僕は元気です、多分(汗)
投稿前に感想返ししようと思っていたのですが、頭痛がきつくてできませんでしたー汗
時間を見て、感想を返しますのでー…ションボリ
ナザリック地下大墳墓。
アインズは自らが愛するギルド・アインズ・ウール・ゴウンの
冒険者・漆黒のモモンとしての立場を得てからは、何かとナザリック地下大墳墓から離れる機会が増えたアインズであったが、数週間も離れ、その間一度も帰還せずとは、滅多にない事だ。だがアインズの表情は暗い。いや、髑髏だから表情などわからないが、その雰囲気は暗い。とても久しぶりの我が家を楽しんでいるようには思えなかった。
事実アインズの心中は、よくない。色々な考えが頭をぐるぐると駆け回り混沌と化してすらいた。
アインズは己と仲間達で築き上げた偉大なる
久しぶりの帰還。仲間達が残した愛しい
『どうした? 小僧! 先ほどから溜息ばかりではないか! 久しぶりの帰還だというのに、それではいかんぞ』
溜息止まらぬアインズの脳裏に一つの念話が頭に響く。
確認するまでもない。その念話は自らの股間に聳えるマーラ様からであった。
「―――俺に溜息を吐かせる原因がそれを言うか」
溜息の原因からの言葉に、アインズは益々溜息を吐きながら思わずぼやいた。
アインズの溜息の原因―――それは勿論未だに己の股間に聳え立つマーラ様であった。
アインズがこのナザリック地下大墳墓を長期間―――ましては護衛を連れずに一人で離れた理由―――それはこの股間に装着された
煩悩の化身たる『天魔・第六天』を制御するには、かつて仏陀が成し遂げたように、悟りの道を開かなければならない。その為にアインズは悟りへの道を開かんと一人修行の旅へと出たのだ。
だというのに、その修行の旅の結果は、己の股間に聳え立つご立派様を見れば一目瞭然。
アインズが身に纏う豪華なローブを突き破らんかという勢いで聳え立つ巨塔。それは王者の風格。正に真なる魔王。
アインズの悟りの道―――神への第一歩を挫いたご立派様は今日も嫌になるほどご立派だ。
「くっ…いきなり神へとなるのは、いささか無理なものがあったか…次の修行では聖者を目指すべきだな」
『性者とな? こんな真昼間から性者を目指すと宣言するとは…小僧も好き者よのうぅ。かつてワシが加護を与えたもので、有名な性者と云えば、カサノヴァという者がおってな。どれ、お主も性者を目指すというのならば、カサノヴァの詳しい話を教えてやろうではないか。ワシの話を参考にして、立派な性者への道を目指すといい』
「違う! そのカサノヴァと言う奴がどんな奴かさっぱりわからんが、お前が勘違いをしているのは十二分にわかる! 私が言っている聖者の聖は、聖なるとか神聖とかホーリーとか白魔法とか使えそうな意味の方だ!」
ふぅー。と荒い息を吐き、アインズは己の股間に視線を向ける。
その視線に対し、ご立派様はチンピクで応えていた。ご立派様は今日もご立派様である。
「よいか。『天魔・第六天』私が他の者達といる時は、決して言葉…あー、念話を発するなよ」
『なんじゃと? そんなのつまらないではないか。ワシもNPC達と仲良く話したいぞよ』
アインズの言葉にご立派様はチンピクしながら、不満を漏らす。
不満タラタラなご立派様。そんなご立派様をアインズはくわっとその赤い燈火の目に力を込めて睨みながら宣言した。
「そんなの却下に決まっているであろう! 私の目の黒いうちは決して許さんぞ…!」
『目の黒いうちって―――お主の目は赤いではないか?』
「あ、揚げ足をとるな! と、ともかく私のこの目が光る内は、決して喋るでないぞ!」
『ふーむ。まあ、ここは宿主の言葉に従っておくか』
マーラ様は自らを納得させるかのように、伸縮運動を一つ繰り返した。
『約束しよう―――ワシはお主の目が光る間は、決して他の者に語り掛けないと』
「うむ。それでいい」
マーラ様の言葉に、アインズは満足げな頷きを持って応える。
アインズは寝食不要のアンデッド。常に彼の髑髏の眼に宿る燈火は燃え続けている。
つまりは、アインズの目―――燈火が消える時は、アインズが死んだ時以外あり得ないのだ。
ゆえに、アインズは今のマーラ様との約束で、マーラ様からはアインズ宇以外の他の誰にも語り掛けないという確約を得たのだ。
安堵したアインズは、己の骨の指に嵌る指輪―――リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを発動させ、玉座の間へと転移した。
アインズは十階層の玉座の間へと転移し、
その溜息には様々な感情が含まれている。
久しぶりに我が家であるナザリック地下大墳墓に帰還できた安堵。その我が家とNPC達と数週間も離れ、修行を行ったというのに、マーラ様を制御することが出来ずに、修行は無駄に終わったという事実。
それらが入り混じった複雑な溜息であった。
「さて―――これからどうするべきか…」
アインズはこれからの事に考えを巡らせる。
股間に張り付いた『天魔・第六天』は外すことができない。厳密に云えば、外せる可能性はあるが、その実行する事は出来ないであろう。
ユグドラシルにおいてのPVPでは、敗者の装備品を一つランダムにドロップされるシステムである。つまり、アインズが誰かに殺された場合、『天魔・第六天』をドロップする可能性があるのだ。
だがそれはあまりにもリスクがありすぎた。
アインズが死ぬことによって発生するであろうレベルダウン。リザードマン達の死体からの蘇生。シャルティアの復活などを行えたので、蘇生は出来ると思うが、プレイヤーであるアインズが必ず蘇生出来るという保証ではない。
第一、PVPで敗北した場合、装備品をドロップするというのは、あくまでも
この現実となった異世界で同じ
故に、アインズが考えるのは、『天魔・第六天』を外す方法ではなく、これからどう付き合っていくか? である。
『天魔・第六天』は装備者の煩悩に反応し、その雄々し過ぎる姿を顕現する。
つまりは、アインズが煩悩を振り払い、欲情する事がなければ何も問題ないのだが…。
(それが出来たら、苦労はしないんだよなぁ…)
アインズは溜息を吐きながら心の中で愚痴る。
アインズはアンデッドである。
だが、今のアインズは装備した『天魔・第六天』の効果により、性欲が人並みに戻っている。つまりは季節を問わず、いつでも発情期と言えるのだ。年がら年中ピンク色なのだ。悶々でむらむらなのだ。だって仕方がないじゃん。
そして、股間のマーラ様はアインズがむらむらしたら直ぐにでもご立派様モードへと移行してしまう。つまりアインズが欲情したら傍から見れば、直ぐにわかるのだ。30センチが憎い。
「こうなった以上…
マーラ様はアインズが
この世界で、
これでマーラ様がご立派様モードになったとしても、
だが、アインズには一つの懸念があった。
マーラ様自身が言っていた。自分は既にアインズの体の一部であり、痛覚・触覚・性感等も繋がっていると。
つまりは――――――。
(―――ご立派様と、
アインズはその衝撃を想像し、ぶるりと身を震わす。
どんな生き物であろうと、男である限り、生殖器とは最大の急所の一つだ。間違って、ここを強打された男は泣くしかない。蹲るしかない。男として生まれ落ちた事を後悔するしかない。それだけの一大事なのだ。
ご立派様がご立派様になる時の勢いで、
かつてアインズが人間だった頃―――鈴木悟だった時の事を思い出し、アインズの内股っぷりは更に進む。
確か、あの時は母が笑いながら、俺の背中をとんとんとしてくれた。今度はナーベラルにでもとんとんしてもらうか…。
「アインズ様」
アインズが過去の記憶に思いを馳せているとき、玉座の間の大きな扉の外から声が掛かった。
「アインズ様、デミウルゴスでございます。アルベド、セバス、各階層守護者、プレアデス共々ご入室してよろしいでしょうか?」
扉の外から入室の許可を求めてきたのは、守護者の一人であるデミウルゴス。デミウルゴスが代表して入室許可を得ようと声をかけてきた。
その言葉に、アインズは咳ばらいをし、気持ちを切り替える。
「うむ。入ってくるがよい」
「失礼致します」
重々しいアインズの許可の言葉と共に、玉座の間の扉は開く。開けられた扉から、デミウルゴスを先頭に、アルベド、セバス、ガルガンチュアやヴィクティムを除いた階層守護者達、プレアデスが玉座の間へと入室してくるのであった。
玉座の間へと入室したデミウルゴスを先頭としたシモベ達は、一様に跪く。
「お帰りなさいませ、アインズ様。並びに修行の旅を終えられた事を、我らシモベ一同、真に嬉しく思います」
「うむ。ナザリックの運営権利を委ねたお前にも苦労をかけた。唯でさえ忙しいお前に更なる苦労をかけてすまなかったな、デミウルゴス」
「何をおっしゃられますか! アインズ様が命を私は嬉しく思っております! この身がアインズ様とナザリック地下大墳墓の為に役立てられる。それが私の存在価値なのですから」
言葉を発したのはデミウルゴスであった。先頭に立ち、第一に言葉を発するのは本来であれば、守護者統括であり、ナザリックにおける全NPCの頂点であるアルベドの役目である。
だが、今は至高の頂点であるアインズから直々にナザリックの運営権利を委ねられたデミウルゴスこそが、その役目であったのだ。
「アインズ様。修行を終えられたばかりであり、お疲れの身であられる御身の前に居並ぶ我らをお許しください」
「よいよい。私も久しぶりに大切なお前たちの顔を見れて嬉しいものだ」
アインズの大切な発言。ナザリック地下大墳墓の支配者であり、至高の存在の頂点であるアインズからの大切な発言に平服するNPC達の胸中は歓喜の念で満たされる。皆が皆恍惚の表情を抑えきれない。
それに―――アインズは違和感を覚えた。
自分の言葉に恍惚の表情を覚えるNPC達。決して、おかしい事ではない。NPC達の自分に対する忠誠心を考えれば、何らおかしい事ではない。むしろ当然と言える事であろう。
それでも―――アインズは違和感を覚えた。
恍惚な表情を浮かべているNPC達。それが、アルベドやシャルティアがかなりの頻度で見せる、自分に寄せる愛情が爆発した時に、見せる表情に似ているのだ。
それがアルベドやシャルティアだけならば、おかしくはない。
だが、その表情を浮かべるのは、アルベドやシャルティアは勿論の事、プレアデス達、そしてそんな表情とは縁遠いと思っていたアウラ。そして何と男であるマーレすら浮かべていたのだ。
そして何よりも―――。
(何故だ? 埴輪顔のパンドラズ・アクターすら、そんな表情を浮かべている気がしてならない…)
パンドラズ・アクターは自らが創造したNPCである。
「して、アインズ様…修行の成果はいか程になられましたか…?」
「う、ううむ。修行の成果か…」
修行は正直失敗だ。マーラ様を制御する為に煩悩を抑える修行をしたというのに、結果はご立派様の逆転満塁ホームランを放たれた様なものだ。結局修行の意味は殆どなかったとアインズは思う。
だが、デミウルゴスが求める答えは、別であろう。
デミウルゴスが求めている修行の成果とは―――子供を作れるようになったか?という一点だ。
それならば答えは、恐らくイエスだ。試した事はないが、子供は作れるはず。ご立派様を鎮める為に、自分で行ったときも、
だが、この場でそれを伝えると、必ずと言っていいほど、暴走する者がいるだろう。暴走者の最有力候補はアルベド。そして対抗馬はシャルティアだ。
自身との間に子供ができるとわかったならば、今まで以上の更なるアプローチが起こるのは間違いない。今までですら、手を焼いていたのに、更なるアプローチなど、想像するだけで、するはずがない頭痛がしてくる気がする。
アインズの勝手な想像だが、産まれてくる我が子の為、何て考えでベビー服等を作りそうだ。というか、既に作っている気すらする。
自らの貞操の事を考えるのならば、ここは修行は失敗したと宣言した方がいい。それはわかっている。わかっているのだが―――。
『そしてNPC達は心の奥底で想っている。もし、お主に置いていかれた時にも、自分達が忠誠を捧げる存在、つまりはお主の世継ぎが欲しいと』
ご立派様の言葉がアインズの脳裏を過ぎる。愛しき
無論アインズにNPC達を見捨てる積り等毛頭無い。天地がひっくり返してもあり得ない事だ。だが、一度自らの創造主に見捨てられたNPC達の心には確かなトラウマが残っている。そのトラウマを払拭する為には何が必要なのか―――アインズはその答えを知っていた。
「うむ―――。修行は成功した。私は子供を作れるようになった」
故にアインズはその答えを言う。アインズが愛する
そしてその瞬間―――玉座の間は歓喜の渦へと包まれた。
「おめでとうございます! アインズ様!! 嗚呼…アインズ様と私の子供…くふぅー!! アイベド…アルンズ…アモンガ…モルベド…モモベド…アルンガ…etr…もうすぐ母は貴方達を産みますよ…くふぅー! くふぅー!!」
「お、おめでとうございます! アインズ様! ああ妾もついに母となる時がきたでありんす…ペロロンチーノ様! 妾は今宵母になるでおくんなし!!」
アインズの予想通りの喜びを爆発させるアルベドとシャルティアの二人。
「お、お姉ちゃん。やったよ。やったよ!!」
「そうだね! マーレ! あたし達も恥をかかない様に、しっかりとお相手つかまるようにしなくちゃ…!」
「あ、慌てるな。姉として…姉としてぼぼぼぼぼ、僕がしっかりしなくちゃ…!!」
「我が創造主たるアインズ様…私は自らの創造理由を全うしてみせます…」
(あれ?)
だが、それ以外のNPC達の喜びはアインズの想像外であった。
アウラやマーレ、プレアデス達、そして何故かパンドラズ・アクターまで…そう、まるで、アルベドやシャルティアと同じ様な表情と発言をしていた。
「真に! 真におめでとうございます! アインズ様!」
歓喜に満ち溢れたデミウルゴスの声にアインズは己の疑念から帰還する。
「うむ。お前たちの喜びの言葉を聞くと、私も嬉しく思うぞ」
「この度の件、私達の歓喜は尽きることはありません。真におめでとうございます! アインズ様!」
「「「「「おめでとうございます! アインズ様!!!!」」」」」
デミウルゴスの言葉に玉座の間にいた全てのNPC達が追随して喜びの言葉を発する。
それにアインズは満足そうに何度も頷いた。
「うむ。うむ。お前たちの気持ちはよくわかった」
「ありがとうございます。そして流石はアインズ様。私達の考えや気持ちを把握するなど、アインズ様にとっては容易いことなのですね」
「お前やアルベドやパンドラズ・アクターには負けるがな」
そして何故かまた始まるいつもの、さすアイ様。それに対してアインズは笑いながら答える。
「ご謙遜を。ではこれからですが―――」
「うむ。デミウルゴス。我が考えを話すことを許す。皆に聞こえる様に大きな声で喋るのだ」
そして何時もの流れ―――教えて!デミウルゴス先生!の流れだ。
デミウルゴスは優雅に頭を垂れながら、了承の言葉を発する。
「かしこまりました。皆―――よく聞いておくように。これから、アインズ様はご世継ぎを作られます。故に、アインズ様のご寵愛を承る事となります。栄誉あるご寵愛を承るのはアルベド、シャルティア―――」
その言葉に眼を輝かせるアルベドとシャルティアの二人。
デミウルゴスの言葉にやはりそうなるよな――。と、アインズも納得していた。日頃からアインズにあんなにアピールしていた二人だ。アインズの子供を産むのにこれ以上適した存在はいないであろう。だが、いきなり子作りとは敷居が高い。何とかもっとゆっくりとステップを踏みたいものだ。出来たら交換日記から始めたい。
「プレイアデス達―――」
「え?」
もじもじとそんな事を考えていたアインズであったが、続くデミウルゴスの言葉に思わず声を上げてしまった。
「どうかなされましたか? アインズ様」
「い、いや。プ、プレイアデスも―――その、何ていうか、う、うむ。私とするのか?」
「はい。勿論でございます。失礼ながら、
「そ、そうか。し、しかし、こ、こういう事は、プ、プレイアデス本人たちの意思を尊重しなくては…」
「アインズ様。我ら姉妹を思うそのお言葉。真にありがとうございます。しかし、我ら姉妹の想いはただ一つ―――御身のご寵愛をいただき、この偉大なるナザリック地下大墳墓の御世継ぎを宿せたならば―――これ以上の至福はございません」
長姉たるユリ・アルファはその知的な美貌を、恋する少女のように頬を染めながら宣言した。後ろに控える妹達もその言葉に力強く頷いている。
何故だろうか? 種族すら違うというのに、その姿はまるで彼女の創造者たるやまいこの姿を連想させる堂々たる宣言だった。
「そ、そうか…お、お前たちがいいのならば、よしとしよう…」
今は居ない友人の姿を見出したアインズはそれ以上何も言えなかった。
しかも、
アルベドとシャルティアと合わせれば、その数九人。自分は恋愛経験皆無な童貞なのに、いきなり九人もの寵姫を持つなど、できるのだろうか。
無理だ。アインズは即思った。一人ですら、どうすればいいのか、わからないというのに、いきなり九人。童貞にはハードルが高すぎる―――というか、無理ゲーだ。
今度…ジルクニフに寵姫を持つ者の心得たる者を教わらなければならないな。
ジルクニフ本人が聞いたら、今度は何の裏があるのだ!? と、彼の胃と頭皮への深刻なダメージが加わる事間違い無しな考えをアインズは抱く。
「そして一般メイド達四十一人」
「ふぁー!?」
続くデミウルゴスの言葉に、アインズは思わず素っ頓狂な声を上げた。
一般メイド―――四十一人!? 先に挙げた寵姫候補の九人と合わせると、その数五十人!!
百年以上前に一大ブームを巻き起こした某人気アイドルグループのメンバー数よりも多いではないか…!?
あまりの事態に混乱するアインズ。こんな時に限って精神安定は始まらない。なんたるご都合主義。
一人混乱するアインズにデミウルゴスが不思議そうに声をかける。
「どうかなさいましたか? アインズ様」
どうかしたかに決まっているだろ!? ていうかお前の頭が大丈夫か!?
アインズは愛する子供達に、思わずそんな叫びを発しようとした自分を抑える。
「い、いや。うん。その、何だ? い、一般メイド達も―――その、何ていうか、う、うむ。えっと、その。私とするのか?」
「勿論でございます。そもそも、アインズ様が一般メイド達に毎日順番に自分の傍付きをさせる行い―――アインズ様当番を発案されたのは、アインズ様がご世継ぎを作れる事を見通しての事だったのですね。寵愛を賜る前日に、休息を与え、翌日の寵愛の日に全てを集中させる…。
このデミウルゴス。アインズ様の深い智謀には感服でございます」
んな訳があるか。あれはただ、一般メイド達のワーカホリック状態を解消しようと、発案した苦肉の策に過ぎない。
「ふ…ふっふ…ふ。み、見抜かれてしまったようだな。うむ。まあ、もう、それでいいや…」
デミウルゴスの言葉を否定したい。否定したいが…あのデミウルゴス達の流石はアインズ様!! な純粋な視線を向けられると、何も言えなくなる何時ものアインズ様であった。
しかし、寵姫が五十人だと…!?童貞に愛人五十人って、どんだけ無理ゲーなんだよ。
ま、まあ有力の権力者であるならば、数多くの寵姫を持つ者はいるであろう。その有力者に、相談に持ってもらうしか道はない! 例えば、ジルクニフとかジルクニフとか…!
「ちょっと、デミウルゴス! 大切な事、言い忘れてるんじゃない!?」
「お、お姉ちゃんの言う通りだと、思います…」
「すまないね。二人とも、忘れた訳ではないさ」
何故か怒ったような口調で、デミウルゴスを問いただすアウラとマーレの双子達。
アインズには何故、幼い双子達が怒っているのか理由がわかない。
「アインズ様。寵愛にはこの第六層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ―――」
「児童ぽるの!?」
しかし、続くデミウルゴスの言葉に、アインズはアウラが怒っている理由を理解した。そして理解したアインズは変な叫びを発してしまった。だって、仕方がないだろう? アウラが寵姫に加わるというのだから…!?
アウラ・ベラ・フィオーラ。
ナザリック地下大墳墓における最高幹部たる守護者の一人であり、第六階層『ジャングル』を守護する双子の守護者。個としての力より、群としての力を与えらえたビーストテイマー。
その容姿は活発であり、普段は男装をしている為、傍から見れば男の子である。七十六歳という人間ならば最早老人といえる年齢だが、長命なダークエルフ。見た目は十歳程度である。見た目は十歳程度である。
大事な事なので二度言った。そして大事な事なのでもう一度言おう。見た目は十歳程度である。
アウラは見た目十歳程度なのだ…!そんなアウラに手を出したとなれば、傍から見れば犯罪者である。
自分はロリコンという原初の罪を背負ったペロロンチーノではないのだ。あんな幼女なアウラに手を出すなど、とてもではないが、出来るはずがない。児童ポルノ法が黙っているはずがない。あ、いや。アウラは実年齢は七十六歳。所謂合法ロリという奴なのか…!?つまりは児童ポルノは大丈夫なのか…!?
「そして同じく、第六階層守護者マーレ・ベロ・フィオーレが加わります」
「ろりしょたさんど!!??」
リアルの世界で存在していた、かつての法令に怯えるアインズに、デミウルゴスは更に叩き込んでくる。
ていうか、何故に此処でマーレが?? これは自分が子供を残す為に、女性NPC達とねんごろになれという話のはずだ。それなのに何故にマーレ?
「な、何を言っている…? マ、マ、マーレは男であろう…?」
震える声で確認するアインズ。思わず語尾が疑問形になっていた。だが、確かにマーレは男だ。それは男性守護者達と一緒に風呂に入浴した時に確認済みである。間違いないはずだ。
「はい。確かにマーレは男でございます」
アインズの疑問にデミウルゴスは肯定の言葉を上げる。その返答に安堵するアインズ。つまりはマーレの件は冗談ということだろう。
安堵するアインズ。しかし、デミウルゴスの言葉はまだ途中だったのだ。
「しかし、マーレは男の娘でございます」
「ど、どういう意味だ…?」
「今の状態のマーレでは、アインズ様の御子を授かる事はできません。しかし、このペロロンチーノ様が残されたアイテムがあれば、マーレは完全なる男の娘となれるのです!」
「ここ、これです! アインズ様!」
デミウルゴスの言葉に、マーレは自らの懐から、ある一つのアイテムを大事そうに取り出した。
取り出したのは、一つの果物。カラフルな見た目と、中央にHという大きな文字が目立つ果物。廃人プレイヤーであるアインズは即座にその果物の正体を看破した。
「変化の実…よな?」
「は、はい! そしてこの変化の実を使い、ぼぼぼ、僕にや○い穴を創造します! こ、これで僕はアインズ様の御子を宿す事ができます!!」
「―――――――!?!?!?」
その瞬間、アインズの体を衝撃が突き抜ける!!
マーレが、自らとの子供を残せるという事実。その為にはマーレと○○○な事をしなければいけないという事実。そして完全な女ではなく、男の娘なマーレと×××をするという事実。ペロロンチーノは何ちゅう物を残していったんだという事実。純粋無垢な男の娘たるマーレがや○い穴を知っていた事実。
と、様々な衝撃がアインズを貫く!!
え? 何でアインズがや○い穴を知っていたかって? 言わせんな恥ずかしい。
アインズは気が遠くなりそうな自分に喝を入れる。そして自らの前に跪くマーレの姿を見つめた。
マーレ・ベロ・フィオーレ、声も仕草も女にしか見えない。いや、女より女らしい美少女。
だが男だ。
同年代の子供と比べ身体付きはとても細い。抱きしめたら折れてしまいそうだ。
だが男だ。
ミニスカートがよく似合っている。
だが男だ。
手に持つ杖―――シャドウ・オブ・ユグドラシルが相まってまるで魔法少女の様だ。
だが男だ。
マジカル・ユグドラ・ドラドラシルー!何て呪文が実に似合うと思うのは気のせいだろうか。
だが…男だ。
もう夕暮れだというのに暑いな。マーラ様が鳴いている……。
だが……男『の娘だ!!!!』
「――――!?!?」
現実逃避するアインズの心に熱い台詞が到来する。
今の声は、まさか!?
ペロロンチーノさん!?
アインズの心の叫びに、ペロロンチーノさんは降臨する。勿論、アインズの心の中の話で、実際には存在しないが。
太陽を射殺した英雄の名前を冠された弓、ゲイ・ボウを携えたその姿は正しく爆撃の翼王。
そして爆撃の翼王はアインズに語りかける。
『50Pやロリなシャルティアやアウラだけでも羨まし過ぎるというのに、その上、男の娘なマーレもだと…!? それ、羨まし過ぎるを超えて、嫉妬で殺意すら沸いてきますよ!! それ、何てエロゲー? っていうか、エロゲーを超えて、最早神話と化してるじゃないですか!! モモンガさんは神だったって事ですか!? ゼウスってたんですか!? 俺と同じ童貞なのに!? ちくしょーーー!! とってもちくしょうーーー!!!』
荒ぶる鷹のポーズ―――否、四枚の翼を雄々しく広げた荒ぶるバードマンのポーズを展開したペロロンチーノは、『クケッーーー!!』と怪鳥の如く威嚇声をあげた。
だが、アインズにはペロロンチーノの気持ちが痛いほどわかる。自らが創造した子供と言えるべきNPC達が、手籠めにされようとしているのだ。しかも、恋人や嫁等ではなく、寵姫と聞こえはいいが、つまりは愛人としてである。
自分が間違ってました…ペロロンチーノさん…。
『でも…ここまで据え膳されて、手を出さないのは…漢じゃないよな』
……あれ? ペロロンチーノさん?
自らの行いを恥いるアインズに対し、ペロロンチーノは雄々しく繰り広げていた、荒ぶるバードマンのポーズを崩す事なく、自らの思いを告げる。
『正直―――羨ましいと思う。妬ましいと思う。爆発すればいいと思う。氏ねばいいと思う。―――でも、同時に安心したんだ―――俺たちのギルド―――アインズ・ウール・ゴウンが永遠に続くという事実が』
―――ペロロンチーノさん…。
『俺たちは結局、最後までモモンガさんの傍にいることは出来なかった―――いや、しようとしなかった。そんな俺たちが、モモンガさんが最後まで守り抜いた、このアインズ・ウール・ゴウンを―――悪の華を永遠に咲き続けようと言うのならば、俺は、それを―――認めるだけです』
ペロロンチーノさんは、自らの想いを、アインズに告げる。自らの意思で置いて行ってしまった、親友に対しての嘘偽りない想いを―――荒ぶるバードマンのポーズを維持したままで。
『モモンガさん…俺から言える事はただ一つだけです―――NPC達を…アインズ・ウール・ゴウンを―――頼みます』
そしてアインズの心の中のペロロンチーノさんは、光を纏いながら、消えていった。親友に対する想いを最後に告げ、彼はリアルの世界へと旅立って行ったのだ―――最後まで荒ぶるバードマンのポーズを維持したままで。
――――――ペロロンチーノさん…。
アインズは自らの心から旅立ってしまった、親友の名前を心の中で強く想う。
「そうか―――アウラやマーレも我が寵愛を受けたいとと云うのならば―――それに応えようぞ。我が血を受け継ぐ為に―――アインズ・ウール・ゴウンの名を永遠と受け継がせる為にな」
親友の想いがアインズの心に浸透する。アインズの心は不思議と穏やかだ。今ならば何でも受け入れれる気がする。そうだ―――自分が何よりも優先すべきことは、このナザリック地下大墳墓を―――愛すべきNPC達を―――アインズ・ウール・ゴウンを永遠と輝かる事だ。その為ならば、自分はどんな事でも受けいれなければならない。
そうですよね―――ペロロンチーノさん…。
「「ありがとうございます! アインズ様!」」
アインズの言葉に、アウラとマーレの二人は、その愛らしい頬を林檎のように真っ赤にし、恋する乙女の表情を浮かべたのだった。
「よい。よいのだ。私は愛するお前達の為ならば、どの様な事でも受け入れよう…」
アインズは菩薩の様な表情を浮かべながら、微笑む。え?髑髏なアインズがどうやって、菩薩の様な表情をするのかだって? そんなの知らん。
NPC達が感激の表情を浮かべる中、デミウルゴスが代表して言葉を発した。
「ありがとうございます。アインズ様」
「よいよい。では我が寵愛を授かるのは、これで以上でよいのか?」
「―――いえ、アインズ様。大事な人物を忘れておいでではないでしょうか?」
忘れていません。というか、わかりません。だけど、それは言えないアインズは何時もの行動に移った。
「…………ふ。流石はデミウルゴス。私の考えを全て見抜くとは。流石はナザリック随一の英知を誇る男だ」
「ありがとうございます。アインズ様の智謀の深さには足元にも及びませんが…」
「謙遜することはない。さあ、デミウルゴス。我が考えを皆に大きな声で話すのだ。この大広間にいる全ての者に聞こえる様にな。さあ、ずずいっと教えてあげなさい。ずずいっとな」
「かしこまりました」
何時ものアインズの必殺技。教えてデミウルゴス。
アインズに促されたデミウルゴスは、跪くNPC達に向かって話しかける。アインズはデミウルゴスの言葉を聞き逃さぬ様に、存在しない己の脳みそに喝を入れる。
―――デミウルゴスの言葉が、アインズを絶望の奥底に叩き込むとも知らずに。
「アインズ様はアンデッド。本来アンデッドは子供を作ることはできません。しかし、アインズ様は如何なる秘蹟か。我等には理解できないであろう、奇跡を成し遂げ、お自らの世継ぎを作れるようになられました」
いや、ただチ○コ型の
「皆―――今回のアインズ様のご世継ぎを作られるという状況を、アインズ様は最初から理解しておりました―――その事を証明する人物が我々の中にいるのですよ―――」
え?何それ??
アインズはデミウルゴスの言葉の意味が分からず、困惑するが、髑髏は困惑の表情を出すことなく、支配者に相応しい不動の構えを見せる。見た目だけだが。
「――――――」
「アインズ様の考えを証明する人物―――?」
「だ、誰でありんすか!?」
「わ、わからないよ!」
「デ、デミウルゴスさん! そ、その人は、だ、誰なんですか!?」
(そうだ! いったい誰の事なのだ!? デミウルゴスよ!!??)
謁見の間に集ったシモベ達は一斉にデミウルゴスに問いかける。実はアインズも心の中でデミウルゴスに問いかけまくっていたが。それに対し、デミウルゴスは答えようとする。
「それは―――」
「私の事です」
皆の問いかけに答えようとした、デミウルゴスの言葉を遮るように、一人のシモベがアインズの前へと進む。
身にまとう軍服。その軍服を彩る煌びやかな勲章。羽織るコートを翻しながらシモベは進む。
威風堂々たるその態度、まるで自らの存在を世界に知らしめる―――否、魅せ付けるかのように。
アインズの前に辿り着いたシモベは、被る軍帽を被り直し、軍靴の踵を合わせる。そして息を吸い込み、高らかに至高の主から賜った自らの名前を世界へ響けとばかりに唄うのだ。
「この私―――パンドラズ・アクターの事ですよぉぉぉぉ!!」
物語は佳境へと至る――――そして君は……刻の涙を見る。
ぶっちゃけ、アインズ様の涙だけどね!!
ごりっぱさま『―――しなびれておる。充電中なのじゃ』