日本はこの先もずっと経済成長を維持できるか

各機関の長期推計をベースに考えてみた

労働力が減少する中で経済成長は果たせるのか?(写真:まちゃー/PIXTA)
昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。野口悠紀雄氏による連載第6回は、日本の経済成長の未来を大胆に予測する。

今後、日本では、労働力が減少する可能性が高いため、経済成長のためには、技術革新によって生産性を高めることができるかどうか、これによって1%台の成長率を維持できるかどうかが問題です。

OECDの予測である1%成長を実現できるか?

短期的な成長率は、さまざまな要因によって影響されます。例えば、貿易摩擦によって貿易額が減少すれば、経済成長率が落ち込みます。為替レートの変動によっても、大きな影響を受けます。

この連載の一覧はこちら

このような要因は見通しにくいことが多いので、短期経済予測は的中しないことがよくあります。

これに対して、長期的な成長率(潜在成長率)は、一定期間の平均成長率を問題とするので、上記のような変動は平均化されます。その意味では、短期予測より正確にできる面があります。

以下では、2020年から40年という長期にわたる、日本の経済成長率を問題にします。

2060年、日本の1人当たりGDPは中印に勝てるか」(2020年1月5日配信)で触れたOECDの予測では、2060年までの日本の平均実質成長率は1.15%です。

これが妥当かどうかを検討することとしましょう。

まず、これまでの日本の実質GDP成長率の実績をみると、下図に示すとおりです。

(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があるので、その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

2000年代の中頃には年率2%台の成長が続きましたが、2008年のリーマンショックで成長率が大きく低下。その後、落ち込みを取り戻す動きなどがあり、2015年以降は1%台の実質成長率となっています。

2012~2018年の実質GDP年平均増加率は1.16%でした。

次ページ財政収支試算では、成長率が2%程度とされている
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  • chuji69c6904d8d4d
    経済学では、色々なデーターや学説を並べるのでしょうが、極めて直感的に我が国の現状を見れば、衰退しつつある国家の典型ではないでしょうか。首長が愚鈍で政権が腐敗し、官僚組織も追従堕落し、経済的にも失敗と衰退を重ね、国としての覇気を全く喪失している状況です。それを最も象徴するのは、若者の無気力で、この点では、ギリシャやイタリアと同じ様相です。
    up55
    down8
    2020/1/19 11:41
  • Yogensya577f831bcb46
    タイトルを読んで、日本はこれまでずっと経済成長をしてきたのかという疑問が浮かびました。
    up22
    down0
    2020/1/19 18:42
  • くつか7434eac699be
    製造業最大の利点はそれなりの賃金の仕事を大量に生み出すことができるという点。
    人口1億人を超える日本において製造立国を目指すというのは正しい選択であった。現在でいう中国やインドがそうであったように。
    ではこれからの日本は何を目指すのが正しいのか?
    人口がまた増えることを見越して製造立国の立場を維持するのか?
    それとも今まで積み上げた債権を元手にイギリスのような金融立国を目指すのか?
    はたまた外貨稼ぎ頼みの観光立国を目指すのか?

    どの道を選ぶにしても茨の道であることには変わりはない。
    3つを同時に追うような生半可な覚悟ではどうにもならんでしょうね。
    up4
    down0
    2020/1/19 22:52
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