SHOWROOM「前田裕二」は今何を考えているのか

「脱DeNA」で新メディア企業に生まれ変わる

前田裕二社長は「SHOWROOM事業はこのままでは頭打ちになると思った」と危機感をのぞかせる(撮影:鈴木紳平)
AKB48グループをはじめとするアイドルグループやタレント、声優、お笑い芸人などが参加するライブ配信サービス「SHOWROOM」。誰でも配信が可能なのが特徴で、視聴者が配信者へ送るプレゼント「ギフティング」(投げ銭)から収益を得ている。。
2013年にディー・エヌ・エー(DeNA)社内で事業を開始し、2015年に分社化。現在は330万人が会員登録しており、約27万人の配信者を抱えている。
そのSHOWROOMは2019年11月、電通やニッポン放送など7社から資金を調達したことを発表した(金額は非開示)。調達した資金を使い、プロの作品だけを集めた「短尺動画メディア」とラジオのような「音声メディア」を展開する予定だ。短尺動画メディアは2020年3月のサービス開始を目指している。
2019年12月に開かれた新規事業発表会で、前田裕二社長は「今まで(食事中や電車など)すき間時間ではインスタグラムやTikTokなどアマチュアの短尺動画を見ている人が多かった。ここにプロが作った短尺動画を届けたい」と発言。既存のSHOWROOM事業とはまったく異なる新規メディアを立ち上げる。
ライバルであるTikTokやインスタグラムにどう対抗していくのか。前田社長にインタビューした。

配信者の行動は想定外だった

――事業開始から6年以上経ちますが、この間を振り返っていかがですか。

思った通りだったことと、そうではないことがある。思った通りだったのは、ファンが少ない配信者でもSHOWROOMの舞台で頑張れば、確実にファンが増えたということだ。それによってSHOWROOM事業を収益化できた。

しかし、想定外だったのが、ファンが増えた配信者がSHOWROOMで発信し続けることに満足できなかったこと。トップユーチューバーのヒカキンさんでもテレビに出演する。自分のパフォーマンスを少しでも多くの人に知ってほしいという人は少なくない。SHOWROOMの次のステップとして、配信者がテレビや映画、雑誌、ファッションショーなどを目指すようになったのは想定外だった。

――テレビ番組のスポンサーとなり、パフォーマーを紹介する番組を放送しています。同時に、テレビのレギュラーMCのオーディションなどもSHOWROOM上で行っています。

配信者がSHOWROOMで配信したいというモチベーションを上げるためには、テレビや映画、ファッションショーなど出演者が憧れる媒体が効果的だ。しかし、SHOWROOMはそれを保有していないため、予算を用意し、スポンサーになっている。

だが、SHOWROOMのビジネスを模倣している競合は多く、今はメディアの奪い合いになっている。売り上げは変わらないのに、メディアへ支払う広告金額が増え、利益率が下がっていく。もう1~2年、メディア枠を奪い合うやり方もあるが、上場を見据えるのであれば、きちんと利益を出していく必要がある。このままでは事業拡大の余地を狭めてしまうと思った。そのため(メディア枠の買い付けを)やめるなら今だなと思った。

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  • スマイリー51232015686c
    興味深いインタビューだ。
    言葉の端々から、赤字を垂れ流している事への焦りを感じる。
    up20
    down3
    2020/1/19 08:34
  • AJRAbdebf3631e11
    今さら、こういうメディア必要?
    up11
    down1
    2020/1/19 13:36
  • さくらさくら32cdba4cb1fe
    芸能人とのお付き合いも宣伝効果を狙ったものだったのでしょうか。
    いろいろな作戦を考えられているようですが、今更バックオフィスを固めようとしているのはIPOのためでしょうか。この事業で赤では上場は厳しいと思いますが。
    up7
    down1
    2020/1/19 15:38
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