映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『パラサイト 半地下の家族』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
YouTubeで予告映像もご覧ください。
『パラサイト 半地下の家族』(132分/PG12/韓国/2019)
原題『Parasite』
【監督】
ポン・ジュノ
【製作】
クァク・シネ ムン・ヤングォン チャン・ヨンファン
【出演】
ソン・ガンホ
チェ・ウシク)
キム・ギジョン(パク・ソダム
チャン・ヘジン
イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン
イ・ジョンウン
映画『パラサイト 半地下の家族』のオススメ度は?
星3つ半です
韓国の若者の声が聞こえます
格差社会が凄まじいです
ソン・ガンホ監督恐るべし
映画『パラサイト 半地下の家族』の作品概要
『パラサイト 半地下の家族』2019年韓国作品。コメディ・ホラー映画。ポン・ジュノ監督。主演ソン・ガンホ。イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム共演。第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初となるパルム・ドールの受賞作品。2020年(第92回)アカデミー作品賞にノミネートされた。
映画『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ・ネタバレ
仕事もなくその日暮らしのキム家族。時折、内職をしている。彼らが住むのは半地下。辛うじて地上の光が当たる。しかし住環境は最悪。夏は暑いし、冬は寒い。そして臭い。さらに地上からはゴミや酔っ払いの立ちションベンが降り注ぐ。キムの長男は学力はあるが貧乏なため大学へいけない。ある日、キムの友人が超大金持ち家の家庭教師の代役を持ちかける。偽装した学生書を作り仕事に向かうが、、、。そして次々とパラサイトしていく。
映画『パラサイト 半地下の家族』の感想・評価・内容・結末
2020年アカデミー作品賞(第92回)アカデミー作品賞ノミネート
2019年度、カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した作品です。
前評判がとても高く、しかも全米でもヒット、さらには2020年度アカデミー作品賞にノミネートされています。
外国語映画賞ではありません。
作品賞にです。
これ自体が快挙です。
残念ながら日本映画でかつて作品賞にノミネートされた作品はありません。
通常、アカデミー賞は英語作品以外は外国賞に回されます。
ですが本映画『パラサイト 半地下の家族』は一番トップの部門でノミネートされたのです。
昨年はアルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』がノミネートされました。
こちらはスペイン語映画です。受賞は逃しました。
もし今回『パラサイト 半地下の家族』が受賞すれば、2011年のミシェル・アザナヴィシウス監督の『アーティスト』以来になります。
ただ正直、受賞は難しいと思われます。
韓国が戦時国家であることを念頭に
さて、本映画『パラサイト 半地下の家族』を観て一番に感じたのは「やっぱり韓国は戦時国家なのだ」ということです。
北朝鮮と休戦はしていますが、まだ戦争が終結しているのではありません。
北からの恐怖心や格差社会が背景になっているのは否めません。
半地下という住まいが存在する理由について書きます。
防空壕、あるいシェルターとして利用されてきた歴史があります。
もちろん北朝鮮からのミサイル攻撃に備えてのことです。
北朝鮮からの絶え間ないストレスがある
半地下を持つ家庭の多くは中産階級以上の人たちです。
けれども今はその半地下を人に貸して家賃収入を得た方が得策と考え、収入の少ない人に貸し出しているのが現状です。
ただし、この半地下が多くあるのは主にソウルです。
北朝鮮の平壌からソウルまで196㎞、38度線からは50㎞足らずです。
もし再び戦火に包まれれば、あっという間の距離です。
もちろん北朝鮮のミサイルは常にソウルに照準を合わせています。
有事の際、半地下に逃げるのです。
今もです。そんなストレスの中で半地下が作られた経緯があります。
想像を絶する学歴社会と格差社会の存在
この半地下で暮らす人々は韓国社会では差別・偏見の目で見られていることも忘れてはいけません。
彼らは人生を諦めているのです。
韓国社会は日本と比較にならないほどの格差社会です。
学歴がないと良い仕事に就けません。
普通の大学へ行っても無意味です。
ソウル大学、延世(ヨンセ)大学、高麗(コリョ)大学に入らないと良い会社に就職はできないと言われています。
良い会社とは財閥です。
サムスングループ、LGグループ、現代自動車グループなどです。
韓国の経済、政治と全て握っています。
これらの会社に入るために親は子供に過酷な受験勉強をさせているといっても過言ではありません。
兎にも角にも日本社会とは比較にならないほど厳しくて残酷な世界があるのです。
金持ちにパラサイトするところは好感が持てる
そして本映画『パラサイト 半地下の家族』は韓国の歴史と社会情勢を見事に映し出しているところが心を打ってくるのです。
上記した過酷な競争社会からはみ出した半地下の住人たちは間違いなく犠牲者なのです。
戦時下、競争社会、差別、失業、貧困を全て背負っているのです。
ただ、この映画では彼らはとてもたくましく、一見コメディアンのように演じます。
その反面、実はとても悲しい生き方を繰り広げているのです。
タイトル通り“パラサイト”するのです。
パラサイトは寄生することです。
はみ出した彼らが選んだのはお金持ち家族です。
この設定が好感を持ちます。
希望とか夢の存在がない半地下の人立ち
ポン・ジュノ監督の描き方が絶品ですね。
初めはただの“ロクデナシ一家”の様相ですが、徐々に少しずつ韓国の格差社会をスクリーンにゆっくりを浸透させてきます。
半地下家族はいつも下から世界を眺めています。
それが地上、高台の家、さらに家の2階部分と彼らの目に移る風景を高低差で表しながら、憧れと焦燥感を深めているのです。
つまりそこには“あきらめ”があり、希望がないのです。本当に希望がありません。
下へ下へと水は流れるが汚泥しかない
あの大雨の日、高台の家から逃げ帰る場面は本当に秀逸です。
雨に打たれてどんどん下へ下へと降りていきます。
雨は激しくなるばかりです。
容赦しません。
それは世間の雨風です。
下とは地獄のことです。
彼らは振り返りますが、止まりません。いえ、戻れません。
自分たちの住む場所は下にしかないのです。
そして辿り着いた半地下の住居は大雨の洪水で糞尿が溢れかえっています。
下の世界は汚泥しかありません。
もう住めません。そして災害避難場へ。
無計画で生きることが最良な悲しき韓国社会
避難所には同じような境遇の人たちで溢れかえっています。
ここでの親子の会話が必見です。
父親のキム・ギテク(ソン・ガンホ) に息子のキム・ギウ(チェ・ウシク)が尋ねます。
「何か計画を立てないといけない」でも父は「計画を立てても無駄だ。
一番良いのは無計画でいることだ」です。
あまりにも虚しいです。
救いようがないです。
代弁すると「この国で計画を立ててもそれが実現されることはない。だったら計画など立てない方が良いのだ」となります。
韓国『七放世代』の叫びを代弁したポン・ジュノ監督
この背景にあるのは若者が報われない世界があるからです。
いまの韓国の若者は『七放世代』と呼ばれています。
1997年のアジア通貨危機が発端となっています。
当初は三放世代でした。
「恋愛」「結婚」「出産」を諦めた人たちのことを指します。
でもさらに格差が進んで今や「就職」「マイホーム」を放棄して「人間関係」「夢」も放棄した人たちのことを指しています。
この7つってとてつもなく重く感じます。
韓国で自殺が多い原因もここにあるような気がします。
日本はまだまだ幸せな社会がある
日本はまだ救われている気がします。日本は確かに格差は広がっています。
学歴社会もありますが、三流大学へ行っていても、高卒でもちゃんと評価してくれる許容力があります。
しかし韓国は学歴が低いと人に非ずというか、、、。
その当たりの思想改善をしないと好転しないのではと勝手に考えてしまいます。
どん底の一家を応援したくなる
さて、映画の話に戻します。
高台の家から大雨に打たれて下へ下へ逃れた一家とはまるで違う世界の存在にどきりとさせる展開が待ち受けています。
そうです。上流階級の人たちは昨夜の大水害のことなどどこ吹く風とばかりに気にしていません。
避難生活をしている人のことなど眼中にありません。
優雅にパーティーを繰り広げてます。
ここからです。キム・ギテク(ソン・ガンホ) の中で何かが弾けるのです。
賛否はありますが、韓国社会に対しての強烈なメッセージです。
応援したくなるのです。「どうか生きて欲しい」と願うのです。
最後のどんでん返しがイマイチだった
良い映画でしたが、最後のどんでん返しがクドイです。
2回、3回と繰り返すので「またか」と予感してしまうのです。
韓国映画にありがちな演出ですが、本映画『パラサイト 半地下の家族』では1回のどんでん返しだけで十分な気がしました。
映画の中で“臭い”についての描写があります。
これは半地下に住む人たちにこびり付いたカビ臭いニオイも示唆していますが、底辺の人間が醸し出す雰囲気としてのニオイもあると思います。
コンプレックスの象徴として描いていると思います。
映画『パラサイト 半地下の家族』のキャストについて
キム・ギテク(ソン・ガンホ)
この人についてはもう圧巻の演技としか言いようがありません。もう百戦錬磨でしょう。顔が特徴ありますね。いやありすぎます。一回観たら忘れられません。これは俳優としては一番のメリットであると思います。いつも苦虫を噛み潰したような印象ですが、怒った時のは迫力と笑った時の可愛さのギャップがいいと思います。本映画ではろくでなしの父親を演じています。上流階級の人の運転手経験ありのプロフィールですが、どこか下層階級の“臭い”が消しきれない人間を上手く演じていました。
キム・チュンスク(チャン・ヘジン)
上手いと思います。ろくでなしの夫と息子、娘を持つ母親ですが、本人も人生諦めた感を出しつつも、チャンス到来においては半地下の素性を見事に隠して品を持って振る舞います。半地下ではガサツな性格を前面に出しますが、地上ではセレブ色を醸し出す切り替えの演技が絶妙でした。半地下から出てきた時、別人では?と思うほど綺麗になっていました。
キム・ギウ(チェ・ウシク)
頭は良いがお金がないため大学に進学できない青年を演じています。この人の顔は本当に醤油顔といいましょうか、悪いことをしそうにない雰囲気なのです。しかも腰が低いので信用、信頼してしまうのでしょう。押しが強くないのですね。謙虚さを前面に出してお金持ちに接近していく様は見応えありました。
キム・ギジョン(パク・ソダム)
半地下家族の長女役です。芸銃的才能はありますが、やはりお金がないため進学できません。頭が切れます。ネットで学習して人の心にすっと入って信用させます。涼しげな顔と落ち着き払った演技をしますから、付け入る隙を与えないのが特徴の役柄でした。でも家族の前ではヨレヨレでした。それが良いのです。
パク・ドンイク(イ・ソンギュン)
IT長者を演じています。背も高く優しくお金持ちという設定がとても似合っています。仕草もスマートです。声を荒げたりしないですし、大声で笑ったりもしません。とても落ち着きのある演技でした。
パク・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)
パク・ドンイクの妻です。世間知らずというか、他人まかせというか、割と大雑把な役どころです。そして美人妻とくれば誰かが寄ってきそうですが、、、、。案の定、キム・ギウが寄ってきました。彼がすっと心に入ってきました。ここからが全ての始まりでした。あまり細かいことにこだわらず、奔放に振る舞う様子に好感を持ちました。
ムングァン(イ・ジョンウン)
良い味だしていました。お手伝いさんという役柄を見事に演じていたと思います。前半はキツイ雰囲気を出していましたが、後半の再登場ではコメディー要素とホラー要素を持ち出してグイグイと映画の中へ引っ張ってくれました。とても素晴らしかったです。
まとめ 映画『パラサイト 半地下の家族』一言で言うと!
「戦争は悲劇しか生まない」
この映画『パラサイト 半地下の家族』の背景には貧困化rあ生ずる格差社会があると思います。そして半地下生活。でも本質にあるのはやはり戦争がまだ終結していない現状がまだ韓国にはあるということでしょう。これがどれだけのストレスかは当事者出ないとわかりませんが、大きな歪みとなって現れた現象が“パラサイト”だったのでしょう。言うなれば戦争が彼らにパラサイトしているのです。
合わせて観たい映画
【】
映画『パラサイト 半地下の家族』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
ポン・ジュノ
製作
クァク・シネ ムン・ヤングォン チャン・ヨンファン
脚本
ポン・ジュノ ハン・ジヌォン
撮影
ホン・ギョンピョ
美術
イ・ハジュン
衣装
チェ・セヨン
編集
ヤン・ジンモ
音楽
チョン・ジェイル
キム・ギテク(ソン・ガンホ)
パク・ドンイク(イ・ソンギュン)
パク・ヨンギョ(チョ・ヨジョン)
キム・ギウ(チェ・ウシク)
キム・ギジョン(パク・ソダム)
ムングァン(イ・ジョンウン)
キム・チュンスク(チャン・ヘジン)
パク・ダヘ(チョン・ジソ)
パク・ダソン(チョン・ヒョンジュン)
ミニョク(パク・ソジュン)
2019年製作/132分/PG12/韓国
原題:Parasite
配給:ビターズ・エンド