『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』には、面白みと情熱が決定的に欠けている:映画レヴュー

スター・ウォーズの最終章となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は、離れてしまったファンの心を取り戻すための必死の努力であるように見える。特に考えさせられるものはなく、裏切られたという気分になることも、逆に作品を十分に堪能したと思うこともない──。『ヴァニティ・フェア』によるレヴュー。

Star Wars

©LUCASFILM/EVERETT COLLECTION/AMANAIMAGES

※このレヴュー記事には、ネタバレにつながる描写が含まれています。十分にご注意ください

スター・ウォーズの現在の三部作の2作目に当たる『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)を巡る議論に深入りするのは、セラピストに止められている。これにはきちんとした理由があるのだが、それはともかくわたしの大雑把な理解では、この映画はファンには評判が悪かった。

わたしの耳にまで届くのだから、当然ディズニーも『最後のジェダイ』に対する不満には気づいていたはずだ。シリーズの最後を飾る『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は、離れてしまったファンの心を取り戻すための必死の努力であるように見える。それはきっとこのためだろう。最新作は神話の法則を追求し、ファンがオリジナル三部作に対して抱く言葉に従って畏敬の念のようなものを復活させようともがいている。

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J.J.エイブラムスに課せられた義務

監督は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)を大成功に導いたJ.J.エイブラムスだ。エイブラムスは続三部作の第1作となるこの作品で、元からしっかりとした骨格をもっていたルーク・スカイウォーカーの物語を巧みに再構築してみせた。だが、非常に難しいふたつの課題を背負った『スカイウォーカーの夜明け』は、そう簡単にはいかなかった。

エイブラムスはここで、ばらばらになった破片をそれなりに満足のいくかたちで何とかつなぎ合わせ、同時に『最後のジェダイ』を巡るファンの不満に耳を傾けて罪を償うという義務を課せられたのだ。

エイブラムスは有能な映画監督だが、これほどまで複雑な任務を遂行するのは難しいだろう。スティーヴン・スピルバーグを思わせる彼の器用さをもってしても、傷つけられたシリーズの名声を回復するのは不可能だった。

それでもエイブラムスは何とかしようともがき、アクロバチックな戦略を導入した。結果として『スカイウォーカーの夜明け』は、誰も望んでいなかった結末に向けて疾走し始める。そして『最後のジェダイ』を楽しめなかったことに動揺しているファンだけでなく(個人的には、これはルークが鬱っぽかったことと、女性キャラクターが重要な役割を与えられたことが大きいと思っている)、もっとリラックスした気分で最終章を待ち望んでいた人たちにとっても期待外れの結末となってしまった。

考えさせられるものは何もない

『スカイウォーカーの夜明け』のあらすじを明らかにするのは厳密には“違法行為”のようなものだと思うが、なるべく漠然としたことしか言わないので許してほしい。作品の冒頭、レイ(デイジー・リドリー)はジェダイになるための修行を続けている。情報を求めて宇宙をさまよっていたフィン(ジョン・ボイエガ)とポー・ダメロン(オスカー・アイザック)の元には、ファースト・オーダーの組織内部に潜むスパイからの情報が入ってくる。

一方、常に不機嫌なこの物語の王子カイロ・レン(アダム・ドライヴァー)は、もっと重要なものを探している。この壮大な物語の過去と未来をひも解く鍵となるアイテムで、具体的に何かということには触れないが、最終的にそれによって見つかるものは非常に馬鹿げていてイライラさせられるということだけは言っておきたい。

この映画には、特に考えさせられるものは何もない。また、裏切られたという気分になることも、逆に作品を十分に堪能したと思うこともない。ストーリー展開は視野狭窄に陥ったかのように方向性が決然としすぎていて、映画として愛される、もしくは少なくともネットで受け入れられるために、観客は何に関心があるのかということを考える余裕などはないようだ。

エイリアン版のバーニングマンを背景にした砂漠での追跡シーン、宇宙船内部での救出劇(シリーズの前の作品にも似たような場面があった)、そして戦闘機の撃ち合いでは無線によるやりとりが飛び交い、派手な爆発が続く。こうした急スピードのアクションシーンはどれも、どこかで見たようなものばかりだ。

全体として(さらに、それぞれのシーンにも)情熱は感じられない。まるでエイブラムスが夜中に叩き起こされて、どこかのインターン(ちなみに名前はライアンだ)が起こした火事を消すために急いでスタジオまで行ってほしいと頼まれたかのようだ。

無難で安心できるコンテンツ

『スカイウォーカーの夜明け』は、大手の映画スタジオがファンの意見にどう対応するかを考察する上で、興味深い事例だと言える。作品は『ソニック・ザ・ムービー』の実写版アニメのソニックのように人工的で、オリジナルの要素はまったくなく、代わりにRedditとTwitterから探してきたアイデアを寄せ集めただけに見える。

ついでに、そのアイデアはどれもひねくれたものだったということも付け加えておきたい(例えば『最後のジェダイ』で不当な批判を浴びたローズは今作では完全に脇役扱いだったが、これは一部の心ないファンの文句に譲歩してしまったのだと感じざるをえない)。

この精彩を欠いた超大作は、スター・ウォーズの“コアなファン”という非常に曖昧としたグループの機嫌をとることに終始している。それは残念なことで、興行収入だけを狙って製作したわけではないのだろうが、結果として映画全体としては面白みがまったくなくなってしまった。

ところどころに何となく可愛らしい要素(たいていは新型のドロイドだが、それすらもはや飽きた感じもする)がある以外は、製作側が必要だと思ったことが義務的に詰め込まれているだけだ。そして、そんなふうにしなくてもよかったのに、そのことに気付いていない。

いや、もしかしたら本当にそうしなければならなかったのかもしれない。ディズニーとしては、最終章(現時点ではシリーズ最終章だ)を巡っていかなるリスクも受け入れられない事情があったのだろう。だからこそ、いまではディズニー金庫の中に眠っているオリジナル三部作の世界観に近づけて、無難で安心できるコンテンツをつくり上げなければならなかった。

たぶん『スカイウォーカーの夜明け』は、受け入れなければならない既成事実なのだろう。若者たちはここから、楽しいイヴェント(ここまでは本当に面白かったのだ!)の最後には必ずつまらない終わりがやってくるということを学ぶのである。

物事は始めのうちに楽しんでおいたほうがいい。なぜなら、最後は貸し借りを清算して、すべてが終了する前に全体に何らかの意味づけをするという作業が必要になるからだ。

よかったところもある

さて、ネガティヴなことばかりでこのレヴューを終わらせたくはないので、この先は『スカイウォーカーの夜明け』のよかったところについて書いておこう。まず、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』で破壊されたデス・スターが出てくる。巨大な残骸はこれまでに登場したすべての惑星や過去の戦いを思い出させてくれるだろう。

うれしいことに、あの人が出てくるシーンもある。誰とは言わないが、映画を観れば必ずわかるはずだ。そして、新登場のとても小さなエイリアン、バブ・フリックがいる。このおかしな声(シャーリー・ヘンダーソンが声を担当した)と、しかめっ面をした不機嫌な老人は、スター・ウォーズ版『わんぱくデニス』のミスター・ウィルソンになれるかもしれない。デニス役はもちろんベビーヨーダだ。

ベビーヨーダで思い出したのだが、古きよき時代、ならず者たちが銀河系を飛び回っていたオリジナルのスター・ウォーズの世界を再び味わいたいのであれば、「Disney+」の実写ドラマ「ザ・マンダロリアン」を観るのがいちばんいいかもしれない。Disney+の利用料は月額でも映画を1本観るより安いし、映画館の駐車場が空いているかを心配する必要もない[編註:日本では「ディズニーデラックス」で配信中]。

そう、年をとると駐車場のように現実的なことを考えるようになる。不思議なできごとに興奮することは少なくなり、多くの場合において、残された隙間を埋めるのは責任という名のうんざりするような失望なのだ。

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朽ち果てた「ソ連版スペースシャトル」の姿を、打ち捨てられた格納庫に見た

かつて旧ソ連が計画していたスペースシャトル計画。たった1度の飛行で頓挫した計画のあと、シャトルは現在のカザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の片隅で打ち捨てられている。まるで廃墟のような格納庫に放置された機体を撮影すべく、このほどフランスの写真家が基地に潜入し、その姿をカメラに収めてることに成功した。

TEXT BY MICHAEL HARDY
TRANSLATION BY GALILEO

WIRED(US)

  • 01-photo_jonk_baikonur_1
    1/15現存する3機のソ連宇宙連絡船「ブラン」のなかの1機「プチーチュカ(小鳥)」。PHOTOGRAPH BY JONK
  • フランス人写真家のジョンクと3人の友人たちは2018年、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地に忍び込み、これら見捨てられたブランの写真を撮った。PHOTOGRAPH BY JONK
  • NASAのスペースシャトルとデザインが酷似するブランは、ソ連の宇宙プログラムの未来として期待されていた。PHOTOGRAPH BY JONK
  • この格納庫には以前から、地元の泥棒たちが忍び込んできた。2機のブランの貴金属や電子機器を目当てにしてのことだ。PHOTOGRAPH BY JONK
  • ジョンクはヴェテランの都市探検家で、これまでに世界各地の廃墟およそ1,500箇所の写真を撮ってきたという。彼いわく、この格納庫よりも近づくのが難しい場所はほとんどなかったそうだ。PHOTOGRAPH BY JONK
  • 一部にはずさんな管理体制も見受けられるが、バイコヌールはいまでもれっきとした宇宙船基地だ。ロシアの宇宙プログラムはこの場所をカザフスタンから年間およそ1億1,500万ドル(約126億円)で借りている。PHOTOGRAPH BY JONK
  • この格納庫には、ソ連時代のテクノロジーや本、文献がいたるところに散らばっている。PHOTOGRAPH BY JONK
  • 警備員が格納庫のチェックに立ち寄ったことが2度あったが、ジョンクと仲間たちはトランシーヴァーで連絡を取って難を逃れた。PHOTOGRAPH BY JONK
  • 目的地にたどり着くため、ジョンク一行は近くの都市クズロルダまで飛行機で行き、そのあと、バスに4時間揺られてチュラタムを目指した。その小さな町で、彼らはクルマに乗せてくれる地元民を見つけ、夜の帳が下りるころに、バイコヌールから13マイル(約20km)ほど離れた幹線道路の脇で降ろしてもらった。PHOTOGRAPH BY JONK
  • 彼らはまた、かつてブランの打ち上げに使用されていたロケット「エネルギアM」のプロトタイプが保管されている近くの格納庫にも忍び込んだ。PHOTOGRAPH BY JONK
  • ブランと同じように、エネルギアMのプロトタイプも、見捨てられた格納庫の中で朽ち果てていた。PHOTOGRAPH BY JONK
  • ブランが眠る格納庫の座標にセットしたGPS機器を使い、ヘッドランプで道を照らしながら、ジョンク一行は岩だらけの大草原地帯を7時間かけて横断した。バイコヌール宇宙基地に着いた彼らが発見したのは、信じられないほど素晴らしいものだった。PHOTOGRAPH BY JONK
  • ブランが保管されている格納庫の最上階からは、エネルギアMのプロトタイプが保管されている、背の高い格納庫が見える。PHOTOGRAPH BY JONK
  • 長年、ソ連の遺物に魅せられてきたジョンクにとって、この旅はまさに、そのキャリアのハイライトだった。彼の願いは、これら生き残っているブランたちが、やがてはいまの見放された状態から救い出され、しかるべき尊敬を与えられるようになることだ。PHOTOGRAPH BY JONK
  • 2機のブランが保管される巨大な格納庫の外観をとらえた1枚。エネルギアMのプロトタイプが保管されている格納庫から撮影。PHOTOGRAPH BY JONK

1988年11月15日、旧ソヴィエト連邦(ソ連)初の宇宙連絡船「ブラン(Buran)」が、現在のカザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。ブランは米国のスペースシャトルとデザインが酷似していたことから、ソ連の科学者がスペースシャトルの設計図を盗んだ、コピーしたといった憶測も飛び交った。

そんな騒動もあったブラン(「猛吹雪」を意味するロシア語)は、ソ連の宇宙プログラムの未来として期待されていた。しかし結果的に、その初飛行は最終飛行になってしまった。

初飛行から1年後、ベルリンの壁が崩壊した。さらにその数年後、今度はソ連が崩壊した。同国のスペースシャトル計画は中断され、ソ連崩壊後初のロシア大統領であるボリス・エリツィンの決断によって93年に中止となった。

いまでは3タイプのブランが残っている。1機はフルスケールのテストモデルで、バイコヌール宇宙基地博物館に展示されている。残りの2機(うち1機は第2ミッションでの飛行が予定されていた)は、無秩序に広がるバイコヌール宇宙基地の別の場所にある。見捨てられた格納庫の中で朽ち果てているのだ。

「冒険家」たちのターゲットにされた“廃墟”

この格納庫には以前から、地元の泥棒たちが貴金属や電子機器を目当てに忍び込んできた。またこの場所は、ソ連の宇宙史を一目見ようとする世界中の「冒険家」たちのターゲットにもされてきた。フランス人の写真家であるジョンクも、そのなかのひとりだ。彼がこの格納庫への侵入に成功したのは、18年4月のことだった。

ジョンクはヴェテランの都市探検家(アーベクサー)で、これまでに世界各地の廃墟およそ1,500カ所の写真を撮ってきたという。彼いわく、この格納庫よりも近づくのが難しい場所はほとんどなかったそうだ。

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その理由のひとつに、バイコヌールはいまもれっきとした宇宙基地であることが挙げられる。ロシアの宇宙プログラムは、この場所をカザフスタンから年間およそ1億1,500万ドル(約126億円)で借りており、ここを使って自国および他国の宇宙船を打ち上げている(NASAが11年にスペースシャトル計画を終了したあと、米国人宇宙飛行士たちはロシアの宇宙船に同乗させてもらって宇宙に飛び立っている)。

もうひとつのハードルは、バイコヌールが広大なカザフステップの真ん中に位置しているということだった。そこにたどり着くために、ジョンクと3人の友人たちは、近くの都市クズロルダまで飛行機で行き、そこからバスに4時間揺られてチュラタムという小さな町を目指した。

彼らはその町でクルマに乗せてくれる地元民を見つけ、夜の帳が下りるころに、バイコヌールから13マイル(約20km)ほど離れた幹線道路の脇で降ろしてもらった。ブランが眠る格納庫の座標にセットしたGPS機器を使い、ヘッドランプで道を照らしながら、彼らは岩だらけの大草原地帯(ステップ)を7時間かけて横断した。

暗闇のなかで見捨てられていたブラン

ジョンクたちが格納庫にたどり着いたのは午前2時ごろだった。警備員はいなかった。鍵がかかっていない窓を見つけて中に侵入した彼らは、だだっ広くて真っ暗な建物の中でブランを探し始めた。

「ようやくブランに懐中電灯の光が当たったときには、思わず息をのみました」とジョンクは回想する。「あんなふうに暗闇のなかで見捨てられていたブランの姿は、いつまでも忘れられないでしょう」

ジョンクたちは格納庫の中で寝袋に入り、数時間ほど眠った。その後の2日間、彼らは探検を続け、2機のブランを写真に収めた。悲惨な保管環境ではあったが、ブランの状態は予想以上によかった。

「わたしがこれまでに探検してきた廃墟のなかで、ここが断トツで強く印象に残っています」と、ジョンクは語る。彼らはまた、かつてブランの打ち上げに使用されていたロケット「エネルギア M」のプロトタイプが保管されている近くの格納庫にも忍び込んだ。

警備員のパトロールを避けるため、彼らは交代で格納庫の屋根にのぼり、見張り役を務めた。警備員が格納庫のチェックに立ち寄ったことが2度あったが、見張り役がトランシーヴァーで仲間たちに対して、静かにしているように指示を出した。

しかるべき尊敬を与えられるために

2日間の滞在が終わったジョンク一行は、大草原地帯を歩いて引き返した。そして、幹線道路上の事前に決めておいた場所で運転手と落ち合った。パリを発って6日後、ジョンクは世界でも指折りの入手困難な写真を手土産にして、故郷に戻った。

長年、ソ連の遺物に魅せられてきたジョンクにとって、この旅はまさにそのキャリアのハイライトだった。彼の願いは、生き残っているこれらのブランたちが、やがてはいまの見放された状態から救い出され、しかるべき尊敬を与えられるようになることである。

「ブランが現存しているということ。そして、あまりにも無防備な状態で保管されているということ。それがわたしには信じられません。これらはソ連の宇宙プログラムの形見です。博物館できちんと保管されるべきなのです」

ブランとバイコヌール宇宙基地の写真は、撮影旅行に関するジョンクの解説とともに『Baikonur: Vestiges of the Soviet Space Program』(20年4月7日発売予定)にまとめられている。

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