ご立派なアインズ様   作:みなみZ

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模造設定ありまくりな回…!!


でも仕方が無いよね。だって皆大好きなあの子を活躍させるためだもの。
だから仕方が無いよね(震え声)


(ぱ)後編(中)

円形劇場(アンフィテアトルム)は混沌の中にあった。

デミウルゴスの女性NPC達にアインズの子供産んでもらう発言から始まり、戦闘メイド(プレアデス)達のまさかの8P宣言。

それに対抗するために愛ゆえに暴走するアルベドはまさかの自分の姉妹を用いた4P宣言。

正に円形劇場(アンフィテアトルム)は混沌の中にあったのだ。

 

そして此処にもう一人、愛に暴走する少女がいた。

少女の名前はシャルティア・ブラッドフォールン。今現在最大限の壁にぶつかっている少女である。

チーム・プレイアデス(七姉妹)とアルベド三姉妹。大きな、巨大すぎる相手だ。

シャルティア・ブラッドフォールンはその実力も容姿も際立った存在だ。創造者ペロロンチーノが望んだ姿である。

だが、それでもこの二組に、たった一人で挑むのは無謀の一言に尽きた。

どうすればいい?このままでは、アインズ様の第一妃の座が遠のいてしまう…!!

 

シャルティア・ブラッドフォールンは考える。

この世界にきてから、最も思考をめぐらせたと言っても過言ではないかもしれない。

そしてシャルティアはある答えに辿り着いたのだ。

 

そうだ。確かに自分には姉妹なる者は存在はしない。

しかし、妹のようなものは存在するではないか…!!

 

シャルティアは視線をある人物に向ける。

視線の先には、顔を赤くし惚けたような表情を浮かべているアウラの姿があった。

 

「チビスケ!!」

 

「ほえ!?な、何よ?偽乳」

 

売り言葉に買い言葉。

いつもなら此処からキャットファイトが展開するのだが、今回は違かった。

シャルティアはアウラの肩を両手でがしっと掴むと、アウラの目をまっすぐ見つめた。

 

「アウラ。わらわとおんしの関係とはなんだと思うでありんす?」

 

予想外な問いかけにアウラは意表を突かれた。

自分とシャルティアの関係って…。

 

「関係って…守護者同士でしょ?」

 

「いーや、違いんす」

 

ナザリックの者達であれば、全員が全員とも肯定するであろう、アウラの答えに、シャルティアは大きく首を横に振った。

 

「違うって…んじゃあんたは、あたし達の関係を何だっていうのよ?」

 

「アウラ…わたし達の創造者たる、ペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様は、至高の四十一人の御方々の中で唯一のご姉弟だったのは知っているでありんすよね?」

 

「そりゃ、当然知ってるよ」

 

アウラの質問に応える事無く、シャルティアは自分達の創造者達の話をする。

そう――アウラとマーレの創造者たる、ぶくぶく茶釜とシャルティアの創造者たるペロロンチーノは姉と弟の関係であった。

そしてそれは、二人の創造者から作られた、アウラ・マーレ・シャルティアも当然知っていた事である。

 

「姉弟なお二方に創造されたわたし達はある意味、姉妹でありんすぇ」

 

「うっ。ま、まあ…そうかもしれないね」

 

正面から真っ直ぐとアウラを見つめるシャルティアの視線から逃れるように、アウラは赤らめた顔を背けた。

普段、喧嘩ばかりして、いがみ合っている二人だが、実は本心では『一番の友人』だと思っているシャルティアからの真っ直ぐな言葉に、恥ずかしくなったのだ。純粋な心を持つ、アウラは赤らめた顔を抑える事が出来なかった。

もしこの場にシャルティアの創造者たるペロロンチーノが居たならば、きっとこう叫んでくれただろう。

 

キマシタワーktkr…っと。

 

何だか百合百合な感じがする空間。

シャルティアはまるで、下級生のタイを直してあげるかのような笑顔を浮かべながら、言葉を発した。

 

「姉妹であるわたし達…。これはもう、チーム・ペロロン茶釜を作るしかないでありんすぇ…!!」

 

「はヴぁ!?」

 

「アウラ!相手はプレイアデス《七姉妹》に、アルベド三姉妹達…強敵でありんすが、わたし達で打ち勝つわよ…!!」

 

アウラの困惑も関係と言わんばかりにシャルティアは怒涛のように攻める。

 

「いや、ちょっと待ってよ!?つまりそれって…も、もしかして、あたしと一緒にアインズ様のご寵愛を受けようって事!?」

 

「その通りですぇ!今こそ、チーム・ペロロン茶釜のチームワークを他の奴等に見せ付けてやる時でありんすぇ!!」

 

アウラの言葉に、シャルティアはその通りだと、力強く頷きながら肯定する。

シャルティアと一緒にアインズ様からご寵愛を享け賜る。アウラがその姿を想像しただけで、顔が今まで以上に真っ赤になった。もはや、湯気が出そうな勢いすら感じる。

 

「む、無理無理無理無理!!だって、あたしまだ七十六歳だし!?体だって小さいし!?あ、アインズ様の、ごごご、ご立派様を受け入れるのは無理だってば!?」

 

「そんな事はないですぇ!七十六歳は十分に立派ですぇ!それに女は大抵のモノは入るようにできているでありんす!吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)で確認済みでありんすぇ!そりゃあもう、何度もたっぷりじっくりねっとり確認したでありんすよ!!」

 

うわぁ…。と、シャルティアの発言にドン引きする周囲のNPC達。

しかし周囲の様子を全く気にしない――気にする余裕が無いシャルティアは更なる攻勢に出た。

 

「それに…ナザリック地下大墳墓のNPCで闇妖精(ダークエルフ)なのは、おんしとマーレのみでありんす。そしてマーレは男。闇妖精(ダークエルフ)の女はおんししか居ないでありんす。アインズ様の御子を産む可能性を少しでも広げる必要がある中、唯一の闇妖精(ダークエルフ)の女子であるおんしが何もしなくていいのかえ…?」

 

うぐっ。っと痛い所を突かれたアウラだった。

そう、ナザリック地下大墳墓のNPC達で闇妖精(ダークエルフ)なのはアウラとマーレしか居ないのだ。

ギルド・アインズ・ウール・ゴウンは異業種のギルドである。その威光を受けてか、創造されたNPC達は異形種が殆どをしめていた。

そんな中、アウラやマーレ。プレイアデス《七姉妹》の末の妹は、ナザリックの貴重な人間種なのである。

 

いや、アウラも勿論、至高の存在であるアインズから寵愛を受け賜われるのは、守護者としても女としても最大の栄誉である。あの白磁の麗しい美貌で、『アウラ…愛しているぞ』なんて、言われたら嬉しさのあまりに気絶してしまうかもしれない。

だが、自分はまだ、たった七十六歳という少女なのである。正直嬉しいが、恥ずかしいものがある。乙女心とは複雑なものなのである。

 

シャルティアは思った。アウラはただ恥ずかしがっているだけだ。性教育を少しずつ受け、性的な事に興味を持ってきた。だが、実演はまだまだ先だと思っていたのに、いきなりこんな機会が来てしまった。

興味と好奇心。そして不安と葛藤。色々な感情が入り混じっているのだと。

ゆえに、此処で必要なのは背中を押してもらう存在だ。それでアウラは一歩進めるはずなのだ。

 

此処は押して押して押し捲るでありんす!

 

「お、お、お姉ちゃん!」

 

押し捲る決意をしたシャルティアが口を開く前に、アウラに呼びかけたのは、アウラの弟のマーレであった。

気弱な彼らしくない、大声を姉に発する。

 

「な、何さ?マーレ」

 

「お、お姉ちゃん…。ア、アインズ様の御世継ぎを産む為に、み、皆一生懸命なんだよ…?ナザリックに闇妖精(ダークエルフ)は僕達しかいないんだから…」

 

「マーレ…」

 

思わぬ所からの援護射撃に良い流れでありんすと、シャルティアは思う。このまま、マーレと共にアウラを攻め続ければ、勝利は目前だろう。

だが、勝利を確信していたシャルティアは、顔を乙女のように真っ赤に染めながら、続いて出たマーレのとんでも発言に目をひん剥く事になる。

 

 

「だから…だから……だ、だから!お、お姉ちゃんが嫌がるなら、ぼ、僕が…僕がアインズ様のご寵愛を受ける!!」

 

 

僕がアインズ様のご寵愛を受ける!!―――僕がアインズ様のご寵愛を受ける!!―僕がアインズ様のご寵愛を受ける!!

 

何故か、山彦のように木霊するマーレのご寵愛受けます発言。

それは円形劇場(アンフィテアトルム)中に鳴り響き、あれ程騒いでいた、全NPCが動きを止めた。

 

「マ…マーレ。オ前ハ、何ヲ言ッテイルカワカッテイルノカ?」

 

「も、勿論です!!」

 

蟲である為に、見た目には判断付かないが、困惑した様子が伝わるコキュートスの問いに、マーレははっきりと肯定の意を返す。

 

 

皆が信じられない思いで、マーレを見つめる。

全NPC達の視線が自分に集まっているのを感じながらも、マーレは決して先ほどの自分の発言を撤回しようとは思わなかった。

 

「マ…マーレ様。し、失礼ながら今回の話は、アインズ様の御世継ぎを産む為にご寵愛を享け賜るのです。…し、失礼ながら貴方は、男…でございますよね?」

 

セバスの言葉の最後は疑問になっていた。マーレは短いスカートを穿いているので一見女の子であるが、その実は男の娘である。しかし、もしかして、それは間違いで実は女だったということなのか…?

これは以前、一緒に風呂に入った、デミウルゴスとコキュートス以外が思ってしまった疑問であった。

 

「い、いえ。ぼ、僕は確かに男の娘です」

 

ですよねー。

皆が、ほっとしたような雰囲気を漂わせる。マーレはまだ76歳の子供である。男と男でも愛し合えば、子供ができると思ってしまったのだ。男女の仕組みを知らない子供ゆえに言ってしまった発言なのだと、皆は思ったのだ。

 

ほのぼのとしたどこか温かい視線をマーレにおくるNPC達。

 

「んんっ!マーレ様。子供とは、男と女で作れるものなのです。失礼ながら、マーレ様は男の娘。男性であるアインズ様との間に御子を作る事は――」

 

「し、知っています」

 

咳払いをしながら、マーレに男女の常識を教えようとしていたセバスの言葉をマーレは遮った。

 

「は――?」

 

「し、知っています。お、男と男では子供を作れないのは」

 

「で、では、何故先ほどの発言を―?も、もしや…」

 

単純にアインズ様にご寵愛を受けたいということなのか?

 

竜人として真っ当な性癖を持つ、セバスは己の考えに戦慄する。

この、目の前の少年は己の意志で、ただ主人に抱かれたいと思ってしまったのだろうか?

アインズ様は何と…罪深い存在なのだ。男の娘にすら抱かれたいと思わせてしまったというのだから。

苦悩する執事。そして他のNPC達もその事に気付いたのだ。マーレが己の意志で主人の寵愛を受けたいと。

一部の女性NPC達が歓喜の悲鳴を上げる。歓喜の声を上げた者は皆、顔を真っ赤にしながら、一様に尊い、まるで、この世の中で最も尊い存在を見つけたかのように、マーレを見つめていた。

実に腐女子である。

 

もしこの場にシャルティアの創造者たるペロロンチーノが居たならば、きっとこう叫んでくれただろう。

 

 

┌(┌^o^)┐ホモォ...っと。

 

 

「で、でも僕は…アインズ様と子供を作れます!!」

 

 

┌(┌^o^)┐!?!?

 

 

ホモォ...状態であった、一部の者達の意識をぶっとばすような発言が、マーレから出てくる。

アインズと子供を作れる…?男の娘であるマーレが…?

 

「ど、どういうことでありんすか!?」

 

「ぼ、僕にはこれがあるんです…」

 

シャルティアの問いかけに、ごそごそとマーレは懐を探る。そして目当ての物を見つけたマーレはそれを一気に取り出した。

 

「こ、これです!!」

 

マーレが取り出したのは果物であった。見た目は林檎である。しかしその果物は真ん中を境目に色が違ったのだ。半分は青色で、もう半分は赤色をしている。そして最大の特徴として青色の方には♂マークが。赤色の方には♀マークが付いた奇怪な果物であった。

誰もマーレが出した果物が何なのかが解らなかった。―――所有者のマーレととある領域守護者を除いて。

 

「ぼ、僕がぶくぶく茶釜様から頂いたアイテムです。こ、これは―――」

 

「転性の実。私達NPCの設定された性別を変える事ができる希少アイテム。通称―――TSの実ですな」

 

マーレが行おうとしていた説明を引き継ぐ形で言葉を発したのは、パンドラズ・アクターであった。

宝物殿領域守護者であり、ナザリックの保管する秘宝を管理していたパンドラズ・アクターはそのアイテムを知っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

アウラとマーレの創造者たるぶくぶく茶釜は、アウラを作る時、こんな設定コンセプトを持っていた。

 

『可愛い子、こんな妹が欲しかった。弟いらね(ペッ』

 

そしてマーレには、その可愛い姉に従う従順な男の娘という設定コンセプトで作られたのだ。

 

これにはぶくぶく茶釜の、ペロロンチーノに対する思い―――弟は姉に従うべしという信念を持っていた為だ。

アウラとマーレは、そんなぶくぶく茶釜の思いを体現したNPCなのである。

 

しかしながら、自ら作ったアウラとマーレと接している内に、ちょっとマーレが可哀相かな…?と思い始めたぶくぶく茶釜は、アインズ・ウール・ゴウンでも貴重とされていたあるアイテム―――転性の実をマーレに持たせたのである。

自分の気が変わったら、マーレを女の子にしよう。そして仲良し姉妹にしよう。そのときの為に、TSの実をマーレに持たせておこう。

ぶくぶく茶釜はこう思ったのである。

しかし、実際に転性の実は使うことなく、ぶくぶく茶釜はYGGDRASIL(ユグドラシル)を引退してしまった。

そして残された転性の実は、今もなおマーレが持ち続けていたのである。

その転性の実がついにその力を振るう時が来たのか―――!?

 

 

 

 

 

 

パンドラズ・アクターの説明に驚愕するNPC達。

まさか、自分達の性別を変えるアイテムが存在するとは…。

確かに転性の実を使い、マーレが女になれば、アインズの御子を宿せる可能性はあるだろう。

だが、NPC達はある共通した思いを抱いた。

 

「マーレ!!!!」

 

びくりとその声に反応して、マーレは体を震わせた。

叱責するように激しくマーレの名前を叫んだのは姉であるアウラであった。

アウラは誰が見ても一目瞭然であるかのように、激しい怒気を露にしていた。

その手には、思わず手にしてしまったのであろう。彼女の武器である鞭が握られていた。

 

アウラは一度深く深呼吸をして、自分を必死に落ち着かせる。

そして低い声で弟に対して言葉を発した。

 

「…マーレ。あんた何をしようとしているかわかっているの?あんたは、ぶくぶく茶釜様が、こうであれ。と作られた自分を変えようっていうの?それが、どれだけ不敬に当たるか分かって言っているの?」

 

その通りだ。

それがパンドラズ・アクターの説明を聞いたNPC達が共通して抱いた思いであった。

自分達は、至高なる四十一人の方々が自らの手で創造された存在である。

創造者からのこうであれ。

自分達はそうして誕生し、そして今も、こうであれ。と言われた様に生きているのだ。

 

それをマーレはこうであれ。と創造された自分を変えようというのだ。

しかも性別というダイナミックな改変を。

 

これが、創造者たるぶくぶく茶釜や、至高の存在たるアインズが変えるというならば、何ら問題は無い。むしろ喜んで受け入れるべきである。

しかし、マーレは自らの意志で自らを改変しようとしている。

それは、ナザリックのNPCの一員として。そして何より、ぶくぶく茶釜から創造された者として到底見過ごす事では、なかった。

 

「で、でも…」

 

「でもじゃない!あんたの考えはナザリックのNPCの禁忌にあたる行為だよ。

あたしは、それを許せないわ」

 

手に持つ鞭を地面へと叩き付ける。

甲高い音を響かせた鞭の音に、怯えながらもマーレは決して姉の憤怒の視線から目を背けなかった。

 

「そ…それでも…ナザリックの未来の為に…僕は…僕は…アインズ様の御子を残したい」

 

今にも泣き出しそうな顔。しかし決して涙は見せはしないとマーレは心に誓った。

ぶくぶく茶釜は、マーレを創造した際、弟は姉に従うべしという思いを持って創造した。

しかし、今マーレは創造者たる、ぶくぶく茶釜の思いから抜け出し、マーレのある意味絶対者の一人であるアウラと向き合っていたのだ。もし、この場にぶくぶく茶釜が居ればどう思うだろうか。我が子同然のアウラとマーレを見てどう思うだろうか。

 

 

「マーレ…」

 

弟の頑固たる思いを知り、アウラは鞭を握る手の力を緩めた。

NPC達がだれよりも望む存在。アインズの御子。それを成す為に、NPC達は総勢で今一つの事を成し遂げようとしている。弟もそれに向けて必死なのだ。その為であれば、創造者から定められた設定すらも、変えて見せようとすら思っている。ならば、自分も覚悟を決めよう。

そうだ。アインズ様にご寵愛を受け賜わるのは大変名誉な事である。そして何よりの喜びでもあるのだ。

は…恥ずかしいし、恐怖もあるが…それでもあの慈悲深いアインズ様ならば優しくしてくれるはずだ。

あたし―――アインズ様のご夜伽をするわ。

 

「マーレ。あたし―――」

 

「待つでありんす」

 

覚悟を決めたアウラの宣言はシャルティアに遮られた。

ああ、此処で割ってはいるのかよ!と、怒りを込めた視線をシャルティアに向ける。

 

「ぐ…ぐぬぬぬぬ」

 

すると、何故かシャルティアが苦悩していた。

自分が纏うボールガウンの内ポケットに手を入れて、何やら激しく苦悩していた。

アウラには、どうするべきか悩んでいる姿にしか見えなかった。

 

「―――あんた何してんの?」

 

「ぐふぅぅぅぅう!か、覚悟を決めたでありんすぇ!!」

 

アウラの言葉に、謎の覚悟を決めたシャルティアはキェェェェェ!と裂帛の気合の叫びと共に、ポケットからある物を握り締め、それを勢いよく取り出した。

 

シャルティアが取り出したのは、一つの果物であった。しかし、ただの果物ではない。

色は、まばらで赤・白・青・黒・緑色と非常にカラフルな色をしており、なによりその実の中央にはHという文字が入っていたのだ。

 

「これこそ、わたしがペロロンチーノ様から授かったアイテムでありんす!」

 

「変化の実。効果は私達NPCの一部を変化する事ができるアイテムですな。TSの実まではいきませんが、これまた希少アイテムです」

 

再びパンドラズ・アクターの説明が始まる。変化の実。そのアイテムの効果にNPC達はまたも驚いた。

自分達の性別を変えたり、一部を変化する事ができるアイテムがあるとは思ってもいなかったのだ。

 

 

「わたしはペロロンチーノ様から、様々な事を教えてもらったでありんす」

 

シャルティアの脳裏に己が創造者の雄雄しき姿が鮮明に浮かび上がる。

 

「その中には男の娘の知識もあったですぇ。そして、男の娘はあるモノがあれば、妊娠すら可能だとも…!!」

 

ざわめくNPC達。おぉ…流石はペロロンチーノ様。男ですら妊娠できる方法を知っておられたとは…。

至高の四十一人の知識の深さに敬服していたのだ。

 

「あ、あ、あ、あるモノって何ですか!?」

 

マーレの期待の篭った声。それに対してシャルティアは創造者の知識の深遠さを誇りに思いながら、堂々と宣言した。

 

「それは、や○い穴ですぇ」

 

や○い穴…!?NPC達は自分の知らない知識にざわめく。何なのだ?その穴はなんなのだ…!?皆、一様にシャルティアの説明の続きを待った。

 

「や○い穴…、それは一部の男の娘に付いてる器官でありんす。まぁ、普通の男にも極まれに付いている者がいるようでありんすが。ともかく、や○い穴は男が殿方を受け入れる専用の穴でありんす。また、この穴で殿方を受けれた男の娘は、妊娠すら可能と、ペロロンチーノ様はおっしゃていたでありんすよ」

 

おぉ…流石はペロロンチーノ様。そのような、や○い穴までの知識をお持ちとは…!!流石は至高の御方々…。

自らの創造者への惜しみない賞賛に、シャルティアは鼻高々だ。改めてペロロンチーノへ対する敬意が増していった。

 

「確かにぶくぶく茶釜様に創造されたマーレの性別を変えるというのは、やりすぎでありんすが、この変化の実を使えば、マーレにや○い穴をプラスするだけで済むでありんす。これくらいであれば、ナザリックの未来の為にも、ぶくぶく茶釜様もお許しになってくれると思うでありんす」

 

マーレは感激したように、シャルティアを見つめる。マーレとて、己が創造者に創造された自分を改変するのを、決して良い事だと思ってはいない。それでも、アインズ様の御子を産めるならば…と、断腸の思いで、性別を変えようと思っていたのだ。

そこに助け舟をだすように、シャルティアの提案。変化の実それさえあれば、自分は男の娘のまま、アインズの寵愛を受けれて、しかもうまくいけば、御子すら宿せるかもしれないのだ。

これは、正しく、マーレにとって万事解決の素晴らしい提案だった。

 

「シャルティア…あんた本当にその変化の実を使っていいの…?」

 

だが、アウラは気付いていた。シャルティアと最も親しいアウラは気付いていたのだ。

何故、変化の実を出すとき、シャルティアがあれだけ苦悩していた理由を。

 

「だって…あんた、その変化の実を使えば―――巨乳になれるって事でしょ!?」

 

「んぐはぁ!?」

 

アウラに急所を突かれたシャルティアはヨロヨロとよろめきながら、自分の胸に手をやった。

そこには、見事なまでの二つの豊かな双球があった。

―――胸パッド詰め込みまくりだけど。

 

 

 

 

 

 

 

ペロロンチーノは、シャルティアを創造する際、エロゲにありがちな様々な設定をシャルティアに注ぎ込んだ。

しかし、そんな彼は生まれながら、ある罪を背負っていた。その罪の名前は―――ロリータコンプレックス。つまりはロリコンであった。

シャルティアの幼く、小さな体。ぺったんこな胸。これはペロロンチーノの理想であったのだ。

しかし、彼は。エロゲマイスターであった、彼はある時こんな事を思ってしまったのだ。

 

ロリなシャルティアは素晴らしい…至高のモノだ。だが…ロリ巨乳なシャルティアもまた素晴らしいのではないだろうか…?

 

ペロロンチーノは正しくロリ系統ならば何でもいける漢であった。

 

エロゲマイスターは自らが思った事を何時でも実行できるよう、変化の実をシャルティアに持たせたのである。

しかし、実際に変化の実は使うことなく、ペロロンチーノはYGGDRASIL(ユグドラシル)を引退してしまった。

そして残された変化の実は、今もなおシャルティアが持ち続けていたのである。

その変化の実がついにその力を振るう時が来たのだが、どっちに使うのだ―――!?

 

 

 

 

 

 

 

シャルティアは自らの手の中にある、変化の実を見つめる。

そうだ。これは自分にとっての最後の砦であった。アウラやアルベドに胸の無さを指摘されても、私には変化の実があるし!!何て心の中で思っていた。

巨乳になりたいシャルティアがここまで、変化の実を使わなかった理由の一つは、創造者たるペロロンチーノがシャルティアの姿を望んだからだ。

そして二つ目は―――。

 

 

『最近、胸が大きくなってきちゃっって、シャルティア何てもう目じゃないね!でも胸が重いよー』

『あらぁ。アウラ大変ねぇ。私も重くって重くって…本当に胸が無いシャルティアが羨ましいわぁ』

『くふふふ!笑止でありんすぇ!わらわの胸を見るでありんすよ!』

『な、何たる巨乳!!いや、これはもはや爆乳!!』

『くふぅ!私よりも大きいなんて…悔しいけど、アインズ様の正妃はシャルティアが相応しいようね…悔しいけど完敗よ』

『お見逸れいたしましたー!今まで男胸なんて言ってて誠にごめんなさい!!平にお許しをー』

『えっへんでありんす!!』

 

 

 

 

そんな場面を夢見ていたからである。

それもこの変化の実をマーレに授ければ、この夢は儚く散ってしまう。

シャルティアのぼいんぼいん爆乳計画は砕け散ってしまうのだ。

そして自分は一生つるぺったんこのまま。辛い辛すぎる…でも…!!

 

「い、いいでありんすよ。わたしのこの姿はペロロンチーノ様が望んだ姿。それに…優先すべきはわたしの胸よりも、ナザリックの未来でありんすぇ。

わたしは…わたしは…この胸のままでいいでありんすよ……」

 

シャルティアは血の涙を流しながら宣言した。

様々な葛藤・苦悩・困難。だが、シャルティアは選んだのだ。この変化の実をマーレに授けると…。

 

「シャルティアさん…」

 

感激し瞳に涙すら滲ませるマーレの手をそっと握るシャルティア。

 

「マーレ…。これで、わたしと一緒にアインズ様とのご寵愛を受けるでありんすよ。チーム・ペロロン茶釜の始動でありんすえ!!」

 

「はい!!」

 

シャルティアの宣言に大きく頷くマーレ。

此処に、一般メイド隊・プレイアデス(七姉妹)・アルベド三姉妹に次ぐ新たなチーム―――ペロロン茶釜は始動する事になった。それはナザリックに新たな戦乱を告げる開戦の幕開けであった…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして此処にあっと言う間に全てに置いていかれた少女がいた。

少女の名前はアウラ・ベラ・フィオーラ。いつの間にか自分が就こうとしたポジションをまさかの弟に取られてしまった悲劇の少女だ。

 

周りは非常に活気に満ち溢れている。各それぞれの女性NPC達が主人との夜伽について濃密な話し合いをしている。シャルティアやマーレも二人で濃密な話をしている。

そんな中アウラはただ一人ぽつんと立ち尽くしていた。

 

あれ…?もしかして女NPCの中であたしだけ出遅れた?

あたしだけアインズ様からのご寵愛無し?男の娘のマーレすら寵愛を享け賜るのに?

アウラは急激に襲ってくる疎外感に震える。

 

『はぁー。アインズ様からのご寵愛素晴らし過ぎるでありんす』

『そ、そうですね。も、もう。アインズ様の寝室へ呼ばれただけで、も、もう幸せでいっぱいですぅ』

『次の夜伽はいつになるのか…もう、待ちきれねえよ!』

『シャ、シャルティアさん…興奮のあまり口調が、か、変わっています』

『おほん。失礼したでありんす。おっと、アウラの前でこんな話しをしては悪いでありんすね。アウラは女NPCの中で唯一ご寵愛を享け賜っていないのでありんすから』

『そ、そうですね。ごめんね。お姉ちゃん』

『さて、マーレ。次の夜伽の際に行うフォーメーションの確認をしなくてはならないでありんすね』

『そ、そうですね。じゃ、じゃあお姉ちゃん。僕達向こうに行ってちょっと、よ、夜伽の件を話し合うから』

『生娘にはちょっっと耳に毒でありんすからね。おっほっほっほほほほほほほ!!』

 

アウラの脳裏に最悪の未来予想図が浮かび上がってしまった。

男である弟のマーレですら主の寵愛を享け賜るというのに、女である姉の自分のみが主の寵愛から省かれる。

しかも他の女性NPC達は皆一様に寵愛を享け賜るというのに、本当に自分のみが主の寵愛から省かれる。

そしていつしか、皆には玉のような赤子が…。

 

い、嫌だ。嫌過ぎる未来だ。こ、こんなの耐えられるはずがない!何としてでも、自分も主からの寵愛を享け賜れる様にする為にも、自分もシャルティアやマーレのチームに入らなくては…!

 

「ね、ねえ。シャルティア」

 

「ん?何でありんすか?今マーレと夜伽の事で話す事があるので、用があるならば後にして欲しいでありんす」

 

「ほ、他のチームに対抗するなら、も、もうちょっと、人数が必要なんじゃない?一般メイドは四十一人。プレイアデス(七姉妹)は七人。アルベド達は三人。シャルティアとマーレだけじゃ、二人でしょ?せめて最低でも、もう一人位居た方がいいんじゃないかな?」

 

「んー…確かにそうでありんすが…肝心のメンバーがいないでありんすからねぇ…」

 

「そ、そうかな?実は案外身近にいるんじゃないかな?た、例えば創造者が姉弟同士とか、メンバーの一人の姉とかで…」

 

「―――ははぁん」

 

このあからさまな自分の売り込みには、NPC(仲間)達の間でも馬鹿だと思われているシャルティアでもアウラの意図に気付いた。

元々、シャルティアはアウラをチームへと誘うつもりであった。まさかのマーレがチームに加入したが。

ぶくぶく茶釜に創造され、マーレの姉であるアウラはチーム・ペロロン茶釜には申し分ない存在である。

だが、このまま素直に加入させるのは面白くない。

ニヤリとシャルティアは口元を歪ませた。

 

「そうでありんすねぇ。そう言えば一人、メンバーに加えてもいいと思える相手がいたでありんすねぇ」

 

「う、うん!そうだよね!」

 

「ええ。そいつも一応ナザリックの仲間と言えるでありんすからねぇ」

 

「うん!仲間は大切!!」

 

「そいつも普段から子供が欲しいと言っているようでありんすからねぇ」

 

「うん!普段から子供が欲しいって……え?」

 

あたし普段から子供が欲しいなんて言ってないけど。

アウラはシャルティアの言葉に疑問を抱く。それにシャルティアは『そいつも一応ナザリックの仲間と言える』との発言。これはおかしい。シャルティアとアウラは喧嘩ばかりしているが、間違ってもこの台詞は言わない。

自分達ナザリックのNPC達は強い忠義心で結ばれた仲間達だ。至高の四十一人の一人である、飴ころもっちもちに、ナザリック地下大墳墓の支配を狙えと創造された、エクレア・エクレール・エイクレアーにとて、そんな言葉遣いをしないであろう。

アウラの脳裏にある疑問が浮んだ。シャルティアは自分の事を語っているのではない?では誰を語っているんだ?

アウラの疑惑の視線にシャルティアは優雅に微笑みながら爆弾を放った。

 

 

「あれもナザリックの一員と呼んでもいいと思うでありんす。ゆえにチームに加えてもいいのではないかと思うでありんすよ――――ハムスケを」

 

ハムスケ。それはかつてトブの大森林の南部を縄張りとし、比類なき力と叡智を誇る、森の賢王とまで謳われたこの世界における伝説の存在である。

しかし、それはこの世界においての話しであり、ナザリックと比較すると圧倒的な力不足な存在である。

最近アインズによって捕まえられ、ナザリック全NPCの憧れの役職である、アインズのペットになった為、NPC達の嫉妬を集める存在となっていた。

そんなハムスケの目標は番いを探し、子孫を残す事である。しかし、ハムスケの同族のモノは見つからず、未だ彼女は子供を産んでいないのである。

そんなハムスケがついに子を孕む展開が来たのか―――!?

 

「あ、あ、あ、あんたは何考えているのよー!?!?」

 

シャルティアの発言にアウラは困惑したように絶叫した。

確かにハムスケはナザリックに属する存在となったが、あくまで外枠としてやってきた存在である。純粋なナザリックのしもべではないのだ。

そんなハムスケを自らのチームに加えようという、シャルティアの暴挙。アウラにはシャルティアが何を考えているさっぱりわからなかった。

 

「あーら。ハムスケだってナザリックの一員でありんす。しかもアインズ様のペットという役職。アインズ様のご寵愛を享け賜るには相応しい存在だと思ったでありんす」

 

「だからって、ハムスケは獣じゃない!?どう考えてもアインズ様のご寵愛を受けれるとは思えないよ!?」

 

「そうかもしれないでありんすねぇ。でも仕方がないでありんす。他のチームに対抗するためには最低後一人はほしいでありんす他の女性NPCでチームを組んでいない魅力的な者がいないでありんすよぉ。はぁー困った困ったでありんす」

 

つまりはあれか?シャルティアはこう言いたいのか?チームを組んでいる女性NPC以外で、魅力的な女が居ないから、ハムスケを誘ったと言いたいのか?

つまりは自分―――アウラはハムスケに女としての魅力で負けていると言いたいのか?

 

それに気付いた時、アウラの中でぷちっと何かが切れた。

いかにアウラがまだ七十六歳という子供であろうとも、アウラは女なのである。

シャルティアの言動はアウラの女としてのプライドを激しく逆撫でした。逆撫でしまくったのである。

 

「本当に困ったでありんすねー。ああ、何処かに魅力的な」

 

「ねえ、シャルティア。ちょっと相談があるんだけど」

 

シャルティアの言葉に被せる形で、アウラは言葉を発した。

相談。シャルティアはアウラの言葉の意味を考え、そして口元をにんまりと歪めた。

先ほどはハムスケをチームに入れてなんて言ったが、実際にはそんな事は考えていない。アウラをからかう為に言っただけのことだ。

そしてこのタイミングでのアウラの相談。

それはどう考えても、チーム・ペロロン茶釜への加入を願うものであろう。

まあ、ハムスケの件を出し、からかったのはちょっと意地悪だったかもしれない。

だが、素直にチーム・ペロロン茶釜への加入を願ってきたならば、こちらも素直に入れてやろうではないか。

シャルティアは目の前のアウラの据わった目にも気付かず、上機嫌にそんな事を思っていた。

 

「ほほほ。わたしに相談とは。なんでありんすか?」

 

「それがさぁ。最近胸が大きくなってきたみたいでさぁ」

 

「んな!?!?」

 

アウラの発言に心底驚愕するシャルティア。

今、何て言った?この目の前の少女は今何て言ったのだ…!?

 

「ななななな、なんですって…?」

 

「だからぁ。最近胸が大きくなってきたみたいで、胸が張って痛いんだよねぇ。鞭振るうときも今までと違う感じで困っててさぁ」

 

ばかな…!?そんな馬鹿な…!?

アウラはまだ七十六歳の子供である。身長も小さく、まだまだ二次性徴は来ていないはずだ。

実際、今服の上から見ても、胸の膨らみ等見られない。

 

「ううう、嘘を言うなでありんす!お前の胸が膨らんでいる筈が無いでありんすぇ!」

 

「何で、嘘だと思うのー?知ってるー?森妖精(エルフ)は胸が小さい種族だけど、闇妖精(ダークエルフ)は巨乳が多い種族なのよー?そんな巨乳が多い種族である闇妖精(ダークエルフ)のあたしの言葉が信じられないっていうのー?」

 

闇妖精(ダークエルフ)は巨乳が多い…!!??

 

その言葉はシャルティアに大いなる戦慄を与えた。

 

シャルティアは吸血鬼(ヴァンパイア)である。アンデッドである。

未来永劫その姿を変える事が無い、完成された姿なのである。つまりはこの体…胸は未来永劫変わることはないという事である。

だが、アウラは違う。アウラは成長する個体なのである。

しかも、闇妖精(ダークエルフ)という、巨乳が約束されたような種族なのだ。

つまりは…アウラはシャルティアの胸囲を抜かす事が決められている、『約束された勝利の胸(えくすかりばー)』だという事なのか…!!??

 

「は、はわわわわ…でありんす…!?」

 

「胸が張る事を相談しようかと思ったけどー。考えたらシャルティアは胸なんか成長しないものねぇ。いやー、相談しようと思った相手を間違えたわ!ごめんごめん!アルベドにでも相談するよー」

 

ガタガタと震えるシャルティアに追い討ちを掛けるかのように、アウラは言葉を発した。

 

「いやー。でも大変ねぇ。その小さな胸じゃあアインズ様も満足してくれないんじゃない?マーレは男の娘だし、これじゃあ、あんたのチームは一生ペっタンコなままなチームね」

 

その言葉にシャルティアの中でぷちっと何かが切れた。

 

「おんどりゃぁぁぁ――!!!!吐いた唾は飲めねーぞ!?こらぁぁ―――!!!!」

 

「先に喧嘩売ってきたのはそっちでしょうがぁ!?」

 

そして始まるいつものキャットファイト。

いつもなら周りに居る守護者が止めに入るのだが、色んな意味で急展開過ぎる展開に付いて行けずに、皆動きが鈍かった。

 

「や、や、や、やめてください!!!!」

 

辺りに響き渡る大きな制止の声。

その声を放ったのはまさかのマーレであった。

普段のマーレからは想像もできない、大声で放った制止の声に、シャルティアとアウラはぴたりと動きを止めた。

 

「お、お姉ちゃん。シャ、シャルティアさん。ぼ、僕の話を聞いてください」

 

その言葉にアウラとシャルティアは一度顔を見合わせてから、ばつが悪そうな顔でマーレの方を向いた。

 

「…何よ?話って」

 

「お、お姉ちゃんも…僕達のチームに入ってくれないかな?」

 

「え!?」

 

「マ、マーレ!?」

 

まさかのマーレからの勧誘に、シャルティアとアウラは驚く。

あのいつもおどおどした態度を見せるマーレからこんな勧誘が出てくるとは思わなかったのである。

 

「お、お姉ちゃんの言うとおり、僕とシャルティアさんでは、将来的にも大人な女性の魅力は低いと思うんだ。だ、だから…将来女性的な体になると思う、お姉ちゃんも僕達のチームに入って欲しいんだ」

 

マーレの言葉に、アウラとシャルティアは納得の意を得た。

今のアウラはまだまだロリである。仮にアウラが今チームに加入したとしても、ロリ・ショタ・ロリのチームメイトとなる。それはそれで一部の男達には堪らないのかもしれないが。

しかし、アウラとマーレが成長したら、これが、ロリ・BL・グラマーの三連コンボとなるのだ…!!

いかに、自分達が見目麗しい存在であったとして、何度も何度もその身体を味わったら、飽きる可能性がある。

その飽きをさせないためにも、成長する種族である闇妖精(ダークエルフ)であるアウラとマーレが必要なのである…!

 

「そ、それにお姉ちゃんが居てくれたら、僕も心強いし。だ、だ、だからお姉ちゃん!お願い!僕達のチームに入ってください!!」

 

そしてマーレは頭を思いっきり下げる。マーレの真摯な姿。その姿を見たシャルティアも覚悟を決めたように、ぐっと顔に力を込める。

 

「わたしからもお願い。アウラ。わたし達のチームにはいってちょうだい」

 

そして軽く頭を下げた。

これにはアウラだけでなく、周囲のNPC達も驚愕した。

アウラとシャルティアは同格の守護者である。その立場に違いはない。しかもアウラとシャルティアは表面上はいがみ合っているのだ。そのシャルティアがNPC(同僚)達の面前でアウラに頭を下げたのはちょっとした事件ですらあったのだ。

 

「――そこまで言われちゃしょうがないなぁ―――いいよ。あたしもあんたらのチームに入るよ」

 

自分に向かって頭を下げる二人(弟と親友)に対してアウラは溜息を吐きながら―――しかしとても嬉しそうな笑顔で言葉を発した。

 

「あ、あ、あ、ありがとう!お姉ちゃん!」

 

「ふん!一応感謝するでありんすよ」

 

「た・だ・し!」

 

喜び露にするマーレとシャルティアの二人にまったをかけるアウラ。

 

「チーム名がだめね。ぶくぶく茶釜様とペロロンチーノ様のお名前を取ったチーム名はいいけど、何故姉であるぶくぶく茶釜様の名前が後なの?」

 

「うぐ」

 

「しかもぶくぶく茶釜様から創造されたのは、あたしとマーレの二人。三人のチームの内の二人よ?だからここはチーム・ペロロン茶釜じゃなくて、チーム・ぶくぶくチーノで行くべきよ!」

 

「うぐぐぐぐぐ…!?」

 

アウラの意見に何かうまい反論方法はないかと、呻きながらシャルティアは考えたが、アウラの意見は正論だ。

シャルティアの創造者たるペロロンチーノの名前を最初に持ってきたのは、少しでもペロロンチーノの格を上げたいというシャルティアのある意味無意識な表れである。

だが、アウラが言った意見は正論を得ている。これを反論するのは難しいであろう。

 

「わかったでありんす!チーム名はぶくぶくチーノでいいでありんすよ」

 

結局何も反論することはできずに、シャルティアは肩を落としながら了承の言葉を上げた。

 

そんなシャルティアににっこりと満面の笑みを浮かべながらアウラは大きな声で宣言した。

 

「わかればよろしい!よーし!チーム・ぶくぶくチーノ始動だよ!!」

 

 

アウラの元気な発言が円形劇場(アンフィテアトルム)中に響き渡る。

こうして、プレイアデス(七姉妹)・アルベド三姉妹に次ぐ新たなチーム・ぶくぶくチーノは始動する事となったのだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これでよかったのでしょうか…?アウラ様もマーレ様もまだまだ子供。しかも、マーレ様に至っては男の娘だというのに…」

 

「ムゥ。私ハ蟲王(ヴァーミンロード)デアルカラ、何トモ言エヌガ…シカシ――」

 

「しかし――?何ですか?コキュートス」

 

「フム。レベル100の末妹ヲ頂点トシ、抜群ノコンビネーショント、バランスヲ誇ルプレイアデス(七姉妹)

ナザリック最強ノ個ヲ誇ル、ルベドヲ擁シ、最強ノ防御力ヲ誇ルアルベド。情報魔法ニ特化シタニグレド。尖ッタバランスヲ持ツアルベド三姉妹。

ソシテ、全員ガレベル100デアリ、守護者最強ノシャルティア。広範囲殲滅デハ、ナザリック随一ノマーレ。群トシテノ力ヲ持ツアウラ。高次元ノ力ト未知数なバランスヲ持ツ、チーム・ブクブクチーノ。

コレハ、楽シミナ戦イニ、ナッテ来タモノダ」

 

「……貴方はぶれませんね。コキュートス」

 

竜人として真っ当な常識と性癖を持つ鋼の執事は、同胞の脳筋ぶりに、溜息を吐きながら、ナザリックの未来に思いを馳せたのだった。




ごりっぱ『今ワシはしなびれながら充電中じゃ!ワシも出ていないし特に言うことなし!!ではあれだからなんだわな。
しかし、この話が此処まで続くとはワシも思わなんだな。当初の予定では、前編・後編の2話で終わる予定であったのに。気付けばもう倍の4話じゃ!予定とは未定とはよくいったもんじゃな!グワッハッハッハァー!』


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