たった10秒で、目指せ「55歳まで老眼鏡いらず」気になる「老眼」大研究(2)日経ヘルス プルミエ

本連載の前回で紹介した老眼度チェック(近点距離)の結果が33cm以下(目年齢が45歳以下)だった「まだ老眼ではない」人にはまだ打つ手があります。

「いったん老眼になってしまうと、後戻りしませんが、老眼になる前ならピント調節力を鍛えるトレーニングで、老眼になるのを遅くすることはできます」と福与眼科(東京都北区)院長の福与貴秀さんさん。

福与さんは2001年から6年間、40代で矯正視力が両眼ともに1.0以上の93人を、老眼がある群と、ない群に分け、さらにそれぞれをトレーニングを行う班と行わない班に分類、3年間でピント調節力がどう変化するかを調べました。

その結果、すでに老眼がある群では改善効果は見られなかったものの、まだ老眼がない群では、トレーニングを行わなかった班のピント調節力が低下していくのに対し、トレーニング班はピント調節力が維持、または改善していました(下のグラフ)。

そのトレーニングとは、遠くと近くを交互に見ることで、毛様体を鍛えるという、とても簡単な方法(下の図)。「毛様体が動くと房水(目の血液の役割を持つ)の流れは滞らず、水晶体への栄養も届く。それによって水晶体の弾性の低下が遅くなるのだと考えています」(福与さん)。

この方法は、とにかく続けることが肝心。2、3カ月で近点が改善する人もいるそうです。「トレーニングを続けて、55歳まで老眼鏡なしで過ごした人もいます。僕はいま58歳ですがまだ老眼鏡は使っていません」(福与さん)。

老眼の人(調節力が1D未満)の24人と老眼でない人の13人をそれぞれ2群に分け、一方は3年間のトレーニングを行い、もう一方は何もしなかった。その結果、老眼のない人でトレーニングを行った群は3年後もピント調節力を保っていることが分かった(データ:福与貴秀さん)
近くにピントを合わせるとき(右)は毛様体がゆるんで水晶体は厚くなる。このとき、遠くはぼやけて見える。逆に、遠くを見るときは毛様体が緊張して水晶体は薄くなり、近くのものがぼやけて見える(イラスト:三弓素青)

「55歳まで老眼鏡いらず」を目指す10秒トレーニング

1.近視、遠視の人はメガネやコンタクトで、きちんと遠くが見える状態に矯正する

2.目の前15cmのところに指やペンを立て、まず、その先端にピントを合わせる努力をする

3.まずその先端にピントを合わせる。続いて一直線上にある遠くのものに、それぞれ1秒ずつピントを合わせる

4.2と3を繰り返す。2秒×5往復(たった10秒!)これを1日10回を目標に

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「いったん老眼になってしまうと、後戻りしませんが、老眼になる前ならピント調節力を鍛えるトレーニングで、老眼になるのを遅くすることはできます」と福与眼科(東京都北区)院長の福与貴秀さんさん。

福与さんは2001年から6年間、40代で矯正視力が両眼ともに1.0以上の93人を、老眼がある群と、ない群に分け、さらにそれぞれをトレーニングを行う班と行わない班に分類、3年間でピント調節力がどう変化するかを調べました。

その結果、すでに老眼がある群では改善効果は見られなかったものの、まだ老眼がない群では、トレーニングを行わなかった班のピント調節力が低下していくのに対し、トレーニング班はピント調節力が維持、または改善していました(下のグラフ)。

そのトレーニングとは、遠くと近くを交互に見ることで、毛様体を鍛えるという、とても簡単な方法(下の図)。「毛様体が動くと房水(目の血液の役割を持つ)の流れは滞らず、水晶体への栄養も届く。それによって水晶体の弾性の低下が遅くなるのだと考えています」(福与さん)。

この方法は、とにかく続けることが肝心。2、3カ月で近点が改善する人もいるそうです。「トレーニングを続けて、55歳まで老眼鏡なしで過ごした人もいます。僕はいま58歳ですがまだ老眼鏡は使っていません」(福与さん)。


前ページで説明した毛様体トレーニング。具体的なやりかたや注意すべきポイントをQ&A形式でアドバイスします。

………………………………………………………………………………

できるだけ遠くにあるものがいい。イラストのように何kmも先の風景がベスト。しかし、あまり距離にこだわる必要はなく、部屋の中で行うなら、2m先の壁に張った写真などでもOK。ポイントは、「近くと遠くを交互に見る」こと。

暗いところでは瞳孔が開き、明るいところでは閉じる。老化するとこの反射能力も落ちてくるので、それも一緒に鍛えるには、遠くの目標が暗く、近くの目標にはスタンドの光などが当たって明るい状態がベスト。

15cm先というのは通常は見えない距離ですので、ぼやけても構いません。そこを見ようとすることで筋肉を鍛えるわけです。

目と目の間、近い目標(ペン)、遠い目標(山)は一直線上にあるのがベスト。これは繰り返し視点を動かしているときに、水晶体の奥にある硝子体(卵の白身のようなもの)をあまり動揺させないほうが、40~50代に発症のピークがある網膜はく離を誘発する危険性が低くなるから。あごが上下したり、目がキョロキョロ動いたりするようなら目標物がうまく一直線上に並んでいない証拠。目標物の位置を調整し直しましょう。

このトレーニングはまだ水晶体に弾力が残っているうちに始める必要がありますが、老眼になっていても、まだ毛様体は動きます。

「これまでの調査の結果、残念ながら、なってしまった老眼を改善する効果はありませんが、老眼の進行をゆっくりにする効果は期待できます」と福与さん。

「筋肉を使うと、房水や血液の流れがよくなります。それは、白内障など目の病気の予防にもつながるはず。ですから、目の健康維持のためにも、毛様体トレーニングを」(福与さん)

大きさの違う文字を印刷した紙をトイレのドアに張って遠い目標に、ボールペンを近い目標にして、トイレに行くたびにトレーニングを。朝起きた直後と仕事が終わって目が疲れている夜はピントが合いにくかったのですが、10日目ぐらいから小さな文字にもピントが合いやすくなってきました。続けていきます。

(日経ヘルス プルミエ 黒住沙織、ライター 竹島由起)

[日経ヘルス プルミエ2010年8月号を基に再構成]

本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。

本連載の前回で紹介した老眼度チェック(近点距離)の結果が33cm以下(目年齢が45歳以下)だった「まだ老眼ではない」人にはまだ打つ手があります。

「いったん老眼になってしまうと、後戻りしませんが、老眼になる前ならピント調節力を鍛えるトレーニングで、老眼になるのを遅くすることはできます」と福与眼科(東京都北区)院長の福与貴秀さんさん。

福与さんは2001年から6年間、40代で矯正視力が両眼ともに1.0以上の93人を、老眼がある群と、ない群に分け、さらにそれぞれをトレーニングを行う班と行わない班に分類、3年間でピント調節力がどう変化するかを調べました。

その結果、すでに老眼がある群では改善効果は見られなかったものの、まだ老眼がない群では、トレーニングを行わなかった班のピント調節力が低下していくのに対し、トレーニング班はピント調節力が維持、または改善していました(下のグラフ)。

そのトレーニングとは、遠くと近くを交互に見ることで、毛様体を鍛えるという、とても簡単な方法(下の図)。「毛様体が動くと房水(目の血液の役割を持つ)の流れは滞らず、水晶体への栄養も届く。それによって水晶体の弾性の低下が遅くなるのだと考えています」(福与さん)。

この方法は、とにかく続けることが肝心。2、3カ月で近点が改善する人もいるそうです。「トレーニングを続けて、55歳まで老眼鏡なしで過ごした人もいます。僕はいま58歳ですがまだ老眼鏡は使っていません」(福与さん)。


前ページで説明した毛様体トレーニング。具体的なやりかたや注意すべきポイントをQ&A形式でアドバイスします。

………………………………………………………………………………

できるだけ遠くにあるものがいい。イラストのように何kmも先の風景がベスト。しかし、あまり距離にこだわる必要はなく、部屋の中で行うなら、2m先の壁に張った写真などでもOK。ポイントは、「近くと遠くを交互に見る」こと。

暗いところでは瞳孔が開き、明るいところでは閉じる。老化するとこの反射能力も落ちてくるので、それも一緒に鍛えるには、遠くの目標が暗く、近くの目標にはスタンドの光などが当たって明るい状態がベスト。

15cm先というのは通常は見えない距離ですので、ぼやけても構いません。そこを見ようとすることで筋肉を鍛えるわけです。

目と目の間、近い目標(ペン)、遠い目標(山)は一直線上にあるのがベスト。これは繰り返し視点を動かしているときに、水晶体の奥にある硝子体(卵の白身のようなもの)をあまり動揺させないほうが、40~50代に発症のピークがある網膜はく離を誘発する危険性が低くなるから。あごが上下したり、目がキョロキョロ動いたりするようなら目標物がうまく一直線上に並んでいない証拠。目標物の位置を調整し直しましょう。

このトレーニングはまだ水晶体に弾力が残っているうちに始める必要がありますが、老眼になっていても、まだ毛様体は動きます。

「これまでの調査の結果、残念ながら、なってしまった老眼を改善する効果はありませんが、老眼の進行をゆっくりにする効果は期待できます」と福与さん。

「筋肉を使うと、房水や血液の流れがよくなります。それは、白内障など目の病気の予防にもつながるはず。ですから、目の健康維持のためにも、毛様体トレーニングを」(福与さん)

大きさの違う文字を印刷した紙をトイレのドアに張って遠い目標に、ボールペンを近い目標にして、トイレに行くたびにトレーニングを。朝起きた直後と仕事が終わって目が疲れている夜はピントが合いにくかったのですが、10日目ぐらいから小さな文字にもピントが合いやすくなってきました。続けていきます。

(日経ヘルス プルミエ 黒住沙織、ライター 竹島由起)

[日経ヘルス プルミエ2010年8月号を基に再構成]

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