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【社説】

国内で新型肺炎 拡大防止に情報共有を

 中国武漢市で多発した新型コロナウイルスによる肺炎の患者が国内で初めて確認された。中国はこの肺炎について情報公開を徹底したうえ、周辺国とも共有し、感染拡大防止に全力をあげてほしい。

 十五日に日本で初めて確認された患者は、神奈川県在住の三十代の中国人男性。武漢市に渡航した際に発症者などと接触した可能性があるが、患者の多くが出入りしたヘビやカエルなども売る海鮮市場には行っていないという。

 武漢市で発症した夫婦のうち、夫は海鮮市場で働いていたが、妻は市場に接触していないという。

 このため、ヒトからヒトへの感染を否定していた武漢市当局は十四日、「可能性は排除できない」と、その見解を修正した。

 厚生労働省は「持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない」としている。だが、武漢市での発症者との接触者が国内で患者と確認された以上、さらに警戒を怠らず、感染拡大防止に全力をあげるべきだ。

 武漢市によると、十四日時点で新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは四十一人で、うち六十一歳の男性一人が死亡し、六人が重症という。

 中国当局が死者の発生まで含めた新型肺炎の実態について世界保健機関(WHO)に報告し、日本にも迅速にウイルスなどの情報を提供したことは評価できる。

 二〇〇二年から〇三年にかけ、中国南部を中心に猛威を振るった重症急性呼吸器症候群(SARS)について中国政府は当初、情報を隠蔽(いんぺい)。周辺国含め対策は後手に回り香港を中心に三十七カ国・地域で八千人以上が感染。七百七十四人が死亡する事態を招いた。

 中国では当時の衛生相や北京市長が更迭され、対外的にはアジア諸国からの強い不信感を招いた。

 今回の新型ウイルスは、「死に至る肺炎」といわれたSARSや中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスとは異なる。いまだに感染経路は不明であり、特効薬やワクチンを作るのに数年かかるともいう。

 とりわけ、中国は今月下旬から春節(旧正月)の長期休暇に入る。国内は数億人規模の帰省ラッシュとなるほか、七百万人余が海外旅行に出かけると予測される。

 膨大な人の移動が感染の温床にならないとは断言できない。日中両国政府はWHOとも連絡を密にして、感染源の特定を急ぎ、防疫体制に万全を期してほしい。

 

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