しく生きる年数が長くなるため、「老い」自体の概念が大きく変化します。すると、引退後の生活だけでなく、人生全体を設計し直さなければなりません。
現在ではスポーツ選手の引退が問題視されていて引退が早いのでクライシスがすぐにやってきます。
これまで多くの人々は教育→仕事→引退という3ステージの人生を歩んできました。
しかし、寿命が延びれば、80代まで働くことが当たり前となっていく時代となります。
また、仕事のステージの長期化に伴い、ステージの移行を数多く経験する「マルチステージ」の人生に突入していくでしょう。
そこで必要となるのは、画一的な生き方にとらわれず、生涯「変身」を続けることです。
キャリアの選択肢だけでなく、パートナーシップのあり方も問い直されます。夫婦が二人とも職を持つ家庭が増えると同時に、いずれかがステージを移行する際に、互いの役割を柔軟に調整し、サポートし合うことが求められます。
すると、必然的に家族のあり方は多様化していきます。男性が専業主婦も当たり前になってくるかも、、、
多くの移行を経験することになる時代では、「何を大切に生き、何を人生の土台にしたいのか」という問いに向き合わざるを得ないでしょう。
自分のアイデンティティを主体的に築きながら、人生をどのように計画するか。これこそが本書の最大のテーマであると考えられます。
長寿化に伴って、老後の生活資金をどうするかという問題が差し迫ってきます。貯蓄率を高めるか、より高齢になるまで働くか、あるいはその両方の選択が必要となります。
また、新しいテクノロジーが労働市場を激変させていくことは明らかであります。産業の新陳代謝が起こり、新しい職種が既存の職種を代替する。
また、ロボットやAIに、高スキル労働者が代替される一方で、新しい雇用が生まれ、経済成長を牽引するという明るい見方もある。こうした変化の中で重要なのは、人々が精力的かつ創造的に生きるための新しい人生のシナリオを考えていくことが大切となります。
ここからは、お金に換算できない「無形の資産」に光を当てていくことになります。
無形の資産
家族や友人関係、知識、健康といった無形の資産は、それ自体が有意義な人生に不可欠であるだけでなく、有形の金銭的資産の形成を助けてくれる。100年ライフを過ごすうえでは、両方の資産のバランスをとり効果を上げなければなりません。
長寿化の観点から重要とされる「見えない資産」は、生産性資産、活力資産、変身資産の3つに分類できます。
生産性資産とは、生産性や所得、キャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産を指す。わかりやすい例は、長年かけて培ってきたスキルや知識です。
ただし、キャリアの初期に身につけた専門技能を頼りに、長い勤労人生を生き抜くことは難しい。そのため、生涯を通じて、複数の新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが重要になる。
身につけておきたいスキルや知識は、情熱を注げることを前提としつつも、経済的な価値を生み出せて、しかも希少性があり模倣困難なものです。
必要なのは「イノベーションを生む力、創造性」、「意思決定やチームのモチベーション向上といった、人間ならではのスキルと共感能力」、そして「思考の柔軟性や敏捷性といった、汎用スキル」を育むことである。
また、仲間の存在も生産性資産の一端を担います。高い信頼性を持つ職業上のネットワークは、互いの成長やイノベーションの促進に大いに役立ちます。また、時としてコーチや支援者となってくれたり、必要な人脈を紹介したりしてくれる。こうした存在を、グラットンは「ポッセ」と呼んでいます。
評判も生産性向上に寄与してくれます。良い評判を得ていれば、高い能力があるのではないかと期待されやすく、守備範囲を広げやすい。ただ、評判の獲得には時間を費やさなければならない一方で、自ら評判を完全にコントロールすることは不可能に近いと考えられます。
今後は、ソーシャルメディアにより評判を左右する情報がますます拡散されやすくなるため、幅広い範囲で自分の評判を管理することが求められるでしょう。
活力資産とは、人に幸福感をもたらし、やる気をかき立てる資産を指す。具体的には、肉体的・精神的健康や、友人や家族との良好な関係などです。
まず、健康は長寿化時代において価値を増します。とりわけ、明晰で健康な脳を保つことは大きな意味を持ちます。最近の研究によると、加齢により脳の機能が衰えるのを避けられないという常識が変わりつつあり、脳をくり返し使用すれば、機能を高めたりダメージからの回復を促したりすることもできると考えられます。
また、ストレスを引き起こす要因をうまく管理することも大事です。中でも、職場と家庭のバランスをとり、両者での前向きな感情が伝播し合う効果は見逃せません。
活力資産
そのほか、活力資産の形成に役立つのは、長い年月をかけて築かれ、深く結びついた親しい友人たちとの関係である。これをグラットンは「自己再生のコミュニティ」と呼びます。友情を長続きさせ、深めている人は、高齢になってもエネルギッシュで健康な人はいます。
変身資産
人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことであります。移行につきものの不確実性への対処能力を促す要素ともいえます。具体的には、次の3つの要素が必要となります。
自分について良く知っていること
自分の過去、現在、未来について内省し続けることで、変化を経験しながらもアイデンティティと自分らしさを保ちやすくなります。
多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること
昔からのネットワークは同質性が高いため、変化を促すよりも、同質であることを後押しする傾向が強いと考えられます。そのため、新しい視点を得て、変身を遂げていくには、大規模で多様性に富んだネットワークに接することが欠かせません。
新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること
変身の過程で既存の行動パターンが脅かされるときに、新しいやり方を実験し、受容する姿勢を持ちます。すると、新しい生き方を探索し、適応することができるようになる。そこでは、型にはまった行動を打破する「ルーチン・バスティング」が必要となります。
このように、3つの「見えない資産」に投資を続け、自らを再創造することが、充実した100年ライフを送るためのカギとなると考えられます。
マルチステージの人生では、どのステージをどの順番で経験するかという選択肢が多様になります。そのため、年齢とステージが一致しないことが増えていきます。
例えば「大学生」という情報だけでは、年齢を推測できなくなってしまいます。あらゆる年代層が混ざり合い、協働する機会が飛躍的に増えるためや人々の若々しさをいっそう加速させます。
同時に、どの世代においても「若さと柔軟性」、「遊びと即興」、「未知の活動に対する前向きな姿勢」が重要な意味を持つことになります。
こうした動きに伴い、次の3つのステージが新たに登場します。
エクスプローラー(探検者)
この時期では、多様な人たちの苦悩や喜びを自分事のように考える「るつぼの経験」が組み込まれていることが望ましいと考えられます。他の人生の物語にふれることで、自分の価値観が揺さぶられ、アイデンティティについて熟考できます。
インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)
このステージの人たちは、事業活動自体を目的としており、試行錯誤しながら未来を探索する「プロトタイピング」を通じて、学習を深めていきます。このステージでは、安心して失敗できるからです。現在の18~30歳の層にとっては一つの選択肢になりつつあります。彼らは都市部にある創造性の集積地に集まって、みんなで協働する精神を重視しています。
ポートフォリオ・ワーカー
他の新しいステージと同様、年齢を問わず実践できるが、この生き方をとりわけ魅力に感じるのは、すでにスキルや人的ネットワークの土台を築いている人たちです。このステージにうまく移行するには、フルタイムの職に就いているうちに、小規模なプロジェクトで実験を始め、汎用的スキルや社外の多様なネットワークといった変身資産を育むことが望ましいと考えられます。
まとめ
今後は、ステージ間の移行回数が増えていくため、移行期間に向けた事前の準備が欠かせません。移行期間中は、主に活力資産と生産性資産への投資が行われるが、金銭的資産が減ることは避けられないからです。
また、こうした新たなステージが出現し、その選択肢や順序が多様化するにつれ、年齢とステージの一致を前提につくられてきた企業の人事制度や、教育や労働、結婚といった社会制度もこれからは変化していくと考えらられます。