来年3月に雇用止め。その後、就職できるかが不安です……

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、早期リタイアを検討している40代女性。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)
 
47歳で早期リタイヤ可能ですか?

47歳で早期リタイヤ可能ですか?



■相談者
むうにいさん(仮名)
女性/契約社員/46歳
東京都/実家(持ち家・マンション)

■家族構成


■相談内容
来年3月雇用止め決定の契約社員です。働きながら求職活動中ですが、これといった資格もなく厳しい現状です。お伺いしたい内容は「来年3月以降、47歳から無職でリタイア生活は可能か」です。

・実家:完済済み。職が決まらない場合、実家に家賃として入れている6万円は不要と相談済。
・母/90歳まで安泰の資産あり、マンション以外の資産は本人が使い切る予定。管理費は月10万円
・保険(個人年金保険)/60歳から10年確定、年金額101万3200円
・年金/現在の支払い状況国民年金62カ月・厚生年金223カ月。加入実績に応じた年金額107万4846円(年額)。2018年3月以降は国民年金に変更予定

■家計収支データ
「むうにい」さんの家計収支データ

「むうにい」さんの家計収支データ



■家計収支データ補足
(1)再就職について
給料は下がることは覚悟のうえですが、その前に年齢制限で書類選考を通らない現状です。手取り月収25万円の正社員で職を探しておりますが、来年3月までに決まらなければ5年以上の契約更新のない契約社員、もしくはアルバイトも視野に入れる予定です。

(2)リタイアの動機について
こちらに相談をよせたときは働きたくない、完全リタイアしたい気持ちで満ちておりましたが、現在は60歳もしくは65歳まで働きたいと考えております。と同時に、バイトも受からないかもしれない不安もあり、今後一切働かずとも暮らせるか知りたいと感じております。

(3)ボーナスの使いみちについて
基本すべて貯金だが、昨年は例外的に、老朽化した家電買い替え+衣替えなどで30万円、旅費・交際費として10万円を支出。

(4)リタイア後の生活費について
16万~25万円ほど。平均すれば20万~21万円

(5)ご自宅について
管理費:月額10万円、築年数:18年
一人で住むには面積が広いということもあり、母親が他界したら、 同じマンションに住む、姉夫婦(甥/小4)の3名が住むか賃貸に出すかもしれない。

■FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 想定する生活費なら老後資金に不安も
アドバイス2 生活のダウンサイジングも効果的対策
アドバイス3 社会の接点を失わないように
 

アドバイス1 想定する生活費なら老後資金に不安も

ご相談の47歳からのリタイア生活について試算してみましょう。

まず、退職予定の来年3月までに、貯蓄が約190万円(給与8カ月+ボーナス半年分)可能ですから、退職金が支給されないとしても、退職時の総貯蓄額は7190万円。また、60歳以降、支給される個人年金保険の年金総額が1013万円(税金は考慮せず)あり、これも加算すれば、老後資金として約8200万円が用意できることになります。

一方、生活費ですが、相談者の「むうにいさん」は平均20万~21万円と考えられているようです。実際にそうなるとすれば、年間約245万円。無収入となる65歳までの18年間で、約4400万円を取り崩すことになります。65歳以降は、支給される公的年金額を110万円とすると、そこから税金や社会保険料を差し引き、生活費の自己負担額は150万円程度。90歳まで生きるとすると、25年間で3750万円となり、計8150万円が老後資金として必要となるわけです。

結果、計算上は足りることになりますが、これで足りるかと言えば、断定はできません。不安要素として、ひとつは長生きによるリスク。91歳で老後資金は底を尽きます。もう一つが、不測のまとまった支出(医療費や介護費用など)が発生する可能性、プラスして試算はあくまでも基本生活費のみが足りるにすぎないということです。生活費以外の遊行費などを考えれば、資金的にもう少し余裕が欲しいということになります。
 

アドバイス2 生活のダウンサイジングも効果的対策

そのための対策はいくつかあります。

まず、先の試算は完全リタイアのケースですが、少しでも働く=セミリタイアにするということ。ご自身も「60歳もしくは65歳まで働きたいと考えております」と言われていますが、それは老後対策にはとても有効です。収入が月5万円でも、15年間なら900万円。結果的に90歳の時点で1000万円近い資金が手元に残ることになります。

もうひとつが、生活のダウンサイジングです。例えば、生活費を月1万5000円削減すると、90歳までの43年間で774万円。90歳の時点で800万円近い金額がまだ貯蓄が残っています。

また、むうにいさんの場合、他にも選択肢がありそうです。

先の、リタイア後の生活費として月20万~21万円がどのような試算から出たものかは不明ですが、お母さんと実家でずっと暮らすとなると、無職の場合、生活費として入れている6万円は不要とのこと。つまり、毎月は基本的に12万5000円の生活費で済むことになります。不定期の旅行費や交際費等を加えても、月20万円はかからないと思われます。

また、ご実家を人に貸す場合、家賃収入を得ることもできます。当然、その分、老後資金に余裕が生まれます。さらに、転職活動がスムーズに進み、就職できれば、状況は大きく変化します。慌てず、事前にいろんな選択肢を比較検討しておけばいいでしょう。
 

アドバイス3 社会の接点を失わないように

また、資金運用については、普通預金に7000万円は超低金利の時代でももったいない気がします。定期預金なら、利息0.2%程度の商品はいくつかあります。税引き後でも、年間10万円以上の利息を手にすることができるわけです。あるいは、もし就職し、一定の収入を引き続き得るようであれば、個人型の確定拠出年金(iDeCo)を始めてもいいでしょう。掛け金が全額、所得控除の対象になりますから、確実に節税効果が得られます。確定拠出年金は、運用というイメージがありますが、定期預金のような元本保証の商品もあります。金融機関によって口座管理料などのコスト額が異なりますので、そこは注意が必要です。

最後に、47歳でもしリタイアされたら、その後の人生はかなり長いということを認識してください。人生はまだ半分と言っても過言ではないでしょう。その間、社会との接点がなくなることは、やはり心配です。リタイア後の明確なプランがあれば別ですが、何となく過ごされて、いつの間にか社会と接する機会が減ってしまい、気がつけば引きこもってしまったというケースもめずらしいことではありません。

その意味でも、仕事を辞めて直ぐにとはいいません。数年後からでも、またアルバイトでいいので、ともあれ自分のペースで働かれてはどうでしょう。「バイトも受からないかもしれない」と言われていますが、もっと自信を持つべき。収入はさほど高くなくてもいいのですから、できそうな仕事、あるいは興味のある仕事を選び、積極的に働かれることをお勧めします。

教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
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マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文/清水京武



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