氷河期40万人「ひきこもり」支援の切実な現場

実社会との「溝」を埋めれば活躍の場はある

彼らをめぐる状況が激変し始めている(デザイン:小林 由依、写真:Getty Images)

とっぷりと日が暮れた頃、部屋には続々と「ゲーム好き」が集まってきた。淡々とゲームに興じる人、自分の順番がくるのを静かに待つ人、ゲームはしないのにいつもいる人――。

長野県上田市にある若者サポートステーション・シナノ(以後、サポステ・シナノ)が毎月第3土曜日に実施しているRPG(ロール・プレイング・ゲーム)ナイト。10代から30代のゲーム愛好家たちが集まる「定例会」とも言うべき月1回の集まりだ。

1月20日発売の『週刊東洋経済』は「『氷河期』を救え!」を特集。バブル崩壊後の不況期に学校を卒業し、就職難に苦しんできた就職氷河期世代をめぐる状況を、幅広くレポートしている。氷河期世代で40万人いるとされるひきこもり。その支援の最前線も追っている。

「不登校やひきこもりは自室に籠もってゲームばかりしている」「他者とのコミュニケーションが苦手だから、1人の世界に閉じこもっている」――。そう言われ続けてきた彼らが、どうしたら社会との接点をつくれるか。サポステ・シナノが考え出したのがRPGナイトだ。

いっそのこと思う存分ゲームを

ゲーム以外の経験値が極端に少ない彼らをゲームから引き離すことは当人も周りも心身面の負担が大きい。「いっそのこと、みんな集めて思う存分ゲームを楽しんでもらう場を作ってはどうか」。きっかけは、半ば冗談のようなスタッフの一言だった。

『週刊東洋経済』1月20日発売号の特集は「『氷河期』を救え!」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

2時間のうち1時間はゲームの紹介、残り1時間は実際にゲームで遊ぶというのが決まり事。「こういうゲームなんです」と口頭で紹介する人もいれば、ウィキペディアで用語解説しながら説明する人、パワーポイントを使って解説する人までいる。普段、自分の話を聞いてもらえる機会がない彼らにとって、RPGナイトは注目を浴びる場でもある。

参加者の中には、ゲームはやらないのに毎回参加してくる人がいる。ゲームを紹介する人の話をただ聴き、誰かがゲームで遊ぶのを黙って観ているだけ。毎月欠かさず参加しているその人に、サポステ・シナノの藤井雄一郎さんがある時「ゲームやらなくても楽しいの?」と聞いた。すると「楽しいですよ」と返ってきた。藤井さんはそれ以上何も聞かなかった。

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  • とくさんd963f33a5c61
    これ、氷河期は関係あるの?
    up49
    down3
    2020/1/20 07:13
  • リベラル@日本669091de984e
    支援の現場は大変なんだろうなあ、と漠然と思います。ただ、例として登場する方が「氷河期」と関係ないのが何とも。
    up38
    down2
    2020/1/20 07:04
  • 如月五月ブログ/更新6407c324596e
    そもそも、

    引きこもりに必要なのは隠れた「承認欲求」の実現の
    場の提供だと思う。

    記事では「共通の趣味の集まり」「1人でできる仕事」
    などを通じて、自分の存在を確認している。

    引きこもりが問題なのは、「自宅に籠っている」から
    ではなく、「現実社会から残絶された状態」にあることで、
    何らかの形で社会との接点が持てて、自分の存在意義が
    確認できれば、とりあえずは良い方向に動きだしたと
    考えてもいいのではないだろうか。

    働き方改革の進展もあって「仕事は会社で」とい常識は
    薄らぎつつある。
    この流れを「引きこもり支援」にも生かしてほしい。
    up35
    down5
    2020/1/20 07:42
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