★232
84人が評価しました
★ ★ ★
レビューを書く
ユーザー登録(無料)をして作者を応援しよう!
登録済の方はログインしてください。
★★★ Excellent!!!
フツウにすること、というのは、何なのか。鎖か、呪いか。
学校に通うこと。人と会話すること。何かをほしがること。
食べること。睡眠をとること。笑うこと。呼吸をすること。
フツウのことがフツウにできない苦痛は、言葉にならない。
ユキノは、不登校になってしまった自分を責め続けている。
母に対する息苦しさと後ろめたさと、自覚しづらい苛立ち。
閉じ籠もったまま、ぐるぐると、悪循環を繰り返す日々に、
突然、ちょっと変なマジョが不思議な料理とともに現れた。
英国育ちの若い男性マジョのニワトコさんは、料理上手だ。
ニワトコさんのホストマザーであるキワコさんも温かい人。
ユキノは、ニワトコさんやキワコさんと親しくなるにつれ、
少しずつ自分の心が見えてくる。心を言葉で表現し始める。
ユキノと母との葛藤は、形を変えながら続いていくだろう。
ニワトコさんにも自己解決できない苦悩があるのだろうし、
キワコさんは老いていく。タケシもつまずくかもしれない。
安っぽいハッピーエンドではないからこそ、温かく力強い。
ユキノは昔の私だ。
書きたい小説がまだある、まだまだ伸びしろがあるんだと、
それだけにすがっていた。ただただ、みじめな毎日だった。
食べることも眠ることも声を発することも下手くそだった。
「フツウじゃないから、だったら何だ」と、今なら言える。
今だから、ユキノの物語を、きちんとした距離感で読めた。
読めてよかったなあ、と思う。
魔女レシピの再現ごはん、作ってみたい。
★★★ Excellent!!!
とくに、主人公の高校生の心の動きが上手い、とても上手にすくい上げられていて自然に物語の中に入れた。作者の視点は常に16歳の主人公とともに有り、悩み、問いかけ、自分の力で立とうとする。それを支えてくれる「魔女の大人たち」が優しい。とても💛心温まる物語。また、私の身の回りにも、多国籍結婚で子どものいる親せきがある。外見は異国人、中身は日本人。これからの人生をどう過ごしてゆくのか、ヒントになった。物語の次の展開、成長して高校生活を終えて、大学生になる主人公も読んでみたい。作者に、「魔女の修行時代の物語。」も描いて欲しい、魅力的な、登城人物たちが「私も舞台に立ちたい。」と言っているようだ。
★★★ Excellent!!!
煙草屋さん、ネコばあさん。
何とも昭和チックな言葉たちですよね。
ここに赤いポスト、赤電話を想像する事が出来たあなたは……。
******
随分前に閉店し改装された元煙草屋さんの玄関先に、ある日突然「まじょ はじめました」の巨大張り紙が登場します。真っ白い模造紙に習字の先生が良く使われるオレンジっぽい墨、朱墨で書かれてありました。
不登校で悩み苦しむ女子高生が主人公。彼女はご飯すらをも食べられなくなります。でも、せっかく食事を準備してお仕事に出て行ったお母さんに心配はかけられない、とその食べられなかった食事の処理に苦悩する。
そんな自分を傷付けてまで相手を守ろうとしてしまう心優しい彼女は、ある日を境にさまざまな人と出会い、彼らに感化されていきます。
彼女の心は、そして胃は、果たして救われていくのでしょうか?
ぜひ、ご自身の目で確かめて頂きたいと思います。心震わされた至極の一作です。
★★★ Excellent!!!
不登校の少女ユキノは、ネコばあさんキワコさんのおうちで不思議な男性ニワトコさんに出会います。
どう不思議かは実際読んでみてくださいね。
でもこの不思議が彼女を救う糸口になります。
家にこもっていた彼女は家から出ることで、世界を知り、自分を知るのです。
抜け出すことは無理だと思っていた。
けれど自分もできる、一歩踏み出せば。
周りの力を借りてもいい。
そう、これこそが成長。
ニワトコさんはじめとする登場人物との会話にほっこりしながら、結構激しい飯テロに胃袋を脅かされながら、彼女が彼女となるまでを楽しめる。そんな物語です。
★★★ Excellent!!!
図書館へ行くとよく児童書フロアにも立ち寄ります。寺村輝夫、安房直子、赤木かん子のアンソロジー。懐かしい本を読みふけってしばし、中高生を対象とした今の時代にフォーカスした本も平置きにされて紹介されていることに気付かされます。他の方も仰っていたかもしれませんが、そのうちの一冊を手に取った、そんな心地です。
世界名作劇場の戦争や貧困や別離に翻弄される子がいれば、現代ならではの悩みや苦難がある。魔女との出会いと料理作り、人との縁に、少しずつ転がる主人公の心。彼女が母親との関係で抱える問題に、助けを求め、手段を考え、備え、自ら解決に向かって踏み出す様子は、こちらも息を飲みました。大人にも子どもにも薦めたくなる一冊です。
あ、本となったらば巻末にまとめてレシピの掲載をお願いします。
★★★ Excellent!!!
不登校になってしまった女子高生が、ある日現われた『魔女』によって
少しずつ心を研ぎほぐされていく物語。
どこかぎこちない家庭内の描写は淡々としつつ、少しずつ真綿で首を絞められていくような息苦しさを克明に伝えてくる。
かつて親と境界のなかった――あるいは境界を作っても、当たり前のような顔でそれを乗り越えられてきた子供たちにとっては、ユキノと母親のやりとりの一つ一つが心にちくりと刺さるかもしれない。
そうして強張ってしまっていたユキノの心を、ニワトコさんやネコばあさんを初めとした人々が優しく解きほぐしていく。そして彼らとの交流でユキノは生きる道を見出し、外の世界とも少しずつ向き合っていく。
癒やしの物語であり、確かな自立の兆しを描いた物語。
作中に登場する料理は風変わりな和食から、伝統的なメニューまで様々。個人的にはルバーブの塩煮が練り梅の味に近いというのには驚いた……。
特に心に残っているのはジンジャー・エールと、ケジャリ。
どちらも実際に作りたくなるくらいに美味しそうに描かれているだけでなく、作中での登場シーンが印象深い。
心とお腹を刺激する良作です。